卒業
ぼくは現実を見、反抗し、憂い、悲しみ、虚しく思う。
ぼくは現実を見れば見る程、真実というものの姿がわからなくなってしまう。
──少しずつ、少しずつ、やっと積み上げた積み木が音もなく、すっと崩れてしまうのだ。
現実を知れば、知る程、白から黒へ。
──正直という言葉から、限りなく遠ざかってしまう。
生きること──死ぬこと。
これはぼくがかつて考えていた程、境界のはっきりしたものではないようだ。
黒い霞のなかで、鴉が一羽、餌を求めて飛びまわっている。
でも、ぼくは白い便器の上の、一足の赤いハイヒールを求めているのだ。
1985.05.04
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