栽培設計による
栽培設計によるチップサイズ(60〜200g)原料の高品質、多収穫(4t/10a)を目指して、新しい観点から栽培方法を農家向けに記述します
栽培設計と実証栽培
1 高品質、多収穫の栽培設計
1) 茎密度管理とイモ数確保
2) イモの肥大
3) 実証栽培における生産例ー北海道ー
4) チップサイズ多収穫の目標数字
5) ある農家の6年間の実証栽培成績
栽培設計と工程管理技術
2 種イモの性質と育芽処理
1) 休眠と頂芽優勢
2) 種イモの貯蔵と消毒
3) 昇温(ヒートショック)処理
4) 浴光育芽
5) 種イモの目(芽)と茎との関係
6) 育芽処理と種イモの形態による茎数の変化
7) 府県の栽培設計と種イモの育芽処理
8) 老化イモの生育、収量
3 畑の準備
1) 土壌改善と輪作
2) 耕土
3) 土壌診断
4) 耕起、砕土、整地
4 植付け時期
1) 植付け時期
2) 栽植密度(茎数管理)
3) 植付けの方法
4) マルチ栽培の利点
5) 肥料の働き
6) 基肥の設計
7) イモ肥大のための設計
8) 総窒素供給量
5 管理作業
1) 除草
2) 霜害
3) 培土の効用
4) 培土の時期
5) 培土の形
6) 分肥方法
7) 葉面散布
8) 灌漑
(かん水による原料の安定生産)
9) 薬剤散布
6 栽培設計の確認
1) 茎密度の計測
2) イモ数の仮計算と生育観察
3) イモの肥大と収量予測
7 収穫時期
1) 茎葉処理
2) 掘取
栽培設計と実証栽培
1 高品質、多収穫の栽培設計
収量はイモ数を確保してこれらを太らせることですが、栽培的には単位面積当たりのイモ数(株数×株当たりのイモ数)×イモ肥大(平均1個重)に言い換えることが出来ます。高品質、多収穫をえる栽培管理は、品種を選び、種イモを適切に処理し、適量の施肥と適期の高い精度での植付けを行い、生育中の環境要因(土壌、気象、病気など)に対応する適切な管理技術が要求されます。
今、トヨシロのチップ原料用栽培を例に挙げると品質重視の観点からチップサイズ(60g〜200gで整粒化)の製品(販売)収量で毎年4t(総収量5t)/10a 以上とることを最終的な目標とし、これに沿って原料の高品質安定生産について考えてみたいと思います。
本企画には教科書にないような考え方や用語があるかもしれません。これは馬鈴薯畑との付合いの長い筆者が 2003年から2008年まで約100人(120畑)のチップ原料農家さんと共に 種イモから製品販売まで高品質、多収穫を目指した実証試験と実証栽培を行いーーその結果から導き出されたもので、畑のイモが教えてくれたもの をそのまま皆さんにお伝えするものです。
ここでは高品質、多収穫の栽培管理の重点項目としてイモ数とその肥大に焦点を当てて記述しますが、栽培者は高品質、多収穫のために周到な栽培設計を立て、これを忠実に実行することが条件となります。
順序としては技術で解決出来ると考えられる生育前半(開花期まで)の茎密度管理を行い、適当なイモ数を確保する計画を立てます。次に生育後半(開花から黄変中期)のイモ肥大、1個重の増加(肥料養分、地力)に係わる状況を理解し、施肥等の栽培設計を行うこととなります。このうち、イモ肥大期間中の畑の地力(養分)については設計者自身においてサイズコントロールと多収穫技術 2ー多収穫技術と施肥設計ー を参考にして設計されることをお願いします。
これから本稿で述べる製品(販売)収量とは畑の重量から形態腐敗等の選別や土砂等の歩引き後の販売重量です。
1−1) 茎密度管理とイモ数確保
それでは、これからチップサイズ(60〜200g)の原料生産(販売収量)について考えます。
トヨシロの例で説明しますと、従来は、低温貯蔵後に浴光育芽のみで植えられた種イモは株当りの主茎数は3本前後であり、これを推奨耕種基準(75cmX27cm)により栽培された畑での茎密度(=10a当りの主茎数)は計算上14,800本となります。これに茎当たり2.8個のイモが形成されたとしても計算上は10a当り41,440個のイモ数となります。この状態で10a当り5t以上の総重量(販売収量4t)とするには平均1個重を121g以上としなければならず、イモの肥大期間を十分にとり、大玉でしか達成できません。この場合、サイズが大きいため病傷害によるロスは多くなると考えられます。
さて、今回提案するチップサイズの多収穫技術は、まず最初に、誰にでもできるイモ数確保のための茎密度管理を行なうことになります。望まれるチップサイズを生産するためには単位面積(10a)当たりのイモ数を確保し整粒化する必要がありまが、このためには単位面積(10a)当たりの主茎数(茎密度)を下図に示しますように高くする必要があります。
チップ用原料生産の欧米での推奨茎密度は18,000本といわれています。下図から、トヨシロの茎密度が18,000本の時には10a当たりのイモ数は51,300個生産されることとなり、スノーデンでは50,300個となりました。
なお、今回の実証栽培から判明したチップサイズ製品(販売)収量をトヨシロ4t/10a生産するためには、イモ数を52,300個確保し、1個重を97g以上に肥大させて総重量5.1t/10aを収穫する技術が必要になります。そのときの茎密度は18,500本必要です。
一方、スノーデン4.5t/10aを生産するには、イモを54,000個生産し、1個重を98g以上に太らせて総重量を5.3t/10aにする必要があります。そのときの茎密度は20,000本が必要です。
また、下の左図に示しましたように、通常はイモ数が増しますと1個重量は減少し、よく揃い、品質の向上となります。
また、下の右図に示しましたように、イモ数が多いと総収量は増える傾向にあり、単位面積当たりのイモ数の増加は多収穫にも貢献するようです。

トヨシロでの茎密度管理は、種イモ当たりの茎数増加からはじめますが、低温貯蔵された種イモは昇温(ヒートショック)処理や低温浴光育芽を行ない、種イモ当たりの茎数を3.6本以上確保し、さらに、種イモ当りの茎数をあらかじめ予測した後、植付け時に最適な18,500本の茎密度となるように栽植密度(3.6本の種イモを植えるときは5,100株/10a=75cmx26cm)を決定するのです。このように、栽植密度(畦幅、株間)は最初から決まっているものではありません。植付けの項目で詳しく述べますが、全粒植えでは種イモあたりの茎数がカットとしたものより0.3本ほど多くなるので株間は2cm程度広くすることになります。
また、種イモからの茎数変動を低くするため種イモの形態(大きさ、全粒、切断等)別の植付けを行い、また、均一株間となるよう植付け時の作業は丁寧に行います。そして畑では18,500本の茎が均一に配置されるよう株間変動を低くします。
なお、実証栽培における平均茎当たりのイモ着生数は2.82個(株当り10個前後)であり、18,500本の主茎で52,300個生産されることになりました。これは従来の平均イモ数(41,400個)と比べて約10,000個も多い数であリ、肥大中の競合によりサイズが揃い、障害や比重等の内部品質も高まります。
次に示す写真はイモ数の多かった潅水区のトヨシロ、株当り2〜4茎のイモの着生状況です。茎数が多いとイモ数が増え、小玉になります。
2003年7月27日のトヨシロのイモ数(潅水によるイモ数増加株)


写真左:2茎株(9個/株、4.5個/茎)、写真右:左3茎株(13個/株、4.3個/茎)、右4茎株(15個/株、3.8個/茎)
1−2) イモの肥大(1個重の増加)
イモの肥大は土壌水分と畑の養分(天然供給量と施肥料)に影響され、地上部では茎葉の大きさと繁茂持続(生育)期間により表現されます。
生育前半の状況は、萌芽後の初期生育が良いとストロンが多く発生し、イモ数も多くなる傾向があることは良く知られています。また、イモ数が決定する時期は開花盛期ごろ(植付け後75日前後)と考えられ、イモ形成期(着蕾期)から約1ヶ月であります。
この頃から通常の地力の畑では基肥の多くは吸収され、地上部生育は鈍り始め、終花期には生育がほぼ停止するのが普通です。したがって、通常の地力の畑においては標準的な基肥で生育をした場合、初期生育の茎密度増加とイモ数確保は肥料養分的には問題がないものと考えます。一方、イモ肥大のための肥料養分については別途考慮する必要があります。

