街頭募金は野放しで良いのか?


   繁華街や駅前で街頭募金をよく見かける。しかし、日本では諸外国に比べて募金に協力する人は少ないという印
象を持つ。国民性もあると思うが、その大きな理由は、募金活動の信頼性が明らかでないからだと思う。

   2004年7月に街頭募金について初めて詐欺での摘発が行われたことを月刊国民生活1月号(石川智也氏執筆)
が取り上げており、興味深い。読売新聞等によると街頭募金活動を装って通行人から計約2000万円をだまし取った
として、大阪府警捜査2課は2004年7月29日、難病の子どもの支援等を名目とする自称NPO団体「NPO緊急支援
グループ」の実質的代表、横井清一被告(34)を詐欺容疑で逮捕した。通りすがりに募金した被害者の特定は困難で
あるため、府警は一定期間に集めた募金総額を被害金と解釈し、全国で初めて詐欺容疑での立件に踏み切った。 詐
欺事件の立件は、個々の被害者を特定して被害を積み上げるのが通例だが、府警が突き止めた募金者は11人で募
金総額も約3万円で、府警幹部によれば、「相当の量刑を求めるには厳しい被害額」だったという。そこで、府警は、一
定期間内の募金総額を詐取の意図を持って集めた「一つの金」ととらえ、この間の募金者を「一人の被害者」と解釈
し、被害額を膨らませるとともに、被害者特定という捜査上のハードルも越えたという。

  
   月刊国民生活の記事によれば、東京都の場合、現在、社会福祉法に基づく共同募金などを除き、一般的な募金
活動は警察の道路使用許可のみで可能だという。道路使用許可は、地元の警察で団体や代表社名、連絡先、使用目
的などを所定の用紙に記載するだけでおりるもので、団体や活動の信頼性を調査しているわけではない。東京都の場
合、以前は、いわゆる募金条例があり、団体の適格性等を審査していたが、94年に廃止されたという。その理由は民
事の私的な領域に行政がタッチする時代ではない等だという。同種の条例は全国的にも廃止の方向という。

   こうした偽募金を放置することは本来の募金活動自体を困難にする。新宿駅西口地下広場では、悪質な苦情が
相次いだために新宿署が道路使用許可を出すことをやめたという。そのために「あしなが育英会」が同所で募金活動
ができなくなり、募金額がかなり減ったという。さらに、悪質な募金が横行したことで、同育英会自体にも疑問の目が向
けられはじめたという。「NPO緊急支援グループ」は計、113回も道路使用許可と取り、通行人から疑問を持たれると
許可書のコピーを見せて信用させていたという。

   以前、テレビで、偽僧侶による托鉢が横行していることが報じられていた。日本人に似た黒目黒髪のアジア人を雇
い、僧侶の格好で托鉢させているという。編み笠の裏にお経のあんちょこが貼ってあり、それを読んでいるのだという。


   募金活動を規制することが募金活動の自由を制限することになるのか、あるいは規制をして悪質な募金活動を排
除することが実質的な募金活動の自由を確保することになるのか、検討が必要であろう。


   ちなみに、米国では州政府の行政機関である司法長官府の中に消費者保護局があるが、ほぼどこの州でもチャ
リティ詐欺課等の部門を配している。そこでは募金活動について情報を開示させ、集まったお金が本当に寄付されてい
るかチェックしている。米国は自由経済の国であり、消費者が自律した国であるから、行政は基本的に民事案件に介
入しないとの日本人の認識は誤りである。社会秩序維持のために市民が政府を作ったのであるから、社会的な不正義
の是正のために政府が活動するのは当然という認識が米国民にはある。


細川幸一

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