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ポテトを育てるー加工栽培の特性

これより加工原料栽培(栽培基本、品種、化学的特性、病障害の発生と防除)についての専門的記述となります

  • 加工原料栽培の基本

  • 加工原料の品種特性

  • ワセシロ
  • オホーツクチップ
  • ランランチップ
  • トヨシロ
  • アトランチック
  • さやか
  • ノーキングラセット
  • C−40
  • きたひめ、
  • シェポデー
  • 農一
  • スノーデン
  • コナフブキ 
  • ホッカイコガネ
  • ムサマル


  • 品種と栽植密度
  • 栽植密度、整粒化、 いも重型、中間型、いも数型


  • 形態的特性

  • 目の深さ、いも数の増減要因(大きさ)、形状


  • 化学的(組織的)特性

  • 化学成分
  • 乾物、比重
  • 澱粉
  • 糖類、メイラード反応、CMM理論
  • 加熱後の細胞構造
  • 調理後黒変
  • グリコアルカロイド、ビタミン、ポリアクリルアミド


  • 病障害の発生と防除

  • 疫病
  • 軟腐病
  • 黒あし病
  • 乾腐病
  • 青枯病
  • たんそ病
  • 輪腐病
  • そうか病
  • 粉状そうか病
  • 黒あざ病
  • 緑化
  • 傷、割れ
  • 打撲
  • 中心空洞
  • 褐色心腐病
  • 黒色心腐病
  • 圧着痕
  • 二次成長
  • 維管束褐変
  • 冠水、滞水害
  • 虫害
  • シストセンチュウ


  • 加工原料の栽培の基本


      1 品質

    加工用馬鈴薯は安定供給(量)とともに原料馬鈴薯の品質がより重要となるが、この品質を構成する要因には、品種、形態、化学(成分)、病障害の4つの要因が挙げられ、それぞれが品質に関与している。
    このうち、品種を選ぶことがもっとも重要となる。チップ原料品種は、形状が丸〜楕円形で、目が浅いものに加えて、以下に述べる品質、生産、貯蔵目標に合致した品種を選択する。
     品種以外の3要因は栽培方法によっても品質が変化する。ここに、高品質チップ原料生産におけ る具体的な品質目標を挙げれば次のとおりである。

    チップ原料の品質

     * 大きさ規格=60〜340g(できれば300gまで)で、粒揃い良好
     * 比重=1.085以上の完熟品
     * チップの成分(収穫時)=グルコ−ス:0.3mg/g、ショ糖:1.5mg/g以下
     * チップのカラ−(アグトロン値 )=40以上で均一
     * 病障害(腐敗、奇形、傷、打撲を含む外部、内部障害等)=10%以下

    2 生産

     上記の品質目標を達成し、安定生産のための栽培方法は、該当地における気象条件、土壌条件に あった栽培の基本技術を忠実に実行することであり、これらを駆使することにより高品質安定生産が期待できる。チップ原料生産の具体的な生産目標は、上記品質目標を備えた規格品を4t/10a以上を目指す。

    3 貯蔵

     また、チップ原料は国産を周年供給されなければならないので、季節的に産地の移動が求められる。わが国では5月下旬から九州の早春作が収穫され、7月には関東の春作が収穫され、8月からは北海道の収穫が始まり、冬から次年度5月にかけては北海道の収穫物が貯蔵されて供給される。貯蔵は、短期(年内)、中期(3月まで)、長期(4〜5月)に分けて収穫時の原料品質の維持と減耗防止対策を施す。



    加工原料用品種の特性

    ー以下に加工用品種の概要を述べますが、詳細についてはJRT日本いも類研究会(http://www.jrt.gr.jp/)等の品種解説をご覧くださいー

    1 早生品種

    1) ワセシロ−早期肥大性−

     いもの特性 : 生鮮食用品種として育成されたが、チップ用としては唯一の早生品種、偏球〜偏円、目の深さも中、皮は白、いも数少なく、粒は大きい方。肉色は白、肉質は中〜やや粉質、貯蔵により糖類が増えるため、チップ用としては即使用であるが、チップにしたとき基部褐変の発生と、いもは基部腐敗である乾腐病の発生が多い。一方、本来の早生調理用としての利用も多い。
     栽培特性 : 茎といも数は少ないが、生育期間(100日程度)が短く、いもの肥大は早い。このいもの早期肥大性を利用し、各地で栽培される。チップとしては関東以北の早期加工用(即使用)になる。ジャガリコには不向きである。また、九州等の暖地での栽培は収量的に不安定であり、行なわれていない。病気は、茎葉疫病はやや遅いが感染し、いもの腐敗も発生する。そうか病、黒あざ病、軟腐病の発生もあるので対策(種いも消毒、薬剤散布)が必要である。内部障害として基部(ストロン側)褐変は生じやすいのが欠点であり、これは部分的な二次生長や乾腐病によるものである。二次生長は奇形を伴わないが、高温、乾燥、雨などの不規則な気候変化で基部に糖分が増え、チップの基部褐変を生じる。乾腐病はごく弱く、貯蔵中に腐敗が目だってくる。防除法は乾腐病を参照されたい。

    2) オホーツクチップ −そうか病、シスト抵抗性―

         いもの特性:シストセンチュウ抵抗性とそうか病に中程度の抵抗性を持っている。いも数やや多く、球形、皮色は褐色、肉色は白、肉質はやや粉質、休眠は短いほうである。貯蔵は可能であるが、チップとしては年内使用となる。
      栽培特性:生育の速さは並であるが、枯凋期はワセシロよりやや遅い早生品種である。ウイルス病(Yモザイク)に抵抗性である。そうか病に強いことから、早生としての栽培が期待される。

      3) ランランチップ −大粒、早期収穫可能―

       いも特性:いもの形は卵形で、皮色は黄褐色、目は浅く肉色は黄白色、休眠は中程度。早期肥大性があるので早生として栽培できる。通常は大玉でよく揃う。チップはやや黄色いが加工可能。フレンチフライは大型で利用しやすい。シストセンチュウ抵抗性である。
       栽培特性:シストセンチュウ抵抗性と早生として利用できる。また、暖地での栽培も可能のようである。生育は旺盛で、枝はやや少なく、葉の幅は広い、トヨシロ並みに生育し、熟期は中早生と記載されているが、加工用として早堀リは可能である。塊茎腐敗にやや強い。

           

