「甘口辛口」新潟日報
2008.9.23掲載

 湘南地方では春の終わりがはっきりわかる。急に風が潮臭くなり、町中に潮風が満ちてくる。海では海水浴場の準備が始まり、7月、梅雨があけきらないうちに海開き。露地物の野菜もおいしくなり始め、魚屋は「生シラスあります」と看板を出す。

 夏の気分が高まるにつれて枝豆と茄子(ナス)漬けが欲しくなる。このあたりは枝豆の旬は新潟より少し早く、6月半ばすぎ。さすがに旬の時期には味も香りもよくなるのだが、茶豆のような濃厚な甘さがない。茄子は身のしまり具合が違う。十全茄子や小茄子のような身のみっちりとしたコリコリ感が無い。

 梅雨が開け、海がにぎやかになる。蝉(せみ)が思いっきり鳴き始め、私の舌は新潟の枝豆、茄子漬け、ビールを恋しがる。近くの神社で盆踊りの太鼓が聞こえ、海で花火が上がる。信濃川の花火を思い出しているうちに海水浴場は店じまい。夏の終わりだ。

 九月半ば、潮風が止み、波が静まり、海も青く澄んで秋がやって来る。