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JALは日本の翼でいられるか?



  またしても日本航空(JAL)のトラブルが明らかとなった。産経新聞によれば、JALのボーイング747が、海外で委
託整備された際に左右のエンジンを取り違えて設置され、ミスに8ヶ月気付かないまま11月まで約2700時間飛行して
いたことが明らかとなった。ミスが原因で一部のエンジン部品が検査すべき時期を過ぎていたほか、逆噴射装置が客
室側に向かって作動していたという。
  ミスをしたのはシンガポールの整備会社で、4基あるエンジンを取り外して点検し、整備を終えて戻す際、識別番号
を確認しなかったため、両端のエンジンを逆に取り付けたという。JALもそれに気付かず、飛行を続け、ミスに気付い
たのは11月14日だが、安全性に問題ないとして事実を公表せず、12月21日になって報道で明らかとなった。


  エンジンといえば、飛行機の最重要装置である。それを左右逆につけていて気が付かないとは一体どういうこと
か? 安全性に問題はなかったとJALは述べているが、そうした認識を持っている同社の体質こそ安全性に問題あり
だろう。これだけ重要な問題に気付かないということはどれだけ小さいミスが放置されているのか想像もつかない。


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  今年は空だけではなく、消費者の「安全である権利」が脅かされる事件が相次いだ。JR福知山線の脱線事故、姉
歯建築士等による耐震強度不足のマンションの建設、そして年末には再びJR羽越線の特急いなほの脱線事故が起き
た。羽越線の特急脱線でも車両がくの字型に折れ曲がり、福知山線の大惨事を思いださせた。省エネ・高速化を重視
するあまり、車両の強度が足りなくなっているのではないか? 一方、つぶれた車両に閉じ込められた負傷者を救出す
るための車両の解体が難しいようであり、衝撃には強く、しかし、解体しやすい車両の研究も必要ではないかと思う。


  競争の激化が安全性軽視の経営に結びついていると主張する論者もいるが、どうであろうか? 競争がなければ
安全であるとう保証もない。必要なことは品質やサービスの良し悪しとともに安全性の度合いを消費者に見える形で情
報開示させ、安全であることが競争上有利になるような状況を作ることである。事前規制・行政規制を廃止する一方
で、事業者のコンプライアンスを監視し、消費者にその結果を開示し、違法行為に対しては素早く制裁を課す役割が行
政や司法に求められている。規制緩和は消費者のためにするものであり、企業がマネーゲームをしたり、荒稼ぎする
ためのものではない。企業が安全性追求競争を起こすような仕組みが必要である。

細川幸一


追記:
  1月7日に日本航空・伊丹発鹿児島行きの3913便ボーイングMD90型機(乗客乗員181人)が着陸した際、逆噴射装
置が働かないトラブルがあったと報じられた。前日の修理で、逆噴射装置が誤って作動しないよう安全ピンを挿した
後、抜き忘れたのが原因という。同社では2004年7月にも同様のミスによる逆噴射装置の不作動が起きている。過去
の経験が活かされていない。国土交通省は再発防止策が不十分として、口頭で厳重注意したようだがそれだけでよい
のか? 業務停止命令でも出した方がよいのではないかと思う。まずは自衛手段としてJALには乗らないことだ。





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