令和7年2月28日(金)私の気分転換
←Ryucrewさんの2冊目の本を買ってきて一気に読みました。
表紙の裏に”変わっている”って最高の褒め言葉やん。という言葉がとても気に入りました。
ちょっと気持ちが落ち込んだ時に、RyucrewさんのYouTubeを見ると
よし!私も頑張ろう!と前向きな気持ちになれます。
ポーランドはショパンの国、旧市街や教会は「もうええわ」が笑えました。
ポーランドでなくても、ヨーロッパあるあるで、博物館や美術館、お城、宮殿など名所を訪ねると一向に終わりがこないような螺旋階段や、広すぎたり、見どころが多すぎたりして、せっかく入場料を払っているにもかかわらず、足の重たさや疲れが先行してしまい、途中から、「まだあんの?もうええで・・・・」と弱気な感じになりがち・・・・という部分では、本当にそうだなあと思いました。
水回りが悪い海外や、トイレ事情など、どうしても日本の清潔さと比べてしまい、住むと本当によくわかる日本の素晴らしさを改めて感じます。
外資系CAというご職業や、お仕事柄、世界中を旅したそこの感想などRyuさん持ち前のお笑いの才能で、まだ、見知らぬ土地へ添乗員さんが連れて行って下さっているような気持ちになれます。とにかくどの動画も、お喋りが面白いし、Ryuさんの前向きな行動力や、お人柄の素晴らしさに感動しますし、あらゆる分野に精通されており、まず、人として尊敬します。
シングルマザーで女手一つでお育てになられたお母様にもこんなに人間として素晴らしいRyuさんをどのようにお育てになられたのか、講演会や本を書いて頂きたいです!
令和7年2月25日(火)第18回イタリアコンコルソMusicArte
今日は、イタリアコンコルソMusicArteの結果が出て、Stella部門(スター部門) 高校生の部を受けられた明和高校2年生の伊藤里桜さんが、グランプレミオ大賞<G.P>を受賞されたと喜びの報告を頂きました。
ステッラ部門の最高位です。
おめでとうございます!
令和7年2月24日(月・祝)武満徹さんの作品
以前も私の日記で書いたことがあるが、私が武満徹さんの作品に初めて出会ったのは、桐朋の高校3年生の頃だった。
大学2年の春にアイルランドのダブリン国際ピアノコンクールを受けに行くことが決まり、日本人の作品を入れるようにと当時の恩師が19歳の若い私にあらゆる武満作品を聴かせて下さった。
指揮者でもいらした恩師は、武満さんのオーケストラの曲を振られたり、直接武満さんとの親交も深く、自然と私も興味を持つようになった。
ピアノ作品では、雨の樹素描、閉じた眼、フォー・アウェイ、ピアノ・ディスタンス、遮られない休息、2つのレント・・・などなど。この中で一番気に入ったのは、閉じた眼(瀧口修造の追憶に)だったので、これをダブリンで弾いた。
私の演奏を聴いたホストファミリーの方が、何度も何度も、「ヒュウ~、ヒュルルルルル~、ド~ン、〇△□×?」と
武満作品を気に入って、「日本の作品は、何と美しい、いい音楽だ!」と興奮して聴いて下さったのがつい昨日の事のように思い起こされる。
私が小学生の頃、「あなたの知らない世界」という嘘か本当かわからないが、ものすごく恐ろしい番組があった。
そのテーマソングが、ドコドコドコ・・・・と太鼓が少しずつ大きく鳴らされ、尺八や、琵琶など、幽霊がでてくるのにピッタリな日本の伝統楽器が聴こえてくる。
「髪の毛の伸びる人形」というシリーズでは、人形の髪の毛が少しずつ、伸びているという話を聞いた。子供心にも本当にそんな事があるわけがないと思いながらも、私の家に飾っている人形の髪が本当に伸びていやしないか、毎日、定規で計ったこともある。
武満作品で私が好きなのは、ピアノ曲では、「閉じた眼」とオーケストラ作品では、「ノヴェンバーステップス」だ。
ウィーン国立音大で修士論文を書くために、一時帰国して、武満徹さんにまつわる映画を見に行ったことがある。
武満さんご自身も、ほぼ毎日映画を見ていたという話は、皆さんもよくご存じかと思う。
私が見た映画の中に、「心中天網島」があった。ストーリーは、よくある話ではあるが、武満さんの音楽と共に、この映像が妙にマッチして何だか、サウナのような季節の日本の夏で、背筋が凍るような恐ろしさを味わった。
その映画を見た後、武満徹を研究されていた企画された方に、休憩時間にお話しして色々とお尋ねすることが出来た。
私のような、若い音楽学生が、見に来ているのが珍しかったのか、その方から、後日、御礼のお葉書を頂いた。
私のような若造に対して、真剣に向き合って下さるその学者の方の誠実さに何よりも感銘を受けたことを今も思い出す。
その後、私自身の帰国記念のリサイタルを開催した時に、「武満作品を演奏します」と言ってお返事を差し上げたら、
