種イモの増殖と栽培の概要

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PVY普通系統によるモザイク病  PVYーT系統によるモザイク病  X,S,Mによるモザイク病  黄班と紫染萎黄病  葉巻病  ジャガイモの細菌病   ジャガイモの菌類病  塊茎の病障害  アブラムシと吸汁

     目        次

種イモ(採種)とその栽培

I 章 種イモ増殖、生産方法>

1 増殖体系と無病基本種の増殖(増殖体系、生長点培養、試験管苗増殖、マイクロチューバー生産、ミニチューバー、ハウスチューバーの生産、小イモの貯蔵)
2 種イモの増殖、生産(基本種の増殖、基本種、原原種ほ場の生産)
3 原、採種ほの生産
4 種子ほ場における種ジャガイモの検査


II 章 種イモ(採種)栽培法

1 栽培の基本 (栽培、植付設計)
2 種イモの貯蔵と予措(種イモの貯蔵法、種イモの消毒、使用器具の消毒、発芽促進と浴光育芽、種イモの切断)
3 植付け(植付時期、肥料、植付け株数、殺虫剤の土壌施用と土壌消毒、覆土)
4 生育中の管理(中耕、培土、病株抜取と方法、薬剤の散布、茎葉処理、掘取り、選別
5 収穫、選別

III 章 病害虫の予防、防除法

1 種イモ伝染性病害
2 ウイルス病の見分け方(葉巻病と萎黄病、モザイク(れん葉)とえそ症状、黄斑症状)
3 ウイルス病の予防(ウイルスの伝染法、アブラムシ伝染するウイルス病の予防、接触伝染するウイルス病の予防)
4 細菌病の見分け方と防除 (細菌病の見分け方、細菌病の防除)
5 菌類病の防除 (主として地上部を侵す病気、主としてイモを侵す病気)
6 アブラムシの発生と防除(アブラムシの種類、発生消長、薬剤防除)
7 センチュウと害虫の発生と防除(センチュウ類、害虫類)
8 整理障害と要素欠乏症(生理障害、要素欠乏症状)

種イモ栽培の写真

  • PVY普通系統によるモザイク病
  • PVYーT系統によるモザイク病
  • X,S,Mによるモザイク病
  • 黄班と紫染萎黄病
  • 葉巻病
  • 検定植物の病徴
  • アブラムシと吸汁
  • ジャガイモの細菌病
  • ジャガイモの菌類病
  • 塊茎の病障害
  • 検定と増殖
  • 採種栽培の主要作業


  •   

    種イモ(採種)とその栽培

             

    ジャガイモの種イモは繰り返し栽培すると、徐々に収量が減じる退化現象を生じることは古くから知られていた。今から百年ほど前に、この原因はある種の病気(ウイルス病)が代々イモに受け継がれて生じることが判明した。これ以降、ヨ−ロッパやアメリカではウィルス病や種イモ伝染性の病気(黒あし病など)を防いで活力ある種イモの栽培が行なわれるようになった。これが種イモ(採種)栽培の初めである。わが国では1930年代から国の補助事業で採種がはじまり、1947年からは国営の無病原原種の生産と1950年からは植物防疫官による原、採種ほの病害の検査が始まり、わが国の組織的な種イモ(採種)生産が開始された。
      種イモ(採種)栽培はこのように病気を防いで活力ある種イモを作ることにあるから、品種の特性を備えていることはもちろん、病気(ウイルス等のイモの内部に潜む病気)を持たない、適当な大きさで、生理的にも丈夫な芽を出すものを作る必要がある。
      ジャガイモはイモ(塊茎)が種として用いられ、種子の増殖率が8〜10倍と低い特殊性から公的な増殖体系が組織されるのが一般的である。さらに、種イモの品質は内部に潜む病気により決まり、いもの外見を見ただけでは、まったく病気を判定できないことにより、公的な検査機関による公正な検査を行ない、保証して販売されている。よって、種イモ生産は無病のために各種の技術が駆使されることより、一般に流通している食用や加工用等のジャガイモより生産費は割高となる。
      どの国においても、ジャガイモを生産し始めた頃は、種イモが繰り返し使用されたため、退化により単位面積当りの収量は年々減少するのが見られた。これらの国においては種イモの増殖体系の組織が機能して、活力ある種子の供給が増すにつれ、単位面積当りの収量は増加している。このようにジャガイモ栽培は種半作と言われるように良い種を正しく用いることにより満足できる収穫が期待されるのである。

     本書は、今後の新しい種イモ(採種)栽培技術の指針となることを願って、「ジャガイモの採種栽培技術」 をもとに概論として書き改めたものであり、I章では現在の種イモの増殖、生産の概要を述べ、II章では無病で粒そろいの良い種イモ(採種)栽培技術の実際を述べ、III 章では種イモ栽培に必要なウイルス病を中心にした病害虫の概説を行なった。 なお、一般的な栽培技術や病害虫の詳細については他の成書を参考にされたい。本書では作物名に馬鈴しょではなくジャガイモを用いた。



    I 章  種イモの増殖、生産

    1 増殖体系と無病基本種の増殖

     1)増殖体系

    (1) 系統の増殖

     いかに良い品種ができ、農家、消費者に期待されたとしても種子の増殖がうまく行かないと急速には普及しない。これはジャガイモの種イモの増殖率が8〜10倍程度低いためである。
      一般的な系統の増殖については次に示すように、無病の植物を作ることから出発したとき、ガラス室、網室等施設の規模にもよるが、一般栽培の種イモ(採種)にいたるまでには少なくとも6〜7作(代)を要することになり、現在普及している品種では4〜5年〈4〜5代〉を経て種イモになる。それ故、わが国では増殖の初期段階の原原種までは独立行政法人種苗管理センターにおいて増殖、生産が行なわれている。一方、このような増殖期間の長さは、新品種の急速普及を妨げることになっている。

      * 一般系統の増殖体系 

      新品種の導入ーー生長点培養による無毒化ー母本保存ー1〜2年目、試験管苗増殖=ミニチューバー(温室内水耕、溶液栽培、基本種子)ーー(普及品種増殖開始)ーー3年目、網掛け栽培(基本種)ーー4年目、原原種栽培 
      ーー5年目原種栽培(採種道、県=組合委託、植物防疫官検査)ーー6年目、採種栽培(採種組合=農家委託、植物防疫官検査〉ーー 一般栽培 

     (2) 民間の増殖

      最近、平成11年より、マイクロチューバー(MT)を用いた種イモの増殖が上述の系統増殖以外で試験的に行えるようになった。また、平成18年より組織培養体から生産したハウスチューバー(HT)を用いて増殖する方法が認められるようになった。これらの増殖の概要は以下に示したような体系で実施される。この増殖方法は増殖年月が短いため新品種等の急速増殖に利用されると考えられる。

     * 組織培養体から作出した種馬鈴しょの増殖体系

    新品種の導入ーー生長点培養による無毒化ーー母本ーー1年目、試験管苗増殖ーー2年目、MT(培養器内)、HT(G0、ハウス内)、植物防疫官検査ーー3年目、ほ場栽培(G1=原原種相当)、植物防疫官検査)ーー4〜5年目、原種、採種栽培=農家委託、植物防疫官検査ーー一般栽培

     2) 生長点培養(茎頂培養)

      無病化の方法は、全身感染するウイルスをフリーにすることから始める。新品種等で全株がウイルスに感染している場合、無病化(ウイルスフリー化)を行なうが、その方法(生長点培養、茎頂培養)の概要は次のとおりである。
      生長点(茎頂)の切りだし方法は、芽の出始めたジャガイモ塊茎を水洗いして、サラシ粉かアンチホルミンで消毒し、散乱光の入る場所に置くと数週間後に芽が出る。これが2〜3cmに伸びた頃に、取りだし、クリーンベンチ内で、実体顕微鏡を使い、無菌的に生長点(0.2〜1 mm)を取りだす。
      培養方法は、切り出した芽を試験管内の培養基(BarkerまたはMS培地、ショ糖2〜3%、寒天濃度0.3〜0.6%)上において培養(比較的高い温度、光終日照射条件下)する。培養後半年〜1年もすると数センチの植物体に育ってくる。写真90参照
     無病検査の方法は、エライザ法、指標植物への汁液接種などにより、ウイルス等の無病が確認できれば、以下の方法(試験管の中)で増殖する。

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     3) 試験管内苗増殖

      一般的にはマイクロカッテングによる増殖が行われるが、概要は次のとおりである。

     試験管内で育った植物をまず、節ごとに切り取り(節分割法)、別の容器に入れて培養する。これは試験管内さし木法(マイクロカッテング)と言われるもので培養2〜3週間で数cmの植物となる。以後は節分割を繰り返して増殖する。別に数センチの植物を切り取り、頂芽優勢性をなくするために横にして培養基上に置く方法(取り木法)もある。この取り木を繰り返しても植物を増殖できる。
      培養方法は、どちらもMS培地の低濃度ショ糖(3%)を用い、光(16時間以上〜終日)を照射し、比較的高い温度(20〜24C)条件下で液体培養する。
    試験管内で植物を貯蔵するには、培地と光条件は同じで、温度を10℃にすると、半年程度は可能である。
      増殖した植物、苗はマイクロチューバー生産はイモ形成用の培地で培養し、温室、網室などでのミニチューバーやハウスチューバー用には水耕栽培や消毒培養土(砂や人口培養土)にさし木写真92参照してミニチューバー(ハウスチューバー)とし、基本種とする。
      いづずれにしても苗増殖は増殖体系の基本となるものであるから、施設、培養中の無菌的な取り扱いには十分な配慮するとともに定期的な検査を実施して病害虫のフリー化に努めなければならない。

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        4) マイクロチューバー生産

        試験管内等人工容器でイモ(小塊茎、マイクロチューバー)を作るには、上述の増殖培養で伸びた植物体を用い、培養条件を高濃度ショ糖(6〜8%)培地、光制限(暗黒または8時間以内)、比較的低温(15〜20度)条件で液体培養を行なうと8〜10週でマイクロチューバーが形成される。
      また、増殖培養(ショ糖3%)で伸びた植物に、イモ形成培地(液体、高濃度ショ糖=6〜8%)を入れ替え、光制限、比較的低温の条件を与えて、5〜7週間で、同様にマイクロチューバーが形成される。写真91参照 マイクロチューバーは企業的にも生産されつつあるが、種子が数gと小さく、輸送や貯蔵には便利であるが、人工的な培養植物であることからやや貯蔵性が劣り、植えたときの萌芽は不揃いのことが多い。

