塩と砂糖

「甘口辛口」新潟日報
2002.5.6掲載

  三月の終わり頃、忙しい日が続いた。仕事と家のことで手一杯なのに、三日間出かけなければならなくなった。

 出かける前日、三日分の食事を作り置こうと奮闘した。豚の肩ロースのかたまり肉を三分の一ずつ、カレーと肉ジャガ、チャーシューにと使い、段どりよく、気分よく料理を終えた。

 三日後、家に帰るとチャーシューだけが残っていた。「残ったのね…」となにげなく口にしてみた。塩辛い!舌が痛い!塩と砂糖を間違えた!普段より日持ちがするように濃い目に味をつけたつもりだった。味見をした時、味が薄いと感じて砂糖を足したつもりだった。すべて塩だったのだ。私ったら、新米主婦みたい。なんてかわいい失敗を…などと思ったのは私だけだった。結婚して十年も経った妻の失敗に夫は厳しい。

 その日は、冗談にも笑ってもらえず、テレビだけがにぎやかな食卓だった。