変質している消費者相談


  6月5日に埼玉県消費生活審議会があった。そこでの資料に驚くべき事実が示されていた。埼玉県消費生活支援セ
ンターの「平成18年度の相談概要」によると消費生活相談における「契約・購入金額」が急増しているのである。
  
  契約・購入金額が判明している相談について、その平均金額をみると、以下のように推移している。


     平成16年度  649,287円
    平成17年度 1,087,309円(対前年比 438,022円増)
    平成18年度 1,374,115円(対前年比 286,806円増)


   平成18年度の金額は平成16年度のほぼ2倍である。必ずしも消費者相談における契約・購入金額=消費者被
ではないが、この急増は消費者被害の高額化の傾向を示していよう。

  従来、典型的な消費者被害は、「少額多数被害」と言われてきた。一人ひとりの消費者被害は軽微であっても、大
量生産・大量消費の中で、企業側の不当利益は膨大なものとなる。一方、一人ひとりの消費者被害が少額である故に
裁判を起こすには経済的には(精神的にも)見合わないから、司法を通じての被害救済が進まない・・・そのように考え
られてきた。しかし、137万円という金額が相談の平均だというのだから、消費者相談が変質してきるいるのではないだ
ろうか。埼玉県の事務局に高額化の理由を聞いたころ、まだ分析途中であるが、投資関係の苦情増加が影響している
のではということであり、相談業務をしている同審議会委員からは、契約・購入金額の増加を実感しており、お年寄り等
を狙った次々販売等が原因ではないかという意見があった。

  これは由々しき状況である。最近、勧告や公表などの行政処分をしても、すぐに、廃業し、新たな屋号で活動をする
悪質業者の存在が指摘されている。消費者法制の事業者に対する制裁機能の強化や不当利益吐出し法制の整
備が急務であると思う。

  6月7日から、消費者契約法改正による消費者団体訴訟制度がスタートする。しかし、消費者団体が裁判所に求め
ることができるのは不当な契約条項や勧誘行為等の差止めだけであり、損害賠償請求は認められていない。消費者
被害の高額化が消費者法制の進展以上に急速に進んでいると言えよう。

細川幸一




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