エリザベスとピーコ
「甘口辛口」新潟日報
2008.9.9掲載

 小学生の頃、縁日でヒヨコを買ってもらった。家の中で飼っていたのに、ネコに襲われてしまった。1羽生き残ったピーコも重傷だったが、妹が手当てをし、回復させた。

 家族みんなでピーコの回復を喜んだ何週間か後、どういう理由からか、郊外に住む知り合いの家にもらわれていった。しばらくしてその知り合いの家に遊びに行くと大きな鶏が鳥小屋にいた。あのピーコだと聞かされ、妹と大きく成長したことに驚いた。記憶はそこまでである。生死の境をさまよったピーコが立派な鶏に成長したと言う、喜ばしい思い出、理科的知識の体験的裏づけだった。

 ところが最近になって、大きな農家で育った友人が子供のころ飼っていた牛の話を聞いた。世話を任され、「エリザベス」と名づけ、愛情たっぷりに育てていたのに、あるとき食卓へ…大泣きに泣いたが、泣きながらも食べたと言う話だった。その話を聞いて、ピーコがよそへもらわれていった理由が、ピーコがあの後どうなったのかが、やっとわかった。