踊るサテュロス・眠る一休
「甘口辛口」新潟日報
2008.9.18掲載

 「踊るサテュロス」というブロンズ像がある。サテュロスはギリシア神話の酒神バッカスの従者で、この像は酒神をたたえて、酔ってぐるぐる回って踊る青年像だ。左足を大きく蹴(け)り上げて反り返りながらひねったからだの線には緊張感があり、中空を見つめる大きな目も恍惚(こうこつ)とした表情も、後になびく巻き毛も気持ちよさそうで一緒に回りたくなる。

 日本の酔っ払いを代表すると言ってもいいのが英一蝶(はなぶさ・いっちょう)の描いた「一休和尚酔臥図」ではないだろうか。これは、お酒好きで有名だった一休和尚が泥酔して眠り込む図。しかも酒屋の店先で、路上にばったりと倒れるように。水桶(おけ)を持った奉公人が困った顔で見下ろしている。一休さんはこの後どうなるのだろうか。和尚も、数時間前は楽しく歌い踊ったはず。サテュロスも最後には眠ってしまうかもしれない。

 酒神は偉大だ。お酒はおいしい。しかし、飲むなら適度に、寝るなら家で。