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振り込め詐欺で犯人側が郵便小包で送金を要求するケースが急増しているとして、警察庁は過去の事件で送り先
として使われた住所の一覧をホームページで公開した(7月27日付東京新聞)。
振り込め詐欺の送金先には口座が使われることが多いが、金融機関が協力した口座凍結などの対策が進み、郵
便の悪用が目立つようになったという。
郵便の悪用防止策も進めてもらいたいが、凍結された口座に残る犯罪収益はどうなるのであろうか? 5月24日付
朝日新聞によれば、振り込め詐欺などの不正利用の疑いで、みずほ、三菱東京UFJ、三井住友、りそなの4銀行が入 出金凍結した口座の残高が3月末時点で計35億円にのぼっている。これは民主党の尾立源幸議員が参議院財政金 融委員会で質問し、金融庁が回答した数字である。与謝野金融相は「違法な取引の被害救済は重要な課題」と述べた とういう。
地方銀行も含めれば凍結口座の残高総額は100億円規模に膨らむ可能性があることを同記事は伝えている。現
状では、被害者が銀行に返還を請求しても、口座の残高と被害者の送金額との関係が明確でない限り、支払いを受け るのは難しい。被害者は口座の名義人に返還訴訟を起こすしかないが、名義人の住所が不明で訴えすらできない例も 多いという。結果として、その金銭は銀行の収益となってしまう。早急な法整備が必要であろう。
米国では、行政が被害を受けた市民に代わって悪徳業者等に対して損害賠償請求し、それを被害者に分配する
「父権訴訟」という制度がある。しかし、この場合も正確に被害者に分配できないことも多いし、また一人ひとりの被害 額は小額であるため、分配コストを考えると意味がないことも多い。
その場合は、シープレー配分(cy-pres distribution、可及的近似則に基づく配分)とう概念に基づき、結果とし
て被害者あるいは被害者に近い属性の集団に配分できるような次善策を取る。すなわち、高齢者に被害者が多けれ ば、高齢者向けの慈善事業に寄付するとか、健康食品関連の被害であれば、市民の健康関連分野で活動するNPO に金銭を提供する等の方策である。
そもそも銀行口座には名義人本人が死亡したりして休眠しているものがかなりあり、その残高総額は巨額なものら
しい。それらも銀行の収益となってしまってよいのか? 凍結口座だけではく、休眠口座の残金も含めて社会に役立た せるための方策を検討すべきと思う。少なくとも銀行が結果として儲かるような現状はおかしいのではないか。
細川幸一
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