平成23年2月27日(日) 1人1人の生徒が”きな子”のようで・・・・・・・・・・。

年が明け、もう2月も終わりになり、やがて3月を迎えます。
3月といえば毎年恒例の門下生コンサートが3月19日の土曜日に港文化小劇場で開催されます。

そういえば、チケットは、「どこで買うのでしょうか?」と、聞かれる方もいらしゃるのでこの門下生コンサートは無料です。

チケットもいらず、どなたでもピアノのお好きな方、そうでない方も是非聞きにいらして下さい。

今年新しく入会されたフレッシュな生徒さん、そしてもう長い間出演してきたベテランの生徒さん、音楽高校生。とてもにぎやかな会になりそうでワクワクしています。

つい最近警察犬「きな子」の映画を見せてもらう機会がありました。

私が生徒達を教える時「きな子」を警察犬にする訓練士と、まるで同じだなぁと思いながら見ていました。

何回も試験に落ちてやっと合格した「きな子」を育てた訓練士のように

私はどんな生徒も1人1人の生徒が「きな子」と思って暖かく見守って行きたいです。


平成23年2月17日(木)響かない音

「なぜか、私の音は響かないなあ?」と悩む方は多いと思います。
私が色々な人達の演奏を聴いていて、なぜか響かない音の人の特徴は、肩、肘、腕、手首などに必ずと言っていいほど、無駄な力を入れて弾いています。

元々、「力」というのは、必要な部分にはしっかりかけていなければなりませんが、必要でないところの「力」は抜けていることが望ましいのです。

書道も「しんにゅう」を書く時は、入れるところ、抜くところなど、とてもメリハリをつけて書きます。

ボールをなるべく遠くへ投げようと思えば、力一杯投げつけるよりも、力をフワーッと抜いて楽に飛ばすと、遠くへ飛ぶと思います。

歌唱力のある歌手なら、すごく美しい柔らかい裏声を使うことで、全く力みのない、得も言われぬような天使のような声を出して、歌うことが出来ます。

元々、日本の住居は天井が低く狭いので、空間を感じて音を出すという事に慣れていないせいもあるでしょう。
それに比べてヨーロッパの建物は、天井が高く石造りなので、無理なく響きのある音を出す事が出来ます。
又、教会で、賛美歌を歌う習慣が幼い頃からあり、音楽を聴く時にハ-モニーで感じているという大きな違いがあります。
だから、ブツ切れの音楽にならず、ハーモニーを感じて弾くから、すごくフレーズも長くて大きいし、とても伸びやかで空間を感じられる。

ピアノに限らず、無駄な「力」を入れていて良い事は何一つありません。
何をするにも「力」が入れば必ず失敗につながり、ここぞという時に思うように実力も発揮できなくなってしまいます。
「自然体」が一番。

又、「力」が入るのは、先に「こわい」という気持ちが働くからなのです。

例えば、私が上手くボールを飛ばせないのは、きっとどこかで、変な力が入るのだと思います。

その道のプロに見てもらえば、何て、変てこで、おかしなことやってるなあ、と笑われるでしょうね。

スポーツは出来ない、という意識がまず、私の頭の中にあり、だから、ボールを投げる前から身体全身が硬直してこわばるので、上手く投げる事が出来ないというのが、自分でもよくわかります。

でも、しょっちゅう遊びの中で、ボールを投げている人なら、どこに力をこめるんだよ、などと教わらなくても自然に身体でわかっているから、上手く飛ばす事が出来ます。

そう見ていくと、何でも上手になるには、繰り返して身体にしみ込むほど手馴れているということが力が抜ける一つのポイントですね。

ピアノの場合なら、ピアノの楽器に手馴れているという事が「響く音」を出せる一番のポイントです。

よく、まだ、繰り返して弾いてもみないうちから、脱力するにはどうすればよいか、と聞かれたりしますが、それは、順序が逆なような気がします。
まず、こんな音がほしい!!という強い欲求と感情にかられます。

すると、そういう音が出ているかどうか、出来るまで、繰り返す。
自分の目指す音が出れば、身体は二度と忘れません。
従って、自分の目指す音が達成できた時に、結果として、脱力も出来ている、ということ。

しかし、身体にしみ込むほど、ピアノの楽器に手馴れるには、それを繰り返し続けても、まだ繰り返したい、というくらい好きじゃなければ、なかなか力が抜けるまでの域には達しないのかもしれません。

私は、スポーツをやれたら楽しいだろうなあ、と憧れはあっても、どうしても上手くボールを投げなければならない、という強い感情は沸いてきませんでした。

語学でもどうしても英語をマスターして、世界中の人とお友達になりたい、とか、やはり、物事が上手になるには、すごく強い感情が必要なんだと思います。

響きのある音が出したい、そう強く感情が動くと、必ず出せるのだと思います。


平成23年2月10日(木)ピアノを習う事は美しいマナーも同時に学べる事につながる

この前、大学の試験の際、先生方の最後の講評で、最近の学生達は、先生方から「おつかれさまでした」と言葉をかけられたら、学生達も先生に「おつかれさまでした」と返す人が多いので、その時は、「有難うございました」と御礼を言うように、と注意がありました。

