アルバム NO4
安達太良の山の麓にあるまじきひとつの出会ひありて忘れず
追憶に諍ひの日もあるべしと吾が亡き後の妻を想ひつ
老いのみの斜陽の町に豆腐屋の笛の音流る遠ざかりつつ
一日が一週間が一月が今や加速度あるがに疾し
除夜の鐘聞かずに寝ねて悔はなし初日拝(をろが)む清けさにゐて
歳一つ吾より若き友逝けりひとあし先にゆくとも言はず
いまさらと思へど侘しこの世にて吾は四人の祖父母を知らず
子育ての時代を悔ゆる老い妻に貧しかりしを言ひて慰む
無花果は人を哀しと思ふべし実らぬ花を食ふさもしさに
種(しゅ)の保存まさに危ふしこの国のヒト科ヒト属大和撫子