    2 中生品種

     
    1) トヨシロ−チップ用主力品種−

         いも特性 : チップ用の主力品種、偏卵形、偏平度やや強く、大きさはやや大、いも数は中、目は浅く、皮は黄褐色、弱いネットがかかる。いもの休眠は長、肉色は白でやや粉質、比重は高い方である。調理用としても利用できる。病障害は、疫病は普通に感染、発病し、とくに軟腐病は発生が目立つ、中心空洞、二次成長、緑化の発生も見られる。
     栽培特性 : チップ用として北海道での生育期間は約4カ月である。九州から、関東、北海道全域に適合する。初期生育があまり良くないので、浴光育芽を適度に行なう。乾燥地、痩せ地では茎葉の伸びが悪く、枯れあがるのが早く、収量が落ちるので、比較的地力のある畑を選ぶ。一方、多肥では二次生長が発生し、大玉(中心空洞)になるので、徒長しない施肥設計が望まれる。最近、カッテングプランタ−による植えつけでは株間変動が大きくなり、大玉になりやすく、中心空洞が出やすい状況となっている。いもが地下茎近く(ストロンが短い)にでき易いため、生育後期の畦上の亀裂による緑化は多くなるので、培土は遅れないように高く行なう。  疫病防除は必要であり、生育後半(北海道は7〜8月)の高温時には軟腐病の発生が多いので防除等対策も必要である。また、土壌病害(そうか病、粉状そうか病、黒あざ病)の発生も見られるので対策を行なう。

    2) アトランチック−高比重、早掘り加工可−

        いも特性 : チップ用としてアメリカで開発され、カルビ−ポテトが導入した品種、球形、やや大いも、表面はややざらざし、目は浅く少ない。いも数も少なく、肉色は白(クリ−ム)、比重はごく高く、粉質で糖類は少なくチップ向き、早堀ができる。病障害では褐色心腐病、中心空洞が発生し、高比重のために打撲の発生が多い。そうか病の発生はやや少ない。
     栽培特性 : チップの色や比重は満足できるが、乾燥地や砂地では地温の上昇による生理的な障害(褐色心腐病、中心空洞)が多発する。そのため、潅水をする栽培や茎葉の黄変、枯死前に早期収穫して褐色心腐の防止が図られる。早掘りしたものは長期貯蔵されない。ストロンが長く、いも数は少なく、大玉が多い傾向がある。シストセンチュウには抵抗性であり、そうか病に中程度の抵抗性が有る以外、病害発生はトヨシロ並みである。比重が高いので完熟品は打撲が多くなるので、対策が必要である。

    3) さやか−目浅く高比重歩り−

     いもの特性 : いもの表皮が滑らかで、目が浅いので剥皮率が少なく、歩留まりが高い。光を浴びても緑化しにくい特徴がある。卵形で大きい。皮と肉は白色で、肉質は粘、粉の中間、調理後黒変が少なくサラダに好適とされている。比重はやや低く、休眠はやや長く、貯蔵性は良い方であるが、低温貯蔵での2月以降は甘味が増し、肉質が粘質に変化することが多い。
     栽培特性 : 目が浅く、少ないので植付け時に芽が損傷を受けやすい。いもの比重の高まりは遅く、早出しはできない。大いもになりやすいのでやや少肥、密植とする。二次成長と内部障害(中心空洞、褐色心腐、黒色心腐)はやや少ないが、その他の病害は発生するので防除対策が必要である。

    3) きたひめ−低温貯蔵性−

     いも特性:北海道農試とホクレンが共同開発し、ホクレンが選抜したチップ用の品種、目は浅く、丸いも、肉色白、最大の特徴は6℃での貯蔵が可能としている。比重はトヨシロよりやや低い、休眠はトヨシロより短く農林一号並みでやや短い。
     栽培特性:熟期はトヨシロと農林一号との中間、いもの肥大はトヨシロ並みで、収量もほぼ似ている。十勝中央地帯ではトヨシロにまさるが、十勝沿岸、網走はトヨシロよりやや劣るとされている。
     病害虫はシストセンチュウ抵抗性であるが、疫病、そうか病には弱く、塊茎腐敗は中程度の強さ、二次生長、中心空洞、褐色心腐病はトヨシロ並みで発生する。中心空洞予防のため、多肥疎植を避ける栽培が必要である。

    4) ノーキングラセット−そうか病抵抗性ー

     いも特性:楕円でやや長く、粒揃いは良い、休眠は極めて長く、中玉で目は浅いが、褐色の粗い皮(ラセット)である。肉質は白で、比重はやや低く、チップの色は良いが、長期貯蔵には向かない。そうか病は発生少なく、中心空洞は発生する。
     栽培特性:カルビ−ポテトがアメリカから導入した、粗皮(ラセット)のそうか病抵抗性のチップ用の中生品種。原名は Norking Russet 楕円形でずんぐりしている。高温、乾燥等の気候変化で中心空洞を生じることがある。疫病、軟腐病等その他の病気は発生するので対策が必要である。北海道で、そうか病の多い網走地区での栽培が多い。

    5) C40−粒揃い−

     いも特性:アメリカで育成した品種、原名はアンドーバー( Andover) 、小粒で粒揃い良好、目は浅く、肉色白、形状は卵形、チップカラ−は良好、低温貯蔵性(9℃)もあり、加工用であるが、生食にも利用できる。比重は低い方である。一般には普及していない品種である。
     栽培特性:熟期はトヨシロ並みの中生、初期生育は良い、収量はトヨシロと同等か劣ることがあるが、肥大は早いほうである。病虫害では粉状そうか病、シストセンチュウ抵抗性,また、内部障害(中心空洞、褐色心腐)は発生少ない。その他の病気は感染する。

    6) シェポデー −フライ、調理用−

     いも特性:カナダでフレンチフライ用の品種、長楕円形で、目は浅く、白色の肌で見栄えが良い。白肉で、粘質であるが形が良く、煮ものにも利用できる。内部障害はトヨシロより発生しやすい。他の病障害も発生する。
     栽培特性:カナダの品種で、原名は シェポデイ(Shepody)。トヨシロよりやや熟期が遅い中生種で、大玉になり易いが、トヨシロ並みの栽培で対応する。長楕円であり緑化には注意する。黒あざ病に中程度の抵抗性を示す以外の病気は発生するので対策が必要である。

     

    3 中晩生品種


    1) 農林一号−収量性−

     いも特性 : 1943年に登録された古い品種で、生食、加工、澱粉原料など用途は広い。チップ用にも利用される。偏球〜偏卵で、大きさは中〜大、目の深さは中〜深い、いも数は多い方、休眠は比較的短く、粉質であるが、調理後の黒変は多く、比重は高い。病障害は、黒色心腐病は多く、そうか病、乾腐病は発生し、軟腐病は発生やや少ない。比重が高いので打撲は多い。青枯病の発生はほとんどない。
     栽培特性 : 生育期間は約130日で、比較的畑を選ばないので栽培はしやすい。やや粗植にするが、生育期間が長いので大玉が出やすく、中心空洞も多くなる。病気では疫病にはやや遅いが発生し、いもの腐敗は発生する。なお、そうか病、乾腐病には弱く、掘取りが遅く温度が低下すると、比重が高いので打撲は多い。