イモ数が多いと収量は増える傾向があると前に述べましたが、一般には1個重が重いと多収穫になる(大イモは多収穫)といわれております。実証栽培の結果からも左図に示しますように1個重の増加は収量が増える傾向にあります。一方、1個重が重くなり過ぎますと比重の低下、内部障害の発生、奇形の出現等品質に影響しますので、ほどほどの大きさにする必要があります。
今、実証栽培から導かれた数字を当てはめますと、トヨシロのチップサイズ製品収量を4t/10aを生産するには次のとおりとなります。
茎密度は18,500本としたときイモ数は52,300個となり、これを総重量5.1t以上にするためには1個重を97g以上に肥大させる必要があります。この数字は、通常の栽培に比べて、茎密度では約3,700本以上、イモ数では10,000個、総重量で800kgも多くなりますので、茎数増加による茎葉の生育やモ数増加による肥大に必要な養分は相当量(2〜3割以上)不足することになります。
また、イモの肥大が著しい開花期以後の土壌養分は基肥で施用されたものより、畑の持つ地力の養分によるところが大きくなりますので、開花期以後に草丈が徐々に伸長するような肥沃な畑はイモの肥大が 見られましたが、生育後期(終花期以後)に茎の伸長が完全に停止するような畑においては、イモ数だけを増加しても、イモの肥大が伴わず、1個重の減少(小玉で減収)となって現れることが度々見られました。
なお、実証栽培においては、後半の生育が鈍る排水のよい砂質畑等において、ビートの後作や有機質の施用、さらに肥大を助ける分肥、追肥が必要になります。これにより後半の生育がよくなり、1個重は増加する結果が得られた例も多くあります。
前述したように、イモを肥らせると総収量も増加することはだれもが知っています。52,300個に増やしたイモをチップサイズまで肥らさなければ多収穫にはなりません。
表はイモ数が多くても茎葉の大きさ(茎丈)やイモの肥大期間で収量は大きく変わった例です。
表 北海道Y氏ほ場におけるトヨシロの収量(10a当たり)
項目 2003年 03年(2/3肥料) 2004年(早枯)
総イモ数 56,400個 59,400個 54,700個
最大茎丈 73cm 59cm 67cm
イモ肥大期間 63日間 58日間 51日間
総重量 5,900s 5,200s 4,300s
平均1個重 104.6g 87.5g 78.6g
製品収量 4,600s 3,700s 3,500s
表 トヨシロのイモ肥大例(2006年、北海道大空町)
氏名 茎密度 イモ数 一個重 総収量 製品収量
M氏 20,000本 56,600個 106g 5,990s 3,790s
K氏 19,000本 54,300個 84g 4,560s 3,430s
Y氏 20,000本 55,000個 88g 4,840s 2,700s(そうか病有)
*:K氏とY氏はイモ数に比べて一個重が軽く低収量となった
以上からチップ原料に用いられる2品種の製品収量、トヨシロ4トン、又はスノーデン4.5トンを収穫するための地上部茎葉の生育状況を表現すると下図のようになります。
品種 最終の茎丈 茎葉の大きさ イモ肥大期間(イモ形成〜黄変中期)
トヨシロ 70cm(開花後も伸長) 畦間塞ぎ時々倒伏 60日以上
スノーデン 90cm以上(:) 畦間完全塞ぎ倒伏 70日以上
すなわち、肥大する時の養分は、施用した肥料養分も影響するのは当然ですが畑にある地力(天然供給量)の養分がより強く関与していることになります。そのため粘土25%以下の砂壌土、砂土並びに腐食や有機質の少ない土壌は生育後半の地上部の伸長が鈍化し、イモの肥大も鈍ることになり、施肥設計で肥大のための養分供給を考える必要があります。一方、生育後半に地上部が適度に伸長するような畑においては、イモ数の増加が高い収量に結びつきます。よって、土つくりは増収の基本となります。
本稿では今まで実施されなかった、イモ肥大のための分肥(追肥)を取り入れました。この考え方は、灌漑栽培を行ったとき、基肥として施用した窒素肥料は開花終わりの7月下旬にはほとんど吸収される結果、以後の茎葉伸長はほとんど認めらず早枯れしたこと及びイモ肥大が少なかったことにより明らかとなりました。したがって、茎密度を高め、イモ数を増加させたチップサイズ原料畑においては地力のある畑を除いて、イモの肥大のための肥料(窒素質)が生育後半に不足するため、分肥が必要となります。
栽培設計に当たっては畑の地力を前回のイモの生育状況や前作から推定し、土性、耕土の深さ、土壌診断を考慮し、イモ数の確保とともに施肥の質、量と共に、施用時期や方法について畑に合った設計を行う必要があります。なお、種イモの齢、栽培期間中の気象が異なる府県における安定多収穫の栽培設計は北海道の事例と異なります。
イモの高品質、安定多収は前述のイモ数、イモの肥大に係わるすべての技術を駆使して始めて達成されるものであり、ある特定の新技術を導入又は多肥にしたからといって、急に製品収量が増加するといったことはありません。
1−3) 実証栽培における生産例ー北海道ー
まず、2003年以降に北海道各地のチップ原料農家さん約100人(120畑)に栽培設計による実証栽培をお願いした結果を基に組み立てた チップサイズ原料の実証栽培(2007〜2008年) のいくつかの生産例を挙げてみたいと思います。
説明の写真は6月中、下旬の生育状況(株間や株中の茎数、生育差の変動係数の高低)と黄変期ごろ(トヨシロ 8月下旬、スノーデン9月上旬)の1u(1/1,000反)当たりの主茎数とイモ数並びにイモの平均1個重について示しています。
1) 2007年の実証例(トヨシロ)
実証例ー1
2007年は北海道各地のトヨシロ20畑で実証栽培を行いました。その結果は18畑が4月に立てた目標収量(平均で3,565s/10a)を上回る製品(=販売)収量(平均で3,610s/10a)を達成しましたが、全体的にはイモ数が少なかったために、大玉となりました。その中で、製品収量が高く、かつ、サイズコントロールが出来たのはごくわずかの畑でした。ここには十勝地区の1例について述べます。
十勝地区のA氏の実証畑におけるトヨシロの6月下旬の生育状況と8月下旬の1u(1/1,000反)当たりの茎数とイモ数並びに平均1個重を示すと次の写真のようになります。
生育状況では写真に示しますとおり、左:通常種イモ(1/2切)区は、茎密度は16,000本と低く、株間や株中の茎数の変動係数は高い と 右:全粒種イモ区は、茎密度は18,000本と高く、株間や株中の茎数の変動係数は低い と両者に差異があります。
8月下旬の1u当たりの収量調査では、写真のとおり、右:全粒種イモ区は茎数が2本多いだけで左:通常種イモ区よりイモ数は6個多くなり、その結果玉揃いが特段に良いのを見てください。畑全体ではやや大玉で粒揃いは良好でした。製品(販売)収量は畑平均で4,091s/10aでした。

左:1/2切植え、6月茎密度16,000本/10a
右:全粒植え、6月茎密度18,000本/10a

左:1/2切植え、8月下旬の1u当たりの茎数16本、イモ数=52個、総収量=5,900g、1個重=113g
右:全粒植え、8月下旬の1u当たりの茎数18本、イモ数=58個、総収量=6,300g、1個重=109g
実証例-2
網走地区大空町(灌漑栽培)での7畑中の2例について、6月下旬と8月下旬の調査時の写真を下に示します。ここでは、トヨシロの目標収量は4,000s/10aでしたが、製品収量の7畑平均は3,929s/10aであり、目標はほぼ達成しました。1例目は、1u当たりのイモ数54個であり、ほぼサイズコントロールできましたが、2例目は、1u当たりのイモ数は48個であり、やや大玉となり、粒揃いは普通でした。
A氏


A氏は自ら進んで栽培設計を行い、各種の工程管理技術を実行して、4t/10aを目指しました。結果は6月の生育状況は株間や茎数は整然としており、8月下旬の1u当たりの茎密度は19本と多く、イモ数は平均54個、平均1個重は93gと設計どおりの結果となりました。最終結果は、サイズコントロール(整粒化)された製品が3,806s/10a工場に納入されました。
D氏


D氏は写真おとおり、6月の株間はやや広く、株間と株中の茎数の変動はやや高く、茎密度は16,000本でした。8月下旬の1u当たりの茎密度は平均16.5本で、イモ数48個と少ないため、1個重は117gと重く、サイズはやや大玉で揃いは普通であり、最終の製品収量は3,657sでした。
2) 2008年の実証例
実証例-1 トヨシロ
北海道網走地区、大空町で13畑において実証栽培を行いました。製品収量の平均は3,696s/10aであり、ほぼ予想した収量が生産できました。以下に述べます3畑のトヨシロの6月の生育状況は比較的整一であり、茎密度も高くなりました。8月下旬の1u当たりの茎密度は18本以上で、イモ数は多く65個でした。サイズ(平均1個重)は80〜81gとやや軽くなっており、最大でも200g超えた畑は少なく、サイズコントロール(整粒化)されたものが生産できました。
本地区は本年の気候(イモが形成される頃に土壌水分があった)により、イモ数が多く、チップサイズを収穫するには恵まれた年であったと思われます。
A氏

A氏は2007年のA氏と同一農家であり、栽培設計は的確に行われた結果、6月中旬の生育状況は写真のとおり、株間や株中の茎数の変動は低く、整一な生育でした。8月下旬の1u当たりの茎密度は18本で、イモ数は65個と多く、1個重は81gと小粒であり、最大でも200gを超えたイモはありませんでした。最終の製品収量はサイズコントロールされたものが3,881s/10a生産されました。
C氏

C氏は6月の生育状況は写真のとおり、株間や株中の茎数の変動は低く、整一な生育でした。8月下旬の1u当たりの茎密度も18本で、イモ数は65個であリ、1個重も80gと小粒でサイズコントロールされました。製品収量は4,168s/10aと多収穫でした。
K氏


K氏は6月の生育状況は比較的整一で、8月下旬の1u当たりの茎密度は19本、イモ数は65個と多くなりました。やや乾燥地のため6月上旬に分肥(窒素分2s/10a)を行った畑ですが、1個重は81gでやや軽くなっています。しかし、粒は良く揃ってサイズコントロールされた製品が4,301kg/10a生産できました。
実証例-2 スノーデン
スノーデンについては、原料生産の経験が浅い斜里町で行いました実証栽培のうちのサイズコントロールされた2例を下に示します。
H氏

H氏は全粒種イモを株間30cmで植えていますが、種イモの催芽処理がよく、6月の生育状況は写真に示しますように株間、株中の茎数の変動はごく低く、茎密度は21,000本でした。9月上旬の1u当たりの茎密度は21本で、イモ数も78個と多く、やや小粒の理想的なサイズです。イモの肥りが足りない点(1個重:76g)を除けば、栽培設計の工程管理がほほ完全に行われ、サイズコントロール出来た例です。最終的に製品収量は4,000s/10aでした。
UU氏


