平成22年11月27日(土)音楽に対しての器の広さ(その2)

母国語を話すように流暢に流れて話すことが出来れば、1つのフレーズとしてきれいに聞こえます。
でも、「ワ、タ、シ、ハ、10、サ、イ、デ、ス」。

という話し方は、1つ1つ一所懸命に考えて話していて、自然に聞こえません。

外国語を訳す時、私達のような人間は音楽の事なら、訳しやすいけれど、全く違う分野、政治、経済などの事については、上手く訳す事が出来ません。

1つ1つの単語の意味は、辞書を弾けば、訳せたとしても前後の関係がよくわかっていなければ、全く違う意味になってしまったり、チンプンカンプンになってしまいます。

だから、ピアノ演奏も今,ハ長調の曲を弾いていて、左がいきなりニ長調なんてことはまずありません。

大体、今弾いている調性の色合いに伴ったメロデイーやハーモニーが書かれているのが普通ですので、音を鳴らす前にすでにその音楽が頭の中で鳴っていることがとても大切なのです。

全く聴いたことのない曲だと、次に何が起こるかわからなくて、予測不可能になってしまい、まごつくわけです。

だから、ショパンの曲なら、ワルツを1曲知るには、その他のマズルカ、ポロネーズ、スケルツオ、バラード、エチュード、バルカローレ、ソナタ、協奏曲、その他沢山知らなければなりません。

ピアノ曲はお互い親戚関係にありますから、バッハを弾くとショパンがわかる、ショパンを弾くとモーツアルトがわかる、というようにお互いが助け合えるのです。
そして、大体このハーモニーの次は楽譜なんか読まなくてもこのハ−モニがくるな、とか自分で予測できます。

それら全てを聴いたり弾いたりしていると、ショパンが好きだったハーモニー、メロデイみたいなものが、自然につかめるようになってきます

ピアノ曲はそれこそ、一生かかっても弾きおおせないほどの膨大なレパートリーが幸せなことに沢山あります。
沢山の曲に出来るだけ触れ合えるには、やはり、読譜力は早ければ早いほど、楽しみも増えますね。

生徒達には、できるだけ音楽に対しての器を出来る限り大きくする事と、レパートリーを沢山作って、自分の引き出しを沢山持ってほしいです。

音楽に対しての器の広さが大きければ、どんな時でも困りません。


平成22年11月26日(金) 音楽に対しての器の広さ(その1)

以前読譜力の事について日記に書いたら反響が大きかったのでもう少し書いてみたいと思います。

皆さんが楽譜を読む時に、その曲をすでに知っているのと知らないのとでは、読み方のスピードが随分違うと思います。
だから、譜読みのスピードは、楽譜を見る前に既に頭の中で音楽が流れている事と非常に関係が深いのです。

譜読みが早い人の特徴は、音をならす前に既に次はどんなハーモニーが来るかを予測できています。
だから、殆ど、左のハーモニーなんて自分の勘で弾いていくので一つ一つ読んだりはしません。

右のメロディを聴いていると自然に左がメロディに合うハーモニーを予測しながら弾いていくという感じなのです。

私がよく、生徒達に言うのは、「外国語を習得する時に1つ1つ単語の意味を調べて日本語に訳していくのではなく、
全体の会話文なり、文章なり、今は、何をテーマに話されているかが、とっさに判断できると、いちいち単語を調べなくても
大まかな訳はつかめるといった感じだよ」と話しています。

楽譜を読んで音楽をとらえるということはそれとよく似ています。まず全体像をつかむのです。

もともと、私達が学んでいるのは、自国には全くない、異文化のヨーロッパの歴史から生まれてきたクラシックの音楽ですし、ピアノを弾くのも外国語を話すようなものと考えてよいと思います。

明日へ続く


平成22年11月21日(日) 曲の完成度

先日、ショパン・イン・アジアの全国大会へ進む中学2年生の生徒がレッスンノートに「中学生部門ともなれば、みな弾ける人ばかりだから、曲の完成度が高いかどうかで、決まると思う」といった内容で書いていました。

