先に示した三図の例では比較的きれいに線図に乗っていますが、市販品では往々に
してバラついていることが多く見られます。特にアイアンセット外のクラブ
(ウエッジ類、ユウティリティ類、ウッド類)との関連を見るとほとんど曲線には
乗ってきません。
その場合は、どのクラブのスイング感覚も同じにするためにはそのバラついている
データのクラブを調整する必要があります。
何故なら、隣り合うクラブは互いにスイング感覚的に連続していることが望ましい
からです。
その基本は慣性モーメントMsの連続性(A−Ms図)であり、
その根拠となるのがA;Lの連続性(γ・A−L図)であり、
クラブの質量Wの連続性(A−W図)です。
アイアンの中で、なたにピッタリの感覚でとても気に入っているクラブがあれば、
そのクラブを基準にして調整を検討します。
ユウティリティ、フェアウエイウッド、ドライバーの調整はアイアンのA−Ms図を基にアイアン線図のなだらかな延長カーブ線上になるように行います。
ここで重要なのは、飛距離アップにはヘッドは軽いよりは重い方が良いのですが、
シャフトのしなりを利用するにはグリップを軽くしてAを大きく(γを大きく)
することが必要であり、その場合Msが大きくなり過ぎないようにヘッドの質量を
抑えるか、あるいは重過ぎても振り易いようにクラブの長さLを短くすることが
必要となるかも知れません。
シャフトを余りしならせないためには硬い(重い)シャフトと重めのグリップで
バランスアームAを小さく(γを小さく)する必要があります。
1)Msの調整
@ Msを大きくする場合
処置;グリップをかるくする。
その方法は両手で握っていて余分な細い先の部分を切除するか、
グリップを軽いものに交換します。
結果;クラブは軽くなり、Aが長くなる。
A Msを少し大きくする場合
処置;ヘッドに重りを付加する。
結果;クラブは重くなり、Aが微増する。
B Msを小さくする場合
処置;グリップを重くする。
結果;クラブは重くなり、Aが短くなる。
C Msを少し小さくする場合
処置;ヘッドを軽減する。
その方法はフェイスの裏面でソールに触れない部分を削るなど。
結果;クラブは軽くなり、Aが微減する。
2)Aの調整
@ Aを長くする場合
@)処置;グリップを軽量化する。
結果;クラブは軽くなり、Msが大きくなる。
A)処置;クラブ(L)を長くする。
結果;クラブはシャフト延長分重くなりライ角及びロフトが変化する。
A Aを少し長くする場合
処置;ヘッドに重りを付加する。
結果;クラブは重くなり、Msが微増する。
B Aを短くする場合
@)処置;グリップを重くする。
結果;クラブは重くなり、Msが小さくなる。
A)処置;クラブ(L)を短くする。
結果;クラブはシャフト短縮分軽くなりライ角及びロフトが変化する。
C Aを少し短くする場合
処置;ヘッドを軽減するかグリップを微増する。
結果;クラブは微減または微増し、Msが微増する。
ここで重要なことは、飛距離アップにはヘッドは軽いよりは重いほうが良いのですが
シャフトのしなりを利用するにはグリップを軽くしてAを長く(γを大きく)
する必要があり、その場合Msが大きくなり過ぎないようにヘッドの質量を抑え
なければなりません。
シャフトをあまりしならせたくないためには、硬くて重いシャフトと重めのグリップ
でAを短く(γを小さく)する必要があります。
クラブ調整で重要なのは、グリップとヘッドの質量加減の調整結果が逆の関係に
なることと、グリップの質量調整の方がヘッドの調整よりも約2倍の効果がある
ことです!!!
即ち、グリップを軽くすればクラブは軽くなりAは大きく増大し、ヘッドを軽く
すればクラブは軽くなりますがAは反対に微減します。
反対に、グリップを重くすればクラブは重くなりAは大きく減少し、ヘッドを重く
すればクラブは重くなりますがAは反対に少し増大します。
Aの増大はスイング負荷であるMsの値を大きく増大させるので、調整は必ず
A−Ms図を描きながら試打でスイング感覚値αであるMs/(A−20)の
自分の限界値を確認することが必要です。
いくら調整して試打してみてもしっくりこない場合は、シャフトの剛性(硬さ、
トルク)があなたのスイングタイプに合っていないか、AとLの関係(γ)合って
いないか、スイング感覚値(α)が合っていないからです。
その場合には先ずシャフトの仕様を再検討する必要があります。
シャフトの仕様はスイング感覚と同時に弾道と飛距離に対して重要な基本要素です。
3)Lの調整
クラブの全長はシャフトの長さで決まります。
シャフトの長さの変更は、ライ角が変化してヘッドのライ角と異なってくる
ことがあるので、できるだけ避けたいものです。
シャフトの多少の長短調整でも大きくAの値を増減させ、結果的にMs値も
増減させ、しなり係数γ(=A−60/L−70)も変化させます。
必ず上記のグラフを描きながら、試打により確認が必要です。
先に示した三図の調整の例では、シャフトのしなりを利用して飛距離を出すために
グリップとヘッドの質量調整を極限まで行った結果です。特に1WではMsの値が
大きく(グリップを軽くヘッドを重くして、Aを大きく)なってその傾向が如実に
現れています。
また、ウエッジ類では、PW及びAWとSWとはそれらの使用目的に合わせて調整を
した結果、同じLに対してAの値が明らかに少し小さくなっています。
全体としてデータがスムーズな連続性を保っており、結果として私にとって最高に
使い易いクラブセット(γが統一)になっています。
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