UU氏は、6月の生育状況については写真に示しますように株中の茎数や株間の変動は比較的低く、茎密度は22,000本以上と多くなりました。9月上旬の1u当たりの茎密度は平均22.5本と多く、イモ数は61個でした。1個重は100gで、サイズ的にはよく揃いました。最終の製品収量は4,081s/10aの収穫でした。
1−4) チップサイズ多収穫の目標数字
次の表は実証栽培から得られたチップサイズの高位安定多収の目標数字です。次項から述べる工程管理技術を駆使して下記目標に挑戦してください。
チップサイズ多収穫の10a当たりの目標数字
要因 トヨシロ スノーデン
製品収量 4,000s 4,500s
茎密度 18,500本 20,000本
茎丈 70cm 90cm以上
肥大期間 60日以上 70日以上
イモ数 54,000個 54,000個
総重量 5,100s 5,300s
1個重 94g 98g
製品化歩留まり 80% 85%
1−5) ある農家の6年間の実証栽培成績
ここに2003年から2008年まで実証試験と栽培に6年間協力いただいたA氏のトヨシロの成績について、表に示す各要因の幅と平均を下表に示しました。
2003年は種イモが全粒植えの灌漑区で、製品収量は4,600s/10aの多収穫でした。2004年は種イモとして大玉のヒートショック処理した灌漑区の成績で、製品収量は4,500s/10aでした。2005年からは栽培設計による実証栽培(灌漑実施)の成績で、2005年はイモ数が少なく、大玉で揃い、製品収量は4,552s/10aと高くなりました。2006年は同様な栽培設計した実証畑で、8月10日に早枯れし、小玉でしたがよく揃い整粒化されましたが、製品収量は3,400s/10aでした。2007年と2008年はイモ数とサイズが理想的な生産となり、製品収量は3,806s/10aと3,881s/10aでした。両年ともに揃いは良く、品質は良好との判断です。
前述の2007〜2008年のA氏の写真参照 2007年 2008年
A氏は6年間平均で製品(販売)収量4t超える生産 と 06年以降の3年間はチップサイズの整粒化製品となりました。
注目頂きたいのが下に示した6年平均の項目です。前述の1−4)で述べたトヨシロの理想的なチップサイズの多収穫の目標数字(茎丈が10cm低いを除いて)とほぼ一致した点です。
表 トヨシロ6年間の実証栽培の成果(北海道大空町A氏)
要因 要因の幅 6年間の平均
植付時期 5月1日〜17日 5月11日
茎密度 16,500〜20,800本 18,500本
肥大始(推定) 6月17日〜25日 6月21日
最大茎丈7下旬 57〜63cm 59.3cm
黄変中期 8月10日〜25日 8月20日
イモ肥大期間 51〜64日 60日
総イモ数 39,600〜65,000個 54,400個
総重量 4,200〜5,500 5,033s
平均1個重(計算) 77〜123g 94g
製品化歩留まり 82%
販売収量 3,400〜4,600s 4,128s
筆者が目指したのも6年の平均に示された数字を毎年繰り返すことでした。今後は地力的に普通の畑を保持するA氏があらゆる工程管理技術(重点:種イモ育芽処理=ヒートショックと浴光育芽、茎密度管理=適切な密度と株間等の変動率低下、灌漑=土壌水分維持と肥培管理、地力増進対策、適切な管理作業=早期培土と分肥等、適切な収穫作業=傷打撲の低減)を駆使した栽培設計を行い、これからも毎年平均値に示されたような好成績を継続してほしいと願っています。
栽培設計と工程管理技術
これから、種イモから収穫に至る栽培技術全般について、チップサイズの高位安定多収を目指す栽培設計と具体的な工程管理技術を記述してまいりたいと思います。そして農家さんは販売収量を天候待ちにすることなく栽培者自身の技術力の結果にしたいものです。
2 種イモの性質と育芽処理
種イモに入る前に種イモの持つ基本的な性質である休眠と頂芽優勢について解説します。そして、これらを有効に活用することが実際のイモ数確保につながる茎密度管理の近道です。
2−1) 休眠と頂芽優勢
(1) 休眠
休眠には内生(自然)休眠および外生(強制)休眠があります。下の図にあるように、内生休眠は栽培中のイモ形成から掘り上げるまでを前期、収穫から休眠終了までを後期に分けられており、栽培的にはこの後期の期間を休眠と呼んでいます。外生休眠は休眠が終っても低温などの外的条件で芽の出るのが抑えられた状態をいいます。
(イモ形成)−(掘り取り)−(休眠明け) (貯蔵) (種イモの育芽処理)
内生休眠前期――内生休眠後期――外生休眠〈低温貯蔵〉――頂芽優勢弱化、浴光育芽―出芽
I→栽培的な休眠←I
休眠期間は品種によって異なり、加工用品種では農林一号は短く、暖地での二期作が可能です。トヨシロ他の品種は3ヶ月程度であり、きたひめ、ワセシロはその他の品種よりやや短い休眠期間を持っています。
北海道の種イモは低温(2〜3℃)で貯蔵されますので、貯蔵庫から出す3月下旬から4月上旬はすべての品種は内生休眠が明け、外生休眠の状態にあります。
この休眠明けを早める条件は、前作の生育後期(内生休眠前期)に高温に遭遇したもの、高い温度(20℃)や変温で貯蔵されたもの、傷、光、温度、水洗等の刺激を受けたもの、酸素の減少、二酸化炭素増加した環境におかれたもの、チオ尿素、ジベレリン、エチレンクロロヒドリン等の薬剤処理されたものである。逆に、休眠を延長させる条件としては、日本ではクロロIPCなどの薬剤の使用は認められていないため、低温貯蔵のみとなります。
(2) 頂芽優勢性
休眠明けの種イモを芽の出始める温度(5℃以上)に置くと、最初にイモの頂部の目から頂芽が出てきますが、これを頂芽優勢性と呼んでいます。また、頂部の目から頂芽が出ますので1茎期の種イモともいいます。この典型的な例として、土中で越冬した野良生えイモは、徐々に温度が上昇するため、常に頂芽が出芽して1本の茎となります。さらに置くと頂部に近い目から基部へと順次芽が出て、2、3茎期、さらに多茎期(老化イモ)へと齢が進みます。これは種イモの生理齢として知られています。
休眠明け直後の種イモは若齢であり、丈夫な太い茎が1本出ます。また、休眠が明けて間もない府県で使用する種イモは頂芽優勢が残り、茎が1〜2本と少なくなってしまいます。さらに齢が進みますと複数の目から芽が出るようになりますが、これを頂芽優勢が弱まったといいます。
種イモの芽数増加は、休眠中、貯蔵(育芽)中の温度の高まりや各種の刺激により休眠が明け、頂芽優勢が弱まり、生理齢が進む結果生じます。これらの現象を有効に用いるためには、畑で適当な茎数(株当たり3.5本以上の茎)が立つような種イモ管理が望まれます。以下に種イモの管理=育芽処理について述べます。
2−2) 種イモの貯蔵と消毒
秋に入手した種イモはまず選別し、できれば消毒して低温(2〜3℃)、多湿(90%以上)に貯蔵します。春先においても、育芽の前に病気を選別で除き、種イモに由来する病害(黒あざ病、そうか病、黒あし病など)を防ぐために消毒を行ないます。薬剤はそれぞれの慣行法で用いているものを使ってください。種イモ消毒について、今回の実証栽培で昇温処理後の種イモを消毒した結果、萌芽、茎数、イモ数および収量に対する影響は全くなかったことを付け加えておきます。
2−3) 昇温(ヒートショック=HS)処理
北海道では、低温貯蔵した種イモを出庫前に徐々に10℃まで温度を上げ、短い芽を出す"芽だし”を行うことが行われています。また、路地貯蔵を行っていた頃は、貯蔵後伸びた頂芽を掻きとり、植えつけますと茎数が増加することが知られていました。以下に述べる昇温処理は、低温貯蔵から出した種イモを人工的に急激に昇温するのが特徴です。今後、この処理は急激に昇温しますのでヒートショック(HS)処理と呼ぶことにします。
また、出庫時既に種イモの多くの目から小さな白い芽が出ているとき(下の写真上段参照)にはこの処理を中止して次の浴光育芽に移してください。
種イモ生産において、8月以降に暑い日が続いた場合(例:2010年)には種イモに温度が蓄積されますので、休眠明けが早く、次年度の春の出庫時には小さな芽が出ている状態となりますのでHS処理は中止します。また、頂芽のみから芽が出たものは短期間のHS処理を行うようにします。
HS処理による効果は、頂芽優勢を弱め、茎数を増加させ、萌芽が早く、揃うことが認められました。
処理方法は以下の通りです。
*: 自家貯蔵庫におけるHS処理ーー 植付け35日〜40日前に、貯蔵庫の中でヒーターとファンを利用して、品温を15〜20℃になるように昇温を行う。数日毎に上下の入れ替えを行う。下の写真のような多くの目から数ミリの芽が出る状況になると次の浴光育芽を行う。
*: ハウスにおけるHS処理ーー植付け35日〜40日前に、サンテナ入りの場合はハウス内に5〜6段に積み上げ、テントをかける。日中のテント内の温度は30℃以下として密閉しない(品温が15〜20℃)。夜間はハウス、テントともに閉めて保温に努める。出来れば数日で上下を入れ替える。
HS処理の効果は、前述の通り、早期一斉萌芽と茎数増加にありますが、処理により出た目の中の白い頂芽は植付けまでに物理的損傷を受けて茎とはならず、この頂芽周辺から複数の芽が出て、浴光育芽により丈夫な芽(茎)となり結果的に茎(主茎)数を増やすことを目指します。
植え付け後の茎の出方を観察しますと、HS処理の場合は、2−5)に述べますように種イモの1目から複数(2本以上)の茎が出ることがほとんどの株で認められました。このことから、カッテングプランターで植える場合に、種イモの1片が小さく切断されても、HS処理イモでは種イモに1目があれば複数の主茎が立つ利点があります。
HS処理終了時期は数ミリの白い芽が頂目以外の多くの目から一斉に出た時点(写真参照)であるため、決まった期間はありません。種イモに前年から加わる積算温度によりますが、通常は4〜10日です。HS処理終了後、昇温のままでは芽が伸び過ぎますので、10℃以下の低温で光のある場所(浴光育芽)に移します。