      5) ミニチューバー、ハウスチューバーの生産

       通常は、ウイルスフリーにした新品種等は組織培養でマイクロカッテングで増殖し、その苗をウイルスの媒介虫等から保護した温室またはビニールハウス、網室(簡易網ハウス)の中で消毒培養土に挿し木するか水溶液に移植するかを行ない、ミニチューバー、ハウスチューバー生産を行う。日本での方法は以下に示すとおりである。

     (1)種苗管理センター
         最近種苗管理センターにおいて実施されている方法は、ガラス室で水耕栽培、溶液栽培さらに消毒培養土を用いた密植栽培でミニチューバーを作り、これを基本種子としている。

     (2)民間
         民間で行われているハウスチューバー(ミニチューバー)生産方法は、マイクロカッテングで増殖した苗をガラス室や網室内の人工培養土にさし木し、3ヶ月育て、ハウスチューバー(5〜30g)をu当たり3〜4kg(約150個)を生産している。

       このように、ウイルスフリーの苗の増殖とミニチューバーの生産施設があれば、比較的簡単に無病の基本種が生産できる。

      6) 小イモの貯蔵

      ミニチューバー(ハウスチューバー、5〜30g)と試験管内生産のマイクロチューバー(数g)はいずれも、イモ(塊茎)であるから、休眠が存在する。これらのイモは基本種として、網室等で繰り返し栽培が行なわれるが、その場合、4〜6ヶ月程度の休眠期間、それに3カ月程度の生育期間が必要であり、1サイクルは7〜9ヶ月以上となる。
      小イモの貯蔵方法は、選別し、適当な容器に入れ、徐々に温度を下げ、最終的には温度1〜2℃、湿度90%以上で保存する。この条件下では最長10ヶ月は実用的に保存できる。以上4)〜6)の生産、貯蔵に当たっては、病害虫の進入防止対策はもちろん、定期的な検査を実施して無病の基本種を生産しなければならない。

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    2 種イモの増殖、生産


        1) 基本種の増殖

      わが国で、新品種は独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター バレイショ栽培技術研究チーム(バレイショ育種グループ)、北海道北見農業試験場および長崎県農業試験場(愛野馬鈴薯支場)で作られる。また、民間(ホクレン、カルビーポテト)でも新品種の育成が行われている。その他、増殖に必要な品種はウイルスの検査でウイルス保毒と認められると、1項で述べた方法により無毒化され、増殖される。
      原原種を生産する種苗管理センターの農場(北海道中央(後志)、胆振、十勝ー以上北海道、上北ー青森県、嬬恋ー群馬県、雲仙ー長崎県)では、採種計画に従い、無病化を行ない、基本種を生産し、原原種にまで増殖する。   現在、普及している男爵薯、メークインなどの品種の増殖は、アブラムシ等の媒介虫を防ぐ網室増殖からはじまるが、これらは前年度収穫された網室産のものを冬の間に検査(個別検定)して、無病のものが植えられる。最近ではミニチューバー(ハウスチューバー)が基本種子となり、ほ場増殖され始めている。
      このように、わが国においては種苗管理センター、農場の培養室、ガラス室や網室が種子増殖の出発点となっている。このため、媒介虫の侵入防止、土壌消毒等病害虫の防除とウイルス病等の検査は徹底的に行なわれている。
      さらに、基本種、原原種については次に述べる主要検定、検査法並びに主要病害防除技術を駆使して無病健全な種イモの生産を行っている。
      種苗管理センターにおいては、種馬鈴しょの検査が行われ、植物防疫法第16条第2号の規定に基づき、農林水産大臣の定める基準により、原原種生産までの増殖のすべての段階においてセンター自らが実施している。

       2) 基本ほ、原原種ほ場の生産

        ガラス室や網室で生産された基本種子(ミニ又はハウスチューバー)は次作に基本ほ場に植付けられる。ここは野外であり、ウイルス媒介虫の対策として、現在は網かけ(べたがけ)栽培が主流である。この方法の概要は、早期培土を多めにして媒介虫から保護するため4〜8畦毎に網(寒冷沙、パオパオ等)をイモの上に直接べたがけするもので、その後の管理は網の上からの薬剤散布のみを行なうものである。さらに基本種IIを栽培する場合は基本ほ場から生産した種イモを冬期間に次に述べる個別検定して植えつける。ほ場での栽培は網掛けしないが基本種に準じる方法で行われている。
      原原種の増殖は面積が広いので各種の種イモ専用の栽培技術が必要になる。すなわち、生産量の安定化とともにウイルス病等の感染を防ぐなどの採種栽培技術の基本全てを駆使して栽培される。
      基本種、原原種を生産するに用いられる主要病害検定(査)方法とほ場での主要病害虫防除技術は、次に挙げた通りである。

    (1)主要検定(査)法

     1:肉眼判別法:ほ場での病株抜取、イモの選別等の肉眼のよる判別、全ての増殖段階に利用
     2:血清検定:エライザ法やスライド反応法など抗血清を用いたウイルス検査方法、基本種段階および抜取等病気の判定に利用
     3:接種検定法:汁液でうつるウイルス病の指標植物への、こすりつけ接種による判別方法、基本種段階および抜取等の病気の判定に利用(写真41〜48参照
     4:電子顕微鏡検定:電子顕微鏡で観察してウイルスを検出する方法、網室用基本種 および抜取等の病気判定に利用
      5:個別検定:種イモの1芽を取り、冬に温室の中で育て病気を検査する方法、(写真82〜84参照)ほ場産基本種および原原種の品質検査に利用、1、2、3、4も併用
     6:細菌病検定:輪腐病のグラム染色検定と黒あし病の培養検定、(写真85〜87参照
     7:遺伝子診断:ウイルス等の遺伝子をPCR法で検出、イモからの検出も可能である。

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    (2) 主要病害防除技術

     1:病害侵入防止:ジャガイモシストセンチュウと輪腐病の等の侵入防止対策
     2:無病基本種の増殖:ウイルスの無毒化と試験管内増殖、さし木等急速増殖技術の利用
     3:網室、網かけ栽培:基本種のウイルス病媒介虫からの保護対策
     4:塊茎単位栽培:抜取等ウイルス病防除対策(写真96
     5:種イモの浴光催芽処理の実施:早熟栽培、規格内品の生産対策(写真93〜94
     6:種イモおよび切断刀消毒:種イモに付着する病気および輪腐病の防除対策
     7:早期植付けの実施:早熟栽培、茎葉処理対策
     8:早期病株の病株抜取:萌芽期からの病株、野良ばえイモの抜取の実施
     9:媒介虫、その他病虫害の防除:アブラムシを中心に疫病等の防除の徹底(写真98
    10:媒介虫の発生予察と茎葉処理:媒介虫の飛来ピーク時の予察、茎葉処理時期の決定並びに処理の実施

       原原種ほ場栽培においては、網をかぶせて無病で保ってきた基本種を出来るだけ退化の原因となるウイルス病等から守るためには予防措置を十分に講じて増殖しなければならない。それには媒介虫(アブラムシ)対策がもっとも重要である。
     アブラムシの徹底防除を行ない、かつ発生消長をよく確かめ、もし可能なら、発生のピークを避ける栽培を行なう必要がある。北海道、青森、群馬、長野の農場においては生育後期に一般のジャガイモほ場から飛来するウイルス保毒アブラムシに対して、早熟栽培と茎葉処理を組み合わせた早期植付けの計画が望まれる。
      植付けは、栽埴密度を考慮して塊茎単位に行なわれ、生育中は媒介虫、その他病害に対しての薬剤散布、早期の病株の抜取を行ない、除草、培土等の耕種管理も十分に行ない品質、収量の確保をはかる。生育後期に茎葉処理が必要な場合にはアブラムシの発生消長を見てから適期に処理する。
    主要作業、収穫(写真100))は茎葉処理後2週間後から始め、十分な仮貯蔵後に、選別して出荷する。

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    3 原、採種の生産

       原原種を種にして道、県が経営して原種栽培が行なわれる。現在では採種を含めて、採種組合(農家)へ委託されている。わが国における原、採種の検疫(種ジャガイモ検査)指定の道、県は、北海道、青森、岩手、福島、山梨、群馬、長野、岡山、広島、熊本および長崎県の11である。
     これらの地域における原、採種の栽培に当たっては次項で述べる国の植物防疫官の病気の検査を受け、これに合格したもののみが、種イモとして他の都道府県への移出ができることになっている。
     原、採種ほの栽培方法は、原則としては次項(5)で述べる種ジャガイモの検査に合格することにあるが、原原種の項目で述べた病虫害防除技術の4〜10項を行なうことが望ましい。なお、詳しくは本書II章の種イモ(採種)栽培法を参照されたい。

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      4 種子ほにおける種ジャガイモ検査(通常検査)


        1)検査対象病害虫

      病気としては、ジャガイモのウイルス、輪腐病菌、青枯病菌、疫病菌、黒あざ病菌、そうか病菌、粉状そうか病菌、それにジャガイモガとジャガイモシストセンチュウである。

      2)検査の方法

       (1) 使用予定ジャガイモの検査(書類)

       系統的に増殖されたもの、あるいは防疫官が適当と認めたものであること

       (2) 植付け予定ほ場検査

      ジャガイモシストセンチュウの検査として、発生地域にあっては土壌検診される。  ほ場がジャガイモのウイルス病に罹病しているナス科植物から5m以上離れていること(障壁の設けられている場合はこの限りではない)およびアブラムシの寄主植物が間混作されていないこと。

       (3) ほ場検査(2〜3回)

      春作では、第1期が萌芽15cmの頃、第2期が着蕾から開花期まで、第3期が落花後20日頃の3回あり、秋作では、第1期が萌芽20日頃、第2期が道30日頃の2回である。  ほ場検査では、ジャガイモシストセンチュウの付着がないこと、ウイルス、異常株および青枯病を認めないこと、全生育期関を通じて輪腐病の発生がまったくないこと、疫病および黒あざ病株が著しいものが10%をを超えないこと、ウイルスを媒介するアブラムシ等の発生が軽微であること、野良ばえイモ、異品種が目立たないこと、雑草繁茂や茎葉損傷で検査不能でないこと、などが検査される。このうち、ウイルス病株は0.1〜0.2%の残存しても合格と判定されるが、抜取でなくするのが望ましい。

       (4) 生産物検査

     収穫して仮貯蔵した後、輸送、配布前にイモの検査が行なわれる。ここでは、ジャガイモガの被害がないこと、ジャガイモシストセンチュウの付着しないこと、そうか病、粉状そうか病、黒あざ病および疫病の被害の軽微なものの合計が10%を超えないこと、鍬等の傷、有害動物等の被害イモが混入していないこと、などが検査される。

       3) 検査結果

    以上の全ての検査に合格したものが合格証を付して種イモとして出回ることとなっている.

