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ピアノよりトロンボーンがきれい


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きれいって、何が?

見た目の話ではありません。
和音、ハーモニーの話です。
ちょっと理系ちっくな話なので、苦手な人は覚悟して読んでください。


基本の和音、ドミソについて考えてみましょう。

ピアノの調律は、12平均律という音律に従っています。
平均律というのは、1オクターブを12等分した音律と思ってもらえれば良いでしょう。

「12等分って何?」とおもいませんか?
それもそのはず。みんな、初めて習うのがピアノの音階ですからね。
ドからドまでを12等分したものが半音だと習ったはずです。

でも本当は、半音の定義はいろいろあります。
半音というより、音階の定義がたくさん存在します。
トロンボーンのグリッサンドをイメージしてもらうとわかるように
音というのは、本来連続的にすべての高さで存在するもので
1オクターブを何等分しようが、不規則に分けようが自由なのです。
12個に分ける習慣になったのは、きっとヨーロッパ地方でたまたまそうなったのでしょう。


平均律の話に戻します。

音は、振動数で定義されます。
たとえばギターの弦をはじくと、一秒間に何回も震えますね。
弦を張る強さ次第で震える回数が変わり、音の高さが変わります。
ギターでは6本の弦を、それぞれ張る強さを変えて音の高さを変えています。
その、一秒間に震える回数が振動数です。単位Hzで表します。

1オクターブというのは、振動数が2倍になる間隔を指します。
たとえばドの音の振動数が100Hzだったら、1オクターブ上のドの振動数は200Hzです。

では、さっきの12等分。
1オクターブ=振動数2倍。これを12等分するってどういうことでしょう?

一度は習ったと思います。n乗根という言葉を。
そう、2倍を12等分したものは、2の12乗根です。
普通なら、このあたりで数学の苦手な人はギブアップします。
もうちょっとがんばってくださいね。

2の12乗根=1.059463・・・割り切れません。
これを12回かけると、ちょうど2になります。
ドを100Hzとしたときの、その他の音の振動数は下のようになります。


ド:100Hz
ド♯:105.94・・・Hz
レ:112.25・・・Hz

ミ:125.99・・・Hz


ソ:149.83・・・Hz


ド:200Hz


ド、ミ、ソの振動数だけ見ても、特にどうということはないと思います。
でも、もしミが125ぴったりで、ソが150ぴったりだったら
なんとなくきれいな数字になりそうと思いませんか?
ドミソで100、125、150ですよ?思いますよね?
実際、これだと完璧にハーモニーします。

つまり。
平均率で調律されるピアノでは、完璧な和音は表現できないのです。
でも、トロンボーンを初めとする管楽器では
半音よりももっと微妙な音の高さを調節できるので
上で言う完璧な和音を表現できます。

具体的には、ドに対して
ピアノのミより低めのミを吹き(125.99→125Hzとなるように)
ピアノのソよりも少しだけ高めのソを吹けば(149.83→150Hzとなるように)
完璧にハーモニーする和音が表現できます。

よくあるチューナーは、平均律で調整されているので
ドミソの和音でミの人はチューナーで低めに、
ソの人はチューナーで見て高めに吹くように工夫しなければいけません。
演奏中、チューナーにすべての音が合っている人は、実は音痴なのです。


そういうわけで、ピアノよりトロンボーンの方が美しいハーモニーを実現できます。
でも、どうやって少しだけ低くとか高く調整すればよいのでしょう?

あんまり考える必要はありません。
人間ってのは、自分にとって気持ち良いように自然と動けるようになっています。
隣の人の音をよーく聴きながら演奏すれば、
自然と完璧なハーモニーを得られる音程の音が吹けます。
自分の音を冷静に聞きながら、隣の人の音にも耳をすますことができるようになれれば
きっときれいな和音が作れるでしょう。