2004年9月26日(日)
 奥多摩の いにしえ偲ぶ むかしみち 人・物・文化の 古きみち

   境橋バス停から栃寄の大滝経由で御前山、そして大プナ尾根経由で奥多摩湖バス停方面へ下山という当初計画だったが、週末にいたって天候急変で昨夜は雨。きょうも雨はあがったとは言え、あいにくの曇り空。青梅線車中から見る奥多摩の山々はいずれも雲霧仁左衛門顔。

   奥多摩駅に定刻30分前に着き、ホリデー快速の到着を待つが、天候が影響したのか、来着したきょうの仲間は村谷氏のみ。参加予定と聞いていた清水氏は直前に都合で参加不可能とのメール連絡があった由。「さて、どうするか?」と9時半発のバスに乗り込むが、相談の結果、昨夜までの雨による下山路の厳しさを勘案して、予備コースとして考えていた「奥多摩むかしみち(氷川〜惣岳渓谷〜奥多摩湖手前)」ウォークに変更することにする。

   このコースは村谷氏は初めてだそうだが小生は予ねて妻と歩いたことがあり、奥多摩湖の1つ手前の「水根バス停」で下車。そこまでは、トンネルを幾つ抜けただろう。小河内以西の隔絶されていた昔が偲ばれるが、大麦代トンネル入口右側の水根沢に沿ったところにある「奥多摩むかしみち入口」標識前で記念撮影して、急坂の車道を登り始める。

   この「奥多摩むかしみち」は氷川から小河内に達する旧青梅街道だそうで、大菩薩を越えて甲府に至る甲州裏街道−−−甲州街道より8km程近道だったらしい(現在の青梅街道は明治11年開通)。蛇行する多摩川に沿っての道であり、現在の青梅街道はその上部山腹をトンネルで繋いで短縮している。

   昔、小河内の生活は塩山との交易で支えられていて、大菩薩の無人小屋で物々交換をしていたが一度も間違いはなかったと案内書に書いてある。その後、小河内の物産は氷川への厳しい14キロの山道を避けて、20キロあっても歩きやすい五日市へと風張峠や浅間尾根・本宿を通って運ばれて生活物資に変えられていたが、明治32年に小河内・氷川間に比較的平坦な山腹を通る道に改修され道のりも10キロに短縮されたため、交易ルートが五日市から氷川へと変わり、これ以降木炭の生産が飛躍的に増加したそうである。(その痕跡かどうか、今は廃線となった鉄道のレール跡があり、そこを「踏切がないなあ」などと駄洒落ながら横断した)

   その後も氷川への道はたびたび改修され、生活の道になったのは大正から昭和に入ってからだという。その後、昭和13年に氷川〜西久保(ダムの手前下)間にダム建設用として造られた道路が昭和20年に一般道として開放されて現在の国道411号線になった由。

   さて、3段式のストックをのばして坂を登りはじめ、間もなく右上方向へと右折。金木犀と思われる甘い香りの中、陶酔気分で心地よく歩を進めるが、なかなかの傾斜面である。結構高い地点まで上がって行くと、右側の眼下に奥多摩湖とセットになった山並みが美しい全貌を現す。道の脇には、民家が点在するが廃墟と化した古家も多く、往時の繁栄との落差を見せつけられるようだ。路端には朝顔や名も知らぬ美しい花々が秋化粧で妍を競っていたりする。足元はやさしい感触の落ち葉につつまれていたり、岩や石の道だったりと変化に富み、眼下に見える川底からのそよ風が心地よい。栗のイガがあちらこちらに散らばっているが、さすがに中身は入っていない。羽黒坂という所では、綺麗に化粧されたような石畳の風流な道もあった。

 曇天とは言えきょうは日曜日。奥多摩氷川入り口からのハイカーと盛んにすれ違う。惣岳渓谷の吊り橋で揺られたり、往時の馬の水のみ場や牛頭観音・虫歯地蔵・玉堂歌碑・耳神様・弁慶の腕抜き岩・都指定天然記念物の石灰岩の大岩壁が斜めに覆い被さった白髭神社・槐木の大樹等々を見ながら、所々で記念写真をしながら氷川側へとアップダウンの昔道を楽しみながら歩いた。今日の標高最高点は600m、最低点は330mで、意外な感なきにしもあらず。

   前回もそうだったが、このコースは昼食に適した場所が無く、初めて妻と歩いたときに昼食場所とした路傍の空き地で、靴を脱ぎ、大休止。ビールや村谷氏持参の銘酒、枝豆、乾き物など、いつに代わらぬパターンである。

   奥多摩駅近くの氷川大橋あたりまで来たところで曇天が遂に泣き出し始めるが、日頃から行いと運の良い我らは余裕で奥多摩駅舎に滑り込む。ダイヤを確認すると列車は7分後。朝、奥多摩土産にと目を付けていたものを妻への土産に買い、出発した青梅行きに乗ったととたんに雨が本格的に降り出す。、神仏に感謝するや大。打ち上げは改札口直行で行ける立川駅グランデュオ6Fの「藩」で軽く行う。紅葉狩り催行パターンその他今後の打合せということで喉を湿し、次の機会には今日の続きとなる「鳩ノ巣渓谷」歩きをやろうなどと言いながら解散。帰宅すると、大相撲中。早速風呂に入りながら魁皇の優勝場面に大拍手、快哉。