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    II 章  種イモ(採種)栽培法

     

    1 栽培の基本


      種イモの栽培は、第一に退化(減収)の原因であるイモ(塊茎)に保有されるウイルスを主体とする病害虫を防除し、萌芽力が強い種イモを生産することにある。
    これに加えるに、適度の大きさのものを安定して生産することもまた大切である。ここで農家が一般に用いる種イモ(採種)の大きさについて考えてみると、作業性、収量性ともに考慮すると、小粒で切断しないものが最も良いが、2つ割も十分に利用できるので、全粒(30〜60グラム)〜2つ割(60〜120グラム)の大きさを生産するのが基本となろう。将来的には、無切断の全粒種イモを生産するような栽培技術を確立しなければならない。
      このために、採種栽培においてはイモ数を多く収穫する栽培を行う必要がある。イモ数は単位面積あたりの茎が確保されていることが前提であり、u当たり25本以上(10a当たり25,000本以上=茎密度と呼ぶ)の茎数が望ましい。これには種イモの貯蔵末期の昇温や適度な育芽等の処理を行ない、大きい種イモを用いて種イモ当たりの茎数を増し、適当な栽植密度で栽培を行う必要がある。

     本章ではこれら病害虫防除技術と30〜120gで粒揃いのよい完熟イモの安定生産技術とを融合した種イモ栽培技術について考えてみたい。

      1つ目は土壌病害対策として、イネ科などを加えた4年の輪作並びにジャガイモシストセンチュウの未発生ほ場での栽培が望まれる。

      2つ目は、種イモほ場は病源が多いと考えられる一般のジャガイモ(他のナス科等)からアブラムシによるウイルス感染から隔離する必要があり、これは可能な限り離れることが望ましい。

      3つ目は、ウイルス感染からの回避である。種イモ栽培では、アブラムシ伝染性のウイルス病予防対策はもっとも重要であり、種イモほ場内の予防対策として抜取等により病源の除去および薬剤による媒介虫の駆除は徹底しなければならない。しかしながら、種イモ栽培はこれらを完全に行なったとしても、ほ場の外から飛来して来るウイルス保毒アブラムシによる感染には効果がない。これを防ぐには、これらの虫の飛来最盛期(主として生育後期)に茎葉処理をして飛来虫によるウイルス感染(種イモへの感染)から回避するのが一番有効な方法である。このため、北海道や本州高冷地では100日程度の早熟栽培をして、アブラムシ飛来最盛期の茎葉処理に耐えうる栽培計画を行なう必要がある。

      4つ目は、小粒で揃いのよい種イモの安定生産対策としては、次に図示したような規格内イモ(全粒や2つ割できるもの)の増産を図ることが重要である。将来的にはすべて全粒が望ましい。これには一般栽培に見られるような生育期間延長(大イモ)による多収穫は望めず、単位面積あたりの主茎数(茎密度)を増やし、イモ数を確保して収量を上げる栽培技術が望まれる。以上を考慮して、植付け前に栽培設計を立てることが重要である。

                     規格内イモの収量構成図

                   種 子 規 格 内 い も の 収 量

                    ↑                 ↑ 
    単位面積当りのイモ数                   1個イモ重
                ↑                      ↑
    単位面積当りの主茎数:主茎当りのイモ数(品種等)  生育期間、イモ肥大率
       ↑                                 ↑
    単位面積当りの萌芽数、                    施肥設計
       ↑                                 ↑
    種イモの芽数:栽植密度               地力、土性 ↑ 気候
       ↑ 種イモの大きさ、育芽 



       1) 栽培(植付)設計

      最初に以下に述べる項目を考慮して種イモの栽培、植付設計を立てる必要がある。
      (1)貯蔵末期の種イモ処理:比較的大イモを選び、昇温処理等を考え、種イモの令を進ませ、早期萌芽と萌芽茎数を増やす。
     (2)浴光育芽の実施:植付け2〜4週間前から行なう。(1〜2)によりイモ当り4本以上の萌芽茎数を確保する。
     (3)早植えの実施:遅霜を考慮して出来るだけ早植えする。
     (4)ほ場の位置:4年の輪作と一般ジャガイモやナス科植物との隔離を考える。
     (5)栽埴密度の設定:主茎数が u当たり25本以上(10a当たり25,000本以上)となるよう 種イモの大きさ、育芽を考慮して栽埴密度を決める。
     (6)肥料の設定:早熟栽培となるので窒素質肥料は、一般の栽培基準より10〜20%程度減じる。
     (7)植付け方法:全粒を基本とするが、切断の場合は塊茎単位に浅植えして萌芽を早める。
     (8)病株の抜取:ーウイルス病を中心に抜取は早期に確実に行なう
     (9)培土:早目に十分に行なう。
     (10)殺虫剤:土壌施用粒剤を植付け期に、茎葉散布剤を適期散布する。
     (11)茎葉処理:アブラムシの動向を調べ、飛来急増時には茎葉を処理する。


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    2 種イモの貯蔵と予措

       1) 種イモの貯蔵法

        入手した種イモは袋から出し、1〜2日風乾、選別後貯蔵する。貯蔵法は秋に受け取った場合は、施設貯蔵庫または路地貯蔵される。温度調節等ができる貯蔵庫では温度2〜4℃、湿度90〜95%が望ましい条件であるが、路地または調節のない施設貯蔵の場合は春先になり、温度が上昇すると芽が伸びる。一般に、種イモとして栽培されたものは、前年には茎葉処理等で早期収穫されているため、温度調節のできる貯蔵庫以外は貯蔵末期には休眠明けの状態となり、芽が出ていることが多い。種イモは出来るだけ大きく、イモ当り4本以上の萌芽数(主茎数)を確保するように、発芽促進、育芽を行なう。発芽促進処理として、種子栽培の先進地オランダでは、イモ当りの主茎数増加と早熟を狙って発芽促進貯蔵法が行われているが、その方法は浴光育芽の項で述べる。

     2) 種イモの消毒

      種イモ栽培に用いる種イモは全てを消毒する。消毒は出来るだけ未萌芽の種イモに行なう。しかし、発芽促進を行った後の消毒も畑での茎数に影響は見られないので以下の浴光育芽の前に行っても良い。また秋消毒で済ませる方法も良い。
    主要対象病害は黒あざ病、黒あし病、そうか病であるが、同薬剤でその他いくつかの菌類病、細菌病にも効果がある。目に見える病害は選別で除かれているので、目で見えないような小さな病斑等に対して薬剤による消毒を行なう。

     (1) 浸漬法

      黒あし病、そうか病、黒あざ病の3病害に対しては、アタッキン水和剤(商品名)の40〜60倍液の瞬間浸漬がある。本剤はもっともー般的に使用される。
    黒あざ病、そうか病の2病害に対しては、ノットバン水和剤50倍の瞬間浸漬がある。
    黒あし病、そうか病の2病害に対しては、アグリマイシン水和剤40〜100倍液の瞬間浸漬がある。
    黒あざ病に対しては、バリダシン液剤、100倍液、バシタック水和剤75、60〜100倍液5〜10秒、モンカット水和剤50、100〜200倍液、モンセレン水和剤、50〜100倍液の浸漬法がある。
    そうか病に対しては、銅ストマイ水和剤100倍液、瞬間浸漬、アグレプト水和剤60〜100倍液、瞬間浸漬がある。

     (2) 粉衣法

      黒あざ病に対してはバリダシン粉剤DL、ベンレート水和剤、モンカット粉剤を用いて、20Kgの種イモ当り60g(0.3%)をよく混合する。

     3) 使用器具の消毒

       黒あし病、そうか病、乾腐病対策として、ミニコンテナ等の容器、器具類は、アンチジャーム20(塩化ベンザルコニウム、20%)の250倍液かケミクロンG(中性次亜塩素酸カルシウム、70%)1,000倍液の中に瞬間的に浸漬する。

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     4) 発芽促進と浴光育芽

      オランダで行われている促進法を改良したものおよび浴光育芽法は以下に述べるとおりである。

       昇温処理:

     施設貯蔵で、貯蔵末期(植付け約1ヶ月半前)に、イモが全く発芽していないか頂芽のみ発芽の場合には、急速に温度を15〜20℃に1〜2週間上げる発芽促進処理(個人的にヒートショックと呼んでいる=頂芽優勢を弱めることができる)を行ない、芽を一斉に出させる。処理終了後は速やかに次の浴光育芽を行う。

       浴光育芽法:

     採種栽培のための浴光育芽は畑での萌芽を早く一斉にするため、一般の場合より芽が伸びても良い。上述の貯蔵末期に昇温処理をしたもので、数カ所の目から数ミリの芽が出ている状態であれば、浴光育芽は短いかくても良い。しかし、植付けまでの期間があるものについては十分な浴光育芽を行なう。浴光育芽により芽は伸びないで、濃緑の葉が形成され、良好な萌芽状態となる。
     方法は、植付け2〜4週間前から、イモをミニコンテナ、箱、網袋等に入れ、ビニールハウス、庭先、倉庫の窓際などの散乱光下で浴光処理を行なう。温度条件は10℃程度が好ましいが、昼間は20℃以上、夜は凍らないように管理する。実際には低温で長い方が良い。ハウスでは高温になり空気の流通が悪いと黒色心腐病が出ることがあるので、換気には十分注意する。

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     5) 種イモの切断

      種イモは切断しないのが理想であり、これらのものを生産することを心がける必要がある。 しかし、一般栽培においては、当面は全粒と2分の1切りを用いての栽培が行われるであろう。  種イモ栽培においては前にも述べたとおり、イモ当たりの茎数を多くする必要があることか ら、1片の大きさを大きくする必要がある。この場合、全粒では30〜60g、60g以上は2つ割 とする。切断にあたっては病害の伝染を防ぐために切断刀の消毒を行ない、塊茎単位栽埴を行 なうために1個のイモは切り放さない。作業場は換気ができる場所を選ぶ。

      (1)塊茎単位切断の方法

      平らな木板に8cm程度の空間をあけて、高さ約2cm、幅約4cmの木板を2枚置き、この間でイモを切る。イモの頂部(目の集まっている方)を上にして切ると下の方2cmぐらい未切断部分ができる。こうすれば切断後もばらばらにならない。植えるときには手で切り放して、兄弟を並べて植える。

