ティアナ:
●●様…。
ティアナを外へ連れ出して
いただけませんか?
直接お会いして、
おわびをしたいのです。
先日のお人形のことです。
タルテュバ様がお人形を
取り上げてしまった女の子に…。
それに民の暮らしを見ておくことも大切でしょう?
それが、王女であり
第一王位継承権を持つ者の
務めだと思うのです。
…やっぱり、お見通しなのですね。
…そうです。本当は、一時でいいから
ここを逃げ出したかったのです。
でも、その子におわびをしたいのも、
人々の暮らしを見たいのも本当です!
お願いです、●●様、
どうかティアナを
街へ連れ出してください。
「わかりました」
ティアナ:
本当ですか!
もちろん
危険は覚悟のうえです。
ハンナ:
あー!
●●お姉ちゃんだ。
この人、お姉ちゃんのお友だち?
ティアナ:そうよ。お友だち。
ハンナ:
ふーん、それにしてはおしとやかだね。
あのね、●●お姉ちゃんはすっごいんだよ。
あたしのお人形
タルテュバに取られちゃったんだけど
取り返してくれたの。
ティアナ:
ええ、知ってるわ。
古いけど、とってもかわいらしい
お人形よね?
ハンナ:
なんで知ってるの?
ティアナ:
実はね、タルテュバ様は…
ハンナ:
そっか、●●
お姉ちゃんが話したんだね。
お姉ちゃんも
タルテュバにいじわるされたら
●●に助けてもらいなよ。
ティアナ:
えっ、ええ…
ハンナ:
じゃあね。
…今度はカレシをつれてきてよね。
ティアナ:
くすっ、
元気でいい子だわ。
でもどうしてなのです?
私、あの子に謝りたかったのに。
本当のことを話すべきだと…
大変だ!
チダフが、貴族の馬にはねられた!
…ひどい傷だ。
チダフ、しっかりおしよ。
ティアナ:
ひどい…。
誰なの?
誰がこんなひどいことを!
貴族だよ、決まってんだろ!
スラムの子供の命なんて、
奴らには難の価値もないのさ。
ティアナ:
お医者様はどうしたの?
早くお医者様を!
あんた、傷を見て
おかしくなっちまったのかい?
医者を呼ぶ金がどこにあるっていうんだい。
だれか、ゼネテスさんを呼んできな!
ティアナ:
ゼネ…テス…?
ゼネテスさん!
ゼネテス:
うい。どうしたい?
よ、●●、
こんなところでデートか。
ティアナ:
あなた!
ここで何をしているのです?
ゼネテス:
何って、見てのとおりさ。
飲んだり、食ったり…
あんたの前では言えないこともな。
どんな具合だい?
ゼネテス:
こりゃ、荒療治が必要だな。
そんなに難しいこっちゃないが
この子が痛みに
耐えられるかどうか…。
イヤだ! 痛いよ!
かあさ…ん、助けて…。
ゼネテス:
どこ行ったんだ。こいつの母ちゃんは?
それが、リベルダムへ買い出しに出かけたって話で…。
ティアナ:
答えなさい、ゼネテス!
ここで何をしているの!?
いいえ、その前にお医者様だわ!
今すぐ城に戻って…
ゼネテス:
バカ! 金切り声を出すな。
チダフが怯えちまう。
…この子の手を握ってやってくれ。
あんたのやさしい声で励ましてやるんだ。
この子のために…頼む。
いいか、チダフ。
ちょっと痛むが、少しの辛抱だ。
男だったらガマンしろ。
暗転、城の入り口へ
ゼネテス:
それにしても大したもんだぜ。
よくあの痛みに耐えたもんだ。
きれいなお姉さんが励ましてくれたおかげかな。
あいつ、ガキのくせに面食いなんだ。
ティアナ:
…自己満足です。
あなたは英雄を
気取っているだけです。
ゼネテス:
あそこにはあそこの
やり方ってもんがある。
貴族の医者を呼んで
一流の治療をしてやったところで
彼らのプライドを傷つけるだけだ。
ティアナ:
いいえ、そんなことを言っているのではありません。
スラムのあの方たちの暮らし。
子供の命を何とも思わない貴族。
その構造を変えない限り、
同じことが繰り返されるのです。
ゼネテス:
…なるほど。
さすがは叔母貴の血を引いてる。
冷静な分析だ。
さっきまで取り乱していた人間とは思えないね。
ティアナ:
確かに、あの時は…。
ゼネテス:
仕方ないさ。王宮とは別世界だからな。
ルールも価値観もすべて違う。
貴族に哀れみを受ける道理はないし、
あんたが夢見ていたように
自由で気楽な暮らしでもない。
まあ、それがわかったら
二度とスラムをうろついたり
しないこった。
これ以上うろちょろすると
ボロが出るぜ。
とにかく、今日は助かったぜ。
んじゃな。
ティアナ:
え、ええ…。帰りましょう。
今日は…
よい勉強になりました。
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