    2) スノ−デン−貯蔵性−

     いも特性 : 原名は Snowden、カルビ−ポテトがアメリカから導入したチップ専用の長期貯蔵用品種。球〜偏球、大きさは中で揃う、目はやや浅く、表皮は粗、いも数は多い方、肉色は白、肉質は中、比重はやや低い、糖分は少なく、チップ貯蔵用として特性を発揮する。病害は内部障害は発生少なく、他の病害はとくに目立った点はないが、傷、緑化は発生が見られる。
     栽培特性 : 初期生育はやや劣るが、中期以後に伸長し、茎丈は高くなる。ストロン数は多く、長い。ストロンの全てがいもになる率は低いが、いも数は多い品種であり、粗植とし、培土は早く、大きくする。熟期は農林一号並みなので十分な生育期間を確保する。ほとんど大玉が無く、粒揃いの良いのが最大の特徴である。ストロンが長いので掘取りはやや深くする必要がある。生育後期に下葉の落下することがあるので、痩せ地での栽培は避ける。病気は、疫病は茎葉に発生するが、いもの土中腐敗は少ない。しかし、00〜01年には生育後期および掘取り時感染と見られる倉庫での腐敗が一部に見られた。そうか病にはやや強く、いもの内部障害(空洞、褐色、黒色心腐)には強い。また、比重は低い方で、打撲は少ないが、傷の発生には注意する。

    3) コナフブキ−高澱粉、高歩留まり−

       いも特性 : 澱粉用の品種であるが、肉色が白いためにコロッケ等加工への利用がある。いもは偏平な球形、皮は淡黄褐色、芽はやや深くて、芽の周辺は紅色をしている。高澱粉でごく粉質、食味は悪くないが、水煮後黒変が多く、また打撲による内部黒変も多い。そうか、粉状そうか病はやや少ないが、いもの疫病腐敗は少ないが発生し、その他の病障害も発生する。
       栽培特性 : 根の量が少ないので土作りには留意する。中晩生品種であり、遅くまで生育するが、初期生育は劣るため浴光育芽を行なう。澱粉の含量が高いので、打撲の軽減対策を行なう。病障害では打撲が多いので、加工に使用するばあいはやや早掘りするか掘取り時の衝撃防止を行なう。軟腐病にはやや強く、発生少ないが、疫病等の防除は行なう。

    4) ホッカイコガネ−収量性−

     いも特性 : 油加工(フレンチフライ)用、長楕円形、目は浅く、表皮はやや粗、大玉で揃い良い。肉色は淡黄色、やや粘質、煮崩れしないので煮物用、内部障害は少なく、緑化はやや多い。
     栽培特性 : 農林一号並みの中晩生、初期生育は劣るが、茎長は長くなり、メ−クイン並みのいもの形の長い品種で、緑化対策として培土は十分に行なう。中心空洞など内部障害は比較的少なく、腐敗も少ないが、その他の病気は発生するので対策が必要である。



    5) ムサマル−大粒、多収―

    いも特性:油加工(フレンチフライ)用、いもの形は卵形で太った感じ、目はやや浅く、表皮色は黄褐色でやや粗、大玉で揃い良い。肉色は淡黄色、やや粉質で比重は高い。シストセンチュウ抵抗性あり。
    栽培特性:ホッカイコガネな身の中晩生、初期成育は比較的よい。茎丈は高くなる。比重が高いので澱粉原料としても作れる。フレンチフライの適性はホッカイコガネ並みである。褐色心腐が多いので対策を立てる。

    4 品種と栽植密度



    1) 栽植密度、整粒化

    高品質多収穫技術は、茎数を確保し、粒をそろえて、いも数を多くとることであるが、これらの詳細は原料栽培−栽培計画、茎密度管理―で述べる。ここでは、その品種の特性を十分に発揮させるための方法について述べる。まず、単位面積あたりのいも数を確保するために、植付け時に畦間、株間を決めて栽植密度を整え、大玉を排した中玉(整粒化)による収量を上げる工夫が望まれる。一般に、株当たり茎数と収量との関係は、株当りの茎数(いも数)では、多い方が収量は高く(例:相関係数=0.74)なり、平均1個重は小さくなることが知られている。また、株および単位面積当たりのいも数は、多いものほど収量は高くなる傾向がある。よって、収量はいも数で稼ぐ方が得策である。
    いもの大きさにおける乾物重率は、185〜260gの大玉は23.3%であるに対し、54〜170gの中玉は24.0〜25.3%と乾物重率も高く、内部品質は良いとの報告がある。
     このように、大玉を排し、品質の高い中玉を数多く取ることを、整粒化栽培と呼ぶ。この整粒の中玉生産は、株内はもちろん、畑内、市町村内など原料全体に広げることが望まれる。 整粒化栽培は、以下に述べるように、まず品種を便宜的にいも重、中間、いも数(晩生系)型に分けて、栽植密度を設定することから始まる。

      2) いも重型

      ワセシロ、アトランチック、ムサマルなどがこれに当たる。株当たりのいも数(茎数)が少なく、1個重が重くなり、多収となる型である。栽培は株当たりの茎数は通常2〜3本と少ないので、栽植密度を高め、10a当り5,200〜5,500株に増やし、主茎数(いものつく茎)といも数を確保することが大切になる。また、早生のワセシロは100日以上、中生のアトランチック、中晩生のムサマルは120日又はそれ以上確保することはもちろんである。
     府県、トヨシロのマルチ栽培では、植えつけが早く(休眠明け直後)、かつ種いもを小さく切断するので、株当りの茎数が少なく、大いも傾向にある。加えて、畦幅が広い(90cm程度)ために、単位面積当りの茎数(いも数)を確保するために、株間はごく狭く(20〜22cm程度)設定する必要がある。よって、栽植密度は5,000〜5,500株/10aとする。

     
    3) 中間型

     トヨシロ、ノーキングラセット、シェポデーなどで、いも重、いも数の中間型を示す型で、中生品種に多い。このうち、シェポデーはいも数はやや少なく、大玉になりやすい。栽培は株当たりの茎数は通常3本程度出るので、栽植密度は5,000〜5,200株/10a程度とし、主茎数を増やし、いも数増加を行なう。 ホーキングラセットは中早生であり、トヨシロ、C18、C93−32は中生の生育期間(110〜120日前後)は確保する。

     
    4) いも数型

     スノ−デン、農林一号、ホッカイコガネなどで、株当たりのいも数が多く、生育期間の長さにより、多収となる型である。栽培は株あたりの茎数は中間型とはほぼ同様であるが、いも数が増えるタイプなので、栽植密度は4,700〜5,000株/10aと する。スノ−デンは中晩生でストロンが長く、いも数も多いので株間は広くとり、1個重を増すことも考えられる。同様に農林一号、ホッカイコガネ、コナフブキも中晩生であり、いも数と重量増加のためには生育期間(晩生は120日以上)を十分に取る必要がある。

    形態的特性

     1 目の深さ

     

    目の深さは品種により差があり、いもの目の深いものは剥皮率が高く、製品歩留まりは低くなる。目の深さについては品種項目、1表に示した通り、加工用に育成された最近の品種の目は浅いものが多い。しかし、ワセシロ、農林一号、コナフブキはやや深い。

