平成22年2月24日(水) 曲選びのコツ

さて、今年もPTNAの課題曲が発表になりました。
生徒の中の何人かは、もうこれとこれを弾きたい、とすごくはり切っている子もいます。

要項は、まとめて私が今、取り寄せ中ですので、まだお渡しできませんが、受けようと思っている人は、
今、しばらくお待ち下さいね。

前にも何回か書きましたが曲を選ぶときのコツを又、書きましょう。
まず、本当に美しくきれいに仕上げたいなら、曲がきれいだから、はえるからは、二の次。

一番は、まず、技術的に見て、その曲がミスもなく完璧に弾けるかどうか、手にやさしいかがポイントです。

いくら綺麗で映える曲でも、16分音符は、ころぶわ、和音がつかめないで、はずしまみれ、弾きにくいからテンポはグチャグチャ、
そんな演奏になってしまえば、どんなきれいな曲だってきれいに聴こえません。

又、一般的に音楽がよく分らない人に限って難しい曲を、選びたがる傾向にある、とよくいわれます。自分の音楽性の不足を指をガチャガチャ動かす事で、ごまかす、というわけです。もちろん、大きな音で早く弾きまくっても審査の先生方の耳は、ごまかせません。
従って、技術的に弾きやすく易しい曲でも音楽的に自分が落ちついて弾けるものを選ぶ。
なんだかんだいってもコンクールは、オリンピックと同じで、フィギュアスケートでもミスをすれば、大幅に減点されるでしょう?あれと同じ。
だから例えば、大きい級になってくるとショパンのエチュードなどが課題に出ていますが余程上手に弾けなければ、選ぶと損しますね。

なぜかといえば、ショパンのエチュードは、そのどれもが、ものすごく難しいからです。
大抵は弾く事だけでもう精一杯になってしまう。だから受験やコンクールの課題に必ずでるわけですが・・・。
点がつけやすいのです。

上手下手がはっきり分る・・・・。
しかし、ショパンのエチュードを、もしアシュケナージやポリー二のように、どこも完璧、いとも、やすやすと、簡単に音楽的に弾けるような子なら、
たまにそういう演奏に出会うと、私達審査員は、本当に感動するし、驚嘆します。

それぐらいの演奏が出来ているのなら勿論選んでも良いと思います。結局はものすごく難しい曲を選んだからには、それ相応のレヴェルに達した演奏をしなければ、何でこんな弾けてもないのに難しい曲を選んだの?となります。

さらに良い結果が欲しいというのなら、レガートタッチが上手でもない子が滑らかな柔らかい曲を弾いたり、
メリハリのあるバリバリしたタッチの子に、レガートの多い曲を弾かせるのは感心しません。

どんなに長いこと弾かせてもずーっとその子の「持ち味」「クセ」は隠せません。
自分をよく知り、自分に似合う得意な曲をさらに研究して音楽的に深めていく、それが上手な曲選びのコツですね。もちろん、良い結果がほしい人は、という話ですが・・・・・。成績にこだわらず、自分には全然まだ、難しいけれど、挑戦することに意義が
ある、そう考える人なら、難しくてもかまわないと思います。


平成22年2月22日(月) 合格発表

10時だ!まだかな、まだかな、練習をしている自分の指がブルブルふるえている・・・・・・・。

「リリーン!!」あっ、なった!心臓が飛び上がるほどびっくりして、受話器をとり「はい、もしもし・・・・・・」

「先生!受かっていました!!」興奮した○○ちゃんの声。
「わあー、すごい!本当に今までよく頑張ったわね。早くお父様に知らせてあげて・・・・・天国のお母様も喜んでいらっしゃるわ・・・・・」
「有難うございました・・・・・」私も生徒もうれし涙を流し、共に合格の喜びをわかちあいました。

そう、今日は待ちに待った明和高校の推薦入試の合格発表です。その後、会社でお仕事中のお父様からも「本当に有難うございました。先生のお陰です。家内も喜んでいると思います。」とお電話を頂きました。
私にも天国にいらっしゃる彼女のお母様とおばあさまが「○○ちゃん、良かったね、良かったねえ・・・・・・・・」と涙を流しながら彼女と手をとりあって喜ばれている姿が伝わってきました。