私のリサイタルを聴きにいらして下さり、本当に感動したのを憶えている。
そういえば、まだ若い20代の頃は、トークを挟むコンサートもよくやっていて皆さんとても喜んで聴いて下さった方がほとんどだったが、たまたま武満作品を弾いた時に、ある音楽マニアの方から、「トークはいらない。音楽だけを静かに聴きたい」。という感想を頂いた事がある。特に武満作品は耳を澄ます音楽だから、私が武満作品を弾く前に話したことで、その方の幻想を砕いてしまったかもしれない。音楽だけを静かに聴きたい、余韻に浸っていたい、そう思う方もおられるだろうし、いやいや、その人の声も是非、聴きたいとかそういう方もすごく多い。いずれにせよ、聴いて下さる方達の為に努力するのは大切だけれども、皆の希望を叶える事は出来ない。どんなに上手くやっても文句をいう人は必ず出てくるところが、人間の面白さでもある。
音楽というのは、それ自体が、不思議である。全く知らない人と人とが、音楽によって繋がっていくのだから。
トークがほしい、ほしくない、そういう事自体が、人と人が色んな思いにかられるから、そういう思いが出てくるわけである。心の中に何かが必ず残っていくのが音楽の素晴らしさだと思う。
武満作品には、私の青春時代の色々な想い出が詰まっている。
←海を渡って、日本から送ってもらったCD。ウィーンにいると食べ物だけでなく音楽まで、日本のものが何でも恋しくなるんですよね・・・。
私のウィーン国立音大時代の恩師は、武満さんの作品をご存じなかったので、
「メグミ、CDを貸してくださいますか?私も勉強したいので」とおっしゃって、貸して差し上げました。ものすごく喜ばれて、「本当にいい音楽だ」と感激されていました。
令和7年2月18日(火)いつの日か、僕を泣かせてくださいね、あなたの演奏で・・・
今日は、金城学院大学の合格発表があり、現在、金城学院高校3年生の大藪真菜さんが、金城学院文学部音楽芸術学科に合格したとご報告を頂きました。
おめでとうございます!
←昨日、第15回ヨーロッパ国際ピアノコンクール in Japanの
優秀指導者賞を頂きました。
いつも皆様が、暖かいお言葉を下さるのが本当に励みになり、生徒さん達と一緒に頑張る事が出来ています。
皆様、応援して頂いて、本当に有難うございます。
先日も書かせて頂いた、ヴァイオリニストの千住真理子さんが、江藤先生から15,6歳の頃こんなことを言われたそうです。
「あなたの演奏はとても美しくほぼ完壁で言う事はない。
ただ一つ、あなたの演奏はシャボン玉のように消えてしまう。
いつの日か、僕を泣かせてくださいね。あなたの演奏で・・・・・・」。と。
音色は、テクニックでは絶対に出ませんよ。心よ、心!
大切なのは、心ですよ!と叫ばれた江藤先生。
自分が考えていること、悩んでいること、日常の生活全てが音に沁みこんでいく・・・・。
目に見えないもの、科学で分析できないもの、それが人の心です。
どんなに完璧な演奏であっても、音の中から、その人の心が聴こえてこない時、私はとても哀しくなります。
江藤先生がおっしゃられた言葉の意味が、今では本当によくわかります。
皮肉なことに先生から指導を受けているときは、わからなかったことが、
沢山の生徒さん達を育ててみて初めて、その言葉の意味が深く深く私の心の底に優しく降り積もっていく気がします。
令和7年2月17日(月)門下生の御活躍

←来月、3月20日(木祝)
13:30開場14:00開演
東京のKMアートホールで
「髙浪杜和&山田ありあ
デュオリサイタル」が開催されます。
杜和君は、小学4年生の頃から、ありあさんは、小学3年生の頃から私の教室で学ばれて
現在は、既にピアニストとして
御活躍中のお2人です。
←こちらは、愛知、宗次ホールである、ランチタイム名曲コンサートです。
4月10日(木)11:30開演11:00開場(12:30終演予定)
ここでも、ありあさんと杜和君が2台ピアノで、サン・サーンス:「死の舞踏」
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番より、
そしてガーシュイン:ラプソディ・イン・ブルー他を演奏されます。
小学生時代からの幼馴染のお2人が、小さい時に誓った「ピアニスト」の夢を果たして、こうして、同じ舞台で共演出来る機会を頂けたこと、私もとても嬉しく思います。
ご興味のある方は、是非、応援に行ってあげて下さい。
令和7年2月16日(日) 第15回日本バッハコンクール全国大会中学B部門金賞受賞
昨日、バッハコンクールの全国大会があり、中学B部門を受けられた中学3年生の永峯佳樹君が、金賞を頂いたと喜びの報告を頂きました。
おめでとうございます!