      (2)切断刀の消毒法

      ケミクロンG(中性次亜塩素酸カルシウム20%)の10倍液の中に刀を5秒ほど浸して消毒する。薬液は5?程度入る縦長のバケツに入れ、刀は2〜3本用意し、刀の部分が浸漬するようにして、刀を交換して交互に切断する。液が足りなくなれば補充する。液は塩素臭が強いので、予め屋外で調整し、また作業は空気の流通の良いところで行なう。

     6) 種イモの切断(不要の理由)

      従来は、大イモは塊茎単位とするため切断され、これを塊茎単位に植えてきた。今後、植付けをカッテングプランターで行うことになれば、機械的に2つ割りは連続して塊茎単位に植わるので切断は不要となる。
      この場合、塊茎単位とする理由の最大の目的であるほ場での病株の抜き取りは、病株を中心に前後3株を除去すれば塊茎単位に抜き取られたことになる。
      なお、植え付け時に機械的に種イモを切断する場合、従来から懸念される輪腐病(黒あし病)の伝染に対しては、種イモの前の世代において十分無病が証明されることが必要である。

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     3 植付け


       1) 植付け時期

         植付けるほ場はイネ科等を加えた4年輪し、排水の良い場所が望ましい。さらに、種ジャガイモ検査では一般のほ場から5m以上は離れていること(障壁がある場合はこの限りでない)、となっているが、ウイルス防除にはこれ以上の離すことが望まれる。ムギやトウモロコシをほ場の周辺部に植えて媒介虫から回避する(額縁栽培)ことも行なわれる。
      また、生育後期に茎葉処理を前提として栽培される種イモにおいては、なるべく早い植付けが要求される。寒冷地や積雪の多い地帯では融雪剤散布による融雪、穿孔処理による融凍を行ない植付け時期を早めた例がある。しかし、あまり早いと萌芽期に霜害に会う恐れがある。霜害は軽いと回復して問題がないが、強い霜ではかえって遅れるので注意したい。目安は気温が8〜9℃になるころ、一般の植付け時期より1週間以上早く植えたいものである。
      なお、この植付け時期にあわせて育芽など種イモの予措の開始時期を決めなければならないので、植付け時期の決定は重要である。

       2) 肥料

        肥料の施用量は天然供給量、土壌条件、品種等で異なるが、種イモ栽培では早熟栽培を心がけるため、窒素質は一般の生食用、加工用に用いる量の1〜2割減を目安とする。 例えば、10aあたり標準施肥料が成分量で、窒素10Kgとされている地方であれば、8〜9Kg程度を用いると良い。また、栽植密度が高く設定するので、1株当たりの施用肥料は減量する。結果として、生育は一般栽培に比べて草丈はやや低く、生育期間の短くなる分、イモの太りも劣るが、種としての収量(イモ数)はほとんど変わらない。なお、マグネシウム(くど)欠乏が出やすいので4〜5Kg/10アールは必要である。

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       3) 植付け株数(写真96、塊茎単位栽植法

      早熟でしかもイモ数を確保し、規格内歩合を高めたい種イモ栽培では、単位面積あたりの主茎数を増やす(茎密度=10a当たり25,000本以上=u当り25本以上にする)ことが大切である。これには種イモを育芽して用いて、イモ当たりの主茎数を増加することと、植付け株数を増加 して栽埴密度を高めることを組み合わせる必要がある。
     種イモ栽培における植付け株数の決定は、塊茎単位栽埴されるので、特殊な計算方法となる。塊茎単位は次に述べるような方法で行なわれる。単位を12株とし、単位間隔を株間の2倍とした場合の栽植密度は、下表に示すとおりである。畝幅75cm、株間20cm、単位間隔40cmでは10アール当り6,150株となる。この植付け株数から、u 当たり25本以上の主茎を確保するためには、種イモ1個当たり4本以上の主茎を確保しなければならないことになる。このように種イモの大きさや育芽等も考慮に入れ、植付け株数を計算し、確保する。

    12株塊茎単位と10a当りの植付け株数表

    畝幅、株間 15cm    20cm     25cm     30cm 
      65cm  9,460    7,090     5,670    4,730
      70cm  8,780    6,590     5,270    4,390
      75cm  8,200    6,150     4,920    4,100


        塊茎単位栽埴法(図参照): 塊茎単位栽植法は1個のイモを切断して、兄弟を並べて植える方法であり、ウイルス等の病株が並んでいるので抜取やすく、病株が分散していないので伝染源となる機会が減る。抜取で兄弟のうち1株でも発病していると保毒の兄弟全部を抜取れる等の利点がある。
     方法は次図に示すとおり、12株単位の場合は2つ割りは6個を並べて植え、単位間隔は株間の2倍とする。植える時の筋つけ方法は、株間 20cmで12株の場合、幅260cmと単位間隔40cmとに、畦に対して直角に筋をつけるとよい。

         12株塊茎単位植付け図

           2つ割りOOAABBCCDDEE  FFGGHHIIJJKK  L 

           3つ割り000AAABBBCCC  DDDEEEFFFHHH

               I   260cm   I40cmI   260cm   I

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     4) 殺虫剤の土壌施用と土壌消毒

     (1)殺虫剤の土壌施用法

     アブラムシの防除に、植付け時に土壌(まき溝)へ浸透性殺虫剤の粒剤を施用する。薬は根から吸収されて効力を発揮するため、萌芽直後はやや効果が劣るが、以後はアブラムシの寄生は低く押さえることができる。効果は土壌施用(植付け)後2カ月持続する。 施用法は、株当たり1〜2g(10アール当り4〜6Kg)を、通常は肥料に混合してまき溝に均一に施す。
     薬剤は、ジメトエート粒剤、ダイシストン粒剤5、オンコル粒剤5、ガゼット粒剤、アドマイヤー1粒剤、エチメトン粒剤6がある。

      (2) 土壌消毒

     ケラ、コメツキムシ類に対する土壌消毒のは、ダイアジノン粒剤5、エチメトン粒剤6を用い、10a当たり4〜9Kgを畑に全面に散布して土とよく混和するかまき溝に施用する。  そうか病、粉状そうか病などの土壌消毒は、ネビジン粉剤、フロンサイド粉剤を40〜60kg、土壌混和する方法もある。

     5) 覆土

     植付けの深さは浅植えのほうが地温の上昇が早く、萌芽も早いが、乾燥条件下では逆効果となるので、やや深くする。作畦の深さ(種イモの位置)は培土したとき、種イモが畦間の溝の底より上になるように行なう。すなわち、覆土は5cm程度で、覆土後の畦は少し盛り上がるのが良い。  

    4 生育中の管理


       1) 中耕、培土

      植付けから培土の間に雑草が生えやすいので中耕、除草が行なわれる。中耕の効果は土壌を膨軟にし、水分を適度に保ち、空気流通をよくして、肥料の分解を助け、根の発達を促進する効果がある。作業は早目がよい。
     培土(写真97参照)は断熱、緑化イモや腐敗防止、根圏の拡大、保水力増加、生理障害や倒伏防止、雑草抑制、収穫作業の受傷防止等の効果が期待されるので、萌芽後2週間頃(茎長15cm)をめどに大きく、カマボコ型に行なうのが良い。
      最近、植え付け後1週間から萌芽ごろまでにロータリーヒーラー(ロータリーで砕土し、培土する)で行われるようになった。地上部萌芽はやや遅れるが、根の生育が良好なために、開花期には地上部の生育差はなく、収量等にも影響しないので、種栽培には有効な方法である。しかし除草剤が必要になる。

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     2) 病株抜取と方法

     抜取はほ場内の病源を除きウイルス等病害感染を予防する大切な作業である。このため、出来るだけ早く抜取る必要がある。抜取の参考となる病徴、症状については III章の病害の見分け方、写真1〜40を参照されたい。

     抜取方法

      一人が2畦を受けもって歩く。目は前方2〜3mを見ながら、注意深く観察する。加えて抜取のコツは株でも部分を見ないで全体を眺めるようにすることである。さらに前方を眺めながら歩くと、病株は多くの健全株の中で何らかの変異として判別できるものである。モザイクなどは曇天の時に見やすく、また太陽を背にした方が見つけやすい。見つけた病株は全兄弟株(2〜4つ割りの塊茎単位毎)に抜取り、茎葉、新イモ、根、種イモ全てを肥料の空き袋などに入れて密封し、腐らせる。ほ場の中にある野良ばえイモ(伝染源となりやすい)や異品種についても抜取り除去する。

     3) 薬剤の散布

     病害虫防除のための茎葉への薬剤散布(写真98)は、種イモ栽培ではアブラムシやその他害虫に対する殺虫剤および疫病その他菌類に対する殺菌剤である。散布については病害虫の項目を参照されたい。

      (1) アブラムシ、殺虫剤

    植付け時に土壌施用された殺虫剤は2カ月は効果があるが、それ以降、大体着蕾期前ぐらいから茎葉処理直前まで茎葉への散布が必要になる。散布に当たっては使用時期、回数等適正使用基準を守る。薬剤の散布量は10a当たり、初期は60〜90?、中期以後は100〜150?とし、下葉にもかかるように丁寧に散布する。殺虫剤は虫の種類や耐性の関係もあり、2〜3種類をできれば毎週散布が望ましい。

      (2) 殺菌剤

    疫病その他の病気に対しても薬剤散布を行う。疫病については初発生が着蕾期以後であり、薬剤散布もこの頃から開始する。よってアブラムシ防除薬剤と混用されることが多い。散布量は10a当たり90〜150?である。

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    4)茎葉処理

       植付け時からウイルス病等の防除対策を十分に行なった後、開花以後はアブラムシの観察を続け、アブラムシが急増したとき(平年では、北海道の中央部で8月上旬頃、東部で8月中旬頃)、ウイルス病の感染回避策として茎葉処理を行なう。種イモ栽培では処理時期にはジャガイモが黄変初期となるような栽培法が望まれる。

       (1) 時期

      生育後期のアブラムシの急増のピーク時か1週間以内が考えられる。なぜなら、この時期の植物体では感染葉からイモへのウイルス移行時間は約10日を要するからである。

       (2) 方法

      機械切断((写真99参照))が最も良いが、引き抜く、鎌で刈り取るか、または接触性の除草剤を散布して枯死させる。 枯凋薬剤はジクワット液剤(10a当たり100〜200ml)、石灰窒素粉剤、シアノット(水溶剤)、デシカン乳剤が北海道で使われている。いずれも茎葉黄変期に散布する必要がある。

