竹ヤブと私


このコラムは、セガ伝言板で木蓮さんの発言に対して、
私が書き込みを行ったものを再構成したものです。


【まえがき】

今回登場するK君(仮名)は私の友人です。

K君とは色々遊んだりする仲の良さそうな友人なのですが、実は私は、彼の事があまり好きではありませんでした。

今回の話には、そういう感情が底辺に流れていることを理解しながら読むと、より良いでしょう



『竹ヤブと私』

かなり昔のお話です。

ある日、私は友人のK君(仮名)といつものように遊んでいました。
しばらくすると、K君が突拍子もない事を言い出したのです。

「竹ヤブに行こうぜ」

またくだらねえ事言ってるよコイツ、と思った私は彼に言いました。

「よし、行こう」

自主性の無かった私はK君と竹ヤブにイキました。

その竹ヤブは市内にあるとは思えない程、竹がうっそうと生い茂った小山です。そんな中をK君と私は、竹をかき分け奥へと入っていきました。

10分ほど進み、少し開けた場所に出た時、K君は私に言いました。

「この山の上まで登るぞ」

K君の、こういう有無を言わさぬ強引なところが私は嫌いでした。草が体に刺さったり、靴がぐしゅぐしゅになったりしていた私は、さすがにK君に言い返しました。

「うん、そうしよう」

この頃の私は純粋無垢な子供でした。人に反抗する事なぞ知りませんでした。
決して気が小さい訳ではありません、多分。
K君と私はさらに上を目指して、竹ヤブの山を登ってイキました。
相変わらず周りは竹ばかりです。
はっきり言って、面白くもなんともありません。

「帰りたいな」

私の心の中では常に葛藤が渦巻いていました。

しかし、K君は機嫌が悪くなると、とことん悪くなるのを知っていた私は、それを口にする事は最後までありませんでした。
なんと心優しい子供だったのでしょう。

ようやく私達は竹ヤブ山の頂上に到達しました。

本来なら、雄叫びのひとつでも上げるところなのでしょうが、なにせ周囲は身の丈以上もある竹ヤブです。
景色なぞまるで見えません。

やがてK君は言いました。

「つまんねえから帰るか」


そんなのは最初からわかっていた事だろうが!


私はこの探検以来、ますますK君が嫌いになりました。


おしまい


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