釣り史上、最もハードな釣行でヤマメに出会う。芦生美山川源流

 

 この間、先輩と芦生の入り口付近で遊んで、なかなかいい感じであった。じゃあ今度は滋賀県側から峠越えで源流部に遊んでみようということになった。
 この時はまさか私の釣り史上最もハードな釣行になるとは思いもよらなかったのだった。

 1週間連日の残業で完全に寝不足のまま、土曜早朝に起床して、釣行に突入。この時点でかなり辛いものがありますな。
 6時に先輩と待ち合わせをし、名神から京都東、湖西道路を乗り継いだ。目指すは朽木村からまだ奥にある峠。

 約二時間で車止めのゲートに到着。先行者が1台あるようだ。今週半ばから雨量は少ないが、雨が降り続いている。今日もしとしと結局一日中降っていた。渓流釣りにとってはまぁ嬉しい展開だ。
 手早く身支度を済ませ、ゲートからの林道を上がる。これがキツイ!広葉樹林のブロッコリーのようなもこもこした風景を楽しむ余裕もなくなり、汗を滴らせながらひたすら歩く。
「まだですかねぇ?」
「もうちょっとみたいやで。」
この会話が何回リフレインしたか。この峠の向こうにはネイティブのヤマメがいるのだと奮い立たせながら歩いた。

 ようやく旧のゲートに到着し、入山届を記入。次は森の中に分け入っての下りである。
「やれ嬉しや、下りだ!」と喜んだが帰りはこれを上がるのかと思うと気が重い。
 10分ほどでやっと流れに出会う。だがこの辺りはせせらぎになっちゃってて釣りにならない。上流に行くか、下流に行くか悩んだが、そのまま下ることにし、作業小屋を越え林道を歩いた。

 まだ水量が少ない中、落ち込みが一つだけあった。ひょいと餌を振り込む。途端に心地よいアタリがあり、17センチのヤマメが上がってきた。ここまで苦労した甲斐があるもんだ。もちろんリリース。

 この辺は両岸の木が高く天蓋を覆っていて木のトンネルの中で釣っているようだ。
 その後はアブラハヤばっかり。水量が少ないのでポイントもなく川通しに歩いていたが、突然霧の固まりが押し寄せてきた。ここからは濃霧でっせと書いているかのような白い壁が音もなく近づいてきてすっぽり包まれてしまう。
「ホラー映画のワンシーンのようやな。」
 霧の境目を見たのは初めてだし、もちろんこんなに濃い霧に包まれるのも。まるでスープの中だ。
 具になった気分で4.5mの竿を振るが、仕掛けの目印が見えにくい程なのだ。先行してる先輩も当然見えない。
 霧が濃くて写真も写らないだろうからと今回はポイントの写真はありません。22.5センチのアマゴ。ややピンぼけで申し訳ない。

 こんな悪コンディションの中、先輩がでっかいヤマメを釣り上げた。22.5センチだ。先輩の記録だそうだ。

 壁のような岩をギリギリに流して来たそうだ。なかなか上がってこないので大きいウグイかと思ったとのこと。

「ふおーっ、こんなにでかいヤツがいるのかっ!」
疲れた体に俄然やる気が湧いてきた。

 しかし、アタリはもぞもぞっとしたアブラハヤのアタリばっかり。これだけアブラハヤのアタリが続くと慣れてきて、しまいにはもぞもぞっと来たら慌てて針に掛けずに仕掛けを抜いたりした。

 そのうち大きな滝に出た。先行している先輩の横で岩走る垂水の上の小さな落ち込みに何気に仕掛けを振り込むと、ググッと来てヤマメが釣れてしまった。
 先輩申し訳ないっす。

 この頃からどうも体調が思わしくない。寒気がする。頭も思い。寝不足も続いてたしなぁ。足にスパッツを装着しているが、常に水に浸かっているので軽い低体温症になりかけたようだ。気温もまだ低いし、手が震えて餌もつけにくい。これはヤバイんじゃないかとちょっと焦りだした。熱いうどんが食いたい!

「それなりの時間を釣ったし、入渓ポイントより上流も気になるなぁ。」
先輩と相談し、杣道を通って元に戻ることにした。
 また、この杣道が大変だった。幅は両足で立てるくらい。アップダウンが激しすぎで、気を抜くと危ない。低体温症かもと焦ってたのも束の間、すぐに汗が滴ってくる。こんなに辛いのは私の釣り史上、初めてである。
「ここで倒れても救助は難しいだろうなぁ、携帯の電波も入らへんし。」なんてちょっと弱気なことを考えたりして。
 ようやく林道まで戻り、木の看板を見ると「険しい、健脚向き」とあった。道理で辛いはずだ。
 入渓ポイントまで戻り、上流に向かった。上流にはイワナがいるのではという思いが辛い山道に駆り立てた。

 渓流は普通、上流に行くほど険しくなるのに、逆に風景が穏やかになってきた。芦生の上流部は湿原だと聞いたことがある。そのうち本当に湿地帯になった。ショウブ?アヤメ?カキツバタ?が群生していた。季節になると綺麗なお花畑になるだろうな。
 この辺はアブラハヤの巣窟でイヤになるほどだ。そろそろ帰る時間になった頃、先輩にアブラハヤでないガツンとしたアタリがあったが流木に逃げられた。。。先輩も手応えがあったのにと残念そうである。

 入渓ポイントから峠までの登り道を喘ぎながら戻る。そこからは下りだが車までまた辛かった。最後は無言である。体力の貯金箱を使い果たしてしまったようだ。皆さんも釣行時には無理をしないで体調を整えてからにしましょう。

釣行記に戻る