令和7年2月15日(土) Listen to me

←生徒さんから、バレンタインを頂きました。
今は、さまざまな種類のバレンタインがあるのですね!
とても美味しく頂きました!
お心遣い頂いて、有難うございます。
最近、ヴァイオリニスト千住真理子さんの「歌って、ヴァイオリンの詩2」(時事通信社)の本を読みました。
千住さんの本は、とても面白いので、何冊も買って読んでいますが、この本の中で、印象に残った部分があります。
それは、ヴァイオリニストのアイザック・スターンの言葉です。
「演奏家と聴衆の関係はなんだと思う?聴いて下さいじゃない。聴けだ」。
「Listen to me」
「大切なのは『自分の音楽を聴け』という自信だ」
それと愛犬リリーの死、の部分です。
<生きることも、死ぬことも、ひとりで戦うことなんだ>愛犬リリーは、共に生きてきたことの証として「ひとりで戦う」ことの意味を厳しく千住家の人間に教えてくれた。という内容で、書かれていました。
他にも江藤俊哉先生が、千住さんをレッスンされた時に、江藤先生が演奏されるとヴァイオリンの音が、ものすごい振動で伝わり、身体中、床、家全体まで揺さぶられるような音がしたとのこと。実際に私も、桐朋時代に、江藤先生の
リサイタルを聴いたり、ヴァイオリンの方の伴奏で江藤先生のご自宅にレッスンに伺った事が度々あり、興味深く読みました。
ソリストというのは、「芯のある、存在感のある、異質な音」が出せないとだめという事です。
それは、単に大きな音を意味するのではありません。
ピアニッシモのような部分でも、大きな音を出しながら、聴いている人には、小さい音を出しているんだと感じさせる奏法の事など、音を立体的に浮き立たせるためのちょっとしたコツなど、とても共感して読みました。
令和7年2月11日(火)門下生の御活躍
←来月3月14日(金)熱田文化小劇場(17:30開場18:00開演)
桐朋学園大学生によるフリューリンク演奏会が開催されます。
現在、桐朋学園大学3年在学中の清水陽菜さんが、御出演されます。
陽菜さんは、シューマンのソナタ第3番の第3、4楽章を演奏されます。
(陽菜さんは、第1部の一番最後、
18:40頃演奏予定だそうです)。
ご興味のある方は、是非応援に行ってあげて下さい。
先日、陽菜さんは、レッスン室を訪ねて下さり、シューマンのソナタを聴かせて下さいました。
陽菜さんらしい、音楽的なシューマンの情感をたっぷり歌い上げた素敵な演奏を聴かせてくださいました。
4年生になったら、明和高校の教育実習にいらして下さるとの事で、
陽菜さんがどんな授業を担当して下さるのか、うちの門下の子達も楽しみにしているようです。(その前に私も陽菜さんの授業が見てみたいです!)
陽菜さんとの出会いは、小学2年生の頃からになります。
幼いころから、何事に対しても前向きで、全力を尽くすパワフルな姿勢にこちらもいつも励まされてきました。
陽菜さんは、明和高校卒業後、桐朋学園大学に進学して、卒業後は、ドイツのフライブルグ音大へ留学したいと今、一生懸命留学するための準備をしています。
1つ1つの事が、全て人生の糧になっていくので、陽菜さんが又、ドイツに行ったら、留学生活の様子など聞く事が出来るのが楽しみです!
