初めての渓流釣り!和歌山県日高川水系

 バーベキューを食べに行った河原でウグイやアブラハヤを釣ったことはあったけど、今から考えるとまるで、ママゴトみたいなもんですわ。
 ちゃんとした渓流釣りをしたかったんやけど、どんな川がいいのか知らんし、道具も持ってないし、どうしたらいいか判らんかったんですな。本や雑誌を読んでも関東のことしか載っていないし。

 そやけど、縁というのは面白いもんですな。
「本格的な渓流釣りをしたーい!」そんなことを言ってたら、身近に鮎を良くする人がいて渓流もするという。
「ほんなら、一回行く?」と御一緒させてもらうことになった。やったー!、マジ嬉しいー。この御方を渓流釣りの師匠とし、素人が3人連れて行ってもらうことになった。

 話がまとまったのが4月下旬で、シーズンとしてはやや出遅れだった。ゴールデンウィークは人が多いだろうとGW直前に行くことにした。それまでに装備をそろえなければいけない。
 渓流竿はへなちょこなものを持っているので、それで良しとしよう。ウェーダーは必需品ということで、見に行ったが金額に目ん玉が飛び出た。
「まじっすかあ?ウェーダーってこんなに高いん!?」今後続けるかどうか判らんものにそんなに金は掛けられーん。釣具屋を何軒も回ってみたがどこも高い。
 ある店で、ふと見ると、すみっこの方にワゴンセールでなんと1,780円で売っている。試着してみるとサイズもぴったり。「これ下さい。」安物だけど4,5回着られたら良しとしよう。(このウェーダーはきっちり、5回目で水漏れがした)
 これで準備はばっちり、後は釣るばかりだ。

 阪和道の紀ノ川サービスエリアで待ち合わせ、現地へ向かう。早く着きすぎたので車中で仮眠したが、寒くて震えた。標高1,000mぐらいになるとまだ冬ですなあ。寝ていると鹿の鳴く声が聞こえる。
 ほぼ源流部で、川に出るまで30分くらい道無き道を歩かなければならない。しかも、ずーっと下りである。ということは帰りはずーっと登り?帰りが思いやられるなあ。

 やっと川に出て竿を伸ばした。ラインは1号。どうせ引っかけるだろうと天井糸なんてものは付けなかった。ハリスは0.4号。餌はイクラだ。2,3回ポイントに振り込むともうボロボロになった。
「白くなったイクラはアカンで。まめに餌を付け替えなアカン。」師匠のお言葉である。
「はーい。」餌を付け替え、振り込もうとするとラインが枝に絡まった。「ちっ。」はずしていると、ハリスが切れた。「く、くっそー。」いらつきながら、ハリスを付け替える。当然餌をもう一度付けなければならい。
 ポイントに振り込む、イクラが白くなる、餌を付け替える、振り込む、草に引っかかる、はずす、餌がとれている。この繰り返し。
 くっそー、こ、これでは釣りにならんではないか!しかも、しょっちゅうライントラブルに見舞われるぞ。渓流釣りは忍耐であると遅まきながら悟ったのだ。

「竿が長すぎるんちゃうか。」師匠のお言葉である。
「状況に応じて長さを変えなアカンで。」ごもっともである。4.5mの竿なので藪沢だと絡みやすい。手元の所を伸ばすか伸ばさないかで長さを変えないといけない。この忠告により、その後はライントラブルは減ったのだった。(無くなりはしなかったが。)

 だが今度は釣れないのだ。教えられたとおりのポイントに振り込んでいるがいまいち当たりが判らない。他の釣りには自信があるのになあ。なかなか難しいもんだ。と、その時、明確な当たりが!
今だ、よし、あわせ成功。だが上がってきたのは、アブラハヤであった。この後もアブラハヤにはずいぶんと悩まされた。

 一説によると、アマゴは0.2秒で不審な餌を見極める事ができるという。
「おっ、うまそうな餌だぜ!いただきまーす。ん?何か違和感があるな、ちっ、騙されたぜ。危ないとこや。」ぺっと吐き出すまでが0.2秒。つまりこの間に当たりを察知し、あわせなければならない。は、早すぎる。こんなことができるのだろうか。とんでもない釣りに足を踏み入れてしまったもんだ。

 結局、この日は師匠がアマゴを釣っただけで、弟子三人は当然坊主である。アブラハヤはいっぱい釣ったけど…あまごちゃんの顔は拝見することはできなかったのだった。
 でも新緑の中、渓流を遡行するのはとても気持ちが良いものだ。バーナーで沸かしたコーヒーも美味しい。道具一式を身につけて釣り上がるというスタイルも性に合っている。カヌーのツーリングにどこか似ている気がする。
 うーん、これは渓流釣りにはまりそうな予感だ。どんどん釣行して、次こそアマゴを釣るぞ!と、帰りの登り道で(帰りは1時間かかった)ぜーぜー喘ぎながら、固く誓ったのであった。