平成23年1月29日(土)音のキレ

この季節、大学入試、高校入試、又は、コンサートなどで、ステージで弾く機会が多いと思います。
そこで、本番気をつけることを書いてみたいと思います。
残響の多いホールでは、普段家で弾いている感覚と違い、全体に大きな音で、鳴り響いていたとしても、モヤモヤして、何を弾いているのか、よく聴こえない状態になりがち。
指の強さ、弱さも関係しますが、それよりも弱い人は弱いなりに、残響をよく聴いて音のキレをよくすることで、メリハリよく聴こえます。
一つのフレーズから、次のフレーズに移るとき、残響が切れていないのに次に飛び込むと、ペダルを踏んでいなくても、濁って聴こえます。
又、指離れが悪い時なども、ペダルは踏んでいないのに、響きが残ってしまうことがあります。

又、ステージのピアノは家で弾くよりも、大抵は軽く感じられると思います。
そうすると、緊張も相まって、指だけが、先回りして、前に前にのめっていくようになります。
これは、普段の練習から、自分の体重を指先や、手の平にズッシリと乗せるように心がけて練習しておくことで、本番びっくりせずにすみます。
本番、自分の指がびっくりするほど、早く動いた、なんていうときは、いかに、今まで、指だけで弾いていたかがよく実感出来ると思います。

私は、よく生徒達に体重を一音一音にかける練習をさせます。
が、ピアノは座って弾くためにどうすれば、手の平に体重がかかっているかが、まず理解できないという人は多いと思います。

和音を弾くのと同時に立ち上がる練習や、あと、腕立て伏せも腕に体重がかかるので、理解しやすいと思います。
私も小さい時とにかく、腕の力をつけたくて、腕立て伏せはよくやりました。
あと、腹筋運動も。ピアノを弾く時に歌っている場所が腹筋運動で、つかめます。

しかし、筋肉痛になるので、やるときは無理をしないで下さい。
ピアノ演奏は前にも日記に書いたように、ものすごく肉体労働なのです。
優雅とはほど遠く、身体を酷使します。
足腰をしっかり支えて弾く事が大切です。
そうすれば、本番もアガりません。
「アガる」は文字通り、「上がる」からきています。胸から上だけの呼吸になるとアガります。
お腹にしっかり力をこめた、腹式呼吸をして、本番に臨んでください。


平成23年1月20日(木)生きたアゴーギクは毎日研究

今年のPTNAの弾き合い会が幹事さん達のお取り計らいで、5月15日(日)午前・午後、南文化小劇場で行えることが決定しました。

今年の幹事さんは新しく3人の方がお世話して下さる事になり、昨年の幹事さんたちを含め、本当にお世話になります。
幹事さんたちが色々とお世話して下さるお陰で、門下生達の行事がとり行えるので、本当になくてはならない存在です。
大変有難く、助けていただき、心から感謝しています。

今年のPTNAの弾き合い会は、例年に比べ時期が早いので、今年チャレンジしたいなあ、と思っている方は、PTNAの課題をそれまでに、仕上げられるよう頑張って下さいね。

先日、小学5年生の生徒がとても良い質問をしていました。
ハーモニーの研究をしたとかで、とても美しいショパンのノクターンを聴かせてくれました。

私は、研究する時は、ハーモニーの研究はもちろんのこと、その他沢山のCDを聴いたりして、音楽の流れや、アゴーギクをつかんだり、フレーズをどのようにとるかを研究する事もとても大切だと話しておきました。

そのためにピアノを弾く人にとって、録音機はなくてはならない必需品となります。

自分の演奏は、何か音楽がべたべたして重い、とか、一本調子で心がこもっていない、歌がない、流れていない、とか、前にどんどんのめっていく、とか一目瞭然です。

そういう演奏とCDを聞き比べてみたりすることは、毎日必要です。

しかし、まねはいけません。弾く人の体格や呼吸の早さが皆違うので、それによって、フレーズのとり方も間の取り方も皆変わってしまいます。
表面にとってつけたような、アゴーギクをしてもそこに心がこもっていないから、全く不自然な音楽になってしまい、真似しようと思ってもおかしな音楽になるだけです。

そうではなく、自分の呼吸の速さ、息の長さ、タッチの重さ、深さ、音質をよく見極めた状態で、その人の魂から(中から)出たもので、それが、音楽的な流れとして、自然かどうかを録音機で、確かめる作業を毎日すると、そのうちに自然な音楽として、聴こえるようになってきます。

スポーツもそうだと思いますけど、実技の場合はとにかく、実践する事が第一です。

とにかく、ピアノに触れる時間が多ければ多い程、良いです。
それと、並行して自分の演奏と他人の演奏をよく聴く事。
外国語習得もそうですね。
沢山何でもかんでもしゃべって間違って笑われる事が多ければ、多いほど、身につきます。
ドイツのサッカー選手を育てたコーチが、とにかく、ボールに触れていることが上達の秘訣とおっしゃっていましたけど、そのとおりだと思います。失敗は成功の母ですよ。