門下生の皆さん、本当に立派に成長されて嬉しい限りです。
今日は、先月1月5日の私の日記で、ご紹介させて頂いた井上恵利那さんも2月15日(土)(14:00開演)に伏見の電気文化会館で椙山女学園大学を卒業された方達の演奏会に御出演されるので
度々レッスン室を訪れて下さり、バラキレフ=グリンカのひばりを素敵な演奏で聴かせて下さっています。
うちの門下のお母様と生徒さんが聴きに行くのを今からとても楽しみにしているとの事で、有難うございます。
恵利那さんとの出会いも小学2年生の終わり頃から、椙山女学園大学の教育学部をトップの成績で卒業されて、
現在小学校教諭になられて、今では、生徒達の憧れの恵利那先生です。
今日は、入籍されたとの事、ご結婚、誠におめでとうございます!
恵利那さんをお嫁さんに出来る男性なんて、何と幸せな事か・・・と思います。
教諭のお仕事と、ご結婚の準備でお忙しい合間を縫って私を訪ねて下さり、本当にどうも有難う!
陽菜さんも恵利那さんもお若くてお綺麗で、こんなに素敵な女性になられるまで成長を見届けることが出来る程の長い年月、
私のところにいらして下さり、本当に感謝しております。

←バレンタインを頂きました。
生徒さんから、温かいお言葉を頂いて、いつも本当に有難うございます。

←名古屋音楽大学の卒業アルバムを作成して下さるという事で、写真屋さんが名音大にいらして撮影して下さいました。(昨年11月25日
名音大の私のレッスン室で撮影)
来月大学院を修了される生徒さんと、学部を卒業される生徒さん達との記念撮影がありました。
お2人共、卒業後の勤務先が決まり、私もとても嬉しく思っております。
お2人共、ご卒業、誠におめでとうございます。
未来を担う音楽家として、益々の御活躍を応援しております。
令和7年2月10日(月)愛知県立明和高等学校音楽科推薦入試合格発表
今日は、明和高等学校音楽科の推薦入試の合格発表があり、現在中学3年生の生徒さんが合格出来たと喜びの報告を頂きました。
長い間の受験曲の練習、本当に良く頑張られました。
誠におめでとうございます!
令和7年2月9日(日)第15回日本バッハコンクール全国大会一般B部門金賞受賞
昨日に引き続き、バッハコンクール全国大会がありました。
今日は、大野まどかさんが一般B部門で金賞を頂いたと喜びの報告を頂きました。
おめでとうございます!
令和7年2月8日(土)第15回日本バッハコンクール全国大会
今日は、バッハコンクールの全国大会があり、中学2年生の三宅佐保さんが中学C部門で奨励賞を頂いたとご報告頂きました。
寒い中、よく頑張られました。おめでとうございます。
今日は、朝から雪が積もっていました。
毎日寒いので、皆様、お身体にはくれぐれもお気をつけてお過ごしください。
令和7年2月4日(火)来月卒業される生徒さん達
←来月卒業される明和高校3年生の生徒さん達と記念撮影をしました。
26年間明和に勤務させて頂いて、毎年、卒業生達を見送ってきました。
明和の生活は、充実していて楽しく、3年間が飛ぶように過ぎたそうです。
私もお2人と素敵な時間が過ごせて、本当に楽しかったです。
又1つ素敵な想い出が残りました。
ご卒業、誠におめでとうございます!
令和7年2月3日(月)名古屋音楽大学入試合格発表
今日は、嬉しい報告が次々と入りました。
先日、名古屋音楽大学の入試があり、今日合格発表がありました。
明和高校3年生の前川心音さんがピアノコースに合格を頂いたと喜びの報告を頂きました。
誠におめでとうございます!私もとても嬉しいです!
心音さんとの出会いは、小学5年生の頃からになります。当初から、とても明るく、人懐っこい可愛らしい子で、誰とでも仲良くやっていける生徒さんでした。いつも心が開いていて、何事に対しても前向きな彼女の様子を見ていると、
こちらの心まで明るくなれました。明和高校生になって、更に人間的にも音楽的にも大きく成長されて、あっという間の3年間でしたが、名音大で引き続き、心音さんの成長を見させて頂ける事を本当に嬉しく思います。
そして、次は、先日、四日市へアドバイスレッスンへ行った際に見させて頂いた方のコンクール入賞のニュースが入りました。
先日行われたベートーヴェン国際ピアノコンクールアジアの本選に出場されてB1部門(9歳以下)で見事銀賞を頂いたそうです。
おめでとうございます!
