アルバム NO,3
名ばかりの祖国と知りて戻りゆく孤児を泣かしむ日本の秋
この夏は『原爆の日』の黙祷のさなかに聞けり初蝉の声
目裏に日の丸の旗消え去らず台湾を巡る旅の終日(ひねもす)
捨てかねて五十年過ぐ台湾も朝鮮も赤き日本の地図
叙勲には縁なきわれら故郷の海見に行かむ文化の日には
帰り来て「我が祖国ぞ」と『浜千鳥』歌へる孤児にわれも涙す
美にあらずミニはエロぞと教へたしもんぺ姿を忘れぬ吾は
躓きて両手(もろて)を突けりわれもまた老いて醜きヒト科ヒト属
戦にて『相和す』人を失ひし老婆は今も勅語を諳んず
その昔(かみ)の上司たりにし人逝けり《てんわう》などと呼びて畏れき