お母様が亡くなられてからの3年間という月日は、お父様と彼女2人だけで頑張ってきたわけですが、仕方がないとは思いつつも、その心細さは、はかりしれません。
お父様はお仕事でとてもお忙しいし、彼女1人だけで夜を過ごす事も多く、「もう、慣れました」と言ってはいたものの・・・・・・。大人だって誰もいない真っ暗なところにただいま、といって帰るのは寂しいものですから・・・・。
又、誰も聴いていないところで、ピアノを黙々とさらうのもどんなに大変だった事でしょう。
お母様がいらっしゃれば、上手く弾けたね、ここはもっとこうしたほうがいいんじゃなあい?等と感想を言い合ったりも出来ます。
それもなく、そんな中で本当に、けなげによそ見をせずに頑張ってきたことに対する尊敬と、ただ一途に私だけを信頼してついてきてくれた事に対する感謝、そして、この合格発表の場所にお母様がいらっしゃったら、どんなに嬉しかったか、さぞ、自分の子の成長をこの目でまだまだ見届けたかっただろうに、という複雑な気持ちの入り混じった涙でもありました。

そうこうして興奮しているところ、もう一人の生徒の合格した、との報告に私の嬉しさは倍増しました。
お母様からもお電話を頂き、昨晩は、私が持たせたお守りを手に握りしめて、受かりますようにとお祈りしていた、と聞きました。その気持ち、本当によくわかります。

彼女は中学1年から見ていますが、勉強にピアノに普段からとても努力してよく頑張る生徒でしたので、安心しておりましたが、受験というのは、人生の中でも本当に大変な一大事でありますし、何が起こるかわかりません。皆1年がかりでものすごく丁寧に練習しているから、その中で受かるのはとても厳しい。

コンクール等は何度でも挑戦できるし、落ちたとしても人生の一大事ではありませんが、高校受験はそういうわけにはいきません。ほぼ、その時点で、その子の人生の道が決まってしまいます。これから、音楽を学んでいきたい、信頼関係のある実技の先生のもとで、レッスンを又、3年間学校で受けられるという最高の環境で、音楽を学んでいける人とそうでない人とでは、その3年間の間に音楽の知識、ピアノの上達、意識共にグンと差がついてきます。

昨年、合格した生徒達もあっという間に2年生になり、新しい後輩達が出来ました。
皆、私の生徒達は仲良くあたたかい雰囲気ですから、きっと、先輩達が喜んで後輩達の面倒を色々と見て可愛がってくれると思っています。

今年の門下生コンサートでは、彼女達が受験で弾いたベートーヴェンの月光、そして悲愴を真に迫った演奏で聴かせてくれるでしょう。

人生の一大事のまずスタート地点が高校受験。彼女達が今後ピアノの道を歩んでいくうえで一つの自信につながったと思います。私は生徒達が自分にもやれば出来るんだ、という自信を一つ一つもたせてやり、大きく羽ばたいていくのを見届けるのが楽しみです。

在りし日の私を思い出します。
今現在私を知っている人達が想像できないほど、普通の人以上に厳しく苦しい辛い事のほうが多かった私の過去です。
話して聞かせたこともないし、生徒達は私が優しく多分怒っているのを見たことがない子がほとんどでしょうから、きっと想像もつかないと思います。

しかし、音楽に対してだけは、どんな辛い事も乗り越えて我慢する事が出来ました。
それほど情熱があった・・・・・。だから、私は音楽の事しか知らないし、他の道を考えた事なんて生まれてから今までに一度もありません。

音楽家になりたい人は音楽しか出来ない、と思う人がなれる、とよく言われますが、私も同感です。他の事をやろうとしても出来ない、第一、人生の生きているほとんどの時間をピアニストならピアノの前で過ごすわけですから、他の事をやろうとしても、もう出来ません。しかし、一芸に秀でるということは皆さんがおっしゃるように人生を限りなく充実したものにしてくれますし、花をそえ、豊かに彩ってくれる事は確かです。
ピアノでなくたっていい、一つの事に秀でたいと思ったら、他の全てをなげうって犠牲にするくらいの覚悟がなければどんな分野でも物にはならないと思います。他の全てを犠牲に出来る、という時点で、それに対しての愛がものすごく強い、という事にもつながるからです。
私は、これからも命のある限り全身全霊をこめてピアノを弾き、音楽をやりたいという人達の助けになりたい、と思います。
それしか、自分には出来ない。しかし、現在では、自分の歩んできた道に仲間が一杯ふえて私の喜びも沢山の人とわかちあえてこんな素晴らしい職業はないと実感しています。

今日の喜びを忘れないで、今後、道につまずく事はあってもそのまま自分の信じた道をすすめば必ず努力は報われるという事を常に信じてこれから3年間、又、引き続き私と共に充実した高校生活を送ってほしいと願っています。
本当に二人ともおめでとう!!そして、喜びをありがとう!!


