レムオン:
おい、女、
助太刀してやる。


(中略)


レムオン:
…女。
だいたいの察しはついた。
この地の代官を倒す相談か?
お前は反対のようだが、
その会合、俺も出させてもらう。
いいな、女?

チャカ:
女、女って呼ぶな!
姉ちゃんにはちゃんと
●●って名がある!




レムオン:
それは失礼した、
●●。
俺の名はレムオンだ。
ノーブルの森とは
町の門を出てすぐの、あの森だな。
では、門で落ち合おう。




レムオン:
…反乱など起こせば
町の者全員が
皆殺しにされるかもしれぬぞ。
ロストールは身分の厳しい国だからな、
反乱が失敗すれば無論のこと、
成功しても軍隊に鎮圧されて皆殺しだ。
代官のことはいずれカタがつく。
町のことを考えるなら、
反乱などやめておくことだな。



レムオン:
バカどもが!
大人しくしていれば、
じきに俺が片をつけたものを!
●●、
あいつらだけでは返り討ちだ。
急いでとめにいくぞ!!

レムオン:
●●。
いよいよ町に入る。
お前の名前で
中止を呼びかけるんだ。


フリント:
それは困りますね。
苦労してあおった反乱です。
ぜひとも起こっていただかないと…。
それに、もう遅い。
すでに、町では騒ぎが起こり、
代官ボルボラは死にました。

レムオン:
貴様が王妃エリスの密使、
石火のフリントか。
ボルボラを始末したのは貴様だな?

フリント:
さぁて?
まあ、ボルボラは信用できない人物。
いずれは切り捨てるべきコマでした。
後戻りできない状況も必要でしたし、
●●さん、あなた抜きでは
いささか力不足のようでしたしね。




フリント:
私にお腹立ちのようですな。
でも、あなたを利用していたのは
私だけではありませんよ?
あなたのおとなりにいる男…、
彼こそ、この地の領主、
エリエナイ公レムオン・リューガです。

彼はこの地で反乱が起こり、
その責任問題で失脚するのを恐れ、
あなたを利用しているのですよ?

レムオン:
………………。

フリント:
レムオン様。
あなたの秘密についての密書、
ボルボラより受け取っております。
あなたは密書を取り戻さねば破滅。
反乱にかまっているヒマはない。
それと、●●さん。
反乱が表沙汰になるのを恐れた長老に
弟さんが捕まりましたよ。
急いで助けに行かなければ、
大変なことになりますよ。
フフ、お二方の目的が
食い違ってきたようですな。
さて、いかがなさいますかな?
それでは、ごきげんよう。

レムオン:
奴の言うとおり、
俺はこの地の領主、
レムオン・リューガだ。
王妃エリスの密使フリントが
この地に反乱を起こそうとしていると
知ってここに来た。
弟のエストもここに来ていた。
弟が反乱騒ぎに
巻き込まれないようにもしたかった。
フリントが手に入れた密書というのは
俺にとって致命的な秘密の
糸口になるものだ。
雌狐と言われるほどのエリスなら
有効に使ってくるだろう。
…これはすべてだ。
どうした?
チャカとかいう弟を助けに行くぞ。
密書は後回しだ。
確かに密書は俺にとって致命的なものだが…
お前ごときを利用する気などないと
証明することが先決だ。
俺の誇りに関わる。

…それだけだ。
行くぞ。




レムオン:
おい、奴らが新手を引き連れてくる前に
とりあえず、ここを離れるぞ。


野営中

レムオン:
…俺は王都へ行く。
この地の反乱のことと
密書の件でエリスと会わねばならん。
ここでさらばだ。


レムオン:
酔狂な女だ。
ついてくるというのか?

フッ、それもよかろう。
煮え切らない貴族どもには
うんざりしていたところだ。
気概のある奴がほしかった。
本格的にお前達を利用させてもらう。
覚悟するのだな。

ん?
どうした、●●?

