アルバム NO6
癌告知受けたる妻と病室の空く日待ちゐき永かりしかな
妻の臥す病棟見えてせつなきにまたも二階の窓に立ちをり
子を育て巣立てし家を去らむとす振り向く庭に紅梅咲けり
渇きたる心の人間(ひと)の世とならむ焦るる恋を罪と見なさば
「お清め」と言ひつつ人ら酔ひ痴れてざわめく席に耐へ得るや君
なんといふ事も無きまま金婚の十月十日黄昏れんとす
初めての二人の家の玄関にカナリア飼へり朝を告げにき
若ければ「あしたまたね」と見るものを老いには瞑き山の夕映え
盗撮や痴漢の騒ぎ続けどもミニスカートを云ふ人出でず
何時からが吾が『晩年』となるならむ喜寿を過ぎたる秋逝かんとす