おばあとテビチ
「甘口辛口」新潟日報
2008.9.11掲載

 沖縄へスケッチに出かけた。真夏ではなかったが晴天続きで暑さに疲れ、食欲もなくなり、市場の食堂で沖縄そばをすすっていた。沖縄そばは、そば粉ではなく小麦粉で作るコシの無いそばで、骨付き豚が入っていたり、煮た三枚肉やかまぼこがのっていたりする。店によって味も様々で食べ歩きも楽しい。

 少し離れたテーブルにおばあが2人座っていた。小さなおばあは、座っていると言うよりテーブルに顔だけ出してちょこんととまっていると言った感じだ。

 ほのぼのとした情景にスケッチでもさせてもらおうかと思って見ていると、おばあたちが食べていたのは大きなテビチだった。テビチとは豚足をぶつ切りにして長時間煮込んだもの。泡盛や醤油で味付けしてあり、コラーゲンたっぷりで美容にも健康にもいいものだが軟骨と皮と脂肪がこってり。圧倒されて見守る私には気づかず、おばあたちは楽しそうにあざやかに、1皿ずつ平らげて軽やかな足取りで去って行った。