     2 いも数(大きさ)

    1) いも数と規格
    チップ用の規格は60〜340gであるが、上限は300g以下にしたいものである。さらに、中心空洞など内部傷害の少ないものにするには200g以下が理想的である。それには、いも数型の品種を導入する必要がある。フレンチフライは大きい規格が良品となり、品種は株あたりいも数の少ない1個重が重い大いも(200g以上)が適している。一方、大玉は内部障害(中心空洞等)発生と水分含有率が高まり、比重低下を招く。上述の品種ではワセシロ、さやか、きたひめ、は株当たりいも数がやや少なく、大いも傾向になる品種である。中晩生種では肥大期間が長いので大いもとなることが多い。肥料では窒素質が多く、また、土壌が湿潤または気温が高い場合には大いもとなりやすい。
     いも数と収量との関係を見ると(1999年、16品種)、株当たりのいも数と収量とは正の相関(相関係数=0.74、多いほど収量大)があったが、大きさ(規格内の1個重)と収量との相関(相関係数=0.21)は低かった。このことから、大いもにすることは必ずしも収量を高めない結果となった。よって、株あたり(または単位面積)あたりのいも数増加は反収を高めることになる。

     2) 株当たりいも数の増減要因

    1) 種いも
    種いもが大きい、また、休眠が明けたもの、十分な浴光育芽を行なったものは、株当たりの茎数といも数は多くなる。

    2) 栽培
    植付けがごく早い(低温)、また、ごく遅い植付けは、いも数は少なくなる。当然、密埴すれば株当たり数は少なくなるが、単位面積あたりでは多くなる。また、窒素/燐酸比が低いといも数が増えるとされている。

    3) 環境
      農試その他によると、いも数は、生育初期(萌芽〜開花)の土壌乾燥では早生化し、ストロンは短く、いも数少なくなる傾向がある。一方、雨が多く、土壌湿度が高い(また多肥)条件下ではストロン長くなり、いも付きは遅く、数はやや多くなる。  03年の灌水試験では、いも形成から肥大初期に土壌水分をpF値2.5〜2.8 以下に維持した結果、規格内いもが株当たり約1個増えた。 その他、萌芽揃〜着蕾期の晩霜害や強風で茎が傷害を受ければ、株当たりいも数が少なくなることが北海道、鹿児島、茨城の事例で認められた。

    3 形状

     形状は品種により異なり、チップ用のいもの形状は丸い方が歩留まりやチップの形が良い。現在のチップ用主要品種はトヨシロで、やや長い偏卵形である。丸いものには、アトランチック、スノ−デン、ノ−スチップがある。一方、丸いもは転がりやすく、打撲、傷には注意が必要である。しかし、フライドポテトには、大きくて長いいもが適し、ホッカイコガネが育成された。その他、いもの形状の異常は栽培中の気象条件、病傷害が原因で生じるので、病傷害の章を参照されたい。

    化学的(組織的)特性

    1 化学成分

     馬鈴薯の化学成分は下に示す通りほとんどが水分であり、次いで貯蔵澱粉(炭水化物)である。また、蛋白質は2%含まれており、リジンなどのアミノ酸も高く、加えてカリウム、ビタミンCなども豊富で栄養的に良いものである。

         水分        77.5(63.2 〜 86.9 )%
         全固形(乾物)分 22.5(13.1 〜 36.8 )%
         蛋白質       2.0( 0.7 〜  4.6 )%
         脂肪        0.1( 0.02〜  0.96)%
         炭水化物、計   19.4(13.3 〜 30.53)%
         繊維        0.6( 0.17 〜 3.48)%
         灰分        1.0( 0.44 〜  1.9 )%

     以下に加工用に関係の深い、乾物(比重)、澱粉、糖類、グリコアルカロイド、ビタミンC、調理後黒変及び加熱後の細胞構造について述べる。他の成分等については他書を参照されたい。

     2 乾物、比重

       1) 固形分
     生いもの水分を除いた固形分(乾物)率は、前述の通り、平均22.5%とされている。固形分の主なものは澱粉(65〜80%)であり、加工原料を選ぶとき、この固形分量は重要な要因である。また、固形分は比重と高い正の相関があり、これらは油加工(チップ、フレンチフライ)、缶詰、脱水製品(フレ−ク等)のテクスチャ−や歩留まりに影響する。
    固形分率は=比重×211.04−207.71から概略計算できる。

     2) 比重
     比重は=(空中重)÷(空中重−水中重)から求められる。いもでは1より大きい。
     チップカラ−と比重との相関は、従来のワセシロ、トヨシロ、農林一号においては、比重が高くなる(完熟する)とカラ−は良くなる傾向があった。しかし、研究所での最近の新品種を含めた7年間では、比重とカラーの相関は低く(相関係数=0.06)、比重が高いとカラ−が良いとは言えない結果が得られた。これは比重に関係なく、チップカラ−の良い新品種が開発されたためと考えられる。一方、極端に比重の低いものはカラ−が悪いことが別の調査で認められている。
    生育中のトヨシロの比重の消長は、試験および生育追跡調査より、いもの肥大とともに増え、茎葉黄変期にもっとも高くなり、以後、やや低下して安定することが認められた。これに対し、中晩生品種は茎葉枯凋期に最も比重が高くなる。
     チップの歩留まりは、比重の高さと正の相関があり、概略比重が0.005増加するごとに、チップ製品は約1%増加するといわれている。加工用原料いもの比重については、1.085(澱粉価約15%)以上のものが望ましい。
     比重を高める栽培条件は、初期生育を早め、徒長を避け、茎葉を維持し、十分な生育期間で、澱粉蓄積をすすめ、完熟いもを収穫する必要がある。

      3) 比重と気象
     トヨシロの平均比重と気象条件(積算)を地域別に見ると、下表の通りである。表から、1996年〜2000年の各地区の平均比重は1.085〜1.088の間にあり、トヨシロとしてはほぼ満足できる値である。しかし、十勝地区平均が他より0.003程度低いことが認められた。これは気象条件を見ると、いもの肥大期間(6月15日〜9月10日=87日)の積算最高最低温度差は、比重の低い十勝では、上川より99度少なく、積算雨量では45mm多く、日照時間では121時間少ないことが認められた。よって十勝の比重の低さは雨と曇天が多く、昼夜の温度差が少ないことが原因と考えられた。

            地域別比重と気象との関係(気象は6/15〜9/10日の積算)
      比重  積算平均温度  積算温度差  積算降水量   積算日照時間
    十勝  1.0854   1,642 ℃    776℃    400mm     306時間
    上川  1.0880   1,697 ℃    875℃    355mm     427時間
    網走  1.0878   1,597 ℃    783℃      274mm    375時間

