アクチュアリー試験対策 生命保険関係監督指針

このページは、 保険会社向けの総合的な監督指針(平成26年2月)のうち、アクチュアリー試験の生保コース対策として最低限確認しておくべき項目を抜粋したものです。

U.保険監督上の評価項目

U-2 財務の健全性

U-2-1 責任準備金等の積立の適切性

U-2-1-1 意義

保険会社は、保険契約者に将来支払うこととなる保険金等に対して保険業法に基づく責任準備金等の積立の確保に努めなければならないことになっている。当局としては、自己責任原則の下で行われる責任準備金等の積立の確保を補完する役割を果たすものとして、オフサイト・モニタリングや適切な経理処理等の指針を通じ、保険財務の健全性の確保のための自主的な取組みを促していく必要がある。

U-2-1-2 積立方式

U-2-1-3 変額年金保険等の最低保証リスクについて

保険金等の額を最低保証する変額年金保険等については、将来にわたって債務の履行に支障を来たさないよう最低保証リスクの適切な管理及び評価を行うとともに、保険数理等に基づき、合理的かつ妥当な保険料積立金及び危険準備金 Vの積立並びにソルベンシーの確保を行う必要があるが、その際、以下の点に留意するものとする。

U-2-1-3-1 保険料積立金の積立

U-2-1-3-2 危険準備金 V

危険準備金 Vの積立にあたり、留意すべき事項は次のとおり。

U-2-1-4 経理処理

責任準備金等の積立に関し、保険会社が適正な経理処理を行うにあたり留意すべき事項は次のとおり。

U-2-2 ソルベンシー・マージン比率の適切性(早期是正措置)

U-2-2-1 意義

保険会社は、保険契約者等の信認を確保するため、資本の充実や内部留保の確保を図り、リスクに応じた十分な財務基盤を保有することは極めて重要である。財務内容の改善が必要とされる保険会社にあっては、自己責任原則に基づき主体的に改善を図ることが求められている。当局としても、それを補完する役割を果たすものとして、保険会社の経営の健全性を確保するため、「保険金等の支払能力の充実を示す比率」という客観的な基準を用い、必要な是正措置命令を迅速かつ適切に発動していくことで、保険会社の経営の早期是正を促していく必要がある。

U-2-2-2 監督手法・対応

保険会社の経営の健全性を確保していくための監督手法である早期是正措置については、「保険業法第百三十二条第二項に規定する区分等を定める命令」(平成12年6月29日総理府令・大蔵省令第45号。以下、U-2-2において、「区分等を定める命令」という。)において、具体的な措置内容等を規定しているところであるが、その運用基準については下記のとおりとする。

U-2-2-3 「区分等を定める命令」第3条第1項に規定する合理性の判断基準

「区分等を定める命令」第3条第1項の「保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画」の合理性の判断基準は、次のとおりとする。

保険会社の業務の健全かつ適切な運営を図り当該保険会社に対する保険契約者等の信頼をつなぎ止めることができる具体的な資本増強計画等を含み、ソルベンシー・マージン比率が、原則として3ヵ月以内に当該保険会社が該当する「区分等を定める命令」第2条第1項の表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えて確実に改善する内容の計画であること。

U-2-2-4 命令区分の根拠となるソルベンシー・マージン比率

「区分等を定める命令」第3条第1項の適用にあたり「実施後に見込まれる当該保険会社の保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率以下の保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率に係る同表の区分(非対象区分を除く。)に掲げる命令」は、原則として3ヵ月後に確実に見込まれるソルベンシー・マージン比率の水準に係る区分(非対象区分を除く。)に掲げる命令とする。

U-2-2-5 計画の進捗状況の報告等

計画の進捗状況は、毎期(中間期を含む。)報告させることとし、その後の実行 状況が計画と大幅に乖離していない場合は、原則として計画期間中新たな命令は行わないものとする。ただし、第2区分の命令を行った保険会社にあっては、その後ソルベンシー・マージン比率が100%以上200%未満の範囲に達したときは、当該時点において第1区分の命令を行うことができるものとする。

また、保険会社が、「区分等を定める命令」第3条第1項の規定により、そのソルベンシー・マージン比率を当該保険会社が該当する「区分等を定める命令」第2条第1項の表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えて確実に改善するための合理的と認められる計画を提出し、当該保険会社に対し、当該保険会社が該当する同表の区分に係るソルベンシー・マージン比率の範囲を超えるソルベンシー・マージン比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出した場合においては、原則として増資等の手続に要する期間の経過後直ちに、当該保険会社のソルベンシー・マージン比率が、当該保険会社が発出を受けた命令が掲げられた同表の区分に係るソルベンシー・マージン比率以上の水準を達成していないときは、当該時点におけるソルベンシー・マージン比率に係る同表の区分に掲げる命令を発出するものとする。

U-2-2-6 「区分等を定める命令」第3条第3項の運用について

「区分等を定める命令」第3条第3項に該当する場合に、保険会社に対して行う命令には第3区分の命令を含むこととされているが、実質資産負債差額から、満期保有目的債券及び責任準備金対応債券の時価評価額と帳簿価額の差額を除いた額が正の値となり、かつ、流動性資産(注)が確保されている場合には、原則として同区分の命令は発出しないものとする。

