2004年12月4日(土)
 大霧山で大感激・・・大菩薩からの絶景に優るとも劣らぬ感激の一大展望に思わず息のむ

   前夜から気をもたせた天気予報だったが、一夜明ければ東の空から薄日が差し込んでいる。午後は雨を覚悟していたが何とか大丈夫そうなので、前夜準備していた昼食内容やザックの中身を急遽入れ替える。

   高幡不動発7:38で分倍河原・府中本町・北朝霞・朝霞台と経由して小川町に9:28到着。改札外で村谷氏の姿がちらっと見えたが、長旅後なので先ずトイレ。改札を出るとバス停で村谷・滝澤両氏が先着していて挨拶。どうやら今日は3人らしい。先着組は駅前で今日の打ち上げ場所も下見しておいたと、嬉しいような恐ろしいようなことを言ってくれる。

   9:35発白石車庫行きのバスに乗り、9:57橋場バス停で下車。他の数組のハイカー達約20人が一緒に降りる。我ら同様に今日の天気予報にやきもきしたであろうハイカー達だが、こちらは3人組なので先行して橋を渡って車道を登り始める。

   今日の登頂目標「大霧山」は以前にも村谷氏たちと来たことがあるが、山頂からの景色が良かったのと、山頂手前の急登が苦しかったのが記憶に新しい。何でも、笠山・堂平山と並んで比企三山の1つの由である。しばらくウォーミングアップよろしく車道を登っていくと、もう少しで通り過ぎそうになったが右手に後ろ斜め方向への登山道の道標が建っていた。ああ、見覚えがある・・・と言いながら愈々本格的な山道を登り始める。

   車道をショートカットする形で植林の中を登り、再び車道に出ると、道ばたに無人の直売所があり、ビニール袋に大きな柚が7個も入って100円で売っている。先日、陣馬高原下バス停でバス待ちの時、4個200円で買って帰ったが妻に言わせるとスーパーより安いと言っていたが、それを数倍凌ぐ超廉価のお買い得品だが、これからの登りに備えて体力乏しき身として無念の涙をのむ。もっとも、その点その程度の負荷は望むところという村谷氏が買い込んだが、後で帰り道に3個ばかり戴くことになり、残り物の菓子をお礼代わりに差しだしたものの恐縮するやらラッキーと喜ぶやら・・・ということになったのだった。

   その車道更にどんどん登っていくと、左側に牧場の広い緑と大霧山が見えてくる。ふり返れば笠山の稜線だそうだが、そんなのどかな山村風景の中を額に汗しつつすいすい登っていく。あまり広くない大霧山の山頂でもあり、あの大人数の後から登ったのでは、景色と美酒の二刀流が不可能になるとばかり、3人揃って快足で登っていく。道が右に大きく迂回する所で人里から離れ直進して登っていくと、桜並木の車道に再び出て、逆コースから降りてくる婦人ハイカーとすれ違ったが、その先が粥仁田峠で東屋がある。時に10:49で、買物時間を除けば正味46分(標準タイムは55分)と、まずまず。

   ここからが本格的な急登の始まりになるので、折角暖まった体がクールダウンしないように1分休憩だけですぐ雑木林の稜線に踏み込む。道は緩急を繰り返してぐんぐん高度を上げていく。右手下方に広がる景色に目を転じて思わず息をのむ。何というすばらしさだろう。緑・黄・赤の3色入り混じった晩秋の紅葉風景の先に霞がたなびき、その先に山、その先にまた霞と山、その先にまた霞か雲か・・・といった塩梅で、数えれば7〜8列にわたる幽玄陶酔の名画面さながらで、カメラを持参しなかったことを大いに悔やむ始末である。

   おそらく今日は下り坂の天気で、山上からの風景も曇ってあまり見えまい、よしんば見えたとしてもカメラ所有の仲間が見えているだろうと横着して持参しなかったのが、かえすがえすも悔やまれる。後悔先に立たずの例えどおり、やむ無しと思う反面、諦めきれない未練が残る絶景だ。前回来た時とは季節が異なっているので、印象も当然変わろうというものだが、それにしても今日のこの絶景は、拙いわが表現力ではとうてい描写能わざる貴重な一大パノラマ絵巻だ。同行諸氏も感嘆しきりである。