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    5 掘取、選別


       1) 堀取と収納

        茎葉処理時期に早生種は地上部が黄変期に進んだものがある一方、晩生種や生育が遅れたものは生育中である。堀取りはいずれも処理後2週間で始める。堀取りがこれより遅れると、イモに黒あざ病の菌核が付着する。天気の良い日を選んで丁寧に掘取る。
     なお、ごく近くに病気の多いほ場がある場合、端畦や畦頭を除いて収穫するのも一つの方法である。  掘上げたイモは堀取り時に受けた小さな傷をいやすと共に呼吸作用を沈めて完熟に至まで、ミニコンテナ等に入れて、乾燥した風通しの良い暗い場所に収納する。この癒傷期間は2〜3週間である。

     2) 選別

        癒傷期間終了後イモの選別を行なう。大きさは、S=30〜60g(小玉、全粒)、M=60〜120g(中玉、2つ割り)、L=120〜190g(3つ割り以上)とする。
     選別は種馬鈴しょの生産物検査にしたがって行い、イモの表面に病斑、害虫の食害、傷、緑化等のあるものは除く。難しいが内部病斑(大きいのに軽いもの等)や異品種も除ければ万全である。



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    III 章  病害虫の予防、防除法


                            

    1 種イモ伝染性病害

      採種栽培では種イモ伝染性病害の防除が最優先されるが、種イモ伝染性病害とは退化の原因となる種イモを通じて次代に伝(播)染する病気を言う。これは外見上種イモを見ただけでは病気と判断できず、イモを消毒しても治療できないものである。主な種類はウイルス(マイコプラズマ)病であるが、その他に細菌の輪腐病と黒あし病も同様に外見上健全と見えることがあるので、種イモ伝染性とされている。
      ウイルスとは、普通の顕微鏡で見えないほど小さく、生きている細胞でしか増殖できず、成分的には核酸と蛋白質でできているものであるが、ウイルス病は、このウイルスが生物に感染して生じる病気である。ジャガイモは30以上のウイルスに感染するが、イモの表面にはほとんど症状を示さないが、茎葉上にはモザイク、葉巻などの病徴を現わす。そして、多くは生育中の茎葉(塊茎褐色輪紋病のみはイモや根)から感染し、イモを通じて代々伝染(播)する。我国には下表に示したように、マイコプラズマを含めて12種発生している。以下にウイルス病の見分け方および予防法について述べる。

               わが国発生するウイルス病

      病名           ウイルス名                 伝染方法

    Xモザイク病      ジャガイモXウイルス(PVX)         接触伝染
    Sモザイク病      ジャガイモSウイルス (PVS)        接触伝染
    葉巻病         ジャガイモ葉巻病ウイルス (PLRV)    アブラムシ(永続性)伝染
    Yモザイク病      ジャガイモYウイルス (PVY)        アブラムシ(非永続性)伝染
    Aモザイク病      ジャガイモAウイルス (PVA)        アブラムシ(非永続性)伝染
    Mモザイク病      ジャガイモMウイルス (PVM)       アブラムシ(非永続性)伝染 
    黄斑モザイク病    黄斑モザイクウイルス(PAMV)       アブラムシ(非永続性)伝染
    キャリコモザイク病  アルファルファモザイクウイルス(AMV)  アブラムシ(非永続性)伝染
    CMV          キウリモザイクウイルス(CMV)       アブラムシ(非永続性)伝染
    塊茎褐色輪紋病    ジャガイモモップトップウイルス(PMTV)  土壌(粉状そうか病菌)伝染 
    紫染萎黄病       マイコプラズマ様微生物          キマダラヒロヨコバイ伝染
    天狗巣病        マイコプラズマ様微生物           キマダラヒロヨコバイ伝染


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    2 ウイルス病の見分け方


     1) 葉巻病と萎黄病

      (1) 病徴の現れ方(葉巻病参照)

     ジャガイモ葉巻病はジャガイモ葉巻ウイルス(PLRV)によって生じるもので、ウイルスの生息、増殖する部位が、葉でできた養分がイモ(地下部)に流れる管である維管束の篩(し)管部に限られている(写真39)。この結果、養分が流れ難くなり、葉中に澱粉等が蓄積し、葉緑素が壊れ、脈間が退緑、黄化し、葉が上向きに巻き上がる病徴を現わす。
     マイコプラズマによって生ずる紫染萎黄病は、我国でもごく局部的に発生しているが、葉巻病と同様に篩(し)管部に生息、増殖するので病徴は葉巻病より激しいが、よく似ている。

      (2) 生育初期

     葉巻病は萌芽の頃にやや退緑した葉を持つ細い芽が出ることがある。マイコプラズマによる紫染萎黄病も同様であるが、さらに細く、黄色が強い(写真30〜31)。天狗巣病(現在、発生はない)は細い芽を沢山出す(写真32)。種イモが腐った時にも細い芽が出るが、この時は黄色くはならない場合が多い。このように細い芽(繊芽)を出すものは、採種では置いておいても収量は望めないので早目に抜取るようにする。
     萌芽1〜2週間後、上から見て、全体にやや黄色っぽくて、生育が貧弱で、下葉に単葉が目立つものも葉巻病となる確立が高い。
    (写真33)。葉巻病は窒素質が多い場合、この頃にはほとんど症状を現わさない。紫染萎黄病は萌芽時にのみ病徴が現れる。

     (3) 生育中期、後期

     葉巻病は着蕾期頃からは、全体的にやや草丈が低く(節間がやや詰まり)、葉の脈間は退緑、黄化し、下葉の巻上がりは顕著になり、典型的な葉巻病の症状を現わす。抜取るとストロンは、健全より短く、イモも小さい。窒素質が多いと、ごく下葉が巻く程度となるので、下葉に注意して抜取るようにする。生育後期には下葉が枯れ、全体に葉巻、黄化が見られ、激しい葉巻症状となる(写真34)

      (4) 生育中の感染による病徴(第1次病徴)

     葉巻病が萌芽期に感染すると、開花期頃に植物の頂部の葉の基部が着色し、巻上がり、上部は立型症状となり、その後中葉も巻上がり、葉の脈間が退緑して全体に葉巻症状を現わす。着蕾期頃感染では、埴物体上部の着色、巻上がり、立型のみの症状となる。開花以後の感染では当代で病徴を現わさないことが多い(写真35〜37))。
     紫染萎黄病は、葉巻病とほぼ同様の経過をたどるが、進展が早く、より激しく、気中塊茎(イモ)も形成する(写真29)

     (5) 類似症状

     葉巻病と類似症状を示すものに、乾燥や茎の地際の傷による葉巻症状がある。この場合は脈間の退緑は認められないで、全体が淡黄になる。巻き方は、燥では葉全体が茎の傷では葉は基部に強く巻くことが多い。
     生育中に感染した時の症状と似たものには、地際部の茎が傷ついたときに生じる(写真40)が、植物体上部は立型とならないことや茎下部に気中塊茎が生じることで区別できる。

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     2) モザイク(れん葉)とえそ症状

       (1) 病徴の現れ方(PVY普通系統によるモザイク病参照)

     Yモザイク病ージャガイモYウイルス(PVY)により生じ、ウイルスの系統、品種により現れる病徴は差がある。その病徴は大別して、 *:写真1のように、はじめ葉脈がすけ(葉脈透化)て、つぎに葉脈にかかる退緑斑紋が生じ、葉の縮れやねじれが加わるれん葉症状と、 *:写真4のように、はじめ葉の脈にすじ状えそ(ストリーク)が現れ、それが広がり、落葉するえそ症状とがある。

     Yモザイク病はX、Sモザイク病より葉に光沢があり、れん葉とえそ症状ともに葉脈(上)にかかって現れるのが特徴である。最近はYウイルスのT系統の発生が多くなった。その病徴は品種により異なるが、軽いれん葉症状か葉の裏のすじ状えそかである。

     Xモザイク病ー(X,S,Mによるモザイク病)に示すように、ジャガイモXウイルス(PVX)により生じ、病徴は系統、品種により異なるが、 *:写真17のように、葉の脈間に退緑斑点が現れる斑紋系統によるモザイク症状と、 *:写真19のように、脈間に褐色あるいは黒色の不定形のえそ斑点を現わす環紋系統によるえそ症状とに分けられる。Xウイルスによる場合はYモザイク病より汚く見え、これらの症状が脈間に現れるのが特徴である。

     Sモザイク病ージャガイモSウイルス(PVS)により生じ、品種、系統により病徴を異にする。病徴は温度に影響されやすく、比較的低温において発病し、25℃では病徴が隠れてしまうマスキング現象をおこす。病徴は中、下間葉の脈間にごく小さい退緑(黄色)斑点を現わすモザイクのみ(写真21)である 。全体的にやや汚ならしく見える。(X,S,Mによるモザイク病参照)

     Mモザイク病ージャガイモMウイルス(PVM)で生じ、品種によりれん葉症状や縮葉症状(ストリークを含む)を現わすが写真24、我国でのほ場発生はほとんど見ない。

     Aモザイク病ージャガイモAウイルス(PVA)で生じ、軽いYモザイクのれん葉症状に似ているが、我国での発生はほとんどない。

       CMVモザイク病ーキウリモザイクウイルス(CMV)によるジャガイモ上のモザイクは時に奇形を伴うが我国での発生はほとんどない。

       (2) 生育初期

     モザイク、れん葉症状はこの時期にはほとんど症状を現わさないが、写真2、5に示すとおり、Yウイルスにより時々植物全体に萎縮し、葉脈透化があり、葉がが縮み上った強いれん葉症状が見られることがある。えそ症状は下葉に脈えそが生じ、黄色くなり、落葉しているものがあるが、これはYウイルスによるえそ症状である。  Xウイルスの強い系統では時にYウイルスに似た症状となることがあるが、この時期Sウイルスではほとんど症状は現わさない。

       (3) 生育中期、後期

     Yウイルスによるれん葉症状は、全体的にはやや黄色っぽく、艶っぽく(光沢がある)、草丈もやや低い。葉には軽いあるいは強い捻じれや波うちが認められ、典型的なれん葉症状を呈する。多くは葉柄が下方に湾曲し、葉には葉脈透化がみられ、脈にかかる退緑斑紋が現れる。((写真1〜3)参照)
      なお、症状の軽い場合は、脈が透けて見える葉脈透化のみとなり、葉の波うちも弱く、T系統のように、軽い退緑斑紋で見つけ難いことがある(写真9〜14)。時に、AやMウイルス(写真23))による場合はYウイルスによるのれん葉と似ているが軽い症状となる場合が多い。