トヨシロ スノーデン
HS処理中の写真、白い小さな芽が頂芽以外の多くの目から出ます


トヨシロ スノーデン
HS処理終了時期は上の写真のとおり数ミリの白い芽が頂芽以外の多くの目から出たときです
* 昇温(ヒートショック=HS)処理の効果 *
以下の表のとおり、茎密度、イモ数において明確な差がありました。
種イモのHS処理効果
2005年北海道、スノーデンについてU氏のHS処理と無処理の種イモについては、表に示しましたとおり、種イモ当たりの茎数、茎密度、イモ数、1個重、総収量、製品収量ともに予想通りの結果となりました。
表、 2005年における種イモの昇温、浴光処理と生育、収量(スノーデン)
U氏 株当茎 茎密度 イモ数 一個重 収量 製品収量
HS処理 4.7 21,800 49,352 102 5,040 4,592
HS無処理 3.0 15,200 42,500 106 4,511 4,133
2−4) 浴光育芽
浴光育芽はイモの生理齢を進め、光による緑化、節間の短縮、小葉の発達、下部に多数の不定根発生、内部には澱粉、ホルモンの蓄積等による早期萌芽や早期肥大となり、最終的には収量も確保される有効な方法とされています。浴光育芽は短くて強剛な緑の葉を持つ芽(0.5cm程度)を出させるのが目的ですので、低温で散乱光条件が適当です。(写真下段参考)
浴光育芽の方法は、HS処理(芽だし)終了後の状態のものを倉庫などの散乱光、乾燥条件下で20〜30日間処理します。種イモの温度は10℃以下(凍らない程度〜25℃)で、低い方が芽の伸長が抑えられ、良い結果となります。したがって高温になるハウスより倉庫や野外での散乱光条件下が良好な結果となります。光は出来るだけ満遍なく当たるようにします。
筆者は、HS処理と浴光育芽は一対のものであり、植付け前の育苗と考えております。したがって、これらの育芽処理をした種イモは播種ではなく苗の移植であるといえます。ビートの育苗のように育て、移植して茎が整然と均一に立つようにしたいものです。


トヨシロ スノーデン
浴光育芽開始後10日頃の目と芽の状態、早いのは葉を持っている。HS処理により1つの目中の芽数は多い


トヨシロ スノーデン
植付け前の種イモ、1つの目に茎となる数個の葉を持った芽が存在
*:育芽(HS処理と浴光育芽)中の積算温度
上述のHS処理を平均17℃で7日間、浴光育芽を平均10℃で28日間として単純に積算しますと399日℃となります。なお、JA芽室農業振興センターの方法[HS処理(芽だし)後の積算温度]で計算しますと、(10-4=6)X28=168日℃となります。
種イモの植付けに当たっては、天候により2週間程度植え付けが遅れても上述と同じ低温、浴光状態で置いておくと、萌芽はやや遅れますが、イモの形成時期や開花はほとんど影響しないことおよび最終の製品収量には全く影響しないことを確認しています。したがって、チップ原料栽培においては、種イモの茎数を考慮しない4月中の早いだけの植付けや急ぐあまり乱暴な植え付けは、収穫時の品質や収量に結びつかないことを忘れないでください。
2−5) 種イモの目(芽)と茎との関係
今回の実証栽培において、種イモの芽の出方と畑での茎の立ち方を観察した結果、次のことが明らかとなりました。
HS処理した種イモは多くの目から芽の出る種イモとなりましが、実際に種イモから出る茎またはイモの着生する主茎は、下の図や写真に示しますように、種イモのすべての目から立つことなく、頂部に近い1つの目(時に2つの目)から数本が立つ状況となりました。興味深い点は、植え付け前の種イモ目から出ていた芽は萌芽後に茎が立つ目をのぞいて下の写真のように芽が消えていることでした。
このことは、育芽でいくら多くの芽を育てても主茎となるものは1目中の芽でよいことになります。よって、HS処理イモは小さな切片においても目があれば複数の茎が立つこととなり、カッテングプランターでの植え付けは本処理が必須条件となります。


6月 種イモからの茎の立ち方(1ヶ所の目から3〜4本の茎)


最近のトヨシロにおいて、種イモの萌芽状況はヒートショックが不十分で、徐々に温度が加わった場合や浴光育芽のみの場合の主茎の出方は、右の写真のように目の中の頂芽が太く、その周りの茎は細く、イモの着かない茎も多い状況が認められています。おそらく、太いのは頂芽優勢が残ったために頂芽が太くなったと考えられます。
2−6) 育芽処理と種イモの形態による茎数の変化
2003年からの実証栽培における種イモの育芽処理(HS処理、浴光育芽)と形態別の株当たり茎数は下表に示したようです。
トヨシロでは、育芽処理した大玉全粒(40g以上)は4.0本、同様処理の小玉全粒(20〜40g) は3.7本、同様処理の大玉切断(1片50g以上)は3.8本および同様処理の通常の(プランター植えを含む)切断イモ(30〜50g)は3.5本の結果でした。一方、HS無処理で浴光育芽した通常の(プランター植えを含む)切断種イモ(30〜50g)は2.9本でした。
スノーデンでは、育芽処理した切断種イモ(全粒含む) は4.1本、HS無処理で浴光育芽した切断イモは3.5本でした。
以上から、通常の種イモをHS処理、浴光育芽すると、HS無処理に比較して0.6本茎が増えることになります。また、上述のとおり、全粒種イモは切断種イモより多く、種イモの大小では大きいほど、さらに老化種イモでは茎は多くなります。このように種イモの齢、育芽処理や形態により茎数は変化しますので、茎密度の設計に当たっては植付け前の種イモの出芽状態と下表を参考にして栽植密度の実行案を作るようにしたいものです。詳しくは植付け(栽植密度)で述べます。

2−7) 府県の栽培設計と種イモの育芽処理
府県の茎密度、イモ数については、2005年調査の結果、トヨシロの平均値は次のとおりでした。
九州地区、株当り茎数(1.8本)X栽植密度(5,443株)=茎密度(9,800本)X茎当りイモ数(3.6個)=総イモ数(約35,000個)
関東地区、株当り茎数(1.9本)X栽植密度(4,435株)=茎密度(8,400本)X茎当りイモ数(3.5個)=総イモ数(約30,000個)
以上のように、1〜2月に休眠が明けて間もない種イモを使う府県は茎数が株当り2本を切るものを使用している状況です。したがって、種イモの処理と取り扱い方は北海道と異なります。
府県での栽培設計は、種イモの育芽処理から始めます。
最初に、収穫された種イモは休眠の短縮する条件である加温(貯蔵)処理(10〜20℃)を行い、休眠明けを促進し、できれば頂芽優勢を弱め、多くの目から小さい芽の出たものを農家に配布します。植付け(12月〜2月)の1ヶ月前頃から農家では保温(浴光育芽)のためにハウスに入れ、切断、植えつける方法が茎数増加には有効となります。さらに、やや大きい種イモの使用することにより、種イモ当り2本以上の主茎を獲得します。
今、仮に茎数2.2本/株X5,000株/10aとして茎密度を11,000本以上に改善する栽培設計を実行しますと収量、品質は以下のように増加します。
05年の調査結果どおりの茎当り3.5個のイモが着生するとしますと10a当たりのイモ数は38,500個となり、1個重を05年の並の110g(100〜115g)程度に肥大させるとしても総収量は4,200s以上となり、製品収量はその85%の3,500kg以上となる計算です。これらの品質は関東ではやや大玉で達成されますが、畑での茎の変動係数が低ければ玉揃いが良く、比重も均一で高いものが生産されると考えられます。出来るだけ早い実行を希望します。