←平成6年1月~3月にNHKで放映されていた「ベートーヴェンを弾く」のテキストです。
ミュンヘン国立音大のオピッツ先生がレッスンされていました。
丁度、私は、桐朋学園大学4年生、留学準備真っ最中の頃で、東京ゲーテ・インスティテュートに毎日通い、一生懸命ドイツ語を学んでいた時期です。
家では、自習として、テレビのドイツ語講座を見たり、オピッツ先生の話される言葉の
字幕を止めては、書きとる、書きとってはもう一回聞き直す、など、ドイツ語学習をしていました。
外国語学習は、独学でも、語学学校でも、勉強しようとする情熱と行動力さえあれば、
どこででも可能だと思います。私の場合は、一番役立ったと思えたのは、ゲーテインスティテュートでの毎日通う集中コースにおいてでした。
←2008年の12月~3月までやっていたスーパーピアノレッスン。
アンドラーシュ・シフが講師をされた、ベートーヴェンのコンチェルト1番から5番までのレッスンもとても興味深かったです。
←ウィーン国立音大に留学して間もない頃。
中央墓地にあるベートーヴェンのお墓の前で、23歳当時の私。
←ベートーヴェンが滞在したバスクァラティハウスのピアノ。
令和7年2月2日(日)ウィーン留学時代の私の日記から・・・
1996年3月4日(月)ウィーン国立音大留学時代の私の日記から・・・(24歳当時)
マリア・ジョアオ・ピリスの演奏会へ行ってきた。
初めにシューマンの3つのロマンス、モーツァルトのソナタKV.333、ショパンノクターンNr.1~10まで、アンコールが13番のc-moll。
私の求める心のうたが、ピリスの演奏にはあった。1音たりとて、気持ちの入っていない意味のない音はなく、全て心から出ているものであった。激しいところでも外面的なそれでなく、静かに熱く私の心に届いた。
ウィーンのムジークフェライン(楽友協会のこと)で、ピリスの演奏を初めて聴いたのは、ベートーヴェンの3番のコンチェルトだった。
その時も、静かな祈りのようだと感じたけど、緩徐楽章が特に美しい。
今日のプログラム自体、非常に美しいものであったが、アンコールも本当に良かった。
←1996年3月4日、ウィーン楽友協会のグローサーザールであったピリスのリサイタルのプログラム。
この日も立ち見でしたが、全く疲れを知らず、24歳の私の身も心もピリスの演奏に吸い込まれていきました。
←日本に帰ってから、再び、ピリスのレッスンの様子をテレビで、見ることが出来ました。
2008年8月~12月まで放映されていた、「スーパーピアノレッスン」においてです。
私がウィーンでピリスの演奏を聴いた時に感じた通りの話を、ピリスは、ワークショップで、生徒さん達に、お話されており、私が、24歳の頃、胸をときめかせて聴いたピリスの演奏から受け取ったものは、言葉ではないけれども、全てそれらを音楽で教えて頂いたのだと感じて、嬉しくなりました。
ピリスは、「私は、ステージで弾くことが嫌いです。これまで一度も好きになったことがありません。いつもステージに立つことを自分に強制してコンサートをしてきました・・・・」という内容を生徒さん達に話していらっしゃいます。ステージ体験が多ければ多いほど、そのようにおっしゃる音楽家の方は多いと思います。
内田光子さんも、以前、私が学生の頃、新聞で読んだ記事で、「私は、ステージで集中出来ない。
私は、ピアニストに向いていないんじゃないかと思う。ステージはすごく疲れます」。
とおっしゃっていました。ミケランジェリも、突然、演奏会をキャンセルしたり、すごく神経質だったと聞きます。
リヒテルは、暗譜が怖くて、蠟燭のランプをピアノの脇に置いて、譜めくりさんをつけて晩年は、暗譜をせずに弾いていました。
私がまだ、ウィーン国立音大の留学生だった時に、実際に、リヒテルのコンサートを目の当たりにして思ったことは、巨匠クラスになるとステージは、尚更恐ろしくなるのだろうなということでした。
数多いステージの経験は、必ずしも、自信につながるとは言い切れるものではないところが、興味深いところです。
巨匠クラスのピアニストで、「私は、ステージが大好きです」なんていう人は、あまり聞いた事がありません。
元々、音楽家は、ものすごくピュアで繊細な神経を持っていると思いますし、年齢を重ねれば重ねる程、1つ1つの音の意味がわかりもっといいものを求めていこうとするあまり、自分の音楽に対して益々厳しくなっていき、否が応でも完璧主義になっていきます。
あんなに人の心の奥まで沁みとおる美しい音楽を奏でられるピリスさんですら、これまでステージで弾くことが嫌い、一度も好きになった事がない、というのを聴いた時に、だからこそ、あんなに美しい、神々しい演奏になるのだな、と腑に落ちました。