そして、聴くときは、ただ、流して聴いているだけではだめで、楽譜に、どんどん、自分との相違点を書き込んでいきます。相違点は、音楽の流れであったり、フレーズの歌わせ方であったり、強弱のつけ方であったり、アゴーギクの違いであったり、ペダルの踏み方の違いであったり、音色の変化であったり、数知れずあるでしょう。
どんなに、お気に入りの演奏でも、その人が弾いている通りには絶対出来ませんし、又、そうなってもいけません。一人ひとり、肉体が違うので、当然、出てくる音は、全て違います。又、呼吸の仕方も、その人が呼吸して生れ出てきた、音楽にならなければ、生きた音楽にはなりません。

素晴らしい演奏のまねを徹底してすること、どうしてそういう歌い方が出来るのかを常に研究し続ける事、しかし、最終的には、それは、全て、自分の中で、消化し、
自然な話し方で話さなければならない、ということです。

自分のものにするまでは、とにかく時間がかかります。

自分から生まれでたように自然な音楽になるまで、繰り返し繰り返し、自分の録音、他の人のお手本、自分、お手本、その繰り返しが大事ですね。

それを実行してくれる生徒も、もちろんいます。そんな研究成果が表れると、よく、研究してくれたなあと私も、すごく、嬉しくなります。彼女を抱きしめたい思いでした。
彼女いわく、これをすると、相当疲れるし、おなかもすいた、との事です。その通りですね。
何事も、自分の夢を達成するには、自分の頭を沢山使い、身体を沢山使うことで、やっと、夢を達成出来るのです。

そういった、面倒くさいと思われる研究を実行するかしないかも、その人次第。

しかし、それを実行する人は、必ず、目的を達成できます。

日記を書いていたら、明和高校3年生の岐阜国際音楽祭コンクールの本選に参加した生徒が、第2位で、岐阜教育委員会賞を頂いた、と喜びの電話がありました。おめでとうございます!


平成26年4月24日(木)ニュアンス

今日は、音色のニュアンスについて、書いてみようと思います。

ニュアンスとは、もともとは、フランス語。

音の強弱、速度、タッチ、楽句、楽節などの微妙な変化、
一つの色の様々な色合い、濃淡、色調、音、匂い、味の微妙な差異という意味です。

先日も、私の好きな、いわさきちひろさんの絵を生徒に見せて、「ほら、このセーターの色、全体としては、赤だけど、淡くなっているところや、紫っぽくなっていたり、黒っぽくも見えたり、色んな色合いを使っているね?これが、色のニュアンス。」と話しました。

音にも色があるのです。強いか、弱いかだけでなく、音と音の間にも微妙な変化があります。わかりやすく言うと、表情ですね。表情が沢山音の中に現れると、聴いていてとても楽しい。

タッチをしっかりしなくては、と思って、全てが、強い音とか、あるいは、弱音を出さなくては、と思い、今度は、どこもかしこもやせっぽちの音になったりしてもいけませんね。

ニュアンスを生み出せるようにするためには、やはり、多彩なニュアンスを出している演奏家のCDを出来るだけ沢山聴くことによって自分のものに出来ると考えています。
私が、CDを聴いていて、音色が多彩だなあと思える演奏家は、やはり、ホロヴィッツとか、アシュケナージ、ウラディミール・トロップ、ソフロニツキとか、キーシンとか、ロシアのピアニストばかりですけど、彼らは、本当に沢山の音の表情があり、何回聴いても飽きさせませんね。

素晴らしい音色を出している彼らの音色に近づくように、近づくように、まねしていくうちに、自然とそうなっていきます。

画家も、まずは、模倣から始まります。まねが上手いのは、才能のうちの一つです。レッスンでも、私の音を聴いて、言葉などでゴチャゴチャ説明しなくても、あ、わかった、こんな感じでしょ?という感じで、マネしてくれる子には、言葉が必要ありません。けれど、その音が、強いか、弱いか、あるいは、テンポが速いか、遅いかだけでしか、伝わっていないとなると、「指先はこのくらいの角度で、腕は、このくらい柔らかくして・・・・・」とか、色々な言葉を使って補助しなくてはならず、混乱のもとになり、大変です。本来、音楽とは、そうやって理屈から入るものではないからです。

理屈で、とらえるのでなく、是非、音は、耳でよく聴いて、身体で感じるものと思ってもらえるといいなと思います。
脱力の仕方なども、理想の音に近づこうと努力すれば、自然に脱力出来ます。

脱力をするときに、いちいち、指先は、これくらいの力で、手首と腕は抜いて、なんて理屈で、頭で、考えていたら、とてもじゃないけど、演奏出来ません。

音は、全て、心から生まれ、相手の心に届きます。心から出ていない時に、何もかも、表面的でおかしな音楽になってしまうのです。


平成26年4月18日(金)目には見えない事、大切にしたい

今週から、大学のレッスンも始まり、今日は、明和高校。新入生達は、まだ、新しい生活に慣れるのに大変だと思いますが、とても楽しくて、全然苦にならないと幸せそうにしているのを見ると、明和に入れて、本当に良かったなあ、と嬉しく思います。