茨城県、両端の1茎株は5個、中の2茎株は7〜8個
なお、府県では自家用の種イモを6〜7月に収穫し、涼しいところに貯蔵して次作(12〜2月)に植えることを”とばし”といいますが、種イモには積算温度が加わり、老化種イモとなっています。この生育は次に述べますように萌芽は早く、茎数とイモ数が増し、小玉傾向となります。もちろん低温貯蔵して、常温に戻し、芽だし育芽後植えることも有効な方法です。
2−8) 老化イモの生育、収量
府県での“とばし”は老化種イモでありますが、北海道で2004年、貯蔵温度が高く頂芽から芽を出している老化種イモをHS処理と浴光育芽した試験では、表に示したように、通常の浴光育芽のみの種イモと比較して、種イモ当たりの茎数は増えましたが、欠株があるため茎密度は増えませんでした。
しかし、萌芽、開化は数日、枯凋期は約1週間早まり、小粒で収量はやや減じました。老化種イモの浴光育芽のみの場合は、茎数、イモ数は増え、収量、品質は良好で、枯凋は2〜3日早まりました。また、通常種イモ(浴光のみ)ではイモ数少なく、大玉で収穫されました。このように芽の出た老化種イモは処理することにより収穫期が早まる早生化に利用できます。
表、2004年北海道、トヨシロにおける老化種イモの生育、収量
種イモ処理 株当茎 茎密度 イモ数 一個重 総収量 製品量収
老化種イモ、HS、浴光* 4.0 16,064 42,100 97.4 4,100 3,500
老化種イモ、浴光のみ** 3.3 18,082 45,900 98.0 4,500 3,800
通常種イモ、浴光のみ 3.1 16,940 41,300 106.5 4,400 3,900
*:欠株により茎密度は低下、約1週間の早生化、**:2〜3日の早生化
3 畑の準備
3−1) 土壌改善と輪作
種イモが準備できたら、畑で栽培して多収穫を目指しますが、栽培設計の章で述べたように、イモ数は人工的に増やせても、畑の地力がなければイモの肥大は望めません。多収穫は地力の培養に尽きます。この培養のために、堆肥や緑肥の有機質を計画的に施用することは、作物の安定生産にとって基本であり、土壌の化学性や物理性、生物性の健全化につながる重要な要素です。次のステップからは、ジャガイモを植付ける畑について土壌改善の立場から考えてみたいと思います。
輪作
輪作は、生産者の農地管理上、農業経営のなかで重要な位置づけにあります。連作や過作が行なわれれば、土壌関連の病虫害であるジャガイモそうか病や軟腐病、乾腐病、黒あざ病、ハリガネムシ、ジャガイモシストセンチュウ、ネコブセンチュウなどが発生します。これらの防止対策としてイネ科やマメ科を加えた輪作を実施し、化学的要素の均整を保っているのが実状です。センチュウ類に限っていえば、ジャガイモシストセンチュウには長期輪作や抵抗性品種(チップ用ではアトランチック、オホーツクチップ、ランランチップ、きたひめなど)の導入、ネコブセンチュウではギニアグラスなど対抗作物の作付けが考えられています。
北海道で推奨されている輪作体系は5年で、「ジャガイモ→麦類→ビート→スイートコーンまたは緑肥→豆類」となっていますが、現実には十勝地方や多くの地域で「ジャガイモ→麦類→ビート→豆類」といった4種類による4年輪作が行なわれています。このうち、後者では豆類の代わりにほかの作物を加える場合があり、道北においては「ジャガイモ→麦類→ビート」の3年輪作も少なからず存在します。府県においては3年輪作「ジャガイモー野菜等(サツマイモ)−野菜等」が適当と思いますが、輪作の中にイネやマメ科作物、さらに秋作として緑肥を加えることも考えたいものです。
いずれにしても、輪作は病害虫関係を排除するために長期がよく、さらに有機質(緑肥や堆肥)の投入を行った方が地力維持には有効になります。また、ビートやダイコン、ニンジンなどの根採類をジャガイモの前作にすることは、基本的には共通の土壌病害などが発生する兼ね合いから避けるようにしたいものです。
一方、粘土や有機質が少ない、いわゆる地力のない砂質土壌の畑では、前作をビートにし、収穫の残さ物を肥大の助けにしなければならない場合もあります。また、後半に徒長する湿性土壌などでは、ビートを前作にすることは避け、豆類や麦類など、土壌病害を軽減できる作物を選ぶことはいうまでもありません。
3−2) 耕土
土中で肥大するジャガイモは、生育環境が深くて排水も良く、そして軟らかい土壌が適しています。逆に、多湿で、硬く、石の多い土壌は嫌います。最近は、大型機械の踏圧と有機物の不足により、土壌中に耕盤層(表面下20〜30cmに透水性を低下させている厚さ10cm以上の緻密層)が見られます。これらの畑では、前作物の収穫後に縦と横にサブソイラーを用いて心土破砕を行い、空気流通と排水の良い状態にします。加えて、地下水位の高い畑では暗渠や明渠を設置して排水対策を行ない、石の多い畑においてはストーンピッカーなどで取り除くことが求められます。
耕起では、30cm以上の深耕を心がけます。土壌pHについては、ジャガイモは適応範囲が広い作物であり、4.8〜7.1では収量に影響しないとされていますが、アルカリ性に傾きますとそうか病の発生が懸念されるところでもありますので、5.5〜6.5が最適といえるでしょう。
以上のことから、多収穫のための 土壌改善 は長期又は短期に分けて実施します。
長期計画では畑の構造的(均平化、明、暗渠、客土等)な改善により透水性、通気性などの物理的条件を確保し、有機質資材(堆肥、緑肥)の投与により土壌の団粒化の構築をはかり、保水性、保肥性、pHの安定、有用菌の増加などの化学的、生物的改善を行います。
短期戦略としては、耕盤層の破壊により排水性を高め、輪作の徹底により病害虫の回避を図り、イモ肥大に有効な完熟堆肥の施用と追肥、それに生育、肥大によい環境をもたらす深耕などが挙げられます。いずれの場合も、畑が個々にできるだけ均一な地力となるような改善が望まれます。
3−3) 土壌診断
畑作地帯では前述の輪作が行なわれていますが、前作の種類によっては土壌中の残存肥料に大きな差異があるため、あらかじめ土壌診断を実施し、施肥設計の参考にする必要があります。
今回の実証栽培では、落花期以後に茎の伸長が停止した畑で、イモ数の増加に見合う肥大ができず、最終的に一個重の軽い小玉で収穫される例(1−2、イモの肥大、で示した表)のとおり数多く認められました。
これは、生育後期に供給される土壌養分が量的に足りないか、水分不足で供給されなかったかのどちらかであると考えられます。しかし、肥大に影響する3要素の施用量の判定は、土壌診断の結果からは明確に読み取ることができませんでした。参考となったのは、土性、土壌の色、腐食の量、CEC、微量要素の欠乏状況、耕土の深さ、熱水抽出窒素量などでした。
こうしたなか、最も有効だったのは、生産者自身が把握している、当該畑における前回のジャガイモの出来と前作作物の生育状況です。これが、最終的な施肥設計の決め手となりました。したがって、施肥量の決定は、畑に合わせて生産者自身が決断するというのが結論です。
畑のカルテ(=履歴、前回のジャガイモ作と前作の生育状況および土壌診断の結果)を考慮し、イモ数に影響する基肥と肥大に影響する養分について施肥設計を行ないますが、具体的には施肥の項目で述べます。
3−4) 耕起、砕土、整地
前作の収穫後に耕起を行いますが、耕起は30cm以上の深さで行ない、早めに行うことは前作の残さ物や有機物、雑草などをすき込むことで分解を促進するほか、病害虫の軽減にも役立ちます。
砕土・整地では、軟らかく土塊のない土に仕上げることを心がけ、良好な土壌環境(とくに水分)に整えます。こうすることで、初期生育が優れ、培土作業も容易になり、イモの形成や肥大も順調となります。加えて、培土が大きくできるため、収穫機によるイモの傷や土塊選別が軽減されます。粘質土壌では、降雨後に早まった砕土・整地作業を行なうと、その後の乾燥時にイモや根への水分補給(毛管水)ができなくなる恐れがありますので、とくに注意が必要です。
4 植付け時期
4−1) 植付けの時期
アッシュ等の散布により融雪処理を行うと植付けが約1週間早まることが知られています。これは低温であっても早く植えると根の発育が促進されるため、初期生育が良くなります。もし、早期萌芽による霜害が生じても植物が小さいときには回復が早く、実害は少ないようです。しかし、着蕾期(イモの形成が始まる時期)になると霜の被害は大きくなりますので、晩霜を予想して出来るだけ早い植付けをします。したがって、北海道の植付け時期は晩霜の1ヶ月前の4月下旬から5月上旬となりますが、一般の植付け時期の目安は、平均気温で8℃前後(府県のマルチではそれよりも低い)と考えられます。
気温が低いときに萌芽を早めるためには、マルチ、べたがけ等により地温を上げる処理を行なう必要がありますが、地温上昇程度は白マルチ、黒マルチ、べたがけ、ソイルマルチ(浅植えし、土寄せを数回に分けて行なう)、通常植えの順に高く、萌芽も地温(積算温度)が高くなる順に早まります。その結果イモの形成時期も早まることとなります。
植付け時期について、早く植えること以外に重要なことは、育芽した種イモはイモの形成が早まることを認識することです。よって、1週間程度植付けが遅れても種イモを浴光育芽状態で保存しますと、イモ形成時期は遅れることがありません。畑の状態がよくなってから丁寧に植えつけることが肝要です。
4−2) 栽植密度(茎数管理)
トヨシロでは茎密度管理の項の図に示したとおり、10a当たり54,000個のイモ数を収穫するためには18,500本の茎密度が必要になります。したがって植付け時の栽植密度は、表のように、種イモの準備が完了してから、品種や種イモの形態、大小および育芽処理の状況により種イモあたりの茎数に変動がありますので、それぞれ18,500本となるように栽植密度を加減(4,500〜6,200株/10a)する必要があります。
トヨシロでは通常の種イモを育芽処理(HS処理、浴光育芽)した時の茎数は株当たり3.6本前後立ちますので、栽植密度は10a当り5,100株(75cmの畦幅だと株間は26cm、72cmの畦幅だと株間は27cm)となります。また、全粒や50g以上の大きい種イモを育芽処理して植える場合は種イモあたりの茎数は3.7本以上立ちますので、栽植密度は4,500〜4,700株(畦幅75cmでは株間27〜29cm)に植えればよいことになります。
スノーデンの場合は、茎密度管理の項の図から18,000本の茎密度ではイモ数50,000個となり、このためには畦幅75cmのとき、株間30cmでよいことになりますが、チップサイズを多収穫するためには20,000本の茎密度し、54,000個のイモ数にするする必要があります。育芽処理した4.1本の茎の場合では、10aあたり4,870株の栽植密度となり、75cmの畦幅では株間27cmとなります。