    3 澱粉

     1) 性質
     上述のとおり、馬鈴薯栽培は、いかに澱粉をいもの細胞中に蓄積させるかが重要になる。いもの柔組織の細胞壁の内側にある澱粉粒子の大きさは15〜100μで、平均は約40〜50μの大きさで、他の作物澱粉と比較すると大きい。主成分はアミロ−ス、約25%:アミロペクチン(もち成分)、約75%=1:3の割合である。澱粉としては、糊化温度は低く、膨潤、溶解度、粘度は高く、糊液の透明度が高い等のため、水産練り製品、畜肉ハム、麺類、片栗粉、春雨等の用途がある。

     2) 澱粉価
     澱粉価(ライマン価)と比重とは正の相関が高い。比重から概略求める方法は、次のとおりである。
    澱粉価=214.5(比重−1.050)+7.5
    高澱粉いもは、蒸(水)煮後の性状が粉質で、煮くずれしやすいものが多い。加工原料としては、澱粉価は歩留まりを上げるために高い方が望ましい.他方、高すぎるとチップ製品ではテクスチャ−が硬くなる。 比重増加と澱粉の蓄積を促す生育条件は、前述の通り、初期生育を早め、徒長を避け、茎葉を維持し、十分な生育期間で、澱粉蓄積をすすめ、完熟いもを収穫することである。

     4 糖類、メイラード反応、CMM理論

     1) メイラ−ド反応
     いもに含有される各種糖類のうち、還元糖(グルコ−ス、フラクト−スなど)は、油加工する場合に重要で、アミノ酸とともに水溶性で、下に示すメイラ−ド反応に関与する。
     メイラ−ド反応とは、グルコ−スなどの還元糖の還元基とアミノ酸のアミノ基との高温下における非酵素的褐変反応である。

      185℃(フライ)の高温度条件下で還元糖(C6)とアミノ酸は→→→→→→褐変現象を生じる

     還元糖は、チップでは生重で1mg/g(0.1%)以下、フレンチフライなどの油加工の場合も2〜4mg/g(0.2〜0.4%)以下が許容範囲とされている。また、ショ糖(=シュクロ−ス)も以下のとおり、貯蔵中には酵素インベルタ−ゼにより加水分解されて還元糖に変化するので同様にメイラ−ド反応に関与する。

      ショ糖(C12)はインベルタ−ゼの存在で→→グルコ−ス(C6)とフラクト−ス(C6)を生じる

          2) 糖の消長
     チップのカラ−に影響する糖は還元糖とショ糖(シュクロ−ス)であり、生育中のいも内では、いもが肥大成熟するにつれて減少し、茎葉黄変期頃が最少となる。収穫時の値は、品種で異なり、スノ−デンはグルコ−ス0.2mg/g以下、ショ糖1.5mg/g以下であり、年次間差も少なく、糖の低い(低糖性)品種と言える。これに比べて、トヨシロと農林一号は含有量も多く、年次間差も大(グルコ−ス0.2〜1.4mg/g、ショ糖1.3〜2.3mg/g)であった。
     今、収穫時や貯蔵時におけるグルコ−ス量とチップカラ−との相関を見たところ、自然対数の高い相関(係数=0.89)が認められた。
     これから、グルコ−ス0.5 mg/g以下の原料は、チップカラ−(アグトロン値、40前後)はほぼ満足できるものとなった。なお、最良のチップカラ−を得るには、収穫時、グルコ−ス濃度で0.3mg/g以下が望ましく、ショ糖も条件により加水分解して還元糖に変化するので、1.5mg/g以下が望 ましい。
     重要なことは、収穫時のこれらの品質を貯蔵により維持はできても向上できない点であり、畑で品質を高めることが、原料栽培では最優先される。上述通り、栽培中のいもの糖類(とくにショ糖)は、いもが成熟するにつれ徐々に減少し、黄変へ進むと少なくなる。この状態は、いもは皮張り(コルク層形成)など、見た目には完熟していないが、化学的に成熟に達したことになる。

     3) CMM理論
     いも内部の化学的な成熟は、アメリカで提唱されたCMM(Chemical Maturity Monitoring)理論により表わされる。その時の基準となる糖濃度は、上述の最良のカラ−を得る濃度(グルコ−ス=0.35mg/g以下、ショ糖=1.5mg/g 以下)である。とくに、ショ糖濃度は生育が進につれ徐々に減じ、化学的成熟(収穫期)の指標となるとされている。最近のチップ用品種(スノ−デン、アトランチックなど)は、この化学的成熟(とくにショ糖=1.5mg/g 以下)が茎葉黄変以前に認められる。
     収穫時期の糖濃度は、含有量によってその後の貯蔵に影響する。糖類の上述の基準より少ないものは長期貯蔵に層別され、基準より多いものは貯蔵初期に昇温処理されることになる。
     全般に、糖類の少ないものの栽培は、比重を高める栽培と同様で、初期生育を早め、徒長を避け、茎葉を維持し、十分な生育期間を保持し、比重の高いいもを収穫する必要がある。収穫したいもの糖類は、収穫時の打ち身傷や低温など各種のストレスで増える。また、貯蔵では、貯蔵庫の貯蔵環境(温度、湿度、通風等)により大きく変化する。

    5  加熱後の細胞構造

     澱粉含有量は、いもの部位では表皮から維管束の間(皮層)が高く、維管束部と中心の内髄は低い。とくに、キタアカリなどは内外の差が大きい。この差の大きいいもを加熱したとき、維管束近くで粉質部と粘質部に別れるのが見られる。 いもの組織(細胞)は水煮(蒸煮)したとき、次のような組織的変化が見られる。高澱粉含有、または細胞、澱粉粒子の大きなものの加熱細胞は、大きく丸く膨らみ、ばらばらになっている。このような状態は、粉質感のあるサラダやマッシュに最適のほくほく感の強いものになる。
      一方、メークイン、ホッカイコガネは、細胞が小さく(澱粉も小さい)煮くずれしない(粘質)品種とされている。また、生育途上のいも(新じゃが)は、加熱後の細胞はふくらみが小さく、くっついているので、粘質になる傾向がある。これらは煮くずれしない煮物、缶詰等の加工に最適である.
     貯蔵中の変化は、低温貯蔵後は澱粉が糖化し、少なくなり、粉質感が減少し、甘味、粘性が増す傾向がある。一方、高澱粉のものでも、圧力鍋での加熱や、冷却した後に機械的な圧力が加わると細胞の破壊が生じ、内部澱粉がはみだし、糊(粘質化)となり、冷えると硬くなる。
     フレ−ク生産におけるテクスチャ−は、いもの加熱後の細胞が壊れる(フリ−澱粉が多い)と粘質感のあるフレ−クとなり、細胞が壊れないと粉質感が保たれる。

    6 調理後黒変

     農林1号、コナフブキなどは加熱後、時間を置くと冷え、灰色〜黒色なる。これはいもの中の第2鉄とオルトジヒドロフェノ−ル(おそらくクロロゲン酸)との化合物が酸化された結果生じるものある。最近の新品種は一般にこの黒変は少ない。

