Kの渓流デビュー

 Kは釣りでも、たいがいの場合はついてくる。でも、渓流だけは足場が悪く危険なのと、仕掛けが絡まりやすく、(Kは速攻でぐちゃぐちゃにするはず。)面倒がみきれないという理由でいつもお留守番だった。
 しか〜し、このGWは恒例になっている四万十川のカヌーツーリングにも用事で行けず、あんまり遊べなかった。このままではストレスが溜まっちゃうので、その代わりといってはなんだが、Kの渓流デビューをすることにした。
 場所はいつもの十津川水系。GW中は釣り人も多く、最悪な条件なのは承知の上だ。

 現地に7時ごろに到着した。早速行こうとすると、「ちょっと待って。」うん?と思うと、せっせと日焼け止めを塗っている。そのへんはやはり女性なんだなあ。
 車止めから1時間ほど山道を歩く。すでにKは辛そうだ。
「まだなん、どこまで歩くの?いつになったら釣りができるん?これやったら山登りやん!」等と言っていたが、その内、口数も減ってきた。
 漁協の見まわりのおっちゃんに状況を聞くと、GW前半は好調だったらしい。うーん、今日はどうだろう。もうGWも後半やしな。すれまくってるんやろな。

 入渓し、簡単にレクチャーする。餌のつけ方、どのへんがポイントか、不用意にポイントに近づかない、枝に引っ掛けない、当たりの取り方などなど。
 Kは初めてなので嬉しそうに竿を振っている。なかなか筋がよろしい。ポイントにもちゃんと振り込んでいる。教え方がいいようだ、うん。

 それじゃいこうかと釣り始めた。遡行していくが、当たりが全く無い。いくらGWだからといっても、なさすぎる。その内、注意深く見ていると、どうも先行者がいるようだ。そこそこ新しい足跡があったりする。
 この小さい谷で先行者がいるのは致命的だ。しかし、谷を代えるといっても、また1時間あるかなくてはならない。我慢して先行者が釣り逃したような小場所を攻める事にした。

 水面に枝が覆い被さっているようないやらしい、釣りにくい場所を狙って餌を流す。そんなところばかりを攻めているうちに、当たりがあった。上がってきたのは15pくらいのアマゴ。
 Kは生きているアマゴを見るのは初めてなので、「きれいなあ。キラキラしてる。」の連発だ。
「きれいやろ。自分で釣ったら感動するで。」「うん、頑張るわ。」


 その後、奮闘むなしく、Kは坊主だったのは言うまでもない。初の釣行で釣れるほど渓流は甘くなんかな〜いのだ。しかし、当たりは2回あったそうで、1回なんかは、水面まで顔を出したのにバラしてしまったらしい。凄く悔しがっていた。

 感心したのはライントラブルが1回も無かった事だ。絶対すぐ引っ掛けると思っていたのに、なかなかうまいやん。これやったら、次もつれて行ってもいいかも。
「また、いっしょに行こうな。」Kは渓流に、はまってしまったようだ。