私も同感です。
普通、先生や目上の人に対して、「おつかれさまでした」。という言葉は失礼に当たる言葉。友達同士なら、かまいませんが・・・・・・。

そうではなく、先生方は学生達がどんな演奏であれ、よく頑張りましたね、というねぎらいの言葉をかけるわけなので、それに対して御礼の言葉、「有難うございました」と言わなくてはいけません。

日本語って本当に難しいですね。
しかし、いつでも、相手への思いやりが感じられる言葉は、日本の本当に美しい文化そのもので、私は大好きです。
だから、若い人達にも伝えていきたいと思っています。

話す方は、別にわけもわからず、言っているから何の悪気もないわけですが、やはり、社会に出た時にマナーを知らない人は、常識知らずと思われてしまいます。

又、就職試験や、面接など、そういうところで、人間を判断されてしまうから、知っていて得こそすれ、損にはなりません。

私の生徒達もかなり大きくなっても私が「おつかれさまでした」と声をかけると、わけもわからず、「おつかれさまでした」とオウム返しする子もいますので、気をつけましょう。

あと、宛名を書く時。

自分がお世話になり、教えて頂いている先生方には、「○○様」ではなく、「○○先生」と書くように私達の世代は小学生の頃教わりました。
又、宛名書きも教えて頂きました。

今は親も先生もそういうことを見て見ぬふりをして過ごしているのか、知らないのか、教えて頂いていない子が多いようです。

こういうことは、淋しい事に、社会人になってからでは、おかしいな、と思われても、もう誰も何も注意してくれません。

ためになる事を教えて頂けるのは学生の特権ですね。

私も、今になって、学生の時は、ピアノに限らず、ピアノを習う事で、あらゆるマナーを教えて頂いたなぁ、と全ての先生方に感謝してもし尽くせません。

正に今、私がここに存在するのは、先生方の暖かいご指導のおかげと思い、その計り知れない教えを思い出すと何だか、胸が暖かくなり、それと同時にちょっと切なくもあります。

先生方の教えは愛そのものだったというのが、自分が教える立場になり本当によくわかるからです。

そして、そういう注意をして下さる方はもう、いないということはとても淋しくもあります。
誰かが、大人になる、人間が成長するという事は、どんどん淋しくなっていくこと、孤独になっていく事、と聞いたことがありますが、本当にそうですね。

見て見ぬふりをしている先生よりも、注意して下さる先生は本当に有難い存在だったなぁ、とつくづく感じています。
私もピアノを生徒達に教えるだけでなく、日本人としての美しいマナーも1つ1つ若い人達に伝えていかなければいけないな、と思っています。

今後、又ピアノ日記で、私の体験談も含め、そういう面も書いていきたいと思います。

例えば、私が先生に電話をかける時はどうしていたか、手紙の書き方から始まって、ピアノの業界は全ての先生方がつながっているので、自分勝手にこういうことをすると失礼になる、などなど・・・・・・。

若い人達の参考になって頂ければ嬉しいです。

美しいマナーはやはり、相手に対する暖かい気持ちからくるもので、ピアノ演奏とまるで同じですね。

私の生徒達が将来、大人になった時、立派な人格を持った誰からも愛されるステキな女性、男性へ成長していってほしいです。


平成23年2月6日(日) 感情をこめて弾くとは?感情をこめて弾いてはいけないってどういうこと?

今日、レッスンをしていると、YPFピアノフェスティバルのD部門に参加した中学1年生の生徒が本選に進めると喜びの電話がありました。
YPFは予選を通過する人数が少ないのでとても厳しいですね。良く頑張りました。
おめでとう!

さて、先日高校2年生の生徒がとても良い質問をしていました。

演奏をする時感情を入れて弾くとは具体的にどういう事ですか?
そして感情を入れて弾いてはいけないとも言われますが、それはどういうことなのでしょうか?という質問。

2つともまるで逆の言い方をしているので、難しいと思います。
しかし、彼女はきちんと自分の考えをまとめて答えを出していました。

私は彼女に、ピアノを弾く時は、その曲の持っている特徴、性格をよくとらえる事、そういう意味で役者さんと同じだと考えてみるように話しました。

「すごく上手な俳優さんなら、、お医者さんの役をやればお医者さんらしく見える、
それと同じように学校の教師なら教師らしい雰囲気、パン屋さんならパン屋さんらしい雰囲気・・・。
男性と女性でも一つ1つの動作から言葉づかい、髪をとかすしぐさ一つとっても全てにおいて男の人ならこうするなとか、女の人ならこうするな、という特徴、イメージがわくでしょう?
上手い役者ならそれぞれの特徴をすごく敏感に感じ取って演技するから、自然に見えるよね?全然、不自然じゃなくて、嘘っぽくない。
楽譜は俳優さんが練習するセリフの書いてある台本と同じだから、私達は、ベートーヴェンが作曲したときの感情を思い起こして表現しないといけない。そういう点で感情をこめてひいてはいけないという意味は、○○ちゃんの自分勝手な感情と違って、ベートーヴェンならこうするなという特徴をつかみ、あくまでもベートーヴェンらしい感情で、音楽をつくっていかなければいけないと思うよ」と、答えました。