府県については38,000個のイモ数を確保することを考えますと、茎密度はおよそ11,000本となります。加温処理して2.2本の茎数の場合の栽植密度は10aあたり5,000株(例:畦間90cmX株間22cm)となります。
茎密度の結果の照合は当年度のイモ数や収量、また次年度以降のよい参考となりますので萌芽揃期に調べます。調査方法等は管理作業の項で述べます。
4−3) 植付けの方法
植付けは、各種のプランターを用いて行いますが、萌芽時に上述の株数になるよう畦幅、株間の設定を行います。畦幅は72〜75cmで、株間を調節して高い茎密度を狙います。加えるに、単位面積当たりの株数、茎数が上述のように確保されても、株は畑に均一に配置される必要があります。
最初に、株間の距離変動が大きいとイモの品質、整粒化は望めませんので、変動係数30%以下(±9cm以内)を目指して、プランタ−など作業機の整備とスリップを加案し、均一な株間とするようなオペレ−トの必要があります。
また、種イモの育芽処理、形態、大小別に分けて植え、株当り茎数の変動係数を30%以下(生育を揃え、茎1本をなくし、3〜5本)にします。
畦幅が72cmの場合は株間が約4%(26cm→27cm)広くても茎密度を確保できますので、イモ数と収量確保には問題はありません。また、72cm畦幅の実証栽培では緑化によるロスは増加しませんでした。一方、畦幅の広い(平均80cm)ソイルコンデショニングでも、茎密度が確保されますと品質、収量は良好な結果となります。
同様に、府県では80〜100cmの畦幅で栽培されますので、茎密度で述べましたように、加温種イモの処理と栽植密度の組み合わせで11,000本の茎密度が確保できれば多収穫は可能と考えております。
なお、覆土は一般には種イモの厚さの2倍(約5〜7cm)としますが、土性により植付けの深さは変える必要があると考えます。その場合、砂地ではやや深く、粘土質土壌ではやや浅くし、管理作業で述べる培土を通常通り行います。
4−4) マルチ栽培の利点
九州、関東では加工馬鈴薯栽培においてもマルチが行なわれております。マルチは、地温上昇による早期萌芽が得られる利点があります。加工原料は品質、とくに比重(澱粉)の高いものが求められますが、中生種のトヨシロでは生育後期に生育限界温度23℃(とくに地温)を超えるため、温度と品質との関係から加工品の適期収穫は、鹿児島は5月中、関東は6月中となります。このため、生育期間を前倒しする手段としてのマルチ栽培が行なわれております。
このほかに、マルチ栽培は土壌水分調節効果が期待できます。まず、マルチにより土壌表面からの水分蒸散が抑制され、乾燥を防止する効果がある一方、大雨による雨水は一度土壌に吸い込まれ、毛管水として上昇してくるので、大雨による帯水、冠水しない限り、過湿になることはないという利点があります。
このように土壌水分変化がマイルドに変化するため、イモの肥大は比較的スム−スに生じ、イモの奇形、二次成長、内部障害(褐色心腐病、中心空洞)等の肥大の遅速(土壌水分過不足)で生じる障害はとくに多くはないようです。しかし、前述したように、生育後期の高温による急速な肥大での大玉、低比重となりやすい点や高地温による黒色心腐病の発生しやすい欠点を持つことになります。
4−5) 肥料の働き
主要肥料成分の働きについて以下に概要を述べます。詳しくは成書をご覧ください。
窒素(N2):作物体の蛋白質を構成する必須成分であり、適度の場合は茎葉、イモの肥大は良好となる。不足は生育を悪くし、収量減となり、多すぎると茎葉生育は旺盛となり、徒長し、イモへの澱粉蓄積が阻害される。
リン酸(P2O5):生命現象と深い関わりがあり、作物のあらゆる部分に存在するが、特に成長部分に多い。馬鈴薯では生育初期に必要で、イモの出来るとき(イモ形成)に重要な役割を果たす。
カリ(K2O):ジャガイモでは吸収量が多く、澱粉の蓄積に重要な役割を果たすとされているが、過剰のカリはかえって澱粉蓄積を妨げる。
石灰(カルシウム、Ca):各種の生理作用に重要とされ、特に細胞同士の接合の役割が大きい。CaはK2Oとマグネシウム(Mg)とのバランスが大切で、Caの欠乏は他の成分(K2O、Mg)の過剰による場合もある。
マグネシウム(Mg):葉緑素を構成する物質であり、必須要素である。馬鈴薯では下葉に欠乏症状が出易い。
その他の微量要素:各種の生理作用に必要であり、欠乏に応じて施用する。
4−6) 基肥の設計
土壌改善を行ない地力培養することは当然ですが、当年度の基肥については土壌診断の結果とその地方の土性別施肥基準を参考にしながら、前回のジャガイモ作や前作作物の生育状況を参考に施肥設計を行います。
10a当たり4tの製品収量のためには、まず、イモ数確保のための基肥を考えますが、これは初期生育を促進するものであり、茎密度を高めても、従来行っている施肥設計でとくに問題はありません。
しかし、イモ数確保のための施肥においては窒素質の効用を考えて、元肥で窒素以外を散撒し、窒素は初期生育分を作条施用し、イモ肥大のためにはさらに分肥を試みることも可能です。
基肥で考えたいのは地力のある畑で多収穫を狙うために基肥の窒素質を増量することです。次に述べる4−7)ー1の例では、窒素を増やすと初期生育から茎の伸長が著しく、その伸長は開花後にも続き、徒長して倒伏し、イモ形成が遅れ、イモ数が少なくなることです。必然的にイモは大玉となり内部品質は劣ることとなります。
4−7) イモ肥大のための設計
イモの肥大を確保するための茎葉確保とその持続期間の延長を図る施肥設計を行いますが、ここに畑の地力を便宜的に3つに分けた例を示します。
1(地力のある畑)ー開花以後も茎葉の伸長、増大が見られ、イモの肥大が60日以上続くような地力のある畑においては、従来の基肥の施用のみでイモ数に似合う肥大が見込まれます。このような畑では基肥、とくに窒素質は減量し、生育後半の茎葉徒長を防ぐことを考えます。
これらの畑の見方としては、まず、前回のジャガイモ(トヨシロ)の生育が5月上旬植えの場合、茎丈が70cm以上になり、8月20日以降(イモ肥大期間60日以上)までも茎葉が保持されるような畑を想定しています。
別な角度からは、耕土は30cm以上と深く、黒褐色の粘土25%以上の壌土〜埴壌土や黒色(10%以上の腐食含有)の火山灰性土壌、並びに多量の堆肥等有機物が施された土壌です。加えて土壌診断で保肥力が強いCECが20me以上の畑が該当します。なお、土壌水分が多い畑では排水対策を実施します。
2(地力中庸の畑)ー1と3の中間(例:トヨシロで開花後から茎葉の伸長が鈍り、茎葉は8月20以前に黄変=イモの肥大期間60日未満))の地力の畑においては、7月下旬のイモ数決定後からイモを肥大させる増肥が必要となります。
このような畑では通常の基肥により初期のイモ数確保した上、当年度戦略としてイモ肥大のための養分として、遅効性肥料や完熟堆肥(2t以内)の施用と後述する分肥等の増肥(全体で2割以上)対策が必要となるものと考えられます。また、ビートの後作も考慮したいものです。このような畑で毎年多収穫するには、長期的な堆肥、緑肥の有機資材の施用による土壌改善を実施する必要があります。
3(地力のない畑)ートヨシロで7月下旬に茎丈の伸長は完全に停止し、8月15日以前に早枯れ(イモ肥大期間55日未満)するような畑では、多収穫のためには基肥も標準施肥量より1割以上多くし、イモ肥大のための増肥対策を実施する必要があります。
その畑の見分け方は、排水のよい粘土質が25%以内の土壌(砂壌土、砂土)や腐食の少ない土壌(5%以下)の畑などで、土壌診断のCECが10me以下の場合が考えられます。
このような畑に植える場合は、短期的にはビートを前作にし、完熟堆肥2t程度の施用を行う必要があります。基肥としてイモ数確保のために1割以上多く施用すると共に、一部肥料の砕土前の全面散布に加えて後で述べる分肥も必要になるものと考えられます。また、2と同様に、長期的に堆肥、緑肥の有機資材の施用により地力の培養を行う土壌改善は農業経営上の必須状件です。
4−8) 総窒素供給量
かん水栽培の経験(かん水による原料の安定生産)から、作条に施用した窒素成分は終花期にはほとんど吸収され、イモ数は確保されますが、その後のイモ肥大のための窒素成分が不足することが認められました。欧米での灌漑栽培においてはイモ肥大のための分肥(液肥散布)が行われます。日本でも地力の劣る畑では、肥大のための分肥は今後のイモ作りの重要課題となるものと考えます。
トヨシロで製品収量 4t/10a 以上を想定し、窒素施用をイモ数確保の開花までの生育初期と それ以後のイモ肥大期間(トヨシロ60日以上、スノーデン70日以上)に分配して施す という考え方です。すなわち、まずスターターとして初期生育を促し、ストロンとイモ数を増加させるには萌芽期から開花期までの窒素の供給を行い、この生育に続く中、後期のイモ肥大をスムースに行うための窒素も欠乏させないようにします。すなわち、窒素質肥料について天然供給量、植付け時の基肥、イモ肥大のための分肥 を合計した総総窒素供給量 を考えるものです。詳しくはサイズコントロールと多収穫技術 2-2) 総窒素供給量と施肥方法の項で述べたいと思います。
植え付け作業の終了に当たって
再度、製品収量4t生産の場合の茎葉生育状況を示しますと以下のとおりです。
茎密度は18,500本以上を確保し、中生のトヨシロで茎が太く、開花以後も徐々に伸長し、最大の茎丈は70cm以上で、75cmの畦がふさがっている状態であリ、その後には茎が斜め横に寝るような状況、加えて、イモの肥大期間(着蕾期から黄変中期)が60日以上あることが必要です。スノーデンは茎太く、同様に開花以後も伸長し、茎丈90cm以上で、生育後期には完全に畦はふさがり、倒伏し、イモ肥大期間(着蕾期から黄変中期)が70日以上あることが望ましいと考えています。
以上の植付け作業が終了すれば、萌芽後に茎密度の測定、変動係数などの調査を行い、その後の管理作業を経て収量の最終結果を待つことになります。
今まで述べてきた栽培設計を予定どおりに実施した場合は、植付け終了時点で高品質多収穫技術のほぼ8割は終わったことになります。
今後に残されたものは、畑の地力と萌芽の状況とを考えた培土時期の決定、茎葉維持とイモ肥大のための分、追肥や薬剤散布等の管理作業としてあります。さらには収穫時の傷打撲防止対策と土壌病害等のロス軽減対策が行われる必要があります。
5 管理作業
5−1) 除草、中耕
植付け時培土や萌芽前培土を行う場合は除草剤を用いるが、通常の場合は萌芽前に雑草が見られるので軽く土寄せをかねて畦間除草を行ない、萌芽後は1週間で除草、中耕を兼ねた土寄せ(半培土)を行ないます。この方法はソイルマルチングとも呼ばれ、地温上昇、除草効果もあり、有効です。その後できるだけ早く培土します。
5−2) 霜害
萌芽後すぐに晩霜に会う場合は生長点が枯死しても回復は早く、イモ数はやや少なくなることがありますが、その後に生育期間があれば収量への影響は少ないようです。しかし、萌芽揃期や着蕾期に強い霜に遭遇しますと回復は遅れ、品質と収量に影響する結果となります。
鹿児島の場合、平年の晩霜は3月11日頃でありますが、イモの萌芽期もほぼ同じ頃となります。収穫時期が気温上昇前と限定される府県においては、イモの形成時期を早めながら霜を回避する手段が必要になります。
これは大変難しい問題ですが、萌芽期の霜は来るものとして対応する必要があります。対策としては、種イモの加温と浴光育芽によりイモ形成を早める手段を取り、植付けはやや遅れて行ないます。これは霜に遭遇したときにイモの肥大期間を確保する狙いがあります。
霜にあった後に回復の兆しが見える場合は適量の窒素肥料を葉面散布か畦間施用し、徒長しない程度の茎葉の繁茂を助けることも考えられます。
なお、重要なことは、霜害を恐れるあまり、植付け時期を極端に遅らせると、逆に土中のイモ肥大は遅れ、収穫も遅れることになりますので注意してください。さらに、早植えの場合は、晩霜に対する積極的な予防対策(被覆、潅水、送風等)が可能であれば実施してください。
5−3) 培土の効用
栽培における培土の意義は、収穫作業の利便性と収量増と考えられます。一方、培土は適切に行われますと 倒伏防止、イモの緑化防止、雑草防止、水分保持効果、断熱効果等があります。まず、培土のない野良生えイモについて考えてみたいと思います。
野良生えイモは普通1本の茎が萌芽し、その地下茎(白色)の長さは地表から種イモまでの距離(覆土の厚さ)で決まります。地下茎の長さが異なっても節数は同じ5〜6節となり、節からはストロンが伸びてイモを形成し、太ります。イモの形成は暗黒条件で生じ、地表に近い節からのストロンは光を感じて枝に変わります。したがって、平地においては雨等による土の崩れ、ひび割れはなく、緑化はないことになります。