     7 グリコアルカロイド

     1) 性質
     グリコアルカロイドの95%はα−ソラニン、α−チャコニンであり、いも全体から検出される。萌芽した芽では200〜300mg/100g、葉では40〜100mg/100gであり、いもの部位では皮層が10〜60mgと多く、髄部は0.5mg程度とごく少ない。食用とする場合は、剥皮により半分程度は取り除けることになる。ごく少量の存在はいものフレ−バを良くするが、多量の摂食は中毒(嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、幻覚)をおこすことがある。この濃度の安全値は経験的に20mg/100g以上である。
     新鮮ないもでは2〜10mg/100gでは通常の味覚の人は感知することは少ないが、20mg以上ではえぐみを生じ、食用に適さない。また、この物質はフライや煮つけによる加熱では減少しないとされている。通常の新鮮ないもは下記の通り、全体で10mg/100g以下である。しかし、光にあたり、緑化すると増加する。

     2) 含有量(緑化)
    品種ではメ−クインが高く、9.2 mg/100g(生重)となり、トヨシロ=4.3mg、男爵薯=2.1mg、ワセシロ=1.9 mg,アトランチック=3.6 mg、スノ−デン=2.2 mg、C18=2.0 mgである。 チップの含有量は原料によって異なるが100g当たり0.6〜2.1 mgであった。
     含有量は光に曝されると数培に増加し、トヨシロは蛍光灯照明下(40W、4日、照度合計7,000ルックス )では 5.4倍(4.3 → 23.2 mg)に増加し、直射日光を1日間当てると1.2倍(5.4 mg → 6.6 mg)、2日間では 2.3倍(5.4mg → 12.7mg)に増えた。

     

    8 ビタミンC

     生馬鈴薯にはビタミンCが100g当たり23mg、チップ15mg、フライドポテト(冷凍)7mg、乾燥マッシュポテト5mg含まれていると、四訂標準食品成分表に記されている。また、水煮では13mgと減少するが含有量の多い食品である。小池先生の著書(ポテトチップス栄養学)には、チップのビタミンCは15mgであるが、九州、関東、北海道の新ジャガについては最大85mg/100gの例が示されており、Cの良い供給源となっている。成人のC所要量は1日50mgとされており、馬鈴薯製品は供給源としても良い食材となっている。
     その他にビタミンB1が0.11mg/100g、B2が0.03mg/100g、ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミドの総称)1.8mg/100gが含まれている。

    9 ポリアクリルアミド

    発がん性があると騒がれたポリアクリルアミドは、ポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなど炭水化物を多く含む食材を高温で加熱すると、アスパラギンとブドウ糖などが反応して生成するということが、ストックホルム 大学とスウェーデン食品庁の共同研究で明らになったのは2002年の4月である。その後多くの分析が行われた。チップでは原料を低温貯蔵すると増えることが知られている。



    病傷害の発生と防止

    1 腐敗性の病害

    1) 疫病  −湿潤で発生する重要病害−

     菌類病で、茎葉といもを共に侵す。茎葉については、植付け50〜60日後の着蕾期頃から、葉に感染しはじめる。一次時感染源は病いもからであり、これから茎葉へ感染する。感染葉上で白いかび(分生子柄、胞子)を生じ、胞子の風による飛散で伝染する。感染(伝染)の最適条件は、気温18〜20℃、湿度90%以上の条件である。葉上の胞子は、低温(17℃以下、12〜13℃が最適)条件下、水滴中で間接萌芽し、游走子が泳ぎ出し、これが細胞に侵入し病斑を作る。菌には系統があり、品種による発病時期の差異はあるが、全ての品種は茎葉感染が生じる。
     いもの病状は、表面が茶褐色になり、病斑の深さは数ミリで固く、少しへこむ(かた腐れ状)。高温多湿では2次的に腐敗細菌に感染し、べとべと(軟腐状)に腐ることがある。いもへの感染は、茎葉の菌(胞子)が雨で落下し、地温17℃以下で、游走子が泳いでいもに入り、感染する。すなわち、17℃以下の冷たい大雨(約20mm)が降ると感染が生じ、いもは2〜4週間後に発病(かた腐れ状か軟腐状の腐敗)する。
    加えて、茎葉から土に落ちて、生存している胞子は、雨後の収穫時にいもの傷口から入り、掘取り時感染を生じ、これも感染後2〜4週間、貯蔵初期に発病する。いもの腐敗も加工用品種では茎葉と同様に品種間差は小さく、全てが感染し感線し、発病する
     茎葉の防除は、種いもに病いもを用いないこと、軟弱生育(徒長)しているものは防除が困難であるため、葉を強健に育てる。防除薬剤(商品名、以下同じ)はグリ−ンペンコゼブ、カ−ゼットPZ、フロンサイド、ダコニ−ル、グリ−ンエムダイファ−、フェステバルCなど水和剤や銅製剤等の薬剤を数回、適期に散布を行なう。防除初め(植付け50日後、着蕾期頃)は農業試験場の発生予察を参考にする。
     いもへの感染(土中)防止には、大きめの培土、茎葉への完全防除、茎葉の徒長を防ぎ、倒伏させない。いもの腐敗を減少させる茎葉散布薬剤は、フロンサイド、ランマンフロアブル、レゾミル(耐性菌あり)があげられている。地表に落下した胞子が死滅するには乾燥条件が必要であり、収穫は完全に枯れてから2週間程度置いてから行なう。掘取り時感染は雨後の掘取で生じるため、土壌がやや乾燥してから収穫する。収穫後のいも表面の通風による乾燥と10℃程度の低温貯蔵は、かた腐れの病斑進行と他の腐敗細菌による2次感染(軟腐状、汁たれ)を抑制する。

    2) 軟腐病  −高温条件で発生、トヨシロ注意−

       いもの病状は皮目から侵入、ベトベトに腐敗、悪臭を放つ。茎葉も侵す土壌伝染性の細菌病で、土壌中に普遍的に存在している。高温を好み、30℃付近の多湿が菌発育の適条件である。北海道では7月以降の高温時に発生し、茎葉の傷口から感染するが、初期には下葉が接地した所から感染し、葉(葉柄)が茶褐色に軟腐する。茎も同様に傷口から感染し、褐色、黒褐色に軟腐する。その後、土壌中の菌量が増えるに従い、いもも感染、発病し、悪臭を発する。発病はトヨシロで目立つが、農林一号、スノ−デン、ホッカイコガネではやや少なく、ワセシロ、アトランチックおよびその他加工用の品種は普通に発生する。
     防除法は、発病初期(葉の発生時期)に茎葉へのビスダイセン、アグリマシン100、バクテサイド、銅ストマイ、スタ−ナ−、ヨネポン、ダイセド、バイオキーパー、カセット、マテリーナ、テレオ、ナレート、フェステバルC、キンセット80、サンドファンC等の水和剤、コサイドDF、Zボルドー、等の薬剤散布を行う。その他に、畑の排水を図り、窒素質を多投し、徒長させない(傷をつけない)、掘取りいもの乾燥、などがある。

