セルモノー:
…何者か?
すくなくとも余よりは、
賢いものには違いないだろうが。
余は18年前、王になるため、
愛のない結婚をした。
エリスを出世の道具として利用した。
そのことはずっと
あれに対する負い目になって、
余を苦しめた。
ティアナが、もしも、
余の娘でなければ、
余はあれと対等になれたかもしれん。
だが、あれは余に忠実であった。
余がどんなに情けない男であろうとも、
あれはあくまで余に忠実であった。
あれは悪くない。しかし、
それが余に苦痛をもたらしたのだ。
いや、余の苦痛そのものだった。
レムオンにあれの死刑執行書に
サインするように言われたとき、
余はやっと解放されると思った。
だが、もはや取り返しが付かぬ
という思いが、なおさら、
余を苦しめるようになった。
その思いは、
我を呼び覚ますに十分であった。
ティアナ、
お前さえ、余の娘でなかったら、
余は孤独な罪人とはならなかったろうに。
余とエリスは
二人でお互いの罪を見ながら、
醜く共存できたろうに…。
…余は縛られし者よ。
ソウ、我ハ縛ラレシモノ…
…破壊神ノ円卓騎士サムスン!
ティアナ:
お父様!
セルモノー:
最初に愛していなくても、
次の日から
愛そうとすればよかったのだ…。
時間を浪費した。
すまんな…エリス。
今すぐ、お前にわびにゆく。
勇者殿…。
闇が覆おうとしているこの世界に
光を…。
そして、我が娘ティアナを…
た、頼…みま…す。
ティアナ:
お父様…、
私は私の王女という役割を
心底嫌っていました。
逃れられない運命のように思い、
ただ、憎むことで、逃げることで
日々を生きてきました。
それが愚かであったことに
私は、今、気づきました。
私が誰なのか、決めるのは私なのです。
私は私にしかできない道を歩んでみます。
●●様。
見ていて…ください。
カルラの侵攻、リューガの変、
そして、セルモノーの死。
国政の中心人物を次々と失った
ロストールの混迷はここに極まった。
深刻な人材不足…
壊滅的な被害を受けた軍…
重くのし掛かる財政負担…
不気味な沈黙を続けるディンガル帝国…
残された貴族達に山積した問題を
解決する力はなく、王女ティアナが
ロストールの王位を継承することに
異を唱えるものもいなかった。
ティアナの王位継承は、ロストールの
貴族制の終焉を暗に示していた。
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