Supplement

(注意:この文章は、拙作のFlashback日本盤向け私家製ライナー、Back To The Lightに付属した、内容補完目的の補逸を再録したものです。既にサイトで公開している内容と多くが重なりますが、ご理解下さい)

 

正直なところ、このブックレットはマニア向けとして企画しました。従って、ELOに関する基本的な説明などは省略されており、そういった内容については正規ライナーを参照してもらうつもりでいました。ですから、これだけ読んでも「だからELOって一体何なの」という質問には全く答えていないと思います。細かい記載も一般向けの皮はかぶっているものの、オフィシャル音源のほとんどを聴いておられ、メンバーのパートくらいは大体わかる方でなければ理解不能なものばかりだと思います。そういうコンセプトなのでそれはそれでいいのですが、既に連絡を頂いた方の中に、私のライナーを御進物用に考えておられる方がおられるようでもあり、相手の方にもよりますが、いくら何でもこれでは不親切かと思い、捕逸を追加致します。屋上屋を架けるようですが、御理解下さい。さらに、もうお気づきの通り、とんでもない不具合が存在します。素人出版の御愛嬌ではすまないのは重々承知ですが、不出来なジョークに免じて許して貰えれば幸いです。

 

So, what is ELO on the earth? ---「だからELOっていったい何なの?」

UKのロックバンドのことであり、正式にはElectric Light Orchestraという。1971年から1986年の間にフルアルバム11タイトル、ライブアルバム1枚、サウンドトラック1/2枚を発表、70年代に最も多くのUSトップ40ヒットを記録したバンドとしてギネスブックにも載った(らしい。筆者は不勉強にて直接確認していない)。活動が長期にわたるためその音楽を一言で言い表すのは困難だが、稀代のポップ職人であるJeff LynneのBeatlesテイストあふれたソングライティングとサウンドプロダクション、ストリングスと電子楽器の絶妙のミックス、ファルセットを多用するコーラスワークを特徴とする。では、以下にELOの歴史を簡単に紹介しよう。

まず話は1966年にさかのぼる。この年、当時Brum Rockと呼ばれていたイングランド中部の工業都市Birminghamのロックシーンに、ひとつのスーパーグループが誕生した。いくつかの人気グループから若くて野望に燃えるプレイヤーが集まり、The Move(以下Move)が結成された。メンバーはCarl Wayne(ボーカル)、Roy Wood (ギター)、Ace Kefford(ベース)、Trevor Burton(ギター)、Bev Bevan (ドラム)。彼らのうち音楽的な中心となったのはRoyで、ほとんどの楽曲を作曲し、サウンドプロダクションでも中心的な役割を占めた。デビューシングルNight Of Fearをはじめ、I Can Hear The Grass Grow、Flowers In The Rain、Fire Brigade、Blackberry Way、Curlyといったヒットシングルがある。しかし、路線の問題とリードをなかなか歌わせてもらえないという理由でAce、Trevorが脱退する。バンドはRick Priceをベースに迎えてセカンドアルバムを発表するが、次いでフロントマンのCarlが脱退、かわってIdle RaceからJeff Lynne(ギター、ボーカル、ピアノ)が加入した。Moveはさらに2枚のアルバムとCalifornia Manに代表されるシングルヒットを残したが、既にRoyはJeffの協力のもと、「クラシック楽器のプレイヤーを内包するロックバンド」という実験に取りかかっていた。すなわちElectric Light Orchestraである。