ただし、解約の状況や流動性資産の確保の状況等を総合的に勘案し、必要があると認める場合には、契約管理の徹底、流動性の補完、資本の増強等につき業務改善命令を発出することがあることに留意するものとする。

U-2-2-7 その他

U-2-4 生命保険会社の区分経理の明確化

U-2-4-1 意義

生命保険会社においては、利益還元の公平性・透明性の確保、保険種類相互間の内部補助の遮断、事業運営の効率化、商品設計や価格設定面での創意工夫などを図る観点から、一般勘定について保険商品の特性に応じた区分経理を行うことが重要である。各生命保険会社において自己責任原則のもと、保険経理の透明性、保険契約者間の公平性確保等の観点から、適切な区分経理が行われる必要がある。また、区分経理を導入するにあたっては、資産の配分方法、含み損益の配賦方法等について、アセットシェア等に基づき適切に配分方法が定められていることが重要である。

U-2-4-2 主な着眼点

各生命保険会社においては、適切な区分経理を行うため、例えば、以下のような考えに基づく区分経理に関する管理方針を策定しているか。また、区分経理の状況が、取締役会その他これに準ずる機関に対して報告されているか。

U-2-4-3 監督手法・対応

区分経理の状況について問題があると認められる場合には、必要に応じて法第128条に基づき報告を求め、重大な問題があると認められる場合には、法第132条に基づき行政処分を行うものとする。

U.保険監督上の評価項目

U-3 統合的リスク管理態勢

U-3-3 リスクの測定

U-3-3-3 ストレステスト

U-3-3-3-1 主な着眼点

保険会社は、将来の不利益が財務の健全性に与える影響をチェックし、必要に応じて、追加的に経営上又は財務上の対応をとって行く必要がある。そのためのツールとして、感応度テスト等を含むストレステスト(想定される将来の不利益が生じた場合の影響に関する分析)及びリバース・ストレステスト(経営危機に至る可能性が高いシナリオを特定し、そのようなリスクをコントロールすべく必要な方策を準備するためのストレステスト)が重要である。特に、市場が大きく変動しているような状況下では、VaRによるリスク管理には限界があることから、ストレステストの活用は極めて重要である。保険会社においては、市場の動向等も勘案しつつ、財務内容及び保有するリスクの状況に応じたストレステストを自主的に実施することが求められる。なお、ソルベンシー・マージン比率の算出、将来収支分析等他の法令等の規定がある場合は、以下の指針にかかわらず、当該法令等の規定に従うものとする。

U-3-3-3-2 ストレステストの概要の開示

規則第59条の2第1項第4号イに掲げるリスク管理の体制を開示するにあたっては、自主的に行われているストレステストの概要とその結果の活用方法についても分かりやすく開示するものとする。

V.保険監督に係る事務処理上の留意点

V-2 保険業法等に係る事務処理

V-2-18 ソルベンシー・マージン比率の計算

ソルベンシー・マージン比率の正確性等については、規則第86条、第87条、第161条、第162条及び第190条の規定に基づき、保険会社の資本、基金、準備金等及び通常の予測を超える危険に相当する額の計算方法等を定める件(平成8年2月29日大蔵省告示第50号。以下、V-2-18において「告示」という。)の趣旨を十分に踏まえ、以下の点に留意してチェックするものとし、問題がある場合にはその内容を通知し、注意を喚起するものとする。

V-2-18-6 変額年金保険等の最低保証リスクについて

保険金等の額を最低保証する変額年金保険等については、将来にわたって債務の履行に支障を来たさないよう最低保証リスクの適切な管理及び評価を行うとともに、保険数理等に基づき、合理的かつ妥当な保険料積立金及び危険準備金 Vの積立並びにソルベンシーの確保を行う必要があるが、その際、以下の点に留意するものとする。

W.保険商品審査上の留意点等

W-4 第三分野

第三分野の商品審査にあたっては、特に以下の点に留意して審査することとする。

W-4-1 基礎率変更権の設定について

第三分野保険の基礎率変更権の設定に関し、規則第11条第1項第7号イに定める審査基準に基づいて審査を行う場合は、以下の点に留意して審査するものとする。

W-4-2 基礎率変更権を行使する認可申請の取扱い

第三分野保険の基礎率変更権の行使のための申請があった場合には、以下の点に留意して審査するものとする。

W-4-3 保険金等の支払時における保険契約者等の保護のための措置

第三分野の商品については、保険金等の支払時における保険契約者等の保護のための措置として以下の点に留意することとする。

W-5 保険数理

算出方法書の審査にあたっては、特に以下の点に留意することとする。

W-5-1 保険料

W-5-2 責任準備金

W-5-3 契約者価額

解約返戻金については、支出した事業費及び投資上の損失、保険設計上の仕組み等に照らし、合理的かつ妥当に設定し、保険契約者にとって不当に不利益なものとなっていないか。

W-5-4 過去の損害率等による割増引の適用

疾病系(医療、がん、介護等)の定額給付型保険(特約を含む。)について、過去の損害率(支払率を含む。)による割増引を適用することができる旨を算出方法書に定めようとする場合には、以下の点に留意して審査することとする。

W-5-5 各種割増引制度等