闇の巨人



ツェラシェル:
あのボウヤ、
無限のソウルの持ち主かもしれん。

ヴァイライラ:
無限のソウルの持ち主というと…
施文院の伝承に
世界の終わりに現れるという…

ツェラシェル:
何かは終わっても世界は終わらんよ。
すべてが虚無に帰らない限りな。
そして、破壊神ですら
世界を虚無にできなかった。
ま、そいつの無限のソウルにひかれて
かなえられなかった願いが巨人となり
現れちまったんだろうな。
あるいは大神官様のいたずらか?
世界を滅ぼすための
予行演習かもしれんな。

どんな身体になっても生きていられる。
自分の意志に従って生きていける。

妹の笑顔が見られる。それで十分だ。
ヴァイ、ヴィア、こいつを送ってやれ。
こいつは、今でこそこんなザマだが、
世界の未来を変えうる存在になる。



始まり

ツェラシェル:
くううあああっ!!

はあ…はあ…
とうとう…奴の呪いが
心臓まで…くううあああっ!


…なんだ…お前か。
くうっ! うううっ!

はあ…、はあ…
こないだの仕返しに来た…
ううっ…のかい?うああっ!




ツェラシェル:
朝…か…
いよいよかと思ったが…
へへ…、まだ生きてるのか。
こいつが…
エルファスの呪いから
俺を助けてくれたのか…?

んなわけねーわな。
感覚が残ってるとこには
鋭く痛みがある。呪いは健在だ。
つまり呪いの解き方もわからないのに
ただ、でくの坊みたいにオロオロと
徹夜でここにいたってのか、こいつは?
こいつの無限のソウルのおかげで
俺はしぬことだけは免れた
……ってことはないか。
ま、そんなご利益はないにしろ
こいつの近くにいると、俺みたいな奴も
善人になりそうだ。ずらかるとしよう。



ちぇっ
しょうがねえな。
ったく!


リューガ邸前1


ツェラシェル:
夜中に徘徊する不審人物発見。
……って、
俺も他人のコトは言えないか。
俺に用かい?

「別に」

ツェラシェル:
じゃ、あばよ。



ツェラ:
…別に他にも
用事はないってわけかい?



ツェラ:
聞かないのな。


ツェラ:
妹たちとのことだよ。
見てたんだろ?

「うん」

ツェラ:
こんなこと言えた義理じゃないが、
あいつらのこと…頼む。



ツェラ:
ただ、俺のことはあいつらには伝えないでくれ。
絶対にだ。



ツェラ:
どうしてもだ。
もし、しゃべったら、もう会わない。
いいな?


リューガ邸前2



ツェラ:
もう朝か。
おい、エルファスが俺にかけた
呪いのことは知ってるんだよな?
平気なように見えてかなり痛い。
痛いなんてもんじゃない。
だが、平然としてる、わかるか?
痛がっても、どうしようもない。
ただ、エルファスを喜ばせるだけだ。
だから、俺は平然として見せてる。
ホントのとこ、
もう手も足も動かない。
魔法でごまかして
動くように見せてるだけだ。
もう長くない。
だが、後悔はしてない。
俺は自分だけのために、
自分の意志で生きることができたからな。

死竜の洞窟



シャリ:
邪竜エルアザル、何百年も前に
世界を滅亡の危機に追いやったけど
賢王アルキュオネに倒された…。
知ってる?
ホントにこいつを倒したのは別の人間。
忘れられたかわいそうな剣士。
彼は強大な力を与える代わりに
世界から存在を忘却の彼方に消し去る
闇の神器、虚無の剣を抜いたのさ。

ツェラ:
忘れられた剣士ミラクの
失われた伝承など知っている俺を、
誰だと思っている?

シャリ:
元は施文院最強の告死天使。
今は堕ちて、自分のためだけに
どんな汚い仕事もこなすケチな悪党…
そんな君がなんでここに来るの?
ご親切にも、うかつな冒険者に
この屍竜に近づくなと警告するため?

ツェラ:
ここには黄泉の乙女像がある。
ガッポリ賞金のかかったデカイ山だ。
ケチな小悪党にはぴったりだろう?

シャリ:
フフ。エルファスの呪いの具合はどう?
ホントはもう歩くのすら困難なはずさ。
そんな身体で屍竜に挑む気だったの?
違うだろう?
思い出すため、だろう?
思い出そうとしていることすら
思い出せないだろうけど
僕は知っているよ。
それは忘れてしまった君の願い。

●●が来る

シャリ:
おやおや、おやもやおジャマ虫の登場だ。
霊峰トールのノトゥーン神殿においで。
そこで話の続きをしよう? くすくす。

リューガ邸前3




ツェラ:
…もしかして、の話だけど
シャリが俺に言ったことを気にして
それで、あんた、朝までここにいたの?

出たよ。
お得意のダンマリだ。
ホント、あんたって食えない女だよ。
行かねえよ。行くわけないだろ?
来いって言うからには
敵さんには用意があんだからよ。
ただな…
うずくんだよ
心が。

霊峰トール



シャリ:
くすくす。
君の願いはなんなのか?
それを探りに来てくれたんだね。
じゃあまず質問。
そしれこれは君の願いを知るヒントだよ。
なんで君はゼネテスが嫌いなの?