この新たなプロジェクト、Electric Light Orchestra(以下ELO)は、同名のデビューアルバムを1971年に発表する。参加したメンバーはRoy、Jeff、Bevの3人とBill Hunt(ホルン、キーボード)、Steve Woolam(バイオリン)。このアルバムは中世的な雰囲気も漂わせる前衛的なものではあったが、ファーストシングル10538 Overtureのヒットもあり、バンドはまずまずの好スタートを切った。しかし間もなくRoyが突然脱退し、ELOの運命はJeffに委ねられる。JeffはRoy在籍時に披露していた曲を中心にセカンドアルバムE.L.O.2を制作、メンバーは大幅に変更され、Jeff(ギター、ボーカル)、Bev(ドラム)、Richard Tandy(ピアノ、キーボード)、Michael De Albuquerque(ベース)、Wilf Gibson(バイオリン)、Mike Edwards(チェロ)、Colin Walker(チェロ)となっていた。リーダーが脱けたことで先行きが懸念されたが、Chuck BerryをカバーしたRoll Over Beethovenがヒットし、グループの活動は軌道に乗った。続く第3作On The Third DayはWilfとColinが脱けて代わりにMik Kaminski(バイオリン)が加入、前作までのプログレッシブな路線から曲もコンパクトになって、コマーシャル面での才能ものぞかせる。シングルShowdown、Ma-Ma-Ma Belleがヒット。さらに第4作Eldoradoはアルバム全体にストーリー性を持たせたコンセプトアルバムであるとともに、ストリングスパートの多くはLouis Clark指揮するオーケストラを導入することでダイナミックな効果を得ることに成功する。シングルCan't Get It Out Of My Headのヒットもあり、USで初めてのゴールドディスクを獲得した。第5作Face The Musicに至り、ベースがMichaelからKelly Groucuttに、チェロがMikeからMelvyn Galeに交代し、いわゆる「黄金期のメンバー」が揃う。列挙すれば、Jeff Lynne(ギター、ボーカル)、Bev Bevan(ドラム)、Richard Tandy(ピアノ、キーボード)、Kelly Groucutt(ベース、ボーカル)、Mik Kaminski(バイオリン)、Hugh McDowell(チェロ)、Melvyn Gale(チェロ)である。当時のELOはJeffのキャッチーな楽曲を熟練したロックスタイルで演奏し、これにLouisが指揮するストリングスをミックス、さらにKellyのハイトーンのボーカルを絡めた分厚いコーラスを重ねるという、他に類を見ない独特の音楽を築き上げていった。Evil Woman、Strange Magicがヒットする。第6作A New World Recordは安定期に入った自信の作品であり、ELOサウンドが確立、Telephone Line、Rockaria!、Livin' Thingがヒットする。第7作Out Of The Blueは彼らにとって初めてのダブルアルバムであり、ジャケットデザインなど当時の宇宙ブームに乗って大ヒットする。コンサートツアーでは巨大な宇宙船を模したステージが話題を呼び、来日公演も果たした。Turn To Stone、Sweet Talkin' Woman、Mr. Blue Skyなどがヒットした。

第8作Discovery以降についてはライナー本文にも触れているが、ELOのコンセプトにぶれが見られる。Jeffは「ストリングスを含んでいる」という足枷からの脱却を目論み、シンセサイザーへの比重をより高める。メンバーはJeff、Bev、Richard、Kellyの4人となり、初めての「ストリングスの入らない曲」Don't Bring Me Downを発表、皮肉なことにこれが彼らにとっての最大のヒット曲となる。その他Shine A Little Love、Last Train To London、Confusionがヒットする。その後、サウンドトラックXanaduに参加、テーマ曲はOlivia Newton-Johnのボーカルでヒットする。そして第9作のTimeは、一層エレクトロニックに傾斜したアルバムであり、ストリングスはよりバックグラウンドに後退した。Hold On Tight、Twilightのヒットを生む。第10作Secret Messagesは、John Lennonの死が影響を与えたのか、正面からBeatlesを見据えたダブルアルバムになるはずだった。しかし情勢の変化によりシングルアルバムとして発売され、当初のJeffの意図は薄まっている。Rock'n' Roll Is King、Secret Messagesがヒットしたが、アルバム全体のセールスは奮わなかった。このアルバムにクレジットされているメンバーはDiscoveryと同じ4人だが、Dave Morganがコーラスとギターで多くの曲に関わっている。またMikも一部の曲で復帰している。

