目の前に広がる紫色の海、あこがれ続けたこの地で、満開のラベンダーに であうことができた。その畑に降り立ったとき、嬉しさと感激で舞い上がってしまい そのとき感じたであろうラベンダーの香りが今も思い出せないでいる。でも私達 花人を歓迎してくれている妖精たちのささやきは、確かに聞くことができた。 夢中でシャッターを切る。何度も何度もシャッターを切る。 でも写真は本当にむずかしい。目にした景色そのままが現像されるには違いない のだが、出来上がった写真を見ると、何かが足りない。その時の感動はそのまま には写ってくれない。だから、私は、今回の旅ではこころのシャッターを何度も切った。 それはわたしのなかで、大切な宝物となり、永久保存される。 広大などこまでも続く紫色の海は、もちろん感動的だったが、わたしがとても見たか った野生のラべンダーに出会うことができたのも貴重な体験だった。岩肌から顔を のぞかせ、ひっそりと咲く野生種、力強く、いとおしい。人知れず咲いている、ちいさな ひと株にこんなに大きな感動をもらえる、この花の魅力に改めて驚かされた。 日本では多くの人にラベンダーを見てもらいたいと、刈り取るのを一日延ばしにする ところも多いと聞くが、プロヴァンスでは品質の良いオイルをとることが第一なので 観光客のことなどおかまいなしに刈り取られてしまう。そんなわけで、満開のラベンダー に出会えたのは奇跡に近いのかもしれない。 この旅はワインに酔い、たのしい会話に酔い、みんなの笑顔に酔い、そして、なんと いってもプロヴァンスのまばゆい光、さわやかな風、ラベンダーのかぐわしい香りに 酔いしれ、最高の旅になったことはいうまでもない。 |