ツェラ:
虫が好かない。
それだけだ。
理由などあるものか。

シャリ:
くすっ。理由はあるよ。
思い出せないだけ。
じゃあ、次。
なんで君は生きることに執着するの?
そんなになってまで
呪いで身体はズタズタだろう?
死よりもつらい痛みが君を襲ってるのに
君は平気なふりしてまだ生きようとする。
まるで君が嫌いなゼネテスみたいだ。

ツェラ:
死ぬのが恐いからさ。
あいつは関係ない。

シャリ:
ウフフアハハ! 関係あるさあ!
なんの感情も持たない告死天使の君を
ここまでにしてくれた彼の影響だよ。
次! ドンドン行こう! ねえ?
君ははるか昔にエルアザルを倒した
忘れられた剣士に誰の姿を重ねてるの?
ねえ? バロルを倒したネメアは
どうして世界を救った勇者と
賞賛されることを嫌がるの? ねえ?

エルファス:
それはネメアめは勇者ではないからだ。
奴も忘れてはいるが
真に世界を救った者は別にいる。
世界を滅ぼそうとする魔王バロルと
ネメアの決戦のとき、別の場所で
世界を救うための戦いがあった。
ゼネテス、貴様、そして
忘れられた大いなるソウルの持ち主は、
姉さんが施した封印を破ろうとしていた。

シャリ:
その封印こそ、バロルに不死の力を与え
バロルの精神を操って世界を消そうと
しむけていた元凶だったからね。

エルファス:
だが、貴様らの貧弱な魔力では
姉さんの封印をとけるはずもない。
闇の神器の力でも借りぬ限りはな。

ツェラシェル:
あいつは言った。…この虚無の剣を
大いなるソウルを持つ自分が抜けば
自分の存在は忘却の彼方へ消え去る。
だけど大いなるソウルと闇の神器のちからで
この封印を断つことができる。
自分が好きな世界を救えるんだ、と。

シャリ:
君は止めたよね?
だけど、普段生きることの大切さを偉そうに説いていたゼネテスは…。

ツェラ:
奴は止めなかった。
あいつの意志を…大事にする…と言って
そんな…偽善…俺は…俺は…!

シャリ:
君の痛みはものすごかったんだね。
今の君を作ったふたりのうちのひとりが
そのときしていた悲しい目に
気づけないほどつらかったんだね。
そしてツェラシェルは世界が滅ぶとも
自分の利益のためだけに生きると誓い
ゼネテスは誰とも組まなくなったとさ。

エルファス:
僕もその者の存在を忘れていたよ。
この世界の者でないシャリがいなければ
このまま忘却の彼方に消えていたろう。

シャリ:
君が意識下で死を恐れる理由はこれ。
自分が負った大事な人を失うという傷を
大事な妹たちに負わせるのが恐いんだ。
だけど、エルファスの呪いにより
君は死のあぎとに捕らえられつつあるよ。
どうする?
君の願いをかなえる答えは一つだけ。
ヒントは、闇の神器、虚無の剣。
僕は知ってる、あれは確実だ。
使用者のソウルが大きすぎた失敗例が
たった2件だけあるけど、
君程度の小悪党ならだいじょうぶ。
さ、君の希望はすぐそこだよ?
思い出しているんだろう?
おいで、安らかな絶望のほうへ。


シャリ:
わー、●●だ。
なんでも暴力で解決しようって姿勢
よくないと思うよ?
人はね、ココロがあって生きてるんだ。
そのココロの底の願いがかなうってのに
ジャマばっかりしてさ。おしおきだよ!


ツェラ:
奴らなら、行ったよ。

リューガ邸前4


ツェラ:
俺がシャリの誘いに乗らないっつって
のこのこ霊峰トールまで行ったこと…
もしかして、今さら怒ってんの?
出たよ。またダンマリだ。
俺がウソをつくなんて
日常茶飯事だろ?


………………
…悪かったよ。
心配してくれてるのに
ウソついて…



…ちっ

リューガ邸前5




ツェラ:
昔、ゼネテスとつるんでたことなんて
忘れちまってたな。
これも虚無の剣のお力か。
悪いが
もうこの話は終わりにしてくれ。
ひとつだけ言えることは…
ゼネテスならあいつをとめられたんだ。
俺じゃあ、いくら言っても
あいつをとめられなかったけど、な。


リューガ邸前6




ツェラ:
見張りに来たの?
俺が消えないかって。
消えることへの
恐怖も未練もないはずだったのに…
…なんでもねえよ。

リューガ邸前7


ツェラ:
見張りに来たの?
俺が消えないかって。
消えねえよ。
それが俺の
あいつやゼネテスへの意地だからな。
…なんでもねえよ。

リューガ邸前8


ツェラ:
見張りに来たの?
俺が消えないかって。
消えたら、もうわかんねえよ。
虚無の剣の力で
あんたも俺のこと、完全に忘れる。
…なんでもねえよ。



リューガ邸前9


ツェラ:
おやおや。あんたに会えそうな
気がして、待ってたら
…ホントに来たよ。
俺は賭け事には
弱いハズなんだがな。
かなり運を使っちまったようだ。
当分、ツキはなさそうだ。

リューガ邸前にて




ツェラシェル:
また朝だな、おい
あんたと朝を迎えるの
何度目だっけ?

