ボールを飛ばすには、扱い易い道具であることを前提条件として、快適なヘッドスピード感を感じて、充実したインパクトを実現できるクラブでなければなりません。
即ち αの値が自分のスイング体力に適切に合致し、シャフトの硬度と
γの値が最適に調和していることが基本です。

静止しているゴルフボールを飛ばす(飛距離の程度、高さの程度、曲がりの程度等)には、
外部からボールに効果的な力を加える必要があり、その外部からの力を加える直接の手段が
ゴルフクラブのヘッドですが、ボールを有効的にインパクトするには、クラブの特性を解明
しておくことが是非必要です。
@ 強いインパクトができるクラブ
ボールをヘッドでヒットするインパクト時にヘッドがボールに加える力は、
次式の力のモーメント式で表すことができます。
Fb・L1=Fg・L2 ∴ Fb=Fg・L2/L1
Fb;インパクト時にボール等にヘッドが加える力(g)
Fg;両手グリップに掛かるインパクト時の負荷(g)
L1 ;クラブの重心点とボールがヘッドに当たる点までの距離(cm)
L2 ;クラブの重心点と両手グリップまでの距離(cm)
ここで、L1≒(L−A)、L2≒(A) L ;クラブ全長
と置き換えると、Fb=Fg・(A)/(L−A) となり、
今まで検討してきた内容との相互関係を解析することができます。
上式で、大きいAの場合ほどL2/L1が大きくなるので、ボールに
加える力Fbが大きくなることが分かります。
A ヘッドスピードを増大させるクラブ
ヘッドスピードに関係するクラブの部材はシャフトです。
シャフトの重さや、剛性(しなり、ねじれ)の程度が自分の体力やスイング力に
最適でなければ最高のヘッドスピードは得られません。
シャフトの剛性との相性としてのしなり係数γについては先に詳述
しました。

クラブの長さ(L)について諸説種々ありますが、以下を検証する必要があります。
@クラブの最適長さは、先ずスイングする時の身体の姿勢に照応したライ角がクラブの
ライ角と一致するものでなければ正確にボールをヒットすることが難しくなります。
A特にドライバーのように飛距離を求めるために、長いクラブの効用が言われますが、
これは、あくまでも同じ角速度でスイングができる(同じ時間でスイング軌道を
終了する)場合にヘッドスピードが増加することにより飛距離が増大するのであり、
クラブが長くなればなるほど、クラブの慣性モーメント(スイング負荷Ms)が
大きくなり、スイング速度が遅くなり、期待したほどヘッドスピードが上がらない
場合があります。
自分のスイング技量と相談しなければなりません。
ただし、ゆっくりスイングでシャフトのしなりを十分に利用してインパクト時のヘッド
スピード(インパクトスピード)上げて飛距離を期待するときには、Lを長めにし、
Aを適度にに大きくすることをお勧めします。