地下茎の長さについては右の写真で説明します。6月23日の十勝地方の畑の例ですが、植付け時培土の左側は地下茎の長さが15cm程度で、イモの形成が始まっています。白色の地下茎より出たストロンは上下と水平に散在し、最上のストロンは枝になろうとしています。右側の覆土(6cm程度)の場合は、覆土と同じ長さの白い地下茎から出たストロンは込み合っており、水平のみに分布しています。同様に上側のストロンは枝になろうとしています。この覆土の上に培土されます。
5−4) 培土の時期
北海道では植付け後約1ヶ月で萌芽期となり、地下ではストロンも伸び始めます。さらに2週間すると、地上は着蕾期となり地下ではイモの形成が始まります。
皆さんにお願いしたいのは、萌芽期(ストロン発生時期)までに培土を行い、イモの着生、肥大場所を確保してほしいということです。
萌芽前で目標がなく作業がし難い場合には、萌芽後にできるだけ早くに行うようにします。これが植付け時又は早期培土になります。この時期までに培土されますと、もし培土が偏ってしまっても、イモは暗黒で着生しますので畦の反対側に多く着生することになります。また、ストロンが伸び、イモが形成してからの遅れた培土は偏よると緑化の原因となり、根やストロンを傷めます。
上述のとおり、培土時期は植付け時から萌芽期まで1か月もありますので、土壌水分が良好(手で握って固まるが指で押すと少し壊れる)なときにイモの着生、肥大場所(15cm以上)を確保してください。もし、時期が遅れた場合は、根やストロンを傷めないように丁寧に培土してください。ごく早い萌芽前の培土(植え付け時など)は除草のため除草剤処理が必要になります。
5−5) 培土の形
培土の形については品種、土性により異なりますので一律の形はありませんが、大体の目安としては、種イモ上から培土表面までの距離(イモの着生、肥大領域=15cm以上)を保持してください。もちろん、緑化と断熱(黒色心腐予防)に影響する地表に近いイモから地表までの距離は大変重要と考えております。したがって、培土の形は培土後の高さよりイモの収穫時期にイモ上部にどれだけ土壌が被さっていたにより決まるということです。
培土の形ですが、かまぼこ型など慣行法で用いられるものは高さにおいて劣りますが、多くは横幅があり、スノーデン等のストロンの長い品種については良好と判断されます。
また、筆者の行った実証栽培において、機種よる培土の比較は、早期に十分なイモ着生、肥大領域が確保された場合には緑化等の品質においての差異は認められませんでした。
なお、緑化についてですが、植付けにおいて種イモが浅植えとなった場合には、イモの着生、肥大場所が畦の上部に限定され、いわゆる上成りとなります。この場合には培土の高さに関係なくイモの肥大領域が短くなりますので緑化等の発生の危険性は高まります。
加えて株間の偏在により株間が狭い場合には、軽火山灰や砂地においてはイモが押し上がって肥大し、雨による土壌流亡による緑化、粘土質においてはひび割れによる緑化が見られることになります。このような緑化を抑えるには、植付け時に種イモを整然(やや深めに 株間を正確に)と植えつけることが肝要です。
一般的には上述の緑化と排水、収穫時の傷打撲を考慮して培土の谷底より種イモが上にくるようにし、培土後の谷と山の差は25cm程度になるようにします。
5−6) 分肥方法
今、4−7)の施肥設計で3と判断される畑(生育後期に茎葉が伸長停止し、早枯れする畑)において増収を図るには、イモの肥大を促進する窒素の分肥を行う必要があります。同様に、施肥設計で2とされる畑においても、茎密度が確保されたにもかかわらず、畑の総供給窒素量から計算して不足する場合には、同様な分肥は行う必要があると考えられます。2003〜6年の実証栽培でも数軒の農家の畑(施肥設計で2)において分肥を行った結果、製品収量が増えた例が認められました。


分肥方法は、上の写真に見られるようにイモ肥大のための窒素成分を、トヨシロでは萌芽期〜開花始に、スノーデンでは萌芽期から開花期に、成分に換算して2〜6s/10aを1〜2回、ブロードキャスターで畑一面に散撒します。
5−7) 葉面散布
霜害に有ったとき、過湿により根の機能が低下して生育不良になったときなどには、窒素質肥料を中心に即効的に葉面散布する必要があります。一般的には生育を回復させるためには3要素を含む液肥+微量要素などが散布され、また、土壌に施用しても不可吸態に変化しやすい要素(マンガン、亜鉛、銅など)は葉面散布の効果が期待できます。
開花期以後に茎葉を強くし、それを維持する目的で燐酸分や上述の微量要素等の葉面散布が行われることがあります。この場合、基肥として窒素分を過多にしたために軟弱、徒長したものについては、これを止める処方はありませんので注意してください。(肥料の足し算は可能ですが、引き算は不可能です)
葉面散布は、適正量を温度に注意して(高温では希釈を高める)、午前中に散布し、散布直後は雨の無いことを確認し、約1週間毎に2〜3回行なうようにします。
5−8) 灌漑(土壌水分管理)
土壌水分はイモ数、肥大どちらにも影響する重要な要因でありますが、近年、北海道では全品種においてイモ数が少ない傾向にあります。これは、ストロン数とイモ数に影響する萌芽揃期(5月下旬)〜開花期(7月中旬)に雨が少なく、土壌水分が乾燥気味になることが大きな原因と考えられます。
このことを確かめるために大規模実証栽培を行いました。
その結果はーかん水によるチップ原料の安定生産ーをご覧ください。
潅水の利点として、イモ数増加とともに、中期以降は肥大の均一化、乾腐病や中心空洞などの生理病やそうか病の防止が挙げられます。他に、土壌水分が蒸発するときに気化熱が発生し、地温を下げる効果があり、これによる比重の改善も期待できますが、トヨシロは7月中旬以降には軟腐病の心配があり、潅水は控えた方がよいようです。
5−9) 薬剤散布
病虫害の発生状況を見ながら、適期に有効な薬剤の散布を行ない、茎葉の維持に努めます。概略は、植えつけ45日頃から疫病の初発に対して、温度が上昇する7月上旬からは軟腐病(とくにトヨシロ)に対しての散布を開始することになります。とくに重要病害の疫病については、初発生や気候条件を見ながらの散布が望まれ、発生予察を参考に、市町村又はカルビーポテトの防除手順等に従って適期散布を行います。
6 栽培設計の確認
6−1) 茎密度の計測
萌芽揃期の6月中旬にイモ数に影響する茎密度を測定します。測定方法は1u当たり、75cm(72cm)の畦幅ですと、133cm(138cm)当たりの茎数を3ヶ所以上測定してトヨシロ18.5本(10a当たり18,500本)以上の茎密度かどうかを確認します。
また、粒揃いに影響する植付け精度の状況を同様に3ヶ所以上調査します。方法は10〜20株の株当たりの茎数、株間の距離、茎の高さを測定し、いずれも30%以内の変動で精度が高いことを確認します。
以上のことが設計どおり行われていると、植付け8分作が実施されたこととなり、粒揃いのよいイモの数は保証されたことになります。

