今までは主に、出力側(プレイヤー)と負荷側(クラブ)の相性について詳細に考えてきました。
この度は、更に進んでプレイヤーの感覚を主体にしたクラブの条件について解説します。
勿論前者は基本的条件であり、後者はその基本的条件に更に追加する究極の条件です。
クラブはゴルフを楽しくする道具であるべきです!!
クラブをスイングする時のクラブの重さ(負荷Ms)は体力や体躯に適合する必要が が絡み合ってクラブとしての機能を発揮していることは明白でしょう。 そしてそれぞれの部品の質量の大きさ(重さ)がクラブの重心位置即ちバランスアームの 長短に直接的に関わり、結果的にスイング負荷の大小となって現れてくることはこれまで 何度も詳述してきました。(A−L図、A−W図、A−Ms図、A−IP図) しかしそれだけではどうしても微妙な打球の感覚を満足させることはできませんでした。 14本のクラブには夫々に異なる使命があり、その使命にはその使命なりの打球感覚が どうしても必要となります。 1Wはボールを遠くへ飛ばせる感覚、アイアンはターゲットに意図する弾道でボールを 打てる感覚、ウエッジ類は手の平でボールをアンダースローでヒョイと投げる感覚、 パターはボールを意図する方向に意図する距離だけアンダースローで転がす感覚です。 これまでのクラブの解析にシャフトの重要性を加味して、クラブセットにおいて、 総合的に各要素がどのような傾向に在るべきかをまとめてみました。 そして、その組み合わせの是非の確認は、これまでクラブの解析で詳述した通り、 データのグラフ化で視覚的に行うことが必須であることは言うまでもありません。
シャフトのねじれ強度のトルク値を番手順になだらかに大きくすることにより、 長いクラブほどスイング感覚で期待した結果が得られました。 しかし、これにはクラブの長さに照応した最適なシャフト質量が必須です。 ユウティリティやウッド類をセットする場合には注意を払うべきです。 アイアンセットと異なるメーカーのクラブでセットする場合には、特に留意すべきです。 シャフトの強度はトルクとキックポイントを併せて重要視すべきで、 硬度表示(L,R,S,Xなど)は参考程度で良いようです。 クラブの調整は、先ず、クラブセットの中で今一番自分に好感度 (スイングがスムーズ、インパクトがしっかりと充実していて弾道がイメージ通り) なクラブを基にして、その前後のクラブをなだらかな曲線上に 来るように調整を行い、順次14本に展開します。 パターは他の13本のクラブとは、基本的に飛ばすクラブではないのですが、スイング 感覚はやはりウエッジ(Sw,Lw)の延長と考えると良いと思われます。 ただし、長尺;中尺パターは別物と予想しています。 (長尺パターを私は未経験なので、今後の研究課題とします) ![]() クラブどうしのバランスを確認 クラブの調整は大きく分けてその構成部品であるヘッド、シャフト及びグリップの 調整の総合です。そして、私たちが通常で出来る範囲は、ヘッドの質量(重さ)の増減、 シャフトの長短、及びグリップの太さ・質量の増減くらいですが、それだけで十分です。 そして、それらの単独の調整でAやMsがどのように変化するかを考えてきました。 しかし、究極的にはそれらの調整の総合組み合わせがポイントなのです。 しかも、14本のクラブの相互関係のバランスが非常に大切なのです。 それにはクラブの基本データによるグラフが必要不可欠で、グラフにヘッド、シャフト、 グリップの調整予定の仮想データを入力してシュミレーションし、その変化の方向を 下記のグラフを通して読み取り、調整を施工し、測定し、グラフ化し、試打して感覚を 確認する。 これらを繰り返して自分に最適なクラブを作り上げるのです。 一旦それなりの自分のクラブが出来上がると、その後の加齢、技量の変化に応じる調整は 簡単に方向と量が予見出来ます。 市販のままのクラブでは絶対に最適なクラブは存在しないと断言できます。 クラブの調整上必要なデータは、 ヘッドの質量Hw(g)、シャフトの質量Sw(g)、グリップの質量Gw(g)、 クラブの全長L(cm)、クラブの全質量W(g)、クラブの重心の位置の長さである バランスアームA(cm)、です。 シャフトの剛性(しなり、ねじれ、硬度、等)はデータとしては必要ですが、 その調整は不可能です。 グラフに関しては、 スイング負荷に関する基本的関係図としてA−L,A−W,A−Ms図を挙げましたが、 それに追加する打球感覚関連図として、次のグラフを提唱します。 A−Hw;A−Sw;A−Gw;及び A−Ms/(A-20)(スイング感覚図);A−Ms・A/(L−A)(インパクト力図) これらのグラフを総合的に視野することにより調整の必要があるクラブが見つかります。 どのグラフもドライバーからウエッジ、パターまでバランスアームAの間隔が適度にあり、 なだらかな曲線上(右上がり)に在るようにしなければなりません。 極端に外れるクラブは、シャフトか、グリップか、ヘッドに問題があり、調整の必要がある ことを示しているのです。 クラブの調整にはこれらのグラフが必要不可欠と確信しています。 ご参考に直近(2013.12.15)の私の調整後のクラブのグラフを提示します。 黒線グラフがオリジナルクラブのデータで赤線グラフが調整後のクラブのデータです。 グリップは全て一本一本クラブ毎に自前で調整製作、ヘッドも全て質量増減調整し、 シャフトはウッドでは長尺化、ウエッジでは短尺化に調整しています。 すべてのクラブの質量(重さ)はオリジナルクラブよりかなり軽くなっています。 グラフは横軸は全てA(バランスアーム)です。 プロットは右から1W、3W,5W,U4,5I〜Pw,Aw,Sw,Lw,Ptです。 (オリジナルではSw,Lwのデータが欠落しています) A−Hw,Sw,Gw,(Sw+Gw)図 ![]() 緑色はHw,茶色はSw,紫色はGw,青色は(Sw+Gw)です。 グリップはパターを除いて自前製作、ヘッドは自前で増減調整、ドライバーのシャフトは延長調整 しています。ウエッジとパターのシャフトは自前でカーボンシャフトに取替えました。 先に示した種々のグラフで曲線から外れたクラブに対して、そのクラブの構成部品のH,S,Gの 最適な組み合わせを見つけるために上記のグラフは有効です。 スイング感覚値図は下図の通りです。 A−Ms/(A-20)図 ![]() 赤色が自前調整後のデータで黒色がオリジナルです。 調整後のクラブはウエッジ類で低め(グリーン周りでは手の感覚を重視)ですが、 オリジナルでは逆に高く(クラブが重過ぎる)なっています。 また、フェアウエイウッド、ドライバーでは逆に、調整後ではシャフトのしなりを重視して ヘッドを効かすことを期待してAを長くしていますので、少し高くなっていますが、オリジナルでは 逆に低くなっています。オリジナルではシャフトのしなりは期待できません。 調整後のクラブではAの間隔が夫々クラブ長さに照応して程よく、どのクラブもなだらかな 曲線上あり、どの番手もシャフトの機能効果を期待でき、クラブごとの違和感が全く在りません。
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