夕日の道を歩く時

誰もいない人混み
自由になった僕は、僕を知った

夕日の道を歩くとき
空気の筋を切り裂いて
僕がいる

少しだけ目を閉じる
まぶたの裏にも光は届く

くしゃりと乾いた音を聞く
紅葉した落ち葉を、足下に見た
血のように赤い、と思った

今日はいつもより
背中のリュックが軽い
もしかしたら、飛べるかも知れない

駆け足の隠された意味に
気付く者は無い
そうさ
僕は、どこへでも行ける


金木犀の甘い気に
肺を冒され

真っ黒い鳥たちが
空の向こうに吸い込まれていく

飛んでいった風船は
鳥よりも孤独

そうさ、僕は
夕日の中の小さな僕は

地を駆け、空を飛び
どこへでも行ける
どこへでも行ける


けれど、地に着いた足
夕日に長く、伸びる影

誰かに名を呼ばれ
また
僕は、僕を知った


解説
こちらは、大学のサークルの部誌であるJIBUCA vol.38に掲載したものです。

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