相次ぐ企業の不祥事 〜CSRとは一体何なのか?


  不当表示、不当勧誘、談合等、企業の違法な行為が次々と明るみになっている。CSRが盛んに議論され、それを高
らかに謳う企業までも違法行為に手を染める現実をどう見ればよいのであろうか?

 最近のいくつかの事例をあげてみよう。

天然ノリにしか認められない「岩のり」の表示を養殖ノリに使い販売したのは景品表示法違反(優良誤認)に当たる
として、公正取引委員会は3月23日、日本生活協同組合連合会など9つの販売業者に対し、こうした表示をやめるよ
う排除命令を出した。
 また製造販売業者でつくる「食品のり公正取引協議会」にも、適正表示の徹底を求める要望書を出した。ほかに排除
命令を受けたのは、小善本店、白子、サングリーン、なとり、ニコニコのり、永井海苔、海産物松村、オンガネジャパ
ン。いずれも公取委の事情聴取を受けた今年2月末までに表示を改めているという。(共同通信3月23日)

日本航空グループで主に国内線を運航する日本航空ジャパンが、実際には設定していない運賃の割引料金を時
刻表や新聞広告で掲載しているのは不当表示で景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして、公正取引委員会が3月
24日、同社に排除命令を出した。公取委によると、同社は今年1月までの1年間、岡山−東京、広島−東京、鹿児島
−神戸、仙台−大阪、松山−大阪の5つの路線で、実際は東京、大阪、神戸発にしか設定していない「特便割引」と呼
ばれる格安料金のうちの最低料金が、各地方発の便にも設定されているかのように、地方紙の広告や時刻表、折り込
みチラシに掲載した。(共同通信3月24日)

金融庁は27日、三井住友銀行の全国の支店法人営業部が融資先の中小企業に「金利スワップ」と呼ばれる金融
派生商品(デリバティブ)の購入を押し付け独占禁止法の禁じる「優越的地位の乱用」をしていたとして、同行に対しデ
リバティブの販売を5月15日から半年間停止、法人営業部の新設を1年間停止する一部業務停止と業務改善命令を
出した。
  命令では、不公正な取引が行われていた01〜04年当時の法令順守と内部管理体制の不備を厳しく指摘し、過去
にさかのぼって問題発生時の経営陣の責任明確化も求めた。奥正之頭取は同日、記者会見し「結果責任が当時の経
営陣にないということはない」と陳謝。前頭取で日本郵政会社の西川善文社長らを含む当時の経営陣の処分を検討す
る考えを明らかにした。
 金融庁が大手行に業務停止命令を出すのは検査忌避で刑事告発した旧UFJ銀行以来で、優越的地位の利用に対
する金融庁の処分は初めて。停止を命じる業務は金利スワップの新規販売業務で、法人営業部の新設も1年間停止
するよう命じた。 (毎日新聞4月28日)

 金融庁は5月23日、保険金の不払いや保険契約の水増しなど違法行為が広範に行われていたとして、大手損害
保険会社の損害保険ジャパンに対し、今週にも一部業務の停止を命じる行政処分を出す方針を固めた。違法行為が
全国の支店に及んでいることから、内部管理体制に重大な不備があると見て、同時に出す業務改善命令で経営陣の
責任明確化を厳しく求める方針。
 金融庁は昨年9〜12月にかけて、同社への立ち入り検査を実施。保険金支払いや保険商品販売の管理体制などを
重点的に検証してきた。その中で、保険金の不払いや保険契約の水増し事例を新たに発見、立ち入り検査終了後も
保険業法に基づく報告命令を出して、違法行為の全容把握に努めてきた。その結果、一部の業務では違法行為が全
国の支店に及ぶなど内部管理体制の欠如が原因と見られる事例が多数見つかったという。
 損保ジャパンは昨年秋にも、報告命令に基づく社内調査で自動車保険の特約部分などに多数の不払いが見つかり、
業務改善命令を受けたばかり。金融庁は、今回の違法行為も含め、現経営陣の内部管理に重大な問題があったと見
ている。(毎日新聞5月23日)

全国の屎尿・汚泥処理施設建設工事をめぐる談合事件で、大阪地検特捜部は5月23日、昨年中に実施された入札
八件で受注調整を繰り返していたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、クボタなど大手プラントメーカ
ー七社の部長級社員七人を逮捕した。公正取引委員会はこれに先立ち同日午前、七社を含む談合組織のメンバー十
一社を同法違反罪で検事総長に告発。今年一月施行の改正独禁法で、同法違反罪の起訴が全国の地検で可能にな
って以来、大阪地検が初めての適用例となった。
 幹部が逮捕されたのは、クボタのほか、アタカ工業日立造船栗田工業)、荏原製作所JFEエンジニアリン
西原環境テクノロジー。公取委はこれら七社に加え、談合に参加していた住友重機械工業三菱重工業三井
造船タクマの計十一社を同罪で告発した。 (産経新聞 5月24日)
 
 
 
 ここ2,3ヶ月だけを見てもいわゆる一流企業の違法行為が次々と明るみに出ている。団体訴訟制度の創設を政府に
要求し、景表法も訴権対象法に含めるべきと主張している日本生協連までもが不当表示で公取委から排除命令を受
けるとは一体どういうことなのか?
 先日、TSB「ニュース23」で筑紫哲也氏がCSRについてコメントをしていた。企業の社会的責任を「CSR」と横文字にし
て大々的にアピールしているが、本当に企業は社会的責任を自覚しているのかと問うていた。
 にせ牛缶詰事件、ポッカレモンにせ果汁事件など不当表示が相次いだ昭和30年代、40年代から数十年を経た今日、
企業の倫理観や法令順守精神は本当に進展しているのか疑いたくなる現状である。

                                                             

                                                               細川幸一


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