がんばれ!山下君



実家に帰省した時の話なのですが、ネット関連の機器が無いので、とにかくつまらん日々でした。

腐るほど寝てばっかりだったので、暇潰しに私の弟(23)がPS版『ファイヤープロレスリングG』をヤッてるのをボ〜っと見てました。

このゲームの概要は『ストーリーに沿ってレスラーを育てていく』という物のようです。

彼(弟・23才)は育成モードを選択し、ある1人のレスラーを育て始めました。そのレスラーの名は『山下』という何のヒネリもない無個性な名前です。どうやら最初の名前入力モードをすっ飛ばしたようです。相変わらずアホな弟です。

山下君は身長2.2メートル、体重40kgなどという、デタラメな設定をされたのにも関わらず、破竹の快進撃を続けています。グラフィック上の山下君はそんなトンデモ設定があるとは思えない、がっしりした好青年のようです。現実にそんな身長・体重の人間がいたら間違いなく病人ですが、そこは架空のお語です。山下君は連戦連勝、向かうところ敵なしです。

やがて私は睡魔に襲われ、再び昼寝モードに突入しました。

小一時間ほどして、私は目を覚ましました。アホ弟はまだ山下君を育成しているようです。私はふと画面に目をやりました。

そこには覆面をかぶり、凶器で相手をメッタ刺しにている見慣れぬレスラーがいました。しかしそれは『山下』本人でした。

私が寝ている間に、彼に何が起こったのでしょうか。
そこには好青年山下君の姿は無く、相手を完膚なきまで痛めつける残虐レスラー『山下』が暴れていました。

私は弟(23才・ハゲ)に問いただしました。

「おい、山下君どうしちまったんだ?」

「ん?変えた」

わかりやすい答です。私は納得しました。

残虐レスラーとなっても、山下君の勢いは止まりません。
相手を血の海に沈め、観客のブーイングを受けながら、山下君はなおも連勝街道まっしぐらです。

私を再三の睡魔が襲い、またも昼寝モードに落ち込まされました。

30分後、私が目を覚ました時、山下君のプロレス人生はいよいよ最後のクライマックスを迎えていました。ついに、彼の親友との対決の時がやって来たのです。最後の試合を前に山下君は覆面を脱ぐ決心をしたようです。

そして迎えた最終戦、そこには覆面を脱いだ山下君の姿がありました。

そこに現れたのは、好青年の面影なぞどこにも無い、ヒゲづらで頭のハゲ上がったオヤジでした。またしても山下君に何かが起こったようです。私は弟(23才・タコスケ)に再び問いかけました。

「どうしたんだよ、山下君」

「あきたから変えた」

グウの音も出ません。単純明快です。

オヤジと化した山下君は、何の容赦もなく親友をマットに沈め、勝利をモノにしました。相変わらず凶器攻撃は全開です。親友相手に凄い奴です、マッタク

その後の山下君がどうなったのか分かりません。
私は再び眠りについていました…


EXIT