これよりポテトの専門的、技術的な記述となります、ここでは加工原料の品質、化学的特性の概要について述べます
原料の品質と生産
化学的(組織的)特性
1 化学成分
2 乾物、比重
3 澱粉
4 糖類
5 加熱後の細胞構造
6 調理後黒変
7 グリコアルカロイド
8 ビタミン
9 ポリアクリルアミド
原料の品質と生産
1 品質


澱粉粒子、左:生きた細胞中(ヨード反応:紫色)、右:左より取り出した粒子
2) 澱粉価
澱粉価(ライマン価)と比重とは正の相関が高い。比重から概略求める方法は、次のとおりである。
澱粉価=214.5(比重−1.050)+7.5
高澱粉イモは、蒸(水)煮後の性状が粉質で、煮くずれしやすイモのが多い。加工原料としては、澱粉価は歩留まりを上げるために高い方が望ましい.他方、高すぎるとチップ製品ではテクスチャ−が硬くなる。
比重増加と澱粉の蓄積を促す生育条件は、前述の通り、初期生育を早め、徒長を避け、茎葉を維持し、十分な生育期間で、澱粉蓄積をすすめ、完熟イモを収穫することである。
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4 糖類
1) メイラ−ド反応
イモに含有される各種糖類のうち、還元糖(グルコ−ス、フラクト−スなど)は、油加工する場合に重要で、アミノ酸とともに水溶性で、下に示すメイラ−ド反応に関与する。
メイラ−ド反応とは、グルコ−スなどの還元糖の還元基とアミノ酸のアミノ基との高温下における非酵素的褐変反応である。還元基、アミノ基が多いと、チップは暗い色(こげ茶色)になる。
185℃(フライ)
還元糖(C6) ↓
+ →→→→→→→→→→→→→→→褐変
アミノ酸
還元糖は、チップでは生重で1mg/g(0.1%)以下、フレンチフライなどの油加工の場合も2〜4mg/g(0.2〜0.4%)以下が許容範囲とされている。また、ショ糖(=シュクロ−ス)も以下のとおり、貯蔵中には酵素インベルタ−ゼにより加水分解されて還元糖に変化するので同様にメイラ−ド反応に関与する。
ショ糖(C12)→→→→→→→→→グルコ−ス(C6)+フラクト−ス(C6)
↑
インベルタ−ゼ
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2) 糖の消長
チップのカラ−に影響する糖は還元糖とショ糖(シュクロ−ス)であり、生育中のイモ内では、イモが肥大成熟するにつれて減少し、茎葉黄変期頃が最少となる。研究所の最近6年間における収穫時の糖含有量は、品種および年次間差があった。 新品種、スノ−デンはグルコ−ス0.2mg/g以下、ショ糖1.5mg/g以下であり、年次間差も少なく、糖の低い(低糖性)品種と言える。これに比べて、トヨシロと農林一号は含有量も多く、年次間差も大(グルコ−ス0.2〜1.4mg/g、ショ糖1.3〜2.3mg/g)であった。
今、収穫時や貯蔵時におけるグルコ−ス量とチップカラ−との相関を見たところ、研究所の数年の結果から自然対数の高い相関(係数=0.89)が認められた。
これから、グルコ−ス0.5 mg/g以下の原料は、チップカラ−(アグトロン値、40前後)はほぼ満足できるものとなった。なお、最良のチップカラ−を得るには、収穫時、グルコ−ス濃度で0.3mg/g以下が望ましく、ショ糖も条件により加水分解して還元糖に変化するので、1.5mg/g以下が望 ましい。
重要なことは、収穫時のこれらの品質を貯蔵により維持はできても向上できない点であり、畑で品質を高めることが、原料栽培では最優先される。上述通り、栽培中のイモの糖類(とくにショ糖)は、イモが成熟するにつれ徐々に減少し、黄変へ進むと少なくなる。この状態は、イモは皮張り(コルク層形成)など、見た目には完熟していないが、化学的に成熟に達したことになる。
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3) CMM理論
イモ内部の化学的な成熟は、アメリカで提唱されたCMM(Chemical Maturity Monitoring)理論により表わされる。その時の基準となる糖濃度は、上述の最良のカラ−を得る濃度(グルコ−ス=0.35mg/g以下、ショ糖=1.5mg/g 以下)である。とくに、ショ糖濃度は生育が進につれ徐々に減じ、化学的成熟(収穫期)の指標となるとされている。最近のチップ用品種(スノ−デン、アトランチックなど)は、この化学的成熟(とくにショ糖=1.5mg/g 以下)が茎葉黄変以前に認められる。
収穫時期の糖濃度は、含有量によってその後の貯蔵に影響する。糖類の上述の基準より少なイモのは長期貯蔵に層別され、基準より多イモのは貯蔵初期に昇温処理されることになる。
全般に、糖類の少なイモのの栽培は、比重を高める栽培と同様で、初期生育を早め、徒長を避け、茎葉を維持し、十分な生育期間を保持し、比重の高いイモを収穫する必要がある。収穫したイモの糖類は、収穫時の打ち身傷や低温など各種のストレスで増える。また、貯蔵では、貯蔵庫の貯蔵環境(温度、湿度、通風等)により大きく変化する。貯蔵中の糖類の消長については貯蔵の項目を参照されたい。
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5 加熱後の細胞構造
澱粉含有量は、イモの部位では表皮から維管束の間(皮層)が高く、維管束部と中心の内髄は低い。とくに、キタアカリなどは内外の差が大きい。この差の大きいイモを加熱したとき、維管束近くで粉質部と粘質部に別れるのが見られる。
イモの組織(細胞)は水煮(蒸煮)したとき、次の図ような組織的変化が見られる。高澱粉含有、または細胞、澱粉粒子の大きなものの加熱細胞は、大きく丸く膨らみ、ばらばらになっている。このような状態は、粉質感のあるサラダやマッシュに最適のほくほく感の強イモのになる。
一方、表のとおり、メークイン、ホッカイコガネは、細胞が小さく(澱粉も小さい)煮くずれしない(粘質)品種とされている。また、生育途上のイモ(新じゃが)は、加熱後の細胞はふくらみが小さく、くっついているので、粘質になる傾向がある。これらは煮くずれしない煮物、缶詰等の加工に最適である.