皆、レッスンノートに学校生活の様子を書いてくれるので、すごく、よくわかります。1人1人の演奏を聴いて、批評するだけでなく、その子が、今、何を望んでいるのか、何を言いたいのか、深い所まで、多面的に、見ることはとても大切と私は考えています。そうすることで、レッスンも、1人1人、違うペースでその子に合った指導が可能になるからです。

素晴らしいお医者さんなら、どこか、身体の具合が悪い、というときに、すぐ、検査して、その検査値で、何もかも、決めつけたり、病名をつけてしまうことのないよう、あらゆる面から、その人を診ると思います。

私達も、その人の、顔色を見たり、声を聞いたり、表情を見たり、あらゆる点において、相手をじっくり観察することから、少しずつ、どこをどう、直していけばいいか、判断します。

人間の心は、大変複雑に出来ています。そして、それは、特に、大人になる過程において、中学生以降思春期から、高校生にかけて、青年期に入るあたりまで、急に変化するように感じられます。
今まで、よく話していたのに、急に、自分の事を話さなくなったとか、親も、自分の子供でありながら、何を考えているかよくわからないという事は、きっと沢山あるでしょう。

話さなくなるときは、その子の精神状態が、大人になる大きな成長をしているときですので、喜ばしい時期だと私は思っています。そういう時に、勉強も、ピアノも、すごく成長します。相手が話さなくても、うるさいなあ、と思われても、何やかや、話しかけて、相手の話をよく聞くようにしています。

弾いているときの、手の状態を見ても、相手の心理状態は、すぐわかりますよ。筋肉がダラーンとなっているときは、疲れすぎて、睡眠不足の時。あまりにもテンポが走る時は、周りに追いつこう、としすぎて、気持ちばかり焦っているとき・・・・などなど。


大学生の子で、緊張しすぎて、鍵盤が、汗で、ビショビショになっている子などは、まず、その子の緊張をほぐしてあげるために、ピアノとは全然関係ない話をしてあげて、少し、落ち着いてきたかな?と思う頃、レッスンをさりげなく始めていく・・・・などなど、1人1人の人間観察と、心理状態を奥深く読み解くことが大事です。

そもそも、ピアノ演奏にしろ、画家にしろ、彫刻家にしろ、作った人の、目には見えない、心の奥深くを表しているものが、芸術、です。目に見えているものは、信じない、目に見えていないものだけを信ずるのが、私の信条です。


平成26年4月11日(金)高校のレッスンが始まり・・・・

今日から、明和のレッスンが始まりました。初々しい、1年生達。まだ、学校の中の右も左もよくわからないと思いますし、慣れるまで、大変だと思いますが、じきに慣れていきますよ。高校生活、思い切り、楽しんでくださいね!

1年たつと、随分、自分なりの曲の進め方のペースがつかめてきますよ。3年生の子は、明和で過ごすのも、あと10か月ちょっとです・・・なんてノートに書いていましたが、本当に月日のたつのは、恐ろしいほど、早い!

生徒たちにとっても、私にとっても、2度と通らない道を大事にしてあげたいです。


平成26年4月10日(木)伝統は、幾世代にも受け継がれていく

門下生コンサートの時に、アナウンスして頂いている、大人の生徒さんが、「今回は、舞台そでから、1人1人の演奏姿がはっきり見えて、本当に素晴らしいコンサートでした。楽しかったです!
先生の生徒さんとして年数がたてばたつほど、先生の演奏と重なっていて・・・・・」
というような感想を頂きました。

昔から、芸は、師匠からあれこれ口うるさく命令されて教えてもらうのでなく、師匠のやっていることを、そのまま盗めと私達の時代も、よく言われていましたね。

親を見れば子がわかる、子を見れば親がわかるというように、1人の人間が、相手に与える影響は、大変に大きいので、私達の役割は、責任重大です。

私の大変好きなピアニストで、ロシア人のウラデイミール・トロップさんがいます。この方の演奏が私は大好きなんですが、そのお弟子さん達の演奏を聴くと、又、トロップさんの演奏にそっくり、瓜二つです。お弟子さんには、イリーナ・メジューエワさんとか、コンスタンチン・リフシッツさんなどいますが、とにかく、詩情豊かで、
今時よくある機械的な演奏とは、ほど遠い、音楽の歌心を感じさせてくれるので、大好きなのです。

音楽から、そのまま、伝わってくる、演奏者の息遣い、とってつけたものでない、生きたアゴーギク、柔らかく、弾力性のあるフレーズ感、みずみずしい、柔らかい音色、どの音をとっても、全く不自然な部分が一つもありません。

クラシックの世界は、何百年も昔から、伝統を大切に守り続けています。私が、持っているものも、きっと、何百年も昔の方がやってきたことをそのまま、身につけているものもあれば、自分にしか、出せない斬新なアイデアもあります。

