この中に、●●という
冒険者はいないか!
副司令閣下が即刻連れて来いとご命令だ!

お前が、
●●か?

聞いての通り、副司令閣下がお呼びだ。
一緒についてきてくれ。


ゼネテス様。
●●様を
お連れしました。

ゼネテス:
入ってくれ。

よう、久しぶり。

ユーリス:
あれ、ゼネテスだ。
なんでここにいるのかな?
ひょっとして…。

ゼネテス:
突然なんで驚いたろうが、
俺が、ロストール軍副司令だ。
親父のノヴィン・ファーロスが
総司令でね。
その息子は、副司令なんだそうだ。
貴族社会のロストールらしい人選だろ?

ユーリス:
ファーロス…?
どっかで聞いたことあるかも。
ロストールのえらい貴族だったような。

ゼネテス:
言わなかったのは悪かったよ。
ただ、俺も自分が貴族だってこと
忘れてたんでね。

ところで、この戦いについて、
詳しいことは知ってるのか?

(主人公首を振る)

だろうな。
そんなこったろうと思ったぜ。
はじめに言っておくが、
この戦い、このままいけば、
確実に負ける。
まあ、待て。ちゃんと説明するって。
長くなるが、聞くか?

「聞く」

まず、密偵が持ってきた情報だが、
ディンガルの首都エンシャントには、
大量の物資が運び込まれているそうだ。
それに合わせて、大兵力も結集している。
これだけの兵と物資を抱えて、
ディンガルとロストールを隔てている
分断の山脈を越えることはできない。
おそらく海路で来るはず……。
ロストール軍はそう判断して、
上陸時に叩く作戦に出た。
どっちも正攻法だ、
そう間違っちゃいない。
だが、敵の将軍はアンギルダンだ。
集めている兵と物資は、陽動。
おそらく、海路と思わせて、
山越えをするつもりだ。
海の方へロストール軍をおびき寄せ、
自らは精鋭を率い、山を越え、
街道筋を制圧して、前線を築く。
その後、現地で物資調達し、
急場の備えをととのえたのち、
ゆっくりと兵と物資を運ぶ。
こいつをやられたら厳しい。
だが、この意見を軍議にかけたら、
あっさりけられた。
まあ、無茶な奇襲作戦だからな。
あり得ないと言われたら、
それまでなんだがね。

俺の予測が外れてくれると
いいんだが…。
ま、いざってときには
頼りになる奴が欲しかったんでな。
お前さんが傭兵の中にいるのを
見つけたんで、来てもらった。
よろしく頼むぜ。



ゼネテスの予測は的中した。



ロストール軍は、海路からの侵攻に備えて布陣したが……
ディンガル軍は、分断の山脈を越えて侵攻。
街道筋を一瞬にして制圧した。
この歴史上例を見ない壮挙に、
王都ロストールは裸同然となった。
ロストール軍は、急きょ反転、
迎撃に向かったが、
隊列が定まらず、突出した騎馬隊、
後続の兵とともに、各個撃破された。
この緒戦で、ロストールの名だたる貴族が、
数多く命を落とした。
総司令ノヴィン・ファーロスをはじめ
その人的被害は深刻を極めた。
そんな中、ルブルク伯
タルテュバ・リューガは、自軍を捨てて
単身逃走。命こそ失わずに済んだものの、
無論、その評判は地に落ちた。
朱雀将軍アンギルダンは、
ロストール軍を壊滅させると、
深追いを禁じ、続く王都侵攻に備え
全軍に物資の現地調達を命じた。
だが、この圧倒的に劣勢な戦況下において、
無傷でこの状況を乗り切った勢力が
ロストール軍にもまだ存在した。
帝国軍は、この事実をまだ知らなかった。


ノヴィンの副官:
…と、総司令閣下は自刃なされ、
ロストール貴族にふさわしい
見事な最期を遂げられました。

ゼネテス:
見事ねぇ…。

ノヴィンの副官:
かくなる上は、ゼネテス様にも
誇りを汚さず、潔く自刃なさるようにと
閣下はおっしゃっておいででした。


ゼネテス:
そんなロマンチシズムに
つきあう気はないな。

ノヴィン:
閣下はこうもおっしゃっておいででした。
ゼネテス様には、やや貴族としての
常識にかけるところがある。
命を惜しみ、おめおめと生き残ろうと
するならば、ゼネテス様の
介錯をしてさしあ…

ゼネさんのパンチ炸裂

ゼネテス:
悪いな。
そんなバカな理屈に
付き合ってる場合じゃないんだ。

さ〜て、と。
生き残る方法を考えなきゃ、だな。
な、●●。

アンギルダンのとっつぁんは
俺らを叩きつぶすよりも、
物資調達の方を優先させた。
アンギルダンのとっつぁんは正しい。
レムオンの王都守備軍が攻めてくる可能性を考えるなら…
戦意をなくし、無力化した
俺らを無視して、次の戦いのための
準備を急ぐのは、理の当然だ。
だが、それが、今回は間違いでな。
俺たちはまだ、
戦意をなくしちゃいなかったりする。
俺はあきらめの悪い男でね。
生き残るためのガッツなら
売るほどある。
今なら向こうさんも攻めてくるとは
思ってない。徴発隊も出払っていて
敵中枢部になぐり込む好機だ!