地震か…?
反乱に反逆に地震と
立て続けとは忙しいことだな。
次はロストールが滅びるか?
破壊神でも目覚めるか?
…フフ、まさかな。
さ、行くぞ。





レムオン:
今からロストール王妃エリスと会う。
奴はファーロスの雌狐の異名をとる策略家だ。
とにかく、気をつけろ。
奴は七竜家の筆頭ファーロス家の出だ。
ファーロス家は権勢がある家柄でな。
今の王セルモノーも
エリスを妻にしてファーロス家の後押しを得、
王位についたほどだ。
しかし、実家の力など
あの女の策略に比べれば、
対したことはない。
今の当主ノヴィンは能なしだしな。
あの女は謀略で二つの国を滅ぼした。
おかげで、今や分断の山脈より南はすべて、
ロストールの勢力下だ。
あの自由都市リベルダムですらも
有力者であるクロイス家を取り込んで、
ほぼロストールの勢力下に収めている。
国内でも、貴族の力をそいで
王権の強化と中央集権化を進めている。
これも着実に成果を収めつつある。
そして、奴は娘である王女ティアナを
甥であるノヴィンの息子と結婚させようとしている。
つまり、強化された王位をファーロス家に
婚姻によって継承させようとしているのだ。
俺はこれに貴族を率いて反対している。
そのため、エリスとは対立している。
だから、奴は俺を消そうとやっきだ。
俺の領地であるノーブルの反乱も、
その一環に過ぎない。
これからも、どんな罠が控えているかわからん…。

では行くぞ。
決して余計な動きはするなよ。



エリス:
お待ちしていた、エリエナイ公。
そなたの領地で物騒な事件があったと聞くが?

レムオン:
さすがにお耳が早い。
ノーブルの代官ボルボラが死にました。



エリス:
ほう?

レムオン:
事故死です。

エリス;
フフ、エリエナイ公、
私は死因までは尋ねてはおらぬが?

レムオン:
一応、ご報告申し上げたまで。
弟エストが処理にあたっています。
近日中に詳細をご報告できるかと。

エリス:
では、それを待とう。
しかし、残念なことよ。
ボルボラに聞きたいことがあったのだが
むくろを問いただすわけにもいくまい。

レムオン:
領主の私に答えられることでしたら…。

エリス:
先日、ボルボラがこれを送りつけてきた。
今は亡き、先代のエリエナイ公…
そなたの父上が女に宛てた書簡だ。

ノヴィン:
女にですと!?
こ、これは…なんたること!
貴殿の父上は、妻以外の女性に
子供を産ませていたようだ。
いや、待て。
エストの誕生には、
我々もかけつけた。
…ということは、貴殿がその女性の…。

レムオン:
故人の恋文をのぞき読むとは
いい趣味をお持ちですな。

ノヴィン:
コホン…確かに、
ファーロス家の当主にあるまじき
不作法だった。
しかし、この手紙から判断すれば
貴殿は不当にリューガ家当主の座に
ついたことになる。
ふふん、エリエナイ公…いや、レムオン。
これで貴殿も終わりだな。

エ リス:
手紙の入手経路を明かさぬまま
ボルボラが死んだとあっては、
これを鵜呑みにするわけにもいかぬ。
しかし、手紙を手に入れた直後の事故死とは…偶然に
しては、できすぎているとは思わぬか?
しかも、ボルボラはノーブルで横暴を働き、
そなたを困らせていたというではないか。
この上ない幸運であったな。エ リエナイ公。

レムオン:
フッ…、おたわむれを。
彼は有能な男でした。
現にこれまで、
ボルボラのあとを任せられる者がおらず、
頭を悩ませ ておりました。ですが、
ようやくその結論が得られたので、
今日はその件について
お願いに上がった次第です。
ノーブルの支配を、我が妹●●に
任せたく存じ ます。

エリス:
妹?

