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消費者団体が事業者に不当な契約条項、行為の差し止めを請求できる「消費者団体訴訟制度」の新設を盛り込ん
だ改正消費者契約法が31日午前、参院本会議で全会一致で可決、成立した。来年6月に施行される。
同法は、消費者団体が被害を受けた消費者に代わって消費者契約に違反する契約条項の利用や不当な勧誘を行
っている事業者を民事裁判に訴え、それらを差止めることが可能となる制度である。
同法案は実質的な審議を国民生活審議会で行い、そこでの結論を受けて、内閣府が法案を作成し、政府提出法案
として出されたものである。国会審議の過程で、法案には損害賠償請求権を含んでいない、確定判決がある場合に他 の適格消費者団体の訴訟を認めない後訴の遮断条項がある、裁判管轄が本店所在地と営業所在地に限定されてい る等の問題点が指摘されてきた。そうした中で、裁判管轄が営業所所在地等に限定されていることの問題点について は民主党枝野幸男氏、小宮山洋子氏、泉健太氏等が厳しく追及し、猪口邦子担当大臣が答弁に窮することとなり、結 局、自民党、公明党、民主党が衆議院内閣委員会に「行為があった」地まで裁判管轄を拡大する修正案を共同提出 し、、可決され、衆議院本会議で採択されたという経緯がある。
5月8日付日本消費経済新聞はこれを「急転直下の大逆転」と評しているが、たしかに政府提出法案が審議過程で
修正されるのはめずらしいことであろう。同紙はこの原因を、民主党が消費者・消費者団体の意見を把握し、論点を明 確にして攻めていったことに加え、自民党も岸田文雄氏や河野太郎氏党の若手が党内のプロジェクトチームを主導し ており、長老陣が支配する従来型の政治からの変化が起きていることを指摘している。
訴訟を提起できる消費者団体は「消費者の利益の擁護を図る活動を目的とし、その活動を相当期間にわたり継続
して行っている」ことなどを要件に今後、首相が認定する。 そこで、いくつかの消費者団体や公益団体がこの認定を受 けるべく名乗り出ている。改正消費者契約法が成立した31日の午後、適格消費者団体を目指す消費者機構日本の第 二回総会と公開学習会が時をあわせたかのように開催された。同会長根來泰周氏は、日本は「偽装社会」だと述べ、 消費者が安心して暮らせる社会実現のために団体訴訟制度を有効に活用できる団体になる決意を表明した。
根來氏が、「昔はこんな制度は日本ではとんでもないというように思っていたが、時代が変わった。年寄りは引っ込
んでいた方がよい」と冗談交じりで話していたが、国会も世代交代が進み、だいぶ様変わりしてきているように感じるの は私だけであろうか・・・
細川幸一
消費者機構日本は同日、以下の声明を発表している。
2006年5月31日
特定非営利活動法人
消費者機構日本
会 長 根來 泰周
理事長 品川 尚志
本日、参議院本会議において消費者団体訴訟制度を内容とする「消費者契約法の一部を改正する法律」が、全会
一致で成立しました。消費者団体訴訟制度は、消費者契約法に照らして不当な約款・勧誘行為の差止請求権を消費 者団体に認めるものであり、消費者被害の拡大防止ならびに公正な市場の実現に資する画期的な制度です。また、国 会審議の中で、裁判管轄について、事業者の本店・支店所在地に加え、「事業者等の行為があった地」での提訴も可 能とする修正がされました。これは、悪質な事業者が遠隔地で不当な行為を行う場合がある実状にそったものであり、 評価できるものです。消費者団体訴訟制度の実現を歓迎するとともに、この間制度実現に努力された関係各位に深く 感謝申し上げます。
消費者機構日本は、今後、消費者団体訴訟制度の運用実績を重ねる中で、より実効性のある制度への改善提案
をすすめます。また、本制度を積極的に活用し、消費者被害の拡大防止をはかることを通じ、制度と適格消費者団体 への社会的信頼を広げてまいります。そのことが、次のステップとしての、独占禁止法・景品表示法・特定商取引法な どへの消費者団体訴訟制度の導入、ならびに消費者団体訴訟制度における損害賠償請求権の実現へとつながるも のと考えます。
消費者機構日本は、消費者団体訴訟制度の実現と活用を目指し、一昨年9月に発足し活動をすすめてまいりまし
た。この間、予備校等に消費者契約法に照らして疑義のある約款の是正申入れを行ってきましたが、「どのような資格 で申し入れをしているのか」といった反応であり、真摯な検討がなされていないのが実状です。この度の制度成立を契 機として、申入れを受けた事業者は、同制度への認識を深め真摯な対応に努めるべきです。
消費者団体訴訟制度が有効に機能するには、消費者団体の力量強化が鍵です。消費者被害の拡大防止と公正
な市場の実現という同制度の公益的役割を理解いただき、事業者や市民各層に広く支援していただくことが必要で す。加えて、消費者行政による情報面・財政面での支援も重要です。
消費者機構日本としては、消費者被害の情報収集や分析と申入れの活動をいっそう積極的にすすめるとともに、
組織・財政基盤の強化をすすめながら、消費者行政各機関とも連携を強めてまいります。さらに、適格消費者団体間 の協力が、同制度の効果的運用にとって重要であることをふまえ、他の団体とのネットワークの形成を積極的にすす めます。
一年後の消費者団体訴訟制度の施行に向けて、消費者被害の拡大防止という同制度の目的を実現できるだけの
実力を培っていく所存です。 以上
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