平成22年2月16日(火) 曲の仕上げ(No2)

昨日の続きから

ポリー二でしたか、ある1つのフレーズを自然に聴こえるまで何と100回以上はさらうという話を聞いたことがありますが、
それ位音楽をきれいに仕上げる事は、大変な事なのです。

あれだけの素晴らしいピアニストが、たった4小節くらいのフレーズを100回以上聴いては弾く、聴いては弾くを繰り返すのだから、
並大抵の事ではありません。
ペダルも常に細心の注意を払い、メロディ以外の他の声部は、常に控えて、かといってその声部も全て歌として自然に聴こえている、バランスなど全身「耳」にして自分の出した音をよく聴いて練習しなくてはなりません。


時々、私がレッスンをしていると、レッスンの時だけ細かく研究してしているのではないかな?と思える子もいます。家では、ただシャラシャラッと1回か2回通して終わり、という練習なのではないかしら?自分の演奏を録音したりCDなど他の演奏を聴いたりなどして充分研究の時間をとっているのかしら?と・・・・・・・・。研究の時間を充分とらなければ、決して上達しませんね。ただ、機械的に指を動かしているだけでは・・・・・・・。1週間に1度の私とのレッスン以上に家で練習する残りの6日間をどう練習するかで1人1人の伸び方にうんと差がついてきます。

コンクールや、試験などで自分では、上手く弾けたのに、結果があまりよくないと思っている生徒は、まだまだ全く、音楽の世界の入り口にも立っていないと自覚する事が大切です。

それくらいの練習や研究でいい成績を取ろうというほうがおかしく、自分の考えは、かなり甘いと思った方がよいでしょう。

私は1人1人の生徒に接する時、その子のレベルで物を言います。
皆と比べてどうではなく、その子が少しでも努力している事を、大いに誉めてあげる、そうでなければいつまでたってもその子の努力は報われないし、達成感もないからそれもとても大切な事なのです。

音楽の世界は、皆さんが考えているよりもずっとずっと厳しいのです。
何回か失敗して、嫌な思いをして沢山味わってこんな練習をしていたらだめだと自分から立ち上がって目覚めてきた時、本当に素晴らしい結果が出てきます。

大体、素晴らしい演奏をする人に限ってちっとも上手く弾けなかったと思うのが、普通です。

それぐらい貪欲に打ち込んで欲しいと思っています。


平成22年2月15日(月) 曲の仕上げ(No1)

3月22日(月)祭日 港文化小劇場で開かれる第8回門下生コンサートも本番まで約1ヶ月となって来ました。
それぞれ思いをこめて皆一生懸命練習しています。

もう、今すぐステージで、弾いてもらってもいいくらい完成度の高い演奏をしている生徒も多くおり、とても楽しみです。

さて、今日は、どこまでやれば仕上がったと、いえるのかがわかっていない生徒のために曲の仕上げ方に
付いて書きます。

その前にどんなに綺麗に弾けたとしても曲が仕上がってもうやる事が何もない,なんて時は永遠に来ない・・・という事だけは、心しておいた方がよいでしょう。
それが音楽の世界というものです。

しかし、仕上がりに近い状態で演奏するためには、皆さんが考えているよりも、ずっとずっと、大変です。その大変さは言葉では言い尽くせません。

よく譜読みをして、暗譜してミスタッチがなくなれば(それですら完璧にはいかない事が殆ど)、もう、仕上がったと感違いしている人を多くみかけます。

それは、音楽の世界のほんのスタート地点、飛行機に乗ってどこか、美しい土地を、旅する前の、まだ、離陸前のようなもの、
飛行機が飛び立って自分が今まで見たことのないような美しい土地を訪れてその美しい景色を心いくまで堪能するためには、それまでに長い長い時間がかかります。

まずその音楽が自然に歌になって聞こえるかどうかが、一番の目標です。
自然に聴こえるには、指の都合で、裏拍が飛び出たり、弱拍から強拍にかけてのめっているところなど、徹底的に
自然に聴こえるまで何度となく繰り返し耳でよく聞く練習をしなくてはなりません。弾くことだけにとらわれている時はまだまだ、音楽というものにはなっていません。

明日へ続く


平成22年2月14日(日) ヴァレンタインデー

今日はヴァレンタインデーで生徒さんから色々頂きました。
皆さん有難う!私は女性ですが嬉しいものですね。

さて学生さん達はあと少しで学年が変わり新しい道を歩み始めますね。
小学生から中学生になる人も、中学生から高校生になる人も・・・。
特に受験生は今が一番大変ですね。

私のところに来ている生徒達にも「今」「現在」を大切にして、弾く時は、集中しなくてはいけないよと話しています。
今の事じゃなくて将来はこの先はどうなるかとか、心配しないように。又、反対に過去の事をくよくよしたり、思い返すのは、いけない。
兎に角、今生きている事が大切なのです。