時代の流れが、急速に動いている中で、唯一、古き良き伝統を受け継いでいくクラシックの世界は、素晴らしいと思います。生きていく上で壁にぶつかり、悩んだときは、古典を読めと私達は教わりました。人間の悩みは、昔も今も対して変わらないので、古典を読めば、解決策がわかります。

私が、持っているものを沢山の人にあげられるのは、本当に嬉しく、伝統は、幾世代にも受け継がれていくのだなあとつくづく感じています。




平成26年4月9日(水)初顔合わせ

昨日は、明和高校生、今日は、大学生たちとの、オリエンテーション。

大学生は、皆、初めましての学生さん達なので、自己紹介してもらいました。新1年生は、初々しくて若い可愛い子が一杯。
90分授業の中で、前半私の教室で、ピアノレッスン、後半声楽の先生の所へ行って、歌をやります。

学生たちも、初めての教室、初めての先生、初めての友達、初めての授業・・・・で慣れるまで、色んなストレスがかかるだろうなと思います。

個人レッスンに来る私の生徒達も、休みの時と、学校が始まってからとでは、レッスンに来る表情がガラッと変わります。
休みの時は、生徒達の顔が明るい。
学校が始まると何となく、暗くなってくる。学校が始まると、色んな意味で縛られることが多く、子供たちは、学校に行くだけでも、大変なストレスなのです。

そんな意味で、ピアノの個人レッスンの場合は、ずっと、長年その子が、1人立ちできるまで、1人1人の面倒を見ていくことが出来るので、これは、お互い、大変いいことだなあと、つくづく感じています。

他の習い事では、絶対にありえないですね。ほとんどの習い事が集団、あるいは、個人であっても、しょっちゅう、担当の先生が変わったりします。

しょっちゅう、先生が変わると、お互い、心が分かり合えないまま、その先生が話す言葉もよく理解出来ないまま、終わりになってしまうから、どこか、達成感がなく、中途半端で、残念な思いだけが残ります。

子供たちは、新しい学年になり、クラス替えもあったりして、何かとストレスがかかっているけれど、ピアノに来れば、普段と変わらない先生がそこにいる、自分をわかってくれる先生がそこにいる、というだけで、安心感が持てると思います。

コミュニケーションをとるまでには、何といっても、歴史がいるのです。ピアノを習得するのと同じくらい、その子と過ごした、時間、思い出、嬉しい事、悲しい事、辛い事、全てを共にすることで、お互いの信頼関係が徐々に育まれていきます。母親が、子供の表情一つ見れば、話さなくても、何を言いたいのか察することが出来るように・・・・・。


平成26年4月2日(水)昨日の続き

今日は、スタインウェイの調律をして頂いている間に昨日の続きを書きます。

曲が完璧に弾けなくても、出来なくても、こんなにも自分は最善を尽くしたのだという思いがあれば、ミスをしたとしても大丈夫だから、安心して弾いておいでと本番を迎える生徒達には常々話しています。その先の、上手くいかなかったらどうしようか、とか、失敗したらどうしよう、とかそんな先の事まで心配する必要は全くないのです。
まだ、わかりもしない結果にこだわるよりも、今、自分は、目の前にある事に対して、最善を尽くしているのか、一生懸命努力しているのかどうかの方を心配した方がいいです。


毎日、最善を尽くした練習をしていれば、本番で、上手く演奏出来なくても、すがすがしい、達成感で満足に終れます。私は、この最善を尽くした後の達成感というものが、何にもまして、好きです。私は、出来ないことが沢山ありますけど、この達成感が大好きだから、ピアノの道を歩んでいます。結果が、どうのこうのという問題ではないのです。自分の練習に対しても、生徒達とのレッスンにおいても、最善を尽くせて、数えきれないほどの達成感を味わえるピアノの道は、私にとっても、相手にとっても、幸せを与えられる素晴らしい道だと思っています。


平成26年4月1日(火)達成感味わえるピアノの道

今日はやっと、調律師さんに来て頂き、調律をして頂いています。
レッスン室に、スタインウエイのA型とヤマハのC2の2台があるので、まず今日は、ヤマハのピアノの方を、明日は、スタインウエイの方をして頂きます。

高校や大学でのレッスンが始まらないまでに、色々な事をやっておかなくてはならない事が沢山あり、昨日は10月4日に開催する私の第9回目のソロリサイタルの
打ち合わせにマネージメントへ。
チラシの原案から全て、こだわりぬいて、まずは自分で考えます。
そして、マネージメントさんと相談しあいながら作っていきますので、これが結構時間がかかるのです!

ピアノの事となると、絶対にいい加減にできない私なので、全てにおいて、ものすごくこだわって、時間をかけます。周りが、もうそこらへんでいいのじゃない?とあきれるほど。
多分皆さんにお配りできるのは、7月頃になると思いますが暫くお待ち下さいね。
                                             明日へ 続く