そうですね、そのとおりなんです。

小学3、4年ぐらいまでは、皆同じように弾くのだけど、高学年になり、中学生、高校生と年齢が上がるにつれ曲がどんどん難しくなってきます。
そうすると、音楽的かどうかは別として弾けるか、弾けないかが一番の重要課題になります。
あまりにもテクニック的に弾けない所が多すぎては、曲になりませんから・・・・・・・・・・。

今日も小学6年生の生徒に人前で演奏するということは、完成された商品を売ることと同じ、といった例えで説明しました。

「ここに○○ちゃんのすごく気に入ったコップがあったとする。デザインも綺麗で可愛くてすごくほしいと思って手にとってよくみると、ひびが入っていたり傷がついていたり、欠けたところが見つかったりする。
それだと、いくら、その商品が気に入っていても買う気になれないよね?私達がいつでもほしいと思うのは完成された商品。
人前で演奏するという事は聴いて下さる方がいる以上、素晴らしい商品をお客さまに提供するという事と同じこと。
だから、ミスタッチは、なるべく、なくさないといけないよ・・・・・・」
という内容で、お話しました。

といっても、人間だから、どんな人でも勿論完璧はありえないし、本番で、あがって度忘れすることだって、あると思います。
けれど、大切なのは、そういう意識を常に強く持って練習することなんです。

本番は反対に気を楽にして何も考えずに弾き、練習の時は毎日本番以上に真剣に取り組まないといけないと思っています。

練習しながら、今の弾き方は、商品として、売れるかな?そう思いながら毎日練習すると良いですね。

ミスタッチをしないように神経質になりすぎるのもいけませんが、やはり、そうは言っても、ミスタッチはない方がいいに決まっています。

音が全て分かっていて何かの拍子で、ミスタッチをしたのと、音がわかっていなくて、ミスタッチしたのとでは、これも又、聴いている人に伝わってしまうからです。

傷のない演奏、それでいて、人間味あふれる暖かい自然な音楽性を目指して強い精神力と意志をもって毎日練習することが、売れる商品へと、結びつき、本番でよい結果につながっていくのです。


平成22年11月15日(月)読譜力

今日はピアノの上達を願っている方達のために「読譜力」について書こうと思います。
私はピアノを習い始めた方達にまず1番にやってほしい事の一つとして、誰でも「初見力」を養うことが最も大切と考えています。

子どもが、楽譜を読むことを嫌がってしまえば、練習どころではなくなってしまいますので、できれば幼稚園や、小学生の低学年の間、比較的時間的ゆとりのある時期にする事が1番望ましいと思います。

初見力がないとその後、行き詰る元となってしまいます。
指の形を良くする、強くするために鍛えるなど、いわゆるどんな弾き方で弾くかという表面的な訓練より以上に、楽譜を沢山読めて読めるだけでなく、
実際に素早く音楽を会得していく力のほうが、その後のピアノの学習に大きく役立つことになります。

早く譜読みが出来、素早く音楽の構造が何となくでも分かるという事は、音楽家になろうとする人は勿論のこと、楽しみで趣味でやりたい人にも好都合になるのです。
何も専門家を目指していない人でも、楽しみのためにピアノを弾く事がなかなか譜面が読めないために、曲になるまでに、あまりにも時間がかかりすぎていては、楽しむどころか、苦しみになってしまい結局は、イヤになってしまうだろうからです。

途中でピアノをやめてしまった方達の多くは、読譜力がないためと思われます。

私がおすすめする初見の練習法は、1日に10分でも良いのでバイエル程度のものから、プレ・インヴェンション、できる人なら、ブルグミュラーやソナチネなど、とにかく何でもよいので、簡単な楽譜を見る習慣を毎日する事を生徒達に勧めています。
その時のコツは、