とにかく間違えても恐れず、沢山弾いてください。

私のレッスンは、とにかく、弾いてもらう事が第一なので、どの生徒も沢山弾いたなあ、という実感がわくと思います。

私のところで、沢山弾いて家に帰って又弾くと、音楽の流れがスムーズになってすごく弾きやすくなると思います。

私自身も、自分の血液や、身体中にピアノの音が沁みこんでいるのを良く感じます。

ピアノが自分か、自分がピアノなのか、境界線がなくなるほど、弾き続けているなあという実感です。

「水を得た魚」とよく言いますが、私にとっては、ピアノを弾くのは、呼吸する事と同じ。
ピアノを弾かなければ、呼吸出来なくなる感じです。
ピアノを弾き始めると、やっと、「水を得た魚」のようになれる・・・・・。
そんな感覚になれるまで、ピアノに触れて、生きたアゴーギクを研究し続けてください。


平成23年1月16日(日)雪が降っても・・・・

名古屋に今年初めての雪が降りました。
ウィーンにいた頃は、11月頃から3月頃までずっと雪に覆われていたので、雪は見慣れた光景でした。
しかし、日本に帰国してからは、ほとんど雪が降らず、日本ってやっぱり暖かい国なんだなと思っていましたが・・・・・・・。
名古屋に積もる雪を見たのは、12年ぶりくらいです。

←  私の部屋から見える雪。寒いけど、雪景色は大好き。雪はピアノの音みたい。雪はすぐ消えてなくなるから・・・・・・・。

それでも、雪が降る中、レッスンに皆、頑張ってきてくれました。
弥富の方から来ている小学1年生の生徒は、3時のレッスンのために12時に来て待機していてくれたそうです。
本当に皆さん熱心で嬉しい限りです。

寒くなると、身体も調子が悪くなるので、睡眠を充分とることと、常に身体を冷やさないよう暖かくしておくこと、のどを痛めないようにマスクをするなどして、毎日無理をせず、気をつけてくださいね。

昨日、今日は、大学入試のセンター試験で、全国の受験生の皆さんもご苦労さまでした。

今日来た高校3年生の生徒もセンターを受けましたが、「英語の勘が当たって、上手くいった!」と喜んでいました。

受験って、この一番厳寒期にあって、身も心もブルブル震えそうですが、若いから乗り切れるんだと思います。
若いときは暑かろうと寒かろうと関係なしです。
何でも来い!!という感じですからね。受験生の皆さん、一生に一度のチャンスを無駄にせず、頑張って下さい。


平成23年1月10日(月)YPFアドヴァイスレッスン

今日は、朝から矢木楽器のカノンホールで、YPFアドヴァイスレッスンをしてきました。

これから、YPFを受けようと張り切っている8人の生徒さん達のレッスンをしましたが、D部門の中学生が一番多い感じでした。

まず、ベートーヴェンでは、テンポを統一させること、音価を正しくとることなど基礎的な事が出来ていない人が多いので、まずそこを重点的に練習してもらいました。

又、自分はこんな音を出したい、という理想がないようなので、私がさまざまな色合いの違いを弾いて示したり、歌ったり、時には行進したり、生徒さんの顔を引っ張ったり、背中を押したりして、終わる頃には、今日は寒い1日だったんですが、シャワーを浴びたみたいに汗だくだくになっていました。

音楽に命を吹き込むことがまだわからない生徒さんに、命を吹き込むのは体力的にも、ものすごく大変です。ピアノは自分が演奏する事も教える事も、ものすごくエネルギーを消費しますから、年中私はお腹がすいていて、みんながびっくりするほどよく食べます。(笑い)しかし、ピアノはつくづく体力勝負だなと感じます。

トラック1台分、引っ張る力のエネルギーが必要と、あるピアニストさんがおっしゃっていましたけど、そのとおりで、本当に肉体労働ですね。
歌うと本当にお腹がすくので、家族にいわせると、私はピアノ弾いているか、食べているかのどっちかだね、と笑われます。

普段もレッスンし終わると、沢山食べてもう何も考えられないほど、身体も脳みそもくったくたになって、ベッドに転がり込んで寝てしまいます。
しかし、嫌な事も全て忘れられるこの達成感が私は大好きです。

音楽は生きる喜びそのものです。
矢木楽器のお世話くださった皆様、本当に有難うございました。長時間、レッスンを聴いて下さった、ピアノの先生方も皆さん熱心に真剣に聴いてくださって嬉しかったです。いつまでも、子ども達に夢を与える職業をこれからも愛していってくださいね。


平成23年1月6日(木)「得意なこと」を職業にすると、自分も周りも幸せ

新年が明けて気持ちも新たにレッスンも始まりました。

年明け早々、ショパン・イン・アジア、イタリア協会のコンクール、そして、あしながコンサート等、本番を控えている生徒も多く、皆最後の仕上げ演奏を素晴らしく聴かせてくれています。