      Yウイルスによるえそ症状は、植物体の上部にれん葉症状を伴うこともあるが、下葉から中間葉に脈に沿った黒褐色のすじ状のえそ(ストリーク)が現れ、葉が枯れ、葉柄が垂れ下がる症状となり、落葉する。(写真4〜7)。 T系統は葉の裏側にすじ状えそを生じる(写真15〜16)。時に、Mウイルスによって縮葉とすじ状えそが生じる。

     Xウイルスによる明かな症状は、Yウイルスとは異なり、葉の捻じれや波打は弱く、葉の脈間に不整形の退緑斑点によるモザイクが認められる。全体的にはやや黄色っぽく、Yウイルスによる場合より汚らしい感じである((写真17〜20)参照)。また、上部はモザイク、中、下葉の脈間に不整形えそ斑点が現れ、葉が捻じれて、落葉することがある。

       Xウイルスの軽い症状は、退緑斑点のみであるが、温度が高くて生育が急激の場合は現れない。また軽い場合は20℃前後の比較的温度が低い日が続くとき上部に現れやすい。

     Sウイルスによる症状は、中間より下葉に脈間の小さな退緑(黄色)斑点として現れ、この小さな黄色い斑点は集まって次第に明かなモザイクとなる。植物体の萎縮はほとんど認められない。(写真21〜22))生育後期には葉の裏がブロンズになることがある。通常の発病は低温(20℃前後)が続くときに見られるが、25℃以上が続くと隠れて(マスキング)しまうことがある。抜取時にモザイク症状はいずれも曇天の時ほど見えやすい傾向がある。

       (4) 生育中の感染による病徴(第1次病徴)

     以上のれん葉、えそ、モザイク等を現わす症状は、ほ場で生育初期に感染するといずれのウイルスも植物体上部にれん葉、モザイク等を現わす(写真12)が、感染が遅れるに従い現れがたくなる。えそ症状は、感染した葉がえそ斑点、すじ状えそを現わし、葉が落ちるので判別できる。この場合、症状の進展は数枚の葉に限られ、株では片側のみに現れ ることが多い。

       (5) 重複感染の病徴

     ウイルスの重複感染では、YとXウイルスが重複したときには激しく、光沢を現わし、しわとなる(写真8)が、その他の組み合わせではあまり目立たないか単独と同様である。

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     3) 黄斑症状

     (1) 病徴の現れ方

     ジャガイモの葉に黄色い斑紋を現わすウイルスは、黄斑モザイク病を現わす黄斑モザイクウイルス(PAMV)、キャリコ病を現わすアルファルファモザイクウイルス(AMV)、それに日本ではイモに褐色輪紋を現わすモップトップウイルス(PMTV)がある。一般にこれらの病気は我国ではほ場ではほとんど見られない。

       (2) 黄斑モザイク病

     黄斑モザイクウイルス(PAMV)、黄斑系統によって生育中期以後に中、下葉に小さい斑点が集まって黄斑を作る。(写真25参照)

       (3) キャリコ病

     アルファルファモザイクウイルス(AMV)の1系統によって生じるが、葉に鮮黄色の病斑を現わし、葉のしわや植物体の萎縮はもとんど見られない。(写真26参照)

     (4) 塊茎褐色輪紋病

     モップトップウイルス(PMTV)によって外国では塊茎の輪紋の他に、葉にV字型の黄斑を示すことが知られている(写真27〜28参照)

       (5) 類似症状

     生育初期から着蕾期頃に葉の一部が黄色くなる症状がよく現れるが、ウイルス性の病気と判定されたのはほとんどない。

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    3 ウイルス病の予防


       1) ウイルス病の伝染方法

        種イモ栽培におけるウイルス病防除法は、ほ場においていかにして感染させないように予防するかにかかっている。その予防法の基本は、病源対策として病気をほ場に持ち込まないことと、早期に除去すること、病源から隔離することなどがあり、媒介虫に対する対策として、媒介虫を駆除すること、媒介虫の少ない時期、場所に設置または回避することなどがある。我国に発生する12種類のウイルス(マイコプラズマ)の伝染方法は、アブラムシ(ヨコバイ)の媒介によるもの、接触によるもの、土壌(菌類)によるものに分けられる。

     (1) アブラムシ(ヨコバイ)伝染

     このうち、採種栽培で重要なのはアブラムシの媒介によるウイルス病である。これには葉巻病、Y、A、M、黄斑モザイク病、キャリコ病、キウリモザイクウイルスによるモザイク病がある。紫染萎黄病、天狗巣病はヨコバイで伝染する。
     この中でも、葉巻病とYモザイク病がもっとも重要な防除の対象となる。媒介虫の伝染様式は下表に示した通り、葉巻病は媒介アブラムシが数時間の病植物吸汁でウイルスを体内に取り入れると、死ぬまでー生媒介能力があることから、永続性(循環型)伝染と呼ばれている。これに対し、Yウイルスを代表にした他のウイルス病は、病または健全植物を数秒吸汁するだけで伝染し、短時間で伝染能力がなくなることから、非永続性(口針型)伝染と呼ばれている。これらは防除を考えるときには考慮しなければならないことである。なお、マイコプラズマは永続性(増殖型)の伝染を行なう。

    ウイルスと媒介虫との関係

    伝染様式と型          非永続(口針型) 永続〈循環型〉 永続〈増殖型〉
      虫が病植物からウイルスを獲得〉   秒単位     時間単位  日単位
    する時間(獲得吸汁時間)
      ウイルス獲得から伝染までの時間    なし   数時間〜日    数日
    (虫体内潜伏時間)
    植物へウイルスを伝染する時間     秒単位   数分〜時    数時間
    (接種吸汁時間)
    虫がウイルスを保有している期間   数分〜数十分  一生     一生
    (虫体内保有時間)
      虫による植物の感染部位         表皮    篩部     篩部 
                                  葉巻ウイルス
    ジャガイモのウイルス名   Y、A、M、CMV         マイコプラズマ
                      PAMV


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     (2) 接触伝染

    XとSウイルスは接触によって伝染するウイルス病である。よって伝染はほ場内でのみ生じることになる。

     (3) 土壌伝染

     モップトップウイルス(塊茎褐色輪紋病)は粉状そうか病菌で媒介される土壌伝染のウイルスである。

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     2) アブラムシ伝染するウイルス病の予防

     (A) 病源対策

     (1)無病種イモの使用

     ほ場内のウイルス病伝染はまず周辺株から広がることが知られていることから、ほ場に病株がないことはもっとも大切であり、系統のはっきりした種イモを用いることが望まれる。

       (2) 病源からの隔離

     病気が多いと考えられる一般ジャガイモから出来るだけ離す(検査では5m、障壁がある場合はこの限りではない)必要がある。前段で述べたYなど非永続性伝染ウイルス病は数mの隔離でも効果が認められたとする報告もあるが、永続性の葉巻病は数百mでも相当の感染が認められた成績もある通り、植え付け前から、病源から隔離したほ場を選ぶ必要がある。

       (3) 病株抜取

     ほ場内に病源を放置することはもっとも危険なので、早期に抜取る必要がある。本章2項の見分け方を参考に出来るだけ早く見つけだして、抜取り、ほ場の外に出して、腐らせることが肝要である。野良ばえイモも同様に処分する。

        (B) 媒介虫対策

     (1) 媒介虫(寄主植物)からの回避

     媒介虫(アブラムシ)のいない環境を探すのは難しいが、野菜類(寄主)などが植えられていないイネ、ムギ、トウモロモシ、牧草などイネ科作物が周辺にあれば最適である。種イモほ場の周辺部をムギやトウモロコシで囲う(額縁)栽培なども一つの回避栽培法である

    。    (2) アブラムシの薬剤防除

     植え付け時に浸透移行性の殺虫剤(粒剤)を土壌施用することはもちろん、この薬剤の効果が落ち始める着蕾期以後は毎週殺虫剤を散布し、少なくとも種イモほ場にアブラムシが多数生息することは避けなければならない。薬剤はアブラムシの防除、薬剤散布 6ー3)項で述べるとおりである。

       (3) 成熟抵抗性の付与と茎葉処理

     ウイルスは若いほど感受性が高く、成熟すにつれ感受性は低下すること、また、春植えでは、媒介アブラムシは生育後期に飛来のピークとなることから、生育後期に植物体が伸長するような栽培法は避け、成熟させる必要がある。成熟抵抗性を付与するには、早植えして初期生育を促進し、窒素質を減じる。これに加えて、媒介アブラムシの飛来を調査し、その飛来ピークか1週間以内に茎葉処理を行なう(栽培法と茎葉処理はII章参照)。

       3) 接触伝染するウイルスの予防

       (1) 無病種イモの使用

     接触伝染は隣接株へ伝染するので、ほ場内に病源がないことが重要である。このため系統の明確な無病種イモを使用する。

       (2) 病株抜取

     ほ場内の病株、野良ばえイモは抜取により、早期に除去する。

       (3) 接触防止

     通常の種イモ栽培では接触防止対策を十分とることはできないが、種イモ切断(切断刃の消毒)、浴光育芽、植付け、除草、培土、薬剤散布などは丁寧に行なう。

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      4 細菌病の見分け方と防除

     1) 細菌病の見分け方

       (A) 地上部の症状

       (1) 輪腐病

     輪腐病は種イモと切断刀伝染し、採種栽培ではほ場で発見されるとその系統全体が種イモにはできない重要な病害である。病徴は着蕾期頃から始め下葉が萎凋し、これが上葉に及ぶ、葉には斑入りを生じ、葉の縁がわずかに巻上がる(写真57)。この萎凋は茎の一部に生じることもある。この株の地際部を切り、強く握りしめると、維管束部から乳白色の粘液が出る。本細菌はジャガイモを侵す細菌類中、唯一のグラム陽性菌(写真85〜87)である。

       (2) 黒あし病

     黒あし病は輪腐病と同様に種イモ伝染として取り扱っている国もある。土壌中にも生存できる。症状の発生は早く、地中の芽が侵されると不萌芽となる。以後は茎の下部が黒変する。はじめ下葉が退緑して萎凋し、上葉は巻き上がり、株全体が黄化する。症状は常に種イモから続いて生じ、茎は地際部からおれる(写真60)