1.弾き始めたら何があっても後戻りせずに先へ行くこと。(テンポを確実に守りながら、音が抜け落ちても、先へ行く事)

2.一度弾いた曲は、初見でなくなってしまうので、二度と弾かない。

3.弾いている間は、絶対に鍵盤を見てはならない。楽譜だけを目で追うようにすること。

などです。

初見の遅い人の特徴として、今弾いているところしか見ていないことがあげられます。

今弾いている所は見ないようにして1つ先を目で追っていなくてはなりません。
又、楽譜をちょこっと見ては、鍵盤を見て、又、楽譜を見ては、鍵盤を見る・・・・・というやり方も要注意です。

毎日続けていくと、その人なりの弱点がつかめてくると思います。

ハ長調ならすぐ読めるけれど、#や♭がくっつくともうお手上げ状態とか、弾きながらテンポがとれず、音だけ見ているだけで、リズムはメチャクチャ、音の長さが正しくとれないとか、そういったことがあげられると思います。

その他、左手のヘ音記号を右手と同じト音記号で読んでしまうとか・・・・・。

又、元々初見の苦手な人が、小さな頃から、コンクールばかりやっていて、同じ曲ばかり長期にわたって練習している間に読譜力が更にダウンしてしまっている例もとても多く見られます。

ピアノを習わせているご家族の方達も子どもが楽譜を見たら、どれでもスラスラ読めて弾いてくれると、家の中で、いつも気持ちよく音楽が流れている状態となって、きっと喜びも増すと思います。


平成22年11月8日(月)嬉しい生徒の成長ぶり

今年もあと残りわずかとなってきました。

生徒達は来年の3月19日(土)名古屋港文化小劇場で開催される第9回門下生コンサートで弾く曲を準備していますが、皆とても上手くなってきました。

特に、この門下生コンサートが始まって以来、ずっと出演している生徒達の成長ぶりには目を見張るものがあり、来年も皆さんに充分楽しんで頂けそうです。

身体の成長とともに弾く曲も大曲ぞろいになって、1人1人がソロリサイタルを開いているような感覚になってきています。
又、フレッシュな新しい生徒さん達も沢山いて可愛いですよ。

まだまだ、人前で演奏する時の心がまえや、音楽を皆さんにお届けすることの意味も何もわからないチンプンカンプンの子達も、きっとこのコンサートを通して自分も演奏したり、他の先輩達の演奏を聴いたりすると格段に大きく成長出来ますよ。

毎年ビデオを撮って下さる方が、ステキにDVDをつくって下さるので、これも皆さんの楽しみの一つのようです。

最近、毎週通っている小学6年生の生徒に少しずつ変化が見られ、本当に嬉しく思っています。

彼女は、こちらが音を弾けば音を当てる絶対音感もあり、ソルフェージュ力や、毎週さまざまな曲を宿題に出しても早く譜読み出来る方なのですが、音を出す前の準備が足りない、どんな音を出したいかの色合いを思い描いてから出さなければならないこと、又出したあとの音の切り方(余韻を聞いていない)ことなど含め、同じ注意を何度となく繰り返してきました。

それが、少しずつ、どうやって音を歌わせるかが良い方向に理解し始めているようです。

私が、教えていて本当にやりがいを感じられるのはこんな時です。

「やっと、わかってくれた!ありがとう!!」て言いたくなりますね。

憧れの音楽高校にいくのが、彼女の夢ですから、それまでにはもっともっと伸びていくと期待でき、とても楽しみです。

人によっては、私の所に来た時から反応が素早く、いわゆる物まねが上手いというか、音楽に対しての勘が鋭くササッと理解する子もいます。
又、それとは反対に毎回ほとんどずーっと同じことを言い続けなければならない子も勿論います。

そういう時もあきらめません。
いつか、きっと理解してくれる時がくる・・・・・・・。そう信じて全ての生徒達を暖かく見守っています。

その成果が皆さんにお披露目出来るのが、この門下生コンサートです。
毎年の生徒達の成長を暖かく見守って聴きに来てくださる方達もいらっしゃいます。是非、皆さん楽しみにしていて下さい。