レムオン:
ここに連れてまいりました。

エリス:
エストの他に兄弟があったとは、初耳だが。

レムオン:
わけあって、公にはしておりませんでした。
そのわけは…申し上げなくともおわかりでしょう。

エリス:
この少女こそ、…この手紙にある子供だと?

レムオン:
ボルボラ亡きあとのノーブルを統制するために、
なにとぞ、我が妹●●にノーブル伯爵の称号を。

ノヴィン:
ならん! ならん!! 
ふざけたことを!

エリス:
陛下、どうかこの者に伯爵の称号を。
事情が事情です。
手続きは追って行うこととし、
この場で叙任なされては?

セルモノー:
ああ…。王妃がそう言うのであればな…。
●●と言ったか。
そなたをロストール王国の伯爵、
そして、特別に白竜騎士に叙任する。

エリス:
騎士の証である盾だ。受け取るがよい。

レムオン:
迅速なご処置、心より感謝いたします。
リューガ家は、陛下に以後、
いっそうの忠誠を誓いましょう。

ノヴィン:
…ふん、ぬけぬけと。

レムオン:
ノヴィン閣下。何か?

ノヴィン:
い、いや。ロストールのために、
せいぜい骨を折ってくれたまえ。


セルモノ:
「予は疲れた。先に休ませてもらおう。


ノヴィン:
なぜ、レムオンの言いなりになる!
あんな素性も知れぬ女に伯爵の称号など…

エリス:
レムオン坊やに貸しを作ったまで。
これで懸案の中央集権化を進める法案が
すんなり元老院を通過する。
しかも、腹違いの妹を隠していたことが知れれば、
レムオンの信頼は少なからず落ちるはず…。

ノヴィン:
…! さすがは我が妹よ!
レムオンめ、そうとは知らずに…。
ハハハハ! 
小僧めに、一杯食わせてやれて
せいせいしたわ!

エリス:
それしきのことが見抜けぬ男ではあるまい。
…愚かな兄を持ったものだ。
それにしても、●●という娘…。
無限の可能性を感じさせる…。
あの目の輝きはどうだ。
フフフ…、レムオン坊やも楽しませてくれる。


レムオン:
とりあえず、礼を言う。
おかげで難局を切り抜けられた。」

レムオン:
紹介する。この館の執事だ。
セバスチャンという。

セバスチャン:
お目にかかり、光栄です。
ご用はなんなりとこの私めに
お申しつけください。
大したご用意はできませんが、
いつでも●●様をお迎えできるよう、
お待ちいたしております。
それでは失礼いたします。

レムオン:
彼の言うことは聞いておいた方がいい。
この館で一番の権力者だ。フフフ…。
とにかく、お前はロストールで1、2を争う
大貴族リューガ家の一員となってしまったのだ。
本来なら処刑されるところだったのだからな。
そのくらい耐えろ。
よいな、我が妹、●●よ。
また、帰ってこい。

レムオン:
…不思議な女だ。
可能性の女神がいれば、あんな感じか…。
まあいい。
バカで退屈な貴族どもには飽き飽きしていた。
奴がいれば脳が腐らずにすみそうだ。





レムオン:
まったく話にならん!

貴族どものことだ。無能なうえ視野が狭い。
都合のよい妄想はできるくせに、まっとうな想像力はない。
あいつらをまとめて、雌狐に対抗せねばならぬと思うと気がめいる。
フッ、ま、雌狐の方もノヴィンという厄介者をかかえているのだから対等か。
しかし、宮廷で才覚のある人間が、雌狐ひとりというのもお寒い話だ。
このままではロストールも長くないぞ。
●●、世界を見ろ。
領主としての雑務は俺がこなす。世界を旅し、多くを見るのだ。
俺は、従順な部下より ともに歩める同志が欲しいのだ。
フフッ、俺としたことが…しゃべりすぎたな。」


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