     3) 黒あし病  −種いも伝染、早い発生−

     病いもを植えると種いもは腐り、その種いもから伸びた茎も黒変、腐敗する。細菌は茎よりストロンを経て新いもに侵入し、一方、土壌中にも出て新しい芋を腐らせる。土壌伝染はしないが、病植物残さで越冬する場合がある。やや抵抗性の品種は農林一号、ワセシロで、トヨシロおよびその他の品種は発生が認められる。
     防除法は、健全な種芋を植える。種いも消毒(商品名=アタッキン水和剤、そうか病、黒あざ病にも効く、アグリマイシン100水和剤)と種いも切断時の切断刀消毒(中性次亞塩素酸カルシウム、商品名=ケミクロンG、10倍液、5秒)を行なう。3年以上の輪作を行なう。病株は早期に取り除く、等がある。

     4) 乾腐病  −ワセシロに多く発生−

     種いもに付着して次代に伝染し、土壌にも生存する。堀取り時や運搬時のいもの傷口(ストロン側が多い)から侵入し、貯蔵、輸送中または浴光育芽中に基部が乾腐状に発病することが多い。発病は高温多湿で進みが早まる。べとべとには腐らないが、2次的には腐敗菌が入るとべとべとになる。府県の夏期にも貯蔵中に発生することがある。
     防除法は、薬剤による方法は行なわれていないので、病種いもを植えない。過去に発生のない排水の良い畑に植える。枯凋後十分にコルク化したものを収穫し、作業は丁寧に行ない、いもに傷をつけない。貯蔵は高温にならないようにする。品種ではワセシロがとくに弱い。

    5) 青枯病  −暖地春作に発生多い−

     細菌はいものストロンから入り、維管束褐変や腐敗を生じる。土壌伝染の細菌病で、生育中後期に1〜数本の茎(葉)のしおれがあり、次第に枯れる。とくに高温多湿条件で発生多く、根の傷から侵入し、茎の維管束で増えてしおれを起こす。
     防除法は、3〜4年のナス科を除く輪作、病株の抜き取り、湿地での栽培を避け、馬鈴薯の地下部に傷を与えないようにする。農林一号は抵抗性である。

     6) たんそ病  −貯蔵病害−

     馬鈴薯の生育が衰えたときに茎下部から侵入し、早がれを起こすと共に、貯蔵後に黒褐色の丸い、へこんだ病斑が見られる。湿った条件での発病が多い。べとべとには腐ることが少ないが腐敗細菌の感染で軟腐にもなる。防除法は、被害の茎は焼却する。病種芋は植えない。茎に傷をつけない等である。

     7) 輪腐病  −自然発生無し−

     現在はほとんど発生が見られないが、茎の1〜2本枯れが生じ、維管束がチ−ズ様に変色し、強く握ると粘液が出る。いもも同様に維管束がチ−ズ様になり、乳白色〜黄色の粘液が出てくる。防除法は系統増殖の種子を用いる。種切断刀はケミクロンGで消毒する。

     

    2 腐敗以外の病害



     1) そうか病  −土壌乾燥、粗大有機質多投与で発生−

     いものみに不正形のへこんだ、かさぶた状病斑を生じる土壌病害である。土壌中の植物体残査、菌を含む家畜排泄物を施した時など、土中で長く生存し、各種の作物(ニンジン、ダイコンなど)にも感染する。いもへの感染は若い皮目や傷口から感染し、組織が変形してかさぶた状の病斑を形成する。感染、被害は乾燥条件、土壌pHが高い(石灰を多用)、通気良好土(砂質、火山灰土壌)で大きくなる。
     いもの被害が大きい感染時期は、いもの肥大初期(いも形成〜ピンポン玉、6月中旬〜7月中旬)であり、感染いもは、肥大と共に陥没、隆起等の病斑が拡大し、被害が大きくなる。

     防除法は、健全種いもを用いる。粗大有機質多投与はやめる。馬鈴薯の過作を避ける。種いも消毒(アグリマイシン100、アタッキン、ハイボルドウ水和剤)。石灰の多用を避け、土壌pHを下げるような肥料(硫安、硫化カリ、完熟堆肥の共用)を用いる。
     感染時期以降(着蕾から開花期まで、6月上旬〜7月中旬)が乾燥で経過すると発生が増えるので、土壌湿度をpF2.5程度にするために、潅水するのも被害の軽減を図る有効な方法である。この潅水+やや低い土壌酸度(pH5.3以下)で効果があるとされている。

     2) 粉状そうか病  −土壌湿潤で発生−

     いものみに発生し、生育中は盛り上がった小さなこぶであるが、完熟ごろには丸い数ミリのへこんだ、かさぶた状病斑を形成する土壌病害である。そうか病と逆の条件(やや低い地温、土壌湿潤、酸性土壌)で発生が多い。菌は長期間土壌中に生存でき、ナス科植物に寄生する。土壌の多湿で活発に活動し、冷涼、湿潤な年に発生が多い。
     防除法は、健全種いもを用い、土壌消毒を行なう場合は、植付け前にフロンサイド、ビネジン粉剤で土壌混和を行なうが、一般的でない。4〜5年以上の輪作を行ない、畑の排水を図る。

     
    3) 黒あざ病  −種いも消毒−

     いもの表面に黒い菌核(鼠の糞状)を作るが、見栄えは悪いが腐敗はしない、被害はむしろ、このいもを植えて、いもから出る幼芽に黒褐色の斑点ができ、腐り、その後2次、3次芽も侵されて欠株になる。やや低温で萌芽が遅れたときに発生しやすく、酸性土壌では多い。生育中は、茎の地下部が侵され、頂小葉が退緑して巻き上がり、地際には気中いもや小いもが多く出来る。
     防除法は、無病いもを植える。連作、酸性土壌を避け、イネ科作物をいれた輪作を行なう。種いも消毒(バリダシン粉、液剤、バシタック、リゾレックス水和剤、モンセレン水和剤、モンセレン、アタッキン水和剤等)。収穫を茎葉枯死後10日以内に行なう。

     

    3 生理的、機械的障害



     
    1) 緑化  −培土は十分に−

     発生原因は、いもが土壌からはみだして太陽光線を受けるか、輸送、貯蔵等で光を受けるかにより、緑化したもので、散乱光でも2〜3日でうすい緑が現れ、緑化したものはグリコアルカロイドが2〜10倍に増える。これらの成分は表皮に極端に多い。(グリコアルカロイドの項参照)。
     対策には、品種に合った培土。掘取り後のいもの被覆を行なう。トヨシロは茎近くにいもがつくので、表土亀裂による緑化の多い品種であり、スノ−デンはストロンが長く、広がっていものつく品種で、畦端にできたものは、表土が雨に流されて緑化が生じる。掘りとったいもは出来るだけ光に当てないよう被覆して倉庫へ運ぶ.