平成22年11月3日(水)音の高低感

11月に入りました。あの、とんでもない猛暑の時とは想像もつかないほど、肌寒くなりました。

私は、昨年ひどい風邪に悩まされて以来、家で1日中レッスンする時は、必ずマスクを着用するように心がけています。
夏は夏で、クーラーで喉を痛めるし、冬は冬で、マンションはすごく乾燥しているために、喉がすぐやられます。

歌手のイルカさんが8割は健康管理をしていると聞いたけれど、やはりそうなんだなーって思いました。
プロは身を売って仕事をしますから、その身がダメになれば、たちまち終わりとなってしまいます。
気持ちよくピアノを弾くためには、まずは健康第一なので、皆さんも寒くなってきた毎日を元気に乗り切りましょう!!

ところで、今日は「ピアノで音程をとる」ことについて書きたいと思います。

ピアノを弾く人は、3度上がっても6度上がっても、1オクターブ、それ以上音程が開いても、何事もないかのように横から横へ飛べてしまうので、音の高さや低さを感じとる事になれていません。
ドからソへ上がれば、自分の身体も一緒にエレベーターに乗ってふんわりとドからソへ昇っていくみたいに感じないと歌っていない音になってしまいます。

下へ降りる時もそう。ソからドに降りてくる時は又エレベーターでふんわり舞降りてくるみたいにしなければ音程はとれません。
よくドからソへ移るときもソからドへ移るときも全く平らな道をそのまま歩いているような「直立不動」の音楽によく出会います。
私達はこれをよく「棒弾き」とよんでいますが・・・・・・・・。
棒弾き状態の一本調子な音楽ほどつまらないものはありません。
ピアノがコンピューターに形を変えてしまいます。
私が、生徒達が練習する時に電子ピアノや、機械的に音が鳴るものでくれぐれもさらわないようにたびたび注意するのはそのためです。

同じ「ソ」でも電子ピアノで弾く「ソ」はどんなに気持ちを入れても誰が弾いても同じ「ソ」が出てしまうのです。
ピアノなら上に昇っていくような「ソ」とか下へ下がっていく「ソ」とかためらっている「ソ?」とか、断定的な「ソ!」とかタッチのコントロールで多彩に変化する事が可能です。

そこで私は「歌う」ことがいまいちよくわからない、子供たちの背中や腰を上に伸ばしたり、縮ませたり・・・・・・・・・・。

何れにせよ、ピアノを弾く前にまず、身体がすでに音楽を感じていること、その音楽の持っている「歌心」を身体の中に持っていることがとても大切です。

歌が生まれてくる所は別にどこからでもかまいません。
家族で身体のすみずみから歌心を出すゲームみたいな遊びをしてもすごく楽しいと思いますよ。
私も指だけでなく顔の眉毛、目、鼻、口、耳からも、又、足の指、ふくらはぎ、おなか、腰、どこからでも「歌心」を表現して、といわれれば今すぐ出来ます。
髪の毛だけはちょっと無理ですが・・・・・。しかし、歌心を理解する人にはこの意味もよくわかると思います。
力を入れられる部分に歌心は表現出来るという事にもつながりますね。

バレエやフィギュアの人を見ていても肉体が歌っていない演技はすぐわかってしまいます。

ピアノの人も同じ。たまたま指先で音をならしますが、歌の人やバレエの人と同じように肉体全てから「歌」があふれ出てこなくてはなりません。
自分が力をかけたりその力を抜いたりすることで、肉体自体ものすごいパワーを使っています。
そのパワーが聴いている人の心を打つのですよ。
だから、ボサーっとして弾いていてはいけません。沢山自分のパワーが相手に届くように演奏して下さい。
そういうと、「もう、弾く事だけで精一杯!!」
そんな声が沢山聞こえてきそうですが・・・・・・・。