       (3) 軟腐病

     軟腐病は土壌伝染性であり、野菜等に軟腐を生じる。黒あし病と似ているが、温度が上昇してから生じ、感染、発病が地上部で、茎や葉柄が水浸状(黒褐色)に腐敗する。全体的には黄化萎凋する。(写真62)

       (4) 青枯病

     青枯病は温暖地に発生する土壌伝染性病害で、症状は輪腐病に似ている。はじめ病下部は日中しおれるが、夜には回復する。これが次第に回復しなくなり、葉は黄変、たれさがり、萎凋する。茎の地際部を切ると、維管束部はやや褐変しており、乳白色の粘液がにじみ出る。

       (5) そうか病

     地上部に症状はない

       (B) イモの症状

       (1) 輪腐病

     維管束部が侵され、チーズ状に黄色化し、外皮は褐色化して亀裂を生じるが、外観上健全に見えることもある。病状が進行し、切ると維管束部からは乳白色チーズ状の粘液(細菌塊)が出てくる(写真58〜59)。

       (2) 黒あし病

     ストロンとの境目や芽が黒変し腐る。これらの内部が侵され、外見上見えないことがある。病変部は黒褐色になり、空洞化するものも多い(写真61)

       (3) 軟腐病

     イモでは最初皮目が赤褐色となり、拡大して軟化膿状となり、腐敗する。乾燥条件下では病斑が拡大せず、陥没して内部に澱粉の白い粉が残る(写真63〜64)

     (4) 青枯病

     イモでは表面は黒褐色に変色し、維管束部が暗褐色化し、切ると汚白色の粘液がにじみ出てくる。

      (5) そうか病

     腐敗はなく、表面に円形かさぶた状の少し陥没した不正形の病斑を生じる。 象皮病はそうか病と類似の菌で生じ、褐色の網目状または亀の子状病斑を生じる(。(写真74、76)

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     2) 細菌病の防除

    (1) 種イモの選別、消毒

     採種では無病の系統増殖種イモを使うことは輪腐病など種イモ伝染するものでは大切である。また、植える前によく選別して病イモは植えないようにする。種イモに付着する細菌病については薬剤消毒(II章参照)を行なう。

     (2) 種イモ切断刀および取り扱い器具の消毒

     輪腐病は切断刀で切断した場合20個までも伝染するとされている。また、黒あし病も伝染するので、中性次亜塩素酸カルシウム液(ケミクロンG)で消毒する。
     輪腐病、黒あし病などの収納箱などの取り扱い器具の消毒は、希釈した同液 または塩化ベンザルコニウム液(アンチジャーム20)に浸漬して行なう。



     (3) 輪作等

     輪作を行なうことは土壌伝染性の病害にとっては有効な方法である。輪作作物としてはイネ科が良い。  排水対策は軟腐病、青枯病などには効果がある。一方、そうか病は乾燥時に多いことが知られている。  肥料分としては窒素を減らすことにより徒長を避けることは、軟腐病などでは有効である。また、そうか病は土壌PHが高いと出やすいので、石灰の多用はされる。堆肥は完熟したものを施す、未熟堆肥はそうか病を増やす原因となる。

      (4) 土壌消毒

     そうか病は時に土壌消毒(ネビジン、フロンサイド粉剤)を行なうこともある。

     (5) 病株の抜取

     いずれの病気も畑で早期に病株を抜取することにより蔓延を防ぐことができる。

     (6) 薬剤の散布

     軟腐病では茎葉の薬剤散布により予防的に防除を行なう。薬剤は以下に述べるとおり、ビスダイセン水和剤、アグリマイシン100、バクテサイド水和剤、銅ストマイ水和剤、ダイセド水和剤、フェステバルC水和剤、キンセット水和剤、キンセット水和剤80、コサイドDF,Zボルドー、ヨネポン水和剤、サンドファンC水和剤、スターナ水和剤、バイオキーパー水和剤、カッセト水和剤、マテリーナ水和剤、テレオ水和剤、ナレート水和剤がある。(薬剤は平成15年基準であるため調査の上使用されたい)

     (7) 収穫後の乾燥

     イモを腐らせる病気については収穫後よく乾燥して貯蔵することが大切である。

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    5 菌類病の発生と防除


       1) 主として地上部を侵す病気

       (1) 疫病

     ー般には風による飛散で感染が生じる。着蕾期以後に中、下葉に水浸状の病斑を生じ、やがて不正形の暗緑〜暗褐色の病斑に拡大する。病斑部と健全部の境目には白色粉状のカビを生じる。湿潤条件下では蔓延し、数日で畑全面に広がることがある(写真65〜66)。 疫病菌はイモへも感染して腐らせる。イモへは低温(17℃以下)で雨が多いときに茎葉で繁殖した胞子が落ちて感染する。また、土壌に菌が生存していれば、土壌湿潤状態で、掘取り時に傷口から感染する。 症状は、感染後数日でイモ表面に少しへこんだ暗褐色の小さな病斑を現わす。病斑は拡大し、内部も褐変して深部に及ぶが、硬くされ状を呈する。しかし、2次的に腐敗菌が寄生してべとべとに腐ることがある。(写真67〜68)
     防除は健全種イモを使用し、多窒素を避け、適正な倍土を行ない、茎葉への薬剤散布を行う。堀取りは晴天日に行なう。くずイモの処置を適正にする。 薬剤は以下に述べるとおりである。  疫病の薬剤防除については、初発生が着蕾期以後であり、薬剤散布もこの頃から開始する。散布量は10a当たり90〜150?である。
    薬剤は以下に北海道における適応農薬を商品名のみ記すと、フロンサイド水和剤、グリンダイセンM水和剤、グリーンダイセン水和剤、グリーンペンコゼブ水和剤、ジマンダイセン水和剤、エダイファー水和剤、グリーンエムダイファー水和剤、マンネブダイセンM水和剤、サーガ水和剤、フエステバルM水和剤、リゾミルMZ水和剤、ラビライト水和剤、銅ストマイ水和剤、ジマンレックス水和剤、フェステバルC水和剤、クプラビットホルテ、ハイカッパー、ドウジェット、ハイボウドウ、KBW、ドイツボウドウDFおよびA、ボウルドー、ポテガードDF、コサイドーDFD、コサイドボウドー、Zボルドー、ICボルドー66D、ランマンフロアブル、サドハファンMおよびC水和剤、クリーンヒッター、ダコニール1000およびエース、ブリザード水和剤、カゼートPZ水和剤、ホライヅンドライフロアブル等。 このうち、リゾミルMZ水和剤、カゼートPZ水和剤、フロンサイド水和剤、ホライヅンドライフロアブルは塊茎腐敗にも効果がある。(薬剤は平成15年基準であるため調査の上使用されたい)

     (2) 夏疫病

     葉に同心円状黒褐色病斑を現わす。疫病と同じ防除法を行なう。(写真69)

        (3) 菌核病

     茎が水浸状に腐り、乾くと淡褐色となり、茎中に鼠の糞状の菌核を生じる。次の薬剤を開花 期とその後10日頃に2回、10a当たり100?を散布する。薬剤はロブラール水和剤、ス ミレックス水和剤、ジマンレックス水和剤、ダイセド水和、スクレタン水和剤、トップジンM 水和剤、フロンサイド水和剤がある。

     (4) 半身萎凋病
     下葉芽黄色くなり萎凋する。株の片側だけのことが多い。

       (5) 灰色かび病

     葉に同心円状の病斑を生じる。

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     2) 主としてイモを侵す病気

       (1) 黒あざ病

     土壌伝染性の病害で、種イモにも付着して伝染する。低温、土壌の酸性で出やすい。萌芽時地下の芽が侵され、萌芽しないことがある(写真70)。地上部では、茎が褐色〜黒色になり生育が劣る。茎地際部が侵され、頂部が小葉が基部に強く巻上がり、着色する。生育中期以後は気中塊茎もできる。また、地際に奇形小塊茎を多数生じる(写真71〜72)
     イモは、茎葉枯凋後に表面にコールタール状の褐色〜黒色の大小不定形の菌核が付着する。秋に収穫が遅れると増える(写真73)。  防除は無病種イモを使用する。種イモを消毒(バリダマイシン、ベノミル、メプロニル剤)する。輪作を行なう。育芽で芽を早く出させる。茎葉枯凋後は早く収穫する。

       (2) 粉状そうか病

     イモのみに発病する土壌病害で、種イモでも付着して伝染する。低温で発生しやすい。はじめ、イモの表面に褐色小斑点ができ、3〜5mmの病斑となり、隆起した円形丘疹状物を生じ、丘の内部は胞子球が満たされているが、これが出てやや陥没し、病斑周辺部に表皮等の破片が付着して粉状に見える。そうか病より円形で小型である)(写真75
     防除は無病薯を使用する。種イモを消毒する。輪作を行なう。深耕し排水を図る。

       (3) 乾腐病

     土壌感染で、貯蔵時イモ表面に褐色〜黒褐色のへこみが出来、乾腐状でしわを生じ、内部は変色して空洞となる(写真78)
    。防除は、輪作を行なう。堀取りは丁寧に行ない、よく乾燥する。貯蔵前に消毒(ベノミル剤)を行なう。
       (4) 炭そ病

     貯蔵後に3〜6mmの円形で、少しへこんだ病斑を生じ、中央部がへそのように隆起する。乾腐病と同様の防除法を行なう。(写真79)

       (5) 銀か病

     イモ表面に銀〜鉛色の病斑を現わす。(写真77)

       (6) 紫斑病

     イモの表面に親指で押したような病斑を生じる。

     (7) 紫紋羽病

     イモの表面に紫のひも状物が絡みつく。

     (8) ならたけ病

     黒褐色針金状物がイモに絡みつく。

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    6 アブラムシの発生と防除法

       1) アブラムシの種類 アブラムシと吸汁

       (1) モモアカアブラムシ

     全てのアブラムシ伝染するジャガイモのウイルス病を媒介する。小型のアブラムシで、光沢がある。体長は1.5〜2mmで、淡黄、黄、黄緑、緑、桃、赤などの体色をしている。動きは活発でない。触角は体長より短い。下の方の葉に寄生が多い(写真49参照)。

     (2) ワタアブラムシ

     Yモザイク病を媒介する。小型 のアブラムシで、光沢はない。体長は1.1mmで、黄、緑、灰、茶、褐色など変化に富む。触角は体長より短く、黒い。下葉に寄生が多い(写真51参照)。

       (3) ジャガイモヒゲナガアブラムシ

     葉巻病を媒介する。大型(紡錘形)のアブラムシで、光沢がある。体長は約2mmで、淡黄〜黄緑で、触角は体長よりはるかに長く、活発に動く。植物体の中、上部に寄生が多い(写真50参照)。