ま、んなこた、どうでもいっか。
ガタガタの身体かかえてるから言える。
もう俺は立ち直れないから言える。
再生していく物に少し嫉妬しながらな。
ガタガタの街が立ち直っていくのは
いいなあ…
朝が来るのもいいもんだなあ。
意地張ってなんでもない顔して
生きて、生ききってやるつもりだったが、
やっぱ時が流れるのが恐かったんだ。
だけど、今は、てらいも意地もなく
こうやって朝日が昇るのを見てられる。
不思議な気分だな。
そうだな、これが本当に
自分のために生きてるってことだな。
意地でも、あてつけでもなく…
ありがとよ…
●●…

もう、あんたとは会わない。

これが
自分のために生きるってことなんだよ、
●●。



闇の門の島



ヴァシュタール:
なるほど…闇の神器を使って
逆に封印をほどこしておったか。
開け放つものである私の力が満ちても
ウルグ様復活の門が開かないのも道理だ。
しかし…いつの間に?
それは認識しえまい。
私もこの世界の存在だ。
この虚無の剣の魔力からは逃れられぬ。
…まあよい、闇の門を開け放ち
幾度と無く繰り返されてきた茶番、
光と闇の戦いの幕をまた開けよう。

ツェラ:
そうはさせん。
これはあいつがいたという証だ。

ヴァシュタール:
施文院の秘術か。しかもかなり高度だ。
これを使える者がこの時代にも
まだいたとはな。
いや、きれいに一撃をもらったよ。
本来なら魔人のの生という永遠の怠惰から
私は解放されていたことだろう。
しかしどうしたことだ。
その肉体の衰えは
まるで死体だ。技の威力も皆無だな。
そこらのザコならいざ知らず
破壊神ウルグの円卓騎士筆頭
ヴァシュタールを倒すには不足だ。

ヴァイ:
兄さん!

ヴァシュタール:
ザコがもう2匹。

ツェラ:
ぐっ!
動けない!

ヴァシュタール:
ほほう、貴様も消えたがっているのか。
この2匹の女どもに、心の痛みを
与えぬため、という理由はくだらんが。
それなら虚無の剣を使うまでもないな。
私が貴様の前にこの女どもを始末しよう。
そうすれば痛むべき心もなくなる。

ツェラ:
やめろ!

●●!
お前まで、どうしてここに!
危険だ! 逃げろ!

ヴァシュタール:
フッ、またザコかと思えば
無限のソウルの持ち主ではないか。
そうか、今回の茶番の主役は貴様か。
あるいは、貴様ならこの永遠に繰り返される輪廻に
終止符を打ってくれるのかな?
まあいい
時間は限りなくある。
退屈しのぎにためしてみてもいいだろう。
いくぞ、●●とやら。

(戦闘)

なるほど、退屈しのぎにはなった。
だが、私の存在を消すには
どうにも力不足のようだ。
今回の茶番の主人公は
別の人間に務めてもらうのだな。
どうせ代役は用意されているのだろう?

ツェラシェル:
茶番、茶番とうるさいんだよ。
人間の生き様は、かけがえのない
それぞれに尊いものなんだ!

ヴァシュタール:
その気…
貴様、さっきの戦いの間に
虚無の剣を盗みおったか?

ツェラシェル:
生きるのに飽き飽きしてる?
消えたい?
上等だ。消してやるぜ!

ヴィア:
やめてお兄ちゃん!
虚無の剣を抜かないで!

ツェラ:
俺は、俺はもっと生きたかったぜ!
今は言える! もっと、もっと
●●と…いっしょに…!

ヴィア:
私…たち…
どうしてこんなところに…
いるの…?

ヴァイ:
そうよ、たぶんそれよ。
ええと…、闇の神器…の…剣。
その探索でここに来たのよ。

ヴィア:
じゃ、旅を続けよっか。
お兄ちゃん!

あ…。
なんでお兄ちゃんなんて呼んだんだろ。
●●は女の子なのにね。

ヴァイ:
それに
私たちは天涯孤独、ふたりっきり。
兄なんていないでしょう、ヴィア。

ヴィア:
そうだよね。
どうしたんだろ。ヘンだよ。
さっきから頭がボーっとしてて。

ヴァイ:
どうなさったのですか
●●様。


ヴィア:
…私も同じだ。

ヴァイ:
ええ。
私も何か心に穴が開いたような、
そんな気がします。

旅をご一緒させていただくときは
いつも通り猫屋敷で呼び出していただく
…ということですね。了解です。
それでは●●様
失礼させて頂きます。
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