ゼネテス:で、叔母貴はなんて?
ヴァイライラ:閣下の婚約者ティアナ王女のもとへ
足繁くお通いになるようにと。
ゼネテス:俺は婚約なんてしていない。
ヴァイライラ:私たちは王妃様の伝言を閣下に伝え、
その内容を実現させるだけです。
ゼネテス:ほお、恐いねえ。
ヴァイライラ:任務ですので。
ゼネテス:俺も金持ちになったら、
あんたたちほどの者を雇いたいもんだ。
あんたたちとやり合っちゃ、
俺も無傷とはいかないだろうからな。
ヴィアリアリ:では、閣下。
ゼネテス:行くべきだろうな。
…だから行く。ただそれだけだ。
ちょっと負け惜しみっぽいけどな。
ゼネテス:…いい女だねえ。
お前さんもそう思うだろ?
ヴァイライラとヴィアリアリ。
サファイアとルビーと呼ばれる、
エリスの配下でもトップの実力だ。
奴らは強い。
… そして奴らは
ひとつの信念のためにしか
その力を使わない。そこが美しい。
ま、その信念てのが、
金に汚いツェラシェルってところが
間違ってる気もするがな。
んじゃ、姫さんの所に顔出すか。
悪いが、●●。お前さんもついてきてくれ。
侍女:王女様、総司令閣下がおみえです。
ティアナ:王女と呼ばないで。
侍女:も、申しわけありません。
ティアナ様。
ティアナ:下がって結構です。
ティアナ:なんのご用です?
ファーロス総司令閣下。
ゼネテス:姫さんのご機嫌うかがいにね。
ティアナ:まぁ、おやさしいこと。
でも、あなたのお酒の臭いで
さっそく気分が悪くなりました。
ゼネテス:そりゃまずい。
介抱しようか?
ティアナ:結構です。人形泥棒に
介抱していただく気はありません。
それに、あなたがいなくなれば
すぐに治りますから。
ゼネテス:つまり、俺を前にすると
クラッとくるわけだ。
そりゃ原因は別かもな。
ティアナ:なんですって?
ゼネテス:例えば、恋の病とかな。
ティアナ:だ、誰が! あなたなんかに!
失礼で野蛮で、
酒とバクチにおぼれた人なんて!
少し手柄をあげたくらいで
調子に乗らないでください。
ディンガル軍を破ったのだって
運がよかっただけなのです。
ゼネテス:そうだな…。
ありゃ、ほんとに運がよかった。
どう考えても
アンギルダンのとっつぁんが
勝つ戦だった。
あのときばかりは、
運命の女神の気まぐれに感謝したぜ。
ティアナ:ロストール軍総司令のあなたが
そんな言い方を…!
ゼネテス:戦場は地獄になる。
地獄が広がらずにすんだ。
運がよかったんだ。
ティアナ:………………。
それで昼間から祝杯をあげて
いらっしゃったのね。
結構ですこと。
ゼネテス:うんにゃ。いくら俺でも
そこまでは割り切れねぇな。
ま、弔い酒だ。
ティアナ:弔い酒?
ゼネテス:ディンガル兵にしろ、
親兄弟がいる。
子供がいる奴もいただろう。
それを…、
ずいぶん殺しちまった。
ティアナ:………………。
ゼネテス:ロストール兵だって、ほとんどは
無理やり引っぱり出された農民だ。
国や貴族の名誉のために死ぬより
他にやることがあったろうに。
親父の指揮の誤りで死なせちまった。
ティアナ:ウソばっかり。あなたが
そんなことで悩むものですか。
ゼネテス:ずいぶん俺のことに詳しいねえ。
気になって調べさせたのかい?
ティアナ:誰が、そんなことを!
と、とにかく、あなたがいると
気分が悪くなるんです!
ゼネテス:そりゃどーも。
んじゃ、行くか、●●。
ティアナ:あの、 ●●将軍
でしたね。
見苦しいところをお目にかけて、
申しわけありません。
またいらしてください。
ゼネテス:●●だけかい?
俺は、来ちゃまずいのかな?
ティアナ:ご勝手に!
ゼネテス:ん?
あぁ、さっきの人形云々ね。
タルテュバの奴が
スラムの女の子から人形を取り上げて、
ティアナにプレゼントしたんだ。
で、その女の子に頼まれて、
ティアナから人形を取り上げたんだが
それを根に持ってるんだろ?
俺がなぜ人形を奪ったか、
ティアナは知らない。
別に知らなくてもいいことさ。
ティアナは誰にでも優しく、
誰にでも気を使う。
だけど人間ってもんは
そういう風にできちゃいない。
だから、どっかでムリがくる…。
彼女には必要なのさ。
もっともな理由があって
文句をぶつけられる人間がな。
これからも、ときどき顔を
出してやらなきゃならんな。
からかうとおもしろい姫さんだし
ティアナの方でも
俺のことが嫌いじゃないらしいし…。
ゼネテス:うぬぼれてるって?
フフ、俺は人生悲観して生きるより
期待して生きることにしてるんでな。
じゃあな。
また会おうぜ、●●。
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