無傷な俺の部隊を中心に
ロストールの敗残兵をまとめ、
敵ディンガル軍中枢を叩く!
アンギルダンのとっつぁんを倒せば
あとのディンガル軍は浮き足だって
無力化する!
ねらうは、アンギルダンのみ!
お前は、俺が軍をまとめる間に、
先鋒を率い、先に帝国軍に突っ込んで、
大暴れしてくれ。
お前の活躍を聞けば、
敗残兵の集まりもよくなる。
危険な任務だが、お前しか頼れん。
頼むぜ、●●。

ナッジ:
本陣突入なんて、大役だね。
ゼネテスさんの期待に応えなくちゃ、
●●。



アンギルダン:
くっ、どうしたことだ!
ロストール軍が復活したとは!
しかも、お主が攻めてくるとはな、
●●。
運命神は、つくづくわしを飽きさせん。

ゼネテス…、
そうか、お主がおったのか!
お主ならば、あの敗軍を
まとめる器量がある!
くっ、ぬかったわ!
お主がおるとわかっておれば、
敗残兵の殲滅を優先させたものを!

ゼネテス:
…とっつぁん、
悪いが、命をもらう。
ロストール兵の
命がかかっているんでな!

アンギルダン:
はい、そうですかと
くれてやるわけにはいかんな。
こっちもディンガルの兵の命が
かかっておるのでな!

ゼネテス:
●●、
他は任せた!!

黒鎧騎士:
アンギルダン将軍!!

アンギルダン:
フフ……、運命の女神は残酷なものよ。
ここまで来て、わしを見限るとはな…。
ゼネテスよ…。
お主ほどの男が…ファーロスの…
跡取りだったとは…、うぐっ…。
みなに伝えよ!
バラバラに地下王国を通るのだ!
みな…生き延びるの…じゃ…!

黒鎧騎士:
しょ、将軍!!
…くっ!
撤退! 撤退せよ!!
各部隊に伝令!
将軍が討ち取られた!
すみやかに撤退を開始せよ!!

ロストール歩兵:
敵の略奪部隊の場所がわかりました!

ゼネテス:
よし、ここを切り上げて、
そっちを片付けに移動する。
部隊をまとめ直すぞ!

ロストール歩兵:
はっ!

ゼネテス:
ゆくぞ、●●。

…じゃあな、とっつぁん。
あの世で、いつか飲み明かそうぜ。




敗残兵を驚くべき早さで立て直した
ゼネテスの奇襲により、アンギルダンが
討ち取られると、帝国軍は潰走した。
生き残ったディンガル兵は、
ドワーフの王国を抜け、
ディンガル領内に撤退。
ゼネテスは、追撃しなかった。
ここにアンギルダンの山越えに始まった
ロストール侵攻戦は、失敗に終わった。
この戦いで、ゼネテスの声望は
一気に上がり、奇跡の名将と呼ばれたが
ロストールの被害は甚大なものがあった。



セルモノー:
…千年樹に刻まれし竜綱の盟約に基づき
我、ロストール王
セルモノー・リューは…
汝、ゼネテス・ファーロスを
ファーロス家当主と認め、その功により
ロストール王国軍総司令に任ずる。

レムオン:
くっ、最高の殊勲は
ファーロスのドラ息子に
奪われるとはな。

典礼官:
第二の殊勲、●●。

レムオン:
しかも、第二の殊勲も
ファーロスのゆかりの者か…!

ゼネテス:
ほら、行け。

セルモノー:
…千年樹に刻まれし竜綱の盟約に基づき
我、ロストール王
セルモノー・リューは…
その功により、汝、●●に
騎士の証である盾を与え、
白竜騎士、竜字将軍に叙任する。

エリス:
ロストールを支える将軍として
ゼネテスとともに活躍するがよい。

ゼネテス:
やれやれ、肩がこった。
大げさな式典だったな。
お互い、これから
めんどくさいことになりそうだ。
それじゃあな。
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