昨日は、ショパン・イン・アジア全国大会中学2年生の生徒がソロ部門で奨励賞を頂き、アジア大会に進むと喜びの電話がありました。

先日、中学1年生の生徒が学校の宿題に出たので、先生に質問します、とノートに書いてきてくれました。
その中の一つに「今の職業で苦労していることは何ですか?」というのがあり、「ハテ?そういわれてみると仕事をする毎日はすごく楽しくて何もないなぁ」と考え込んでしまいました。

苦労といえば、私が何の苦労もなく出来た事が、生徒を見ていてこんなに苦労するものなのかなぁ、と思ったりする事はよくあります。
「3歳の頃から、自分が得意で苦労なく出来る事を職業にしているので、毎日すごくやりがいを感じられて楽しい。
だから、苦労という苦労ではないのよね」。と彼女に話しました。

これが、もし、好きだからとか、憧れがあるから、とかの理由で職業についてしまった場合はものすごく苦労する事になると思います。

例えば、私は自分がスポーツが全く出来ないので、スポーツ選手に、ものすごく憧れます。
球技などもテニスとかバレーボールとかバスケットとかみんなでやれると、さぞ楽しいだろうなぁ、いいなぁ、とすごく憧れます。
又、小、中学生時代は体育の授業がほとんどですから、スポーツが出来ると最高に楽しい学生生活が送れます。
ピアノなんて弾けない子のほうが多いけれど、スポーツならどんな子でもやれます。
だけど、たかがピアノが弾けたところでみんなと一緒に遊べませんから、楽しくないのです。
そういう点では、ピアノが得意な子は学生時代は辛い生活を送る事になると思います。

しかし、そんな私が皆の真似をして、あこがれだけで、スポーツ選手とか、体育の先生になろうとしたら、それは、毎日死ぬほどの苦しみを味わうというのは、目に見えています。

だから、「簡単に出来る」「得意」を職業にすれば、苦労なく、しかも皆さんから喜ばれ、社会のためにもなり、毎日、自分の命が生きている事に感謝し、やりがいを感じながら、生きる事が出来ます。
しかし、「好き」や、「憧れ」を職業にしてしまうと、一生なぜか壁ばかりぶち当たって苦労を背負いながら、生きていかねばなりません。

私達の職業は、一般職と違い、専門的な厳しい職業訓練を3歳頃から、少なくとも20年〜30年は受け続けますので、もし、苦労というか、壁にぶち当たった事があるとすれば、もっと早い時期に苦労をしてきています。

なので、職業に就く前に、一般の人が思っているより以上の苦しみを味わっているのではないかな?、と思います。

「芸の道」は厳しいのです。
昔の先生なら、足でも手でも、痛いほど、ピシャーンと叩かれたり、習う方は鼻水や涙で、ぐしゃぐしゃの泣きみどろになりながら、学んできています。
私も嫌というほど、先生から傷つく事はいわれてきましたけれど、そんな事は苦労にも思いませんでした。

ピアノを専門にする人なら、当たり前の事ですし、ピアノと触れ合っている事が一番楽しいので、怒られても何も気にしませんでした。
どんなに嫌な事を言われてもピアノが弾ければそれでいい、そう思っていました。

又、ピアノを弾いてきたおかげで、普通の人が体験できない素晴らしい体験をしてこれた事も本当に幸せでした。
今の私には、支えて下さる皆さんのお陰で苦労を乗り越えて、ここまでこれたなぁという感があります。

だから、職業としての苦労は何も感じません。

レッスンをしていると、又、小学4年生の生徒から、ショパン・イン・アジアの全国大会で、銀賞を頂き、アジア大会へ進むと喜びの電話がありました。
皆さん、おめでとうございます。


平成23年1月1日(土)明けましておめでとうございます!!

新しい年を皆様で楽しくお過ごしのことと思います。

私の新年は、まず、普段どおり午前中は自分のピアノの練習で始まりました。

そして、皆さんからの年賀状をとても楽しく読ませていただきました。
1人1人同じものが1枚としてないのが面白いです。

大学を卒業した生徒からは、可愛い赤ちゃんの写真や、自分も生徒を教え始め、毎日生徒と共に成長させてもらっている、など、一年に1度近況をお知らせ下さって懐かしく拝見させて頂きました。


毎年、私は一年の始めに目標をたてます。ちなみに、昨年の目標は、

1.2010年のショパン・イヤーにポーランドへ行く(リサイタルの資料集め)

2.忘れないために、毎日ドイツ語を勉強する

3.周りの全ての人達を家族と思って愛し、光を与える人間になる

でした。

3つとも、自分なりに達成できたかな、と思っています。

今年は、まず、10月1日に開催する、ソロリサイタルの準備、そして、ドイツ語は引き続き勉強し続け、

3番目の自分から周りの全ての人達を愛することは、生きていく上で最も大切なことなので、毎日の常日頃の目標にし、この目標は私が死ぬまで、守り続けなければならないと感じています。

どれもささやかな、目標ですが、一つ一つ積み重ね、今年も生徒と共に張り切ってピアノに邁進していきます。
今年も皆様、よろしくお願いいたします。