この後、Kellyが契約上のトラブルから脱退し、さらにJeffにはマネージメントとプライベートの双方の問題がのしかかったため、次作の作業は非常に難航し、3年を要してようやく完成したのが11作目Balance Of Powerだった。Calling Americaがヒットしたが、アルバムのセールスはさらに落ち込んだ。しばらく前からJeffには外部ミュージシャンとのコラボレーションの話が舞い込んできており、既にELOというバンドへの熱意は冷めていた。これによりELOは静かに解散を迎えた。

ELO在籍時を含めてJeffが関わったミュージシャンは、主なものだけで以下のようなものになる。Del Shannon、Dave Edmunds、George Harrison、Duane Eddy、Brian Wilson、Tom Petty、Roy Orbison、Ringo Starr、Roger McGuinn、Joe Cocker、Little Richard、Hank Marvin、Paul McCartney。さらに、BeatlesがJohn Lennonの遺作をもとに作り上げた2曲、Free As A Bird、Real Loveのプロデュースも有名だ。

その他、ELO Part 2、今回のFlashback、そして新譜Zoomについては、本文を参照していただきたい。

最新のニュース

その後確定したニュースについて簡単に触れておきます。新譜Zoomは2001年6/6に日本で先行発売され、続いて6/11にUS、UK盤の発売がなされました。日本盤にはボーナストラックLong Black Roadが追加収録されています。ファーストシングルはオープニングトラックであるAlrightと決定し、ヨーロッパでは5月中にオーストリアプレスが発売されました。ところが、US盤シングルの発売は早々に中止が決定し、UK盤についても7月リリースと予告されていましたが、結局中止になりました。かわってMoment In Paradiseがシングルとして発売されました。

また、旧譜の再発計画が2種類動いています。片方はSonyのリマスターシリーズであり、Long Beachライブ、Armchair Theatreを含み、Xanaduを除く旧譜を、リマスターとボーナストラック追加で順次再発しようというものです。現在のところ、Eldorado、Discovery、Time、Secret Messagesが発売されています。ただ、残念なことにSecret Messagesは本来のダブルアルバムにはなりませんでした。第二弾以降の発売は現在様子見で中断されている状態で、少しでも早い再開が待たれます。もう片方はEMIのFirst Lightシリーズであり、ファースト、セカンドとMoveのMessage From The Country、RoyのBouldersをenhanced CDとして再発しようというものです。当初の予告からは1年以上遅れましたが、2001年11月にELOのファーストアルバムが、2003年3月にELO2がそれぞれエクストラCDを加えてリリースされました。非常に丁寧な仕上がりとなっており、ボーナストラックも興味深いものが多く含まれています。今後、その他の2タイトルが順次リリースされるはずですが、具体的な日程は未発表です。

さらに、2001年4/20にはテレビ放映用のビデオ収録がなされました。このミニライブにはRichard Tandyを含むバックバンドが参加し、同様のミニライブは5月22、23にも催されました(この模様は11月に発売されたDVDに収録されています)。その後、9月からUSツアーが行われる予定でしたが、残念なことにチケット売れ行きが不調であることからツアー自体がキャンセルになりました。

その他、一昨年の末にはJeff LynneのトリビュートアルバムLynne Me Your Earsが発売になりました。

また、もとELO Part 2はThe Orchestraと名前を改め、アルバムNo Rewindを完成させ、現在プロモが販売されています。その他関連ミュージシャンの話題では、Carl Wayneのソロリイシュー、Rosie Vela(Jeffと知り合う前の作品ですが)のリイシュー、OrKestraのリイシューなどがなされており、Kelly Groucuttのソロアルバムリイシューされました。今後、Jeffがかつて在籍したIdle Raceのアンソロジー、The Moveのカタログリバンプ、Ace Keffordの未発表ソロアルバムなどが噂されています。

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