    2) 傷、割れ、爪痕  −取り扱いは丁寧に−

     字の通り、いもが掘取りや運搬時に機械的な傷、割れ等の障害を受けることで生じ、掘取り時の切り傷や機械上でいもが落下するときにつく。皮剥けは未熟いもに多い。割れ傷はいもの水分が多い(高膨圧)とき、比重が低いものに多い。傷口はいも自体の治癒能力によりコルク層(通常10〜20℃では3〜5日)で形成し、水分蒸発と菌類の進入を防ぐことを行なう。また、打撃により爪跡状の傷が着くことがある。防止法は次の打撲の項目を参照されたい。

          
    3) 打撲  −落下に注意−

     最近多く見られる打撲(内部黒斑、多くは表面にほとんど傷が無いのに維管束近くに黒斑が見られる)は、比重が高いものほど発生が多く(相関係数=0.55)、品種では、農林一号、アトランチックなどの高比重のものに多く発生する。また、丸い品種は転がりが大きく、打撲もつきやすい。温度では10℃以下の低温で発生が多い。
     発生機作は、傷口が空気に触れて酸化すること、すなわちフェノ−ル(チロシン)が酸化酵素(チロシナ−ゼ)で酸化され、最終的にメラニンになり、黒変する。内部の黒変は通常、打ち身後2〜3日で病状が見られるようになる。これを早期に見るには高温(38℃)に1日置いて検出できる。
     傷、打撲の防止は、まず、石の多い畑には栽培しない。収穫作業は多忙期であるが、掘取り前の機械整備と人間のトレ−ニングを行ない丁寧に機械類を操作する。それには、まず、いもの落下は15cm以内となるように機械を改良し、収穫機の回転数を調整し、土壌を機械上にあげることによる干渉効果を利用し、収穫機、移動、運搬におけるいもの落下場所には、ゴムを被覆する等の防護策を講じる。また、掘取り時には土壌乾燥状態や10℃以下の低温では増えるので、やや湿った土壌の時に、日中の温暖な時期に作業する。
     打撲の発生場所を特定するには、コンピュウタ−内蔵ボ−ルを機械中を移動させ、移動時の落下衝撃をIRD(Impact Reducing Device)を用いて測定し、打撲対策を講じる方法が行なわれている。

     4) 中心空洞  −大玉に発生−

     いもの中心部に生じる空洞で、大いもに発生が多く、いもの急激な肥大(乾燥後の多窒素、多雨量)により中心部に星形の空洞ができる。小さな種いも、多肥、粗植(欠株の隣接)という、大いもになる易い条件下での発生が多い。
     防止対策は、排水の良い、湿地を避けた栽培、均一な種いも使用と均一なやや狭い株間、適正肥料による栽培と十分な培土を行なう。

    5) 褐色心腐病  −高温、乾燥−

     乾燥、高温による内部中心組織の死滅(褐色〜黒褐色)であり、中心に発生するものはいもの肥大期の水分不足が原因として考えられる。土性では砂地での発生が多い。その他に生育後期の高温による熱障害(ヒ−トネクロ−シス)も内部組織の死滅であり、内部に不正形の褐色斑を生じるが、発生は砂地等で土壌温度が高いことにより生じる。
     土壌水分の保持が可能な完熟堆肥の施用による土壌改良及び適期の培土を行ない、砂地での栽培を避けるか、潅水する。アトランチックは品種的に出やすい。農林一号、トヨシロ、ノ−スチップにも発生する。

     6) 黒色心腐病  −通気不良−

     高温下での酸素不足(通気不良)が原因であり、輸送、貯蔵、浴光育芽での高温と通気不良には注意する。マルチ栽培での高い地温は本症状を起こしやすい。

     7) 圧着痕(押し傷)−バラ貯蔵注意−

     貯蔵のバラ積みの下層に現れ、押され、へこんだ表皮の下部が黒褐色になる。打撲と同じ発生機作で生じ、最大の原因は、入庫時の強い通風によるいもの乾燥であり、想定される状況は品温の高いいもに冷たい空気を吹きつけたときに相対湿度が下がり、水分が奪われることによる。例えば、品温18℃のいもに10℃の通風を行なった時、関係湿度は59%になり、いもの水分は蒸発し、下層のいもは圧縮によりへこむ、これがスク−ピングの時圧着痕として発生する。対策は入庫時の乾燥(通風温度)に注意し、湿度を保ち、徐々に温度を下げるようにする。

     8) 二次成長、変形 −多肥、徒長を避ける−

     生育中に高温(夜温25℃以上、乾燥)によりホルモンのバランスがくずれ、葉中にジベレリンの濃度が高まり、これがいもに移動し、内生休眠が明けた状態になる。この後雨による生育が再開したとき、いもは二次生長する。形は、細長くなるもの、こぶ、いも連鎖、萌芽などがある。品種の形状は、農林一号(萌芽)、トヨシロ(長く、こぶ)、ワセシロ(奇形なし、基部褐変)に見られる。ワセシロのように形状の変化がなくても内部において化学的成分(糖類)が変化することも多い。
     防止対策は、砂地での栽培を避け、地温の上昇と乾燥を防ぎ、窒素質肥料はやり過ぎないようにする。

     9) 維管束褐変

     いもの維管束がストロン側から褐変するもので、生育後期での急激な水分不足(薬剤による枯死、霜による枯死)によりストロン側の部分に発生する。

     10) 冠水、滯水害

     大雨による水害、とくにいもが水中に没した場合、水温によって腐敗程度が異なる。トヨシロで試験した結果では、25℃では1日は持つが、2日以上では全てが腐敗した。18℃では2日で20%程度が腐敗し、12℃では2日後は腐敗がなかったが、いずれも4日ではほとんどが腐敗した。スノ−デンもほぼ同じであった。

     11) 虫害

     ケラ(ダイアジノン粒剤)、ハリガネムシ(エチメトン粒剤)、ナストビハムシ(エカチンTD粒剤)、オオニジュウヤホシテントウムシ(デナポン水和剤)、ジャガイモガ(オルトラン水和剤等)などによるものは、いずれも害虫駆除を行なう必要がある。サツマイモネコブセンチュウによるコブについては、輪作、ギニアグラス等の対抗植物の植付け、薬剤防除(D−D、ネマトリン粒剤等)などの手段がある。

     12) ジャガイモシストセンチュウ

     世界中で防除が困難とされているセンチュウで、連作、過作ほ場において密度が高まると作物に被害が出る。卵が詰まった袋(シスト、約0.6mm)が成熟すると黄金色になることより、ゴールデンネマトーダと呼ばれる。北海道での発生地域は後志、網走地方を中心に函館、最近は十勝にも発生がみちめられ、地域が広がっている。
     一度進入すると根絶はできないので、進入防止対策が採られている。シストは土壌に混入して運ばれることから、発生地からの土の付着した靴、農機具、運搬用具(コンテナ)、運搬車、苗、根菜、植木などの取り扱いには十分な注意が必要である。特に発生地における種いもは不用意に用いるべきでない。車、農機具等の汚染の除去は発生地内において洗浄するのがもっとも効果的である。