利息制限法を守らない貸金業者



   現在、日本では利息の制限について、民事法である利息制限法と、刑事法である出資法が存在する。出資法に違
反すると刑事罰があるので、ヤミ金融等を除いて通常、貸金業者は出資法の利息制限(年利29.2%)を守っている。
しかし、驚いたことに多くの貸金業者(消費者金融、クレジット会社)は利息制限法の利息制限(元本10万円以下
20%、10万円以上100万円以下18%、100万円以上15%)を超える金利で貸付を行っている。なぜか? 第一にこれ
は民事ルールであるために罰則がないからであり、第二に、この法律には任意に超過利息を支払ったときは消費者は
その返還を求めることはできない旨の規定があるからである。
 
  そこで、多重債務者の債務整理において、超過金利について任意に支払っているものではないことを確認し、借金
の金利を利息制限法の制限金利で計算しなおし、超過金利については元本の返済に充てることを貸金業者に求める
ことが行われているが、消費者側で借金の履歴の保存がされていない場合、その立証が難しい。そこで、貸金業者に
取引の履歴を求めることとなるが、拒否する業者も多い。

  2005年7月19日、最高裁は貸金業者には履歴開示義務があるとし、拒めば賠償責任を負うと判示した。共同通信
によれば、法定金利を超えた高利融資をめぐり、消費者金融会社が「取引履歴」を借り手側に開示する義務があるか
どうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(浜田邦夫裁判長)は、「貸金業者には開示義務があり、
拒めば不法行為として賠償責任を負う」との初判断を示した。その上で、借り手側の慰謝料請求を棄却した2審大阪高
裁判決を破棄、慰謝料算定のため審理を同高裁に差し戻した。

 
  取引履歴は過払い金返還や、債務整理の際の残高確認に必要だが、消費者金融側が開示を拒みトラブルとなる
ことが多かった。最高裁が開示義務を明確に認めたことで、多重債務者救済の道が大きく開かれるといえる。この訴
訟は大阪市の金融会社「キャスコ」に借金をした女性が、利息制限法を超えた分まで返済したと主張し、キャスコ側に
過払い金と、取引履歴を開示しなかったことに対する慰謝料計約160万円を支払うよう求めた事案である。


  しかし、利息制限法の利息制限が無視されている状況は多重債務者だけの問題ではない。約款等であらかじめ金
利を明示し、それに合意したことをもって超過金利を消費者が任意に支払うという意思を示したものとして、貸金業者
は業務を行っている。これはおかしい。なぜならば、利息制限法は民事の強行規定であり、消費者がその約款に示さ
れた超過金利にたとえ、合意していても、超過金利については無効である。利息制限法は超過金利を任意に「支払っ
た」場合の例外を定めているのであり、任意性の要件は利息の支払いの時点で存在していなければならない。従って、
将来支払う場合を想定してあらかじめ任意性についての合意をしておくことは許されないのである。

  要するに、消費者は約款等で超過金利が示され、それに合意していても、超過利息を任意に支払わない旨、利息
の支払いあるいは引き落としの時かその前に意思表示すれば、超過利息を支払う義務は一切ないのである。こういう
と消費者は約束を守らないで良いのか? との疑問が出てこよう。しかし、考えてみれば、民事法を守っていないのは
貸金業者の方であり、また、契約前に消費者が約款の修正を求めても通常事業者はそれに応じることはない。「契約
の自由」といっても消費者に契約内容を定める自由などないのが現代消費社会である。


細川幸一

細川幸一・齋藤雅弘・坂東俊矢「金銭消費貸借の貸し出し金利と利息制限法」(消費者法ニュース 2004年4月)

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