飛距離を増大させるためのクラブと身体の関係を考えてみましょう。
1)強いインパクト力が必要です。
先ず、スイング中のクラブの運動量はいわゆるクラブの慣性モーメントMsです。
ヘッドがインパクト時にボールに与える運動量は、てこの原理で、
(L−A):A に反比例しますので、
Ms・A/(L−A) と考えられます。
これをインパクト力(IP)と呼び、A/(L−A)をインパクト係数と
呼ぶことにします。
インパクト時の両手に掛かる運動量(反力)は同様に
Ms・(L−A)/Aとなります。
インパクト力を大きくするためにはMsを大きくするか、
インパクト係数A/(L−A)の値を大きくしなければなりません。
ただし、自分の適切なスイング感覚値Ms/(A−20)の範囲内であることが
前提であることは言うまでもありません。
注)インパクト係数A/(L−A)を大きくすることは
シャフトのしなり係数γ=(A−60/(L−70)を大きくすること
にも連なります
2)強いインパクト速度が必要です。
重要視しなければならないのは、インパクト時のヘッドスピードであって、スイング
中ヘッドスピードではありません。
シャフトを適度にしならせて、インパクト時にヘッドスピードが最大にすることが
必要なのです。
そのためには、自分に最適な硬さの(剛性)のシャフトでAを大きくしたクラブが
最適です。
Aを大きくすることはシャフトのしなり係数γの値を大きくし、同時にインパクト係数
A/(L−A)も大きくします。
同時に、Msも大きくなるので、自分の体力と技量と相談しながら繰り返しの
試打調整が必要なのです。
上式により飛距離のための身体の仕事は次のように言えます。
@ スイング感覚値αに適応したスイング体力・技量(スイング総合力)を持つこと。
A シャフトのしなりを利用してインパクトスピードを期待する場合には、γ値の
大きいクラブで身体の回転と両腕の振りをゆっくりしたスイングをすること。
B シャフトのしなりを利用せず、強いインパクトを期待する場合には、小さ目のγで
短めのクラブ(短めL)で身体の回転と両腕の振りを素速くしたスイングをすること。
体力のある技量でヘッドスピードを上げることが出来る上級者は@Bを、そうでない一般
アマチュアの多くは@Aを目指すべきでしょう。
ヘッドの質量の大きいクラブ、バランスアームの長いクラブといっても、自分のスイングの
α値 Ms/(A−20)の値の限界を超えるものでは木を見て森を見ないのと同じで、
意味がありません。
自分のα値の程度を確かめておく必要があるのは言うまでもありません。
ここで留意しなければならないのは、ヘッドスピードはスイング回転速度(スイング
スピード)とクラブ特性の総合力の成果として確定するもので、決してヘッドスピード
=スイングスピードではない、ということです。
いずれにしてもボールにクラブヘッドを当てる作業即ちスイングが滞りなく行われること
及びヘッドがボールに正対して当たることを前提にしています。
先ずこの前提条件をクリアーしなければなりません。ボールの飛距離はあくまでもそれらの
結果に過ぎません。
最近やっとシャフトのしなり性能分布が採り上げられるようになって来ましたので、
今までの私のスイング負荷理論(FOVIX 理論)との調和の試案を示したいと思います。
スイング中の特性について見てみましょう。
ダウンスイングでは、グリップ部分が先行してヘッド部分が遅れて動くことになりますが、
その原因はヘッドの慣性力が働くためで、その遅れの程度は以下の通りと考えられます。
@ ヘッドの質量(重さ)が大きいほどヘッド側の遅れが大きい。
A シャフトの剛性が低いほど(軟らかいほど)ヘッド側の遅れが大きい。
B 手元調子にくるほどヘッド側の遅れが大きい。
インパクト時点では、ヘッドの運動エネルギーを効果的にボールに伝達させて真っ直ぐ
遠くへボールを飛ばすには、フェイス面を打ち出し方向に垂直に当てる必要があり、
シャフトは元の棒状に復帰していなければなりません。
そのためには、遅れてきたヘッドが遅れを取り戻すまでグリップの動きを抑制しなければ
ならないのです。これが、インパクト直前で両手の動きを止めてヘッドを走らせる感覚で
あり、いわゆるヘッドスピードを加速させる感覚なのです。
スイング総合能力がこの両手の動きの抑制に大いに関与していると思われます。
スイング能力が高くスイング回転(ヘッドスピードではない)が速くできる人には、
軟らかいシャフトではヘッドの遅れが大きくなり両手グリップの動きの抑制のタイミングが
難しくなります。
スイング回転が遅い人には、硬いシャフトではヘッドの遅れは発生し難くヘッドの加速は
期待できないので、軟らかいシャフトで適度のヘッドの遅れを取得してから両手グリップ
の動きの抑制のタイミングを探ることになります。
以上、シャフトの特性と、私のスイング負荷理論との調和を図り飛びの総合的な
メカニズムを考察すると次のようになります。
スイング中は、クラブの全質量が(重量)が荷重としてクラブの重心位置(シャフト上)に
集中しているものとして作用しますから、そのシャフトの剛性性能分布(調子)に
クラブの重心位置を照応させることにより、プレイヤー別(スイング総合力別)に最適な
ヘッドの遅れの程度を生み出すことができ、ヘッドスピードが加速され、飛距離の増加に
寄与させることができると考えています。
ここで、注意しなければならないことは、スイング負荷Msの大きさです。
あなたにとって最適なクラブセットでは、スイング感覚値Ms/(A−20)が統一
されていることが基本条件なのです。
そうでなければ14本のクラブで同じようにスムーズなスイングができないからです。
シャフトの全体の剛性と部分剛性(しなり性能分布)に照応したクラブの重心位置A
及びその重心位置に起因するしなり係数γ、スイング負荷(Ms値)とスイング感覚値α
があなたに最適であるクラブが あなたにとって理想のクラブなのです。
以上の要件を視覚的に分かり易く表すのが、グラフ化です。
横軸にバランスアームA,縦軸にそれぞれクラブの重さW,スイングモーメントMs,
スイング感覚値Ms/(A−20),インパクト力Ms・A/(L−A),
しなり係数γ(A−60/L−70)を採ることでドライバーからパターに
至るまでの様子が一目瞭然となります。
グラフはどれもなだらかな曲線になるのが理想的です。
下記は直近(2013.12.15)の私のクラブのインパクト力のグラフです。
横軸がA(グリップエンドからクラブ重心までの長さ)、縦軸がMs・A/(L−A)
(インパクト力IP)です。
75歳の私がこのクラブで、生涯最高の飛距離と強い弾道でゴルフを楽しんでいます。
A−IP図

赤プロットデータが調整後のもので、黒プロットがオリジナルのものです。
右端データから、1W,3W,5W,U4,5I〜Pw,Aw,Sw,Lw,Ptです。
オリジナルクラブに比べて調整後のクラブのインパクト力が格段に増大しているのが
一目瞭然に見て取れます。
グラフのデータはどれもなだらかな曲線上に乗るのが理想的です。
曲線から著しく外れているデータがあれば、そのクラブのデータの何かが異常値である
ことを示唆しているのです。
その原因はそれらのグラフを見比べると自ずと判明します。
原因が分かればその調整方法も自ずと分かります。
グリップの重さなのか、ヘッドの重さなのか、シャフトの重さや硬さなのか、
シャフトの長さなのかです。
調整方法については、”クラブの調整”で詳述しています。
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