彼女があまりこういう質問をする事が今までになかったので、私はその日1日とてもハッピーな気分でした。
何かについてすごく考えてくれたのはとても興味を持っている証拠だからです。

私は曲を書いた時の作曲家の心情を思い起こす事が大好きです。

高校2年の男の子の生徒が弾いているラフマニノフ作曲の「リラの花」という曲は、リラの花の香りがしそうなとても美しい曲ですが、これもラフマニノフの事が好きだった女性がずーっと、送り届けていた花だといわれます。それも、ラフマニノフがアメリカに渡ってからも、それが続いたというのですから、すごい!!秘められた女性との恋愛があったとか・・・・・。そういうエピソードを聞くと、何だかものすごくラフマニノフの事を知りたい、追ってみたい、とワクワクします。
ラフマニノフはきっと、リラの花を見るとその彼女の姿や振る舞い全てを呼び起こしたと思います。

弾いてくれる彼も私の門下に入った頃は小学6年生でしたが今ではすっかり成長して、リラの花を呼び起こすようなムードのある雰囲気を持って演奏してくれるような男性になり、本当に頼もしく思っています。
彼が今後ステキな女性と巡り合ってその人にでもこんな曲を1曲聴かせてあげたら、きっと感動しますよー(笑い)しかし、皆本当に成長しました。

3月19日の門下生コンサートで皆素晴らしい演奏を披露してくれると思います。
各小劇場にチラシが置いてありますので興味のある方は是非いらして下さい。


平成23年2月3日(木)指使い

指使いのことは以前にも書きましたが、改めて書いてみようと思います。

ピアノのレッスンで、最低限、自分で練習していかなければならないことは、「正しい音を弾く」「正しいリズムをとる」そして、「正しい指使いを使うこと」です。

私も指導する時に1ページの中で、数箇所直す程度なら、良いのですが、全ての指使いが行き当たりバッタリで、メチャクチャに弾いている子の場合は、もう大変です。

その曲の持っている音楽を教えてあげたいと思っても、指使いの事だけでレッスンを終わりにしなくては、ならなくなってしまいます。
より効率よくレッスンを受けるために必要最低限は、自分でやってこれるよう努力する事が大切ですね。

指使いを決めるときはやはり最初が肝心です。
私が、ウィーンの学生だった頃、まず一番に徹底的に仕込まれたのは、やはり、日本でも、うるさく言われた「指使い」についてでした。

一番最初、入学が決まって、先生とお約束した事は、「レッスンは毎回アウスヴェンディッヒ(暗譜)で受ける事、そして、全てフィンガーザッツ(指使い)を自分で、楽譜に書き込んでから、弾いてくること」でした。

日本でも高校一年のときからは、暗譜するくらい練習していなければ、先生が相手にもしてくれませんでしたから、必ず新しい曲も暗譜で持っていっていましたが、指使いを毎回書いて、先生にお見せすることはありませんでした。

書いてみると、結構いい加減に弾いている部分があるなあ、と思ったものです。

ピアノを習い始めて間もない人達は、どうしてそんなに指使いを大切にしなければならないか、の重要性がわかっていません。

音楽は歌だという単純なことが分かっていない人が多く、フレーズの始めや、終わりでしりもちをつかないような、指使い、同じ音を切る連続などは指を変える(モーツアルトなどに多く一本調子にならないよう、ニュアンスを一つ一つ変えるため)、頂点に登っていくときに、弱くならないよう、1、2、3などの強い指を使うなど、全ては音楽的に表現したいために指使いはきちんと守らなければなりません。

もちろん、楽譜どおりでなくてはならないとか、私が使う指使いが1人1人の生徒達に合うとは限りません。要はその人の指の特徴をよく生かした指使いを考えてつくらなければならないのです。

「あれ?あれ?」と何回も曲の途中でつまずく子は、大抵指使いがメチャクチャになっています。「3で弾いていたっけ?4で弾いていたっけ?」という、うろ覚え状態なら、本番で間違える原因をつくっています。

そんな、うろ覚え状態はやはり、指先に神経が行き届いていない証拠。
ということは、勿論、気持ちも当然、指先に伝わりません。

始めは、面倒だと思えても、結局慣れたことを変えるという方が、苦労するし、数倍効率が悪いのです。
物事に近道はピアノに限らず何事においてもありません。

長い長いピアノ人生を上手に歩むためには、ゆっくり、ゆっくり、焦らず、ていねいに、ていねいに、1つ1つ確かめながら弾いていくことが一番早く頂上に登っていけるコツなのです。