       (4) チューリップヒゲナガアブラムシ

     Yモザイク病と葉巻病を媒介する。大型で、長紡錘形をしている。背面中部に緑色の帯芽ある。体長は3mmもあり、色は黄緑〜緑で、光沢はない。幼虫は粉をつけている。触角は体長より長く、活発である。上部に寄生が多い(写真52参照)。
     アブラムシは写真53〜55のように体長より長い口針を歯の篩部に伸ばして吸汁する。以上の4アブラムシはジャガイモに寄生してウイルスを伝染するものである。

       2) 発生消長

      (1) 調査方法

     寄生数の調査は、株について葉を裏返して見るとよい。大型の虫は上方の葉に小型は下葉に寄生が認められる。
     ほ場への飛来調査は、生育後期(開花期)からでよい。方法は内外面ともに黄色く塗った直径30cmぐらいの洗面器様の容器に水をはって、ほ場の内外に高さ30cmぐらいの台の上に置いておくとよい。飛来は日中の明るい時のみに生じるので、水面に浮かぶアブラムシの総量を数える。種類の同定は専門家でないと判別できない。 (写真56参照)

      (2) 春植え

     本州高冷地や北海道等では、萌芽直後からジャガイモヒゲナガ、チューリップヒゲナガアブラムシの飛来、寄生が認められるが、数的には多くはない。着蕾期以後気温の上昇とともに減少するが、これに代わりモモアカアブラムシの飛来、寄生が始まり、増加する。ワタアブラムシは夏期になり飛来、寄生ともに増加するのが普通である。生育中期以降に乾燥状態が続くと、増殖が激しく、地上部への薬剤散布にも関わらず、飛来、寄生共に急増することがある。とくに、生育後期の飛来急増には茎葉処理が行なわれる。

      (3) 秋植え

     二期作の秋植えの生育初期はアブラムシ類はワタアブラムシの飛来があるが、10月に入りモモアカアブラムシの飛来、寄生が認められる。

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        3) 薬剤防除

         (1) 浸透性殺虫剤の土壌施用

     浸透性殺虫剤をまき溝に施用する。施用量は10a当たり4〜10Kgと少なく、肥料と混合して施用されることが多い。薬剤は、ジメトエート粒剤、イシストン粒剤5、オンコル粒剤5、ガゼット粒剤、アドマイヤー1粒剤、エチメトン粒剤6がある(II章参照)。

       (2) 茎葉への散布

      アブラムシに対する薬剤は、植付け時に土壌施用された殺虫剤は2カ月は効果があるが、それ以降、大体着蕾期前ぐらいから茎葉処理直前まで茎葉への散布が必要になる。散布に当たっては使用時期、回数等適正使用基準を守る。薬剤の散布量は10a当たり、初期は60〜90l、中期以後は100〜150l とし、下葉にもかかるように丁寧に散布する。殺虫剤は虫の種類や耐性の関係もあり、2〜3種類をできれば毎週散布が望ましい。 北海道の適用農薬(商品名)は以下のとおりである。オルトラン水和剤、エンセダン乳剤*、スミチオン乳剤*、ジメトエート乳剤、バイジェット乳剤*、ランベック乳剤*、エルサン乳剤*、ダスバン乳剤40、デナポン水和剤50*、ピリマー水和剤、ランネート45水和剤*、ルビトックス乳剤、ビニフェート乳剤、アリルメート乳剤、テルスター水和剤*、マブリック水和剤*、アグロスリン水和剤*、サイハロン水和剤*、トレボン乳剤*、アデイオン乳剤、サイハロン乳剤*、スカウト乳剤*、バイスロイド乳剤*、ペイオフ乳剤*、ペイオフME液剤*、ゲットアウトWDG,アドマイヤー水和剤*、ベストガード水溶剤*、モスピラン水溶剤およびSL液剤*、スターベリー水和剤*、ブイボン乳剤*、トレ.トレ乳剤*、テルスターナック水和剤*、チェス水和剤*、バリアード顆粒水和剤*、アクタラ顆粒水和剤*。ワタアブラムシは防除しにくいアブラムシであるが、(*)はワタアブラムシに効果のある薬剤である。(なお、薬剤は平成15年基準であるため調査の上使用されたい)

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    7 センチュウおよび害虫の発生と防除


       1) センチュウ類

     (1) ジャガイモシストセンチュウ

     本センチュウの被害を受けた株は、下葉が黄化してしおれがあり、萎縮し、この下葉は枯死して茎が見える。このような状態を毛羽たき症状と言う。ほ場ではパッチ状に発生する。被害株の根には白色〜黄金色のケシ粒大球形のシストが付着している。症状は集団的に生じ、連作ほ場では目立つ。(写真89)
     完全防除は困難で、侵入防止を第一に考える。採種では未発生の地域か未発生ほ場(検査あり)を使用する。その他の防除法は、輪作、土壌消毒、抵抗性品種の栽培等がある。

       (2) キタネグサレセンチュウ、ミナミネグサレセンチュウ

     キタは根に侵入し褐変を生じ、イモにも小斑点を生じ、ミナミはイモの内部に入り、少し陥没した黒褐色斑点を生じる。

       (3) キタネコブセンチュウ、サツマイモネコブセンチュウ

     キタは根に小さいこぶを生じ、マツマイモは根やイモの表面にこぶを作る。被害の激しいものは商品価値をさげる。

     2) 害虫類

       〈1) ジャガイモガ

     成虫は8mm程度のガで、夜間に活動し、葉の裏やイモの表面に卵を生む。孵化した幼虫は茎の中に入ると、生育を阻害し、イモに入ると食い回り、表面に糞を排出する。
     防除は収穫したイモを夜間に寒冷沙等で保護する。葉の食害にはオルトラン水和剤、ビニフェート乳剤、ランネート45水和剤等を散布する。

      (2) テントウムシダマシ類

     寒冷地ではオオニジュウヤホシテントウムシ、温暖地ではニジュウヤホシテントウムシが発生し、葉を食害する。 防除は幼虫期に薬剤(デナポン水和剤50、デイプテレックス乳剤等)を散布する。

       (3) ハリガネムシ類

     マルクビクシコメツキムシ、トビイロムナボソコメツキムシ、コガネコメツキにより、イモの穴をあける。防除はエチルチオメトン粒剤6等の土壌処理がある。

       (4) ナストビハムシ

    萌芽時に茎葉をかじる甲虫で、ジノミとも呼ばれる。イモにアバタ状の食害跡をつくる。薬剤はダイシストン粒剤等の土壌施用殺虫剤とバイジット乳剤等の茎葉殺虫剤の散布がある。

     (5)ミナミキイロアザミウマ

    温暖地のジャガイモに発生し、葉の裏が銀色になり、続いて全体が褐色になり、枯れる。

       (6) ケラ

     イモをかじり、傷をつくる。

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    8 生理障害と肥料欠乏症状


     1) 地上部の生理障害

     萌芽期の霜害は葉が褐色〜黒褐色に枯れる。被害が軽い場合はすぐ回復するが、激しい倍場合は腋芽が出てくる。高温は葉先焼け(チップバーン)を生じる。強風では葉が擦れて紫褐色〜黒色に変色する。塩害では葉が褐色に枯れる。薬害はパッチ状俣は全体に葉縁、葉先が褐色、黄化、葉脈黄化などが見られる。

       2) イモの生理障害

      (1) 緑化、日焼け

     生育中にイモが露出して緑化したり、強い光線下では火傷となることがある。十分な倍土を行なう。また、仮貯蔵中などでは散乱光により緑化することがあるので、注意する。

     (2) 二次生長

     生育中に高温乾燥に長くあい、生育が停止した後雨などにより、再び生育を開始するとこぶができたり、新イモが萌芽したりする。

       (3) 皮目肥大

     土壌水分が過剰なとき、イモの皮目が膨れてイボ状になることを言う。粉状そうか病と似ているが、この場合は変色がなく、白くて花が咲いたようになるのが特徴である。

       (4) 霜害、凍害

     白っぽく、軟化腐敗する。内部が黒色になることも多い。

       (5) 裂開(クラッキング)

     急激なイモの肥大により割れ目は縦軸に沿って生じる。

       (6) 機械的損傷

     堀取りその他取り扱い中の切り傷、皮むけ、割れ等の傷をつけないために、丁寧に作業する。できればイモの落下は30cm以下にしたいものである。

     (7) 黒色心腐

     高温で空気の流通が悪いときに、イモの内部が黒変する。一種の窒息状態である(写真 80).

       (8) 褐色心腐

     イモの内部、肉質が大小不同の褐色斑点が散在する。イモの肥大期の水分不足が最大の原因であるが、カルシウム、燐酸の欠乏等も助長する(写真81)。

       (9) 中心空洞

     早生種等が急激に肥大したとき、大イモの中心部に空洞を生じる。

       (10) 維管束褐変
     乾腐病、半身萎凋病、青枯病、茎葉枯凋薬剤などの原因で、維管束が褐色になる。

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     3) 肥料欠乏症状

       (1) 窒素

     成長が遅れ、葉は淡黄となる。

       (2) リン酸

     葉は暗緑色、赤褐色、青銅色となる。欠乏は下葉から始まる。

     (3) カリ

     葉は暗緑色、しわを生じる。進と脈間は黄化し、褐色斑も現れる。後に葉縁は枯れる。

     (4) マグネシウム

     下葉の縁から黄化し始め、脈だけ緑を残す状態になる。脈間は褐色になり、枯れる。

       (5) カルシウム

     上部に現れ、展開葉に退緑、巻上がりが見られる。沿の葉は小型、奇形となる。

       (6) マンガン

     上葉に巻上がりや退緑が見られ、脈に沿うように褐色斑が生じる。

       (7) ホウ素

     植物の生育障害、茎や葉の肥厚と捻じれをともない、紫色の出現もある。


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    種いも栽培の写真

    PVY普通系統


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    PVY一T系統


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    X,S,Mモザイク病

    X,S,Mモザイク病
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    黄班と紫染萎黄病

    黄班と紫染萎黄病


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    葉巻病

    葉巻病


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    検定植物の病徴

    検定植物の病徴

    アブラムシと数汁

    アブラムシと数汁

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    ジャガイモの細菌病

    ジャガイモの細菌病

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    ジャガイモの菌類病

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    塊茎の病障害


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    検定と増殖


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    採種栽培の主要作業

    採種栽培の主要作業


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