右の写真は開花前のトヨシロ、6月下旬の生育状態です。種イモの管理と植付け精度は左側は良好です。その結果、10a当たり総重量の両者の差は小ですが、イモ数は左が右より11,000個多いので1個重は22g(119g⇒97g)軽く、整粒化出来ました。
6−2) イモ数の仮計測と生育観察
イモ数の調査は開花盛期頃(7月中〜下旬)にそれぞれ防除畦の2、3、4茎の3株を掘り取り、10g(10円玉大)以上のイモを数えます。その後に茎当たりに換算します。この開花盛期頃におけるイモ数調査は茎当たり3〜4個(平均3.5本)、3茎株で9〜12個として観察されますが、8〜9月に行う最終の製品調査より2割程度多いのが普通です。よって以下のとおり10a当たりのイモ数を仮計算できます。
イモ数(仮計算)(54,000個)=茎当たりイモ数(3.5)X0.83(歩留)X茎密度(18,500)
7月下旬の生育状態の観察は以下を参考にして推定してください。
1) 5月上旬に植えたトヨシロでは7月下旬は花が散る終花期となりますが、この時期に茎葉が生育停止(茎丈60cm未満)し、頂部の葉色が色あせて黄緑となった場合は、今後の茎の伸長はなく、8月中旬に早枯れし、イモ肥大が停止し、平均1個重は90g以下となる確率は高まります。
スノーデンでは、同様に茎丈が70cm未満で、畦間がふさがらず、茎葉上部が立ったように見えるものは、8月には下葉から枯れ上がる状況となり、肥大は制限されます。
2) 同様トヨシロで、この時期に茎葉の伸長は鈍りますが、茎丈も65cm以上で、茎葉は緑色を保ち、がっしりとしており、花(2番)が見られる場合には、今後の伸長もあり、茎葉持続期間(イモ肥大期間)があと1ヶ月以上(8月下旬まで)続くものと見なします。
したがって平均1個重は90g〜105gの中玉で高品質多収穫が期待できます。
スノーデンでは、この時期に2〜3番花が咲き、茎丈は70cm以上で、今後の伸長が望めそうな茎葉の広がりを持ったものは、以後倒伏しますが9月上旬までの茎葉維持とイモ肥大が続くものと見なします。
3) さらに、トヨシロで、この時点で茎丈が70cmを超え、軟弱で倒伏し始めている場合は、イモ数は少なく、今後、茎葉は過大となり、徒長して倒伏することとなります。茎葉持続期間の長短は軟腐病、疫病の発生状況により変わりますが、平均1個重は110g以上の大玉、低比重となる兆候です。
スノーデンでもこの時点で80cm以上となり、軟弱で倒伏を始めているものは、トヨシロと同様にイモ数は少なく、今後は徒長、倒伏し、茎葉の維持は9月上旬以後まで続く場合にはイモは大玉、低比重となります。
6−3) イモの肥大と収量予測
イモの肥大期間はイモ形成時期から黄変中期までであり、この間の茎葉繁茂状況により肥大の良否が決定します。最終の収量予測調査はトヨシロでは8月下旬、スノーデンでは9月上旬に行ないます。
ランダムに3箇所の茎密度が6月調査と同数の場所、1u(75cmの畦幅では133cm)当たりのイモ数と重量を測定すると概略判定できます。
通常の地力のある畑では、1u調査で、茎密度が確保されますと20g以上のイモ数は50個以上で、総イモ重は5s以上が望ましい数字です。
イモ肥大(大きさ)を表す平均1個重は総イモ重÷イモ数から計算しますが、平均的な1個重は約90〜110gとなります。
10a当たりの製品収量は掘り取って、倉庫に運び、計測した規格品重量ですが、仮計算は1u当たり総イモ重 X 1,000から各種ロス(15〜30%)を差し引いたものとなります。
トヨシロの栽培設計の確認その1〜3を理想的な数字にしますと以下のとおりです。
その1)―10a当たり茎密度(18,500本)
その2)―その1) X 茎当たりイモ数(2.8個=3.5X0.83)=10aイモ数仮計算(54,000個)
その3)―その1)と同じ茎密度の1u当たりの総イモ重(5.1s)÷同総イモ数(54個)=
平均1個重(94g)=サイズの予測(中玉、整粒)
10a当たり総重量(総イモ重X1,000)=5,100sX0.8(中粒の場合、各種ロス20%をマイナス)=
製品収量予測(4,000s)
*:上述4,000kgは生育観察2)のような生育状態
7 収穫時期
7−1) 茎葉処理
掘取りに当たり、収穫約2週間前の黄変期以後に茎葉を処理する。黄変期のイモはチップ原料として化学的成熟(チップカラーに影響する還元糖、ショ糖の成分)はほぼ良好ですが、表皮のコルク化等はまだ不十分であり、物理的には未熟です。
処理の効果は、掘り取り作業を容易にし、サイズを制御し、比重などの内部品質を高め、物理的な成熟を早め傷打撲の軽減を図ることにあります。
本稿ではチップ用原料のトヨシロとスノーデンについて述べます。トヨシロは茎葉黄変が8月下旬以降になるものについては茎葉処理は必要ですが、それ以前に茎葉枯凋するものについては必要がないように思われます。早く枯凋したものは晴天、高温下では黒色心腐病や2週間以上置くと黒あざ病の菌核付着が見られます。
スノーデンはすべての場合に茎葉処理は必要ですが、掘り取り作業の難易だけの目的で処理されているように思われます。チップ原料では今まで述べてきたように、サイズ、内部品質はイモ数の確保で可能であるところから、傷打撲の軽減と腐敗防止を考えたいと思います。それに、低温多雨時の疫病による塊茎腐敗とくに堀取り時感染が心配される場合には、掘り取り2週間前に茎葉枯凋していることが条件となりますので処理は確実に行う必要があります。
処理の方法は、チョッパ−による刈取り、ピラフルフェンエチル(デシカン)乳剤散布またはチョッパーと薬剤の併用も良い方法ですが、農家自身において最も有効と認められる方式を導入することが処理効果を高めることになります。
7−2) 掘取
茎葉処理され、枯凋したイモは全ての面で完熟に向かいます。すなわち、イモの細胞分裂と養分の移行は完全に停止し、表皮細胞へタンニンが移動して厚く、固くなり、コルク層が形成されるのです。皮目の開きは縮小し、呼吸は次第に減少し、休眠状態に入り、貯蔵が可能となります。
黄変したトヨシロは茎葉処理後又は枯凋後1週間程度でこのような状態に達します。しかし、まだ茎葉が維持されているスノーデンでは薬剤処理のみでは、処理後20日間を要することがあるので、機械的に除去する手段も併用する必要があります。
掘取りは、土があまりに乾燥していると打撲等がつきやすいので、適度な湿り気のある時期に、ハ−ベスタ−では静かに傷、打撲のないように、また第1コンベア−には土を多く上げるような堀取りを行ないます。掘取機からコンテナへ移すときにはとくに注意して、収穫、運搬には10℃以下の気温では行なわないようにします。イモの移動部分には防護対策を講じ、落差は15cm以内にとどめることが大切です。
なお、土壌が過湿状況での掘取りは、イモの水分吸収(膨圧)による傷、割れと疫病菌(土中及び腐敗イモ上の胞子)の存在により掘取り時感染が生じ、貯蔵中に腐ることがありますので土壌がやや乾燥してから堀取るようにします。また、掘り取り後は速やかにイモの表面の乾燥を図り、光には長く当てないように遮光して倉庫へ運ぶことですべての工程が終了します。
最後に 栽培設計から倉庫への納入まで高品質多収穫技術について述べてきましたが、イモつくりは自然界を相手にしたものですので、提案した栽培設計どおり完結することは不可能に近いのかもしれません。しかし、イモ数を計画通りに達成してイモの太りを畑の地力にゆだねる今回の提案は、きっと畑の実力を知っている農家さんには嬉しい結果を秋にプレゼントしてくれるものと確信しております。
今回提案のイモ創りは、考え方は新しいかもしれませんが、新しい機械や資材の提案はしておりません。
どうか来年からは栽培設計を自ら行い、部分的な実行ではなく、今まで述べてきたすべての工程管理技術を是非実行してほしいと願うものです。