貯蔵中の変化は、低温貯蔵後は澱粉が糖化し、少なくなり、粉質感が減少し、甘味、粘性が増す傾向がある。一方、高澱粉のものでも、圧力鍋での加熱や、冷却した後に機械的な圧力が加わると細胞の 破壊(写真左下)が生じ、内部澱粉がはみだし、糊(粘質化)となり、冷えると硬くなる。
フレ−ク生産におけるテクスチャ−は、イモの加熱後の細胞が壊れる(フリ−澱粉が多い)と粘質感のあるフレ−クとなり、細胞が壊れないと粉質感が保たれる。

図、 イモ蒸煮後マッシュしたときの細胞
(左側皮層部は右側髄部に比べて澱粉多く、細胞が丸く、ばらばらである、トヨシロ)
表 維管束における細胞内の大きさ、細胞内の澱粉粒子数と大きさ(北農試)
細胞の大きさ(μ) 澱粉粒大きさ(μ) 澱粉数
外部 内部 外部 内部 外部 内部
キタアカリ 222.4 223.3 11.4 10.1 35.4 36.5
メークイン 190.8 204.3 10.0 9.8 34.5 37.5
ホッカイコガネ 174.2 174.7 9.6 8.0 29.9 39.0
6 調理後黒変
農林1号、コナフブキなどは加熱後、時間を置くと冷え、灰色〜黒色なる。これはイモの中の第2鉄とオルトジヒドロフェノ−ル(おそらくクロロゲン酸)との化合物が酸化された結果生じるものある。最近の新品種は一般にこの黒変は少ない。
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7 グリコアルカロイド
1) 性質
グリコアルカロイドの95%はα−ソラニン、α−チャコニンであり、イモ全体から検出される。萌芽した芽では200〜300mg/100g、葉では40〜100mg/100gであり、イモの部位では皮層が10〜60mgと多く、髄部は0.5mg程度とごく少ない。食用とする場合は、剥皮により半分程度は取り除けることになる。ごく少量の存在はイモのフレ−バを良くするが、多量の摂食は中毒(嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、幻覚)をおこすことがある。この濃度の安全値は経験的に20mg/100g以上である。
新鮮なイモでは2〜10mg/100gでは通常の味覚の人は感知することは少ないが、20mg以上ではえぐみを生じ、食用に適さない。また、この物質はフライや煮つけによる加熱では減少しないとされている。通常の新鮮なイモは下記の通り、全体で10mg/100g以下である。しかし、光にあたり、緑化すると増加する。
2) 含有量(緑化)
品種ではメ−クインが高く、9.2 mg/100g(生重)となり、トヨシロ=4.3mg、男爵薯=2.1mg、ワセシロ=1.9 mg,アトランチック=3.6 mg、スノ−デン=2.2 mg、C18=2.0 mgである。
チップの含有量は原料によって異なるが100g当たり0.6〜2.1 mgであった。
含有量は光に曝されると数培に増加し、トヨシロは蛍光灯照明下(40W、4日、照度合計7,000ルックス )では 5.4倍(4.3 → 23.2 mg)に増加し、直射日光を1日間当てると1.2倍(5.4 mg → 6.6 mg)、2日間では 2.3倍(5.4mg → 12.7mg)に増えた。
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8 ビタミンC
生馬鈴薯にはビタミンCが100g当たり23mg、チップ15mg、フライドポテト(冷凍)7mg、乾燥マッシュポテト5mg含まれていると、四訂標準食品成分表に記されている。また、水煮では13mgと減少するが含有量の多い食品である。小池先生の著書(ポテトチップス栄養学)には、チップのビタミンCは15mgであるが、九州、関東、北海道の新ジャガについては最大85mg/100gの例が示されており、Cの良い供給源となっている。成人のC所要量は1日50mgとされており、馬鈴薯製品は供給源としても良い食材となっている。
その他にビタミンB1が0.11mg/100g、B2が0.03mg/100g、ナイアシン(ニコチン酸、ニコチン酸アミドの総称)1.8mg/100gが含まれている。
9 ポリアクリルアミド
発がん性があると騒がれたポリアクリルアミドは、ポテトチップス、フライドポテト、ビスケットなど炭水化物を多く含む食材を高温で加熱すると、アスパラギンとブドウ糖などが反応して生成するということが、ストックホルム 大学とスウェーデン食品庁の共同研究で明らになったのは2002年の4月である。その後多くの分析が行われた。チップでは原料を低温貯蔵すると増えることが知られている。
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