   見覚えのある尾根道を更に登っていくが、右手に見える超々絶景が疲れを感じさせない。とは言うものの、登り坂は登り坂で、前回苦戦した山頂間近の木の階段では、今回は迷わず右手の巻き道を利用して登る。最後の急登をこなして漸く山頂に着くが、時に11:19。峠から標準タイム40分の登り道を、途中景色を何度も堪能しながら正味28分で登り切ったことになる。

   幸い、山頂で座り込んでいるハイカーはまだいない。一等地に陣取り、空腹を訴えていた胃袋や、渇きを覚えている喉を早々に慰労するべくレジャーシートを拡げ、コンロに点火してから恒例の「カンパイ」。眼下には北側から西側の秩父方面にかけて広く開けており、西上州の山々が見えている。山座同定ではないが、ガイド本のコピーで確かめると二子山から皇鈴山までのパノラマが広がり、眼下には先日ハイクした美の山(簑山)が紅葉の麗姿をクローズアップさせている。低山ながら見事な展望だ。西から城峰山、ちらり八ヶ岳南部、こんもりと浅間山、草津白根、上越国境、日光連山、上州武尊、榛名山、赤城山・・・と名峰キラ星の如しだ。

   約10分遅れで登ってきた同じバスでの二番手のハイカー達に続いて次々と各組が登ってきて、そこかしこで絶景堪能とレジャーシート上での昼食タイムが始まる。われらもビール・濁り酒・リキュール・ワインなどをつみれ煮・丸干しその他で楽しみながら、最後は熱々麺で仕上げ、約1時間弱の大休憩で下山にかかる。

   旧定峰峠まで標準40分の下りを21分でこなすが、いきなりの急坂は超慎重に降りる。左手に牧草地があり、有刺鉄線も張られている。檜平で左へ鋭く曲がりゆるやかな杉林を通って旧定峰峠に着く。道標に従って、前回同様に経塚バス停方向を目指すが、この峠は奥武蔵と秩父を結ぶ昔からの街道が通っていた峠で、現在では新しい定峰峠を車道が越えているようだ。

   しばらくして車道に出るがまた山道になり、雑木林を下ると経塚バス停に到着。時に13:34。バス時刻に余裕があるので“ゆっくり歩こう”と言いながら降りてきたが、まだ35分もある。バス停前の何でもありそうな商店前に空き缶や空き瓶を入れた分別資源ゴミ入れの中に、ビールの空き缶やワンカップ酒の空き瓶があるのを見て、お互いに思わずにんまりする。それぞれに好みを飲み物を買い、女将さんに縁側を空けて貰って座り込み、再び喉を慰労する。

   田舎のこととて、何でも売っている店だが、家の外壁そこかしこに、宝登山神社の「盗賊除神璽」のお札が何十枚も貼られているのが印象的だった。火除けでなく、盗賊除けというのがオモシロイ。14:37発のバスは白石車庫始発の筈だが誰も乗っていない。真っ先に乗り込み、先頭座席で今日の絶景の余韻を楽しみながら小川町駅に帰り着く。

   予め調べておいた帰途電車時刻までの1時間強を今朝ほど先着2氏が目星づけしていた店に入って、地酒の冷酒など楽しみながら若干ぼやき気味の美人女将に客寄せのアイデァを酔いに任せて伝授?してすっかり各氏ともどもご機嫌になり、15:40発の電車に乗り込む。朝霞台で乗り越ししないよう仲間に頼んでおいて、約2時間後に無事乗り越しもせず帰宅。橋場バス停の店で買ったチョコレート菓子の食べ残しをお礼代わりに、村谷氏から戴いた柚が妻への土産となったが、楽しんだ絶景に比べると土産の方は戴き物だけで、ちょっといかがなものかと思われそうな感なしとしないが、妻には正直に戴き物であると告白?しておいた。