鉄道のサービス改善に新たな仕組み


 2007年7月4日付読売新聞夕刊が「ラッシュ対策を採点 国交省、鉄道会社に行政指導も 通勤客のイライラ代
弁」と題する記事を掲載しており、興味深い。


 東京をはじめ大都市圏の鉄道の混雑率は人口の減少もあり、緩和されつつあるとされるが、未だに苦痛であること
に変わりはない。苦痛どころが危険さえ感じることも多い。

 同記事によれば、「車内はすし詰めの上、停止信号続きでノロノロ運転−−。通勤時間帯のそんなイライラを少しでも
解消しようと、国土交通省が来年度から、鉄道会社を対象に電車の快適性、利便性などサービス充実度を測る実態調
査に乗り出す」という。「これまで通勤ラッシュ対策は原則的に鉄道会社まかせだったが、今後は国交省も利用客の不
満を集約し、乗車率の高い路線を中心に各社の取り組みを採点。これらの成績をオープンにすることで各社に対策を
促し、“痛勤痛学”の緩和につなげたい」と考えているのだそうだ。 
     ◇ 
 国土交通省には組織改編で「鉄道業務政策課」が設置され、調査は、首都圏の主要駅で利用客からアンケート調査
を行い、車内の快適度、電光掲示板の運行情報の分かりやすさなど、利用者に対するサービスの中身を検証するとい
う。従来、国交省の監査は、安全面の点検が中心で、運行ダイヤも監査対象だが、運行上の危険がなければ混雑対
策は基本的に管轄外となっていた。そのため、利用客の不満を聞く専門窓口はなく、ラッシュの実態把握も不十分だっ
たという。 

 バリアフリーが鉄道においても進められており、エスカレーターやエレベーターの設置が相次いでいる。それは良いこ
とではあるが、バリアフリーとは段差をなくすことだけではない。身動きが取れないような混雑はそれこそ最大のバリア
である。例えば、混雑時の駅のホームなど、ホームの端しか通れないことがある。これでは子どもやお年寄りが安心し
て鉄道を利用できない。

 運賃の値上げ申請に関しては一応運輸審議会という審議組織(関連情報)があるが、サービスについて消費者の意
見を反映できるし仕組みがないことをかねがね疑問に思っていた。例えば、運行本数を増やしてほしいとか、最終電車
の時間を繰り下げてほしいというような声を反映させるような仕組みはない。各社がそれぞれの窓口で意見を反映させ
ているということになるのであろうが、国交省や鉄道各社に「消費者モニター会議」のようなものがあっても良いのでは
ないか。必ずしも消費者すべての声を代弁できる訳ではないが、鉄道経営方針の決定に消費者が参画できる仕組み
が必要である。

 通常の商品市場であれば、消費者に支持される製品は市場に残り、支持されない商品は撤退を余儀なくされる。航
空業界においても同様なことが起き得る。しかし、鉄道は基本的にサービスが悪いからといって利用しないという訳に
はいかない。そこで、情報化社会における企業の評価が鉄道各社に消費者対応の改善を促す仕組みの創設が求めら
れよう。また、情報が開示され、鉄道各社のサービスの相違が消費者に広く知られるようになれば、これから転居する
人等には住居を選ぶ際の選択情報となり、鉄道各社の経営努力を促進する動機付けになることもあり得る。

細川幸一



トップへ
トップへ
戻る
戻る