米国経済−強さの源泉を探る−
●好調続く米国経済
米国経済は10年以上拡大基調を続けている。これは過去最
長のものである。通常、経済は成熟するにつれて成長率は鈍
化するものであるが、米国経済の場合、後半(近年)の方が
高い伸び(年率6%程度)を示している。大幅な雇用増もあり、
失業率は4.1%。米国経済の象徴といわれた「双子の赤字」
は黒字に転換しつつある。また、経済の好調に引っ張られて
貧困・生活保護・犯罪が減少している。
●好調の理由
(1)一時的幸運
例えば、一時期医療インフレが生じたことがあったが、managed-
careを行うことで自由競争状態を産み出し、インフレが解消した
ようなケースもあり、一時的な幸運もあるようである。
(2)適切な経済政策
グリーン・スパンがとった機動的な経済政策('87,'94-'95の
金融引き締め,'98ロシア危機の際の市場との協力対話など)
が功を奏している。また、クリントン大統領はスクラップ&ビルド
を基本に '92-'99の国家予算において財政再建(赤字削減)
に配慮してきた。「2012年には債務残を0にする」
また、規制緩和を継続。通信・電力・金融などのインフラ部分に
競争原理を導入。
(3)競争的・弾力的な生産要素市場
クリエイティブ・リストラなど労働市場の流動化はますます
進展している。創造的な金融資本市場の形成や株主重視の
コーポレート・ガバナンスの徹底などとともに、ストックオプション
や民事再生法など起業家精神に報いる制度の充実を図って
いる。

●大きなIT効果
★情報コスト・取引コストの引き下げ
情報コスト・取引コストの引き下げとともに、PC価格の低下に
よりITによる労働の代替効果も生じている。(ホワイトカラーの
資本整備の向上)→大きな労働生産性引き上げ効果
★株高を通じた需要押し上げ効果
Net産業、ハイテク産業が他産業を牽引。また、関連株の高値
による消費の活発化。
●ITはなぜアメリカで大きな経済効果を上げたのか?
労働市場の流動性、失敗に対する肝要性(チャレンジ精神の
尊重)などが大きな要因。グリーンスパン「アメリカはレイオフ
が簡単にできる。また、廃業率も非常に高い。要するにスクラ
ップ&ビルドが容易(機動性)。労働者もひとつの会社に固執
せず、生産性の高い会社へ行くべきである。」
●米国経済にアキレス腱はないのか?
株のバブル、個人貯蓄率の低迷、労働需給の逼迫、国際収
支の悪化、バブル崩壊による不況などの懸念はあるものの
一番のリスクは政策の失敗かオイルショックなどの外的ショッ
クである。

●結論
日本は株価の暴落から大不況に陥ったが、アメリカでは多少
株が売られることはあるかもしれないが、大不況に陥ることは
ないと思われる。日本に比べ銀行(金融政策)がしっかりして
いるため、銀行の倒産などの「金融危機」が発生することがな
いと考えられるからである。盤石な金融政策・不動産バブル
がないこと・財政黒字(景気刺激策にも余裕)などから米国経
済は今後ソフトランディングしていくのではないだろうか。
⇔ニューエコノミー論(停滞無き成長)の台頭
Jobless-recoveryの問題