ここでいう生きているは、呼吸している命があるだけでなく、精神が生き生きして充実しているかどうかという事。

演奏している時は絶対他の事を考えてはいけません。
兎に角集中する事です。
もしダメだったら・・・。というような雑念は、全て演奏が終わった後から考えても充分です。

人生の全てはなるようになる。というもの。どんなに願っても上手く行かない事は山ほどあるし、一つ一つ気にせず、、
精一杯努力すれば、あとはなるようになるのでそんな先の事まで、心配しても仕方ないのです。

私は大きな問題や悩みがあると、「なるようになるわ!」といって考えても解決しないような事は一切考えません。
考えて答えのでないような悩みは、考えたって仕方がないのだという事も今までの体験から充分判るから、そんな事で勿体ない時間を費やしたりしません。

だから学生さん達も悩みなど全て忘れて「今」を楽しく生きて欲しいです。
そうすればなるようになりますよ。


平成22年2月10(水)  後期実技試験

今日は、明和の1年生実技試験。1年経って随分成長が感じられる子もおり、嬉しく思いました。

バッハの平均律、ショパンのエチュードは、本当に難しいですね。
特にフーガでの遠近感を出すのは大変です。
テーマ一つとっても同じ質の大きさでただ「出す」のでなく、表に出ているテーマや、裏に行くテーマもありますし、
光や、影を上手にバランスをとりながら、演奏している人は、やはり評価も高いでしょう。

ここはこう弾きたい、そういったはっきりとした意図を持って弾いている人と、どうしてよいかわからないような、ただ弾いているだけの人もいました。弾く人がわからなければ聴く人もわかりません。従って、何をどうしたいのかわからない曖昧な演奏になってしまうでしょう。

ショパンのエチュードも最高に難しいですね。
その中でも特に難しすぎるのを選んでしまうと弾くことだけで精一杯になってしまい、ゆとりもなくなり、自分の音を客観的にきくどころの騒ぎではなくなってしまいます。
難しい曲を選んでいるから評価が高いというのは決してありません。
難しい、易しいに関わらず、自分の身の丈にあった曲を真心こめて丁寧に、良く耳を傾けて演奏している人がいると心打たれます。

何れにしても、客観的に聴くことが出来ると、音の遠近感も、テンポが走りすぎている事も、ハーモニーの流れも、ペダルのにごりも解決できます。
ピアノは指の体操、練習ではありません。
聴き手は指が動き、音が鳴っているのを聴きたいのではなく、その人の音楽、どのように解釈しているのかが聴きたいのです。
そして、感動したい。ピアノは弾くものでなく、歌うもの。そういった事が、わかってくるといいなあ、と思いながら聴いていました。

しかし、まだまだ若いので沢山失敗を重ねて更に自分の殻を破って成長してほしいなあと楽しみにしています。


平成22年2月7日(日) 殻を破って

今日、レッスンをしていたら中学1年生の生徒がYPFピアノフェステバルの予選で奨励賞、本選へ進めると喜びの電話がありました。

中学生ともなると、とても厳しいのですが、よく頑張りましたね。おめでとう!

おとといは、明和の高校2年生の公開実技試験があり、審査に行ってきました。
2年生は電気文化会館、3年生はしらかわホールと名古屋を代表する素晴らしいホールで弾かせて頂けるので、本当に幸せですね。

2年生はベートーヴェンのソナタが課題、全体的な感想を言うと、ホールでは、どうしても左がガチャガチャ鳴り響き右のメロディの部分が、か細くなりがち、普段の練習から、ステージでは、どう響くのかを考えながら、練習している人は、バランスもよく聞こえました。

ベートーヴェンは弾く事だけでも最高に難しいですが、弾く事だけにとらわれず、何か、自分がこうしたい、はっきりとした意図を持って聞かせてくれると、もっと説得力ある演奏になれると思います。

学生の時は、先生や親の言う事や友達や周りの言う事がとかく気になって気にしているうちに一体自分は、どうしたいのかが、全くわからなくなってしまうと思います。

そんな時は音楽の持つ「歌心」がいちばんの頼りになってくれます。
どんな解釈であれ、「歌」として自然に聴こえれば、恐いものなしです。

私の生徒達は、明和に入ってこの2年間の間に本当に成長してくれたと、とても嬉しく思っています。
周りと比較してどうなのか、ではなく、その子のレベルで成長を見守り続ける事が私の方針です。

周りと比較していればいつまでたっても達成感は味わえないと思います。

私が一番嬉しいのは今のままではいけない、と、生徒本人が自覚を持って殻を破ろうと、し始めるときです。

人間は節目節目で、殻を破らなくては、いけないときがあります。
殻を破ると成長出来る。しかし、からの中に閉じこもって恐い恐いと、恐れていると、成長できません。

私もこれまでに何度となく殻を脱ぎ捨てて生きてきました。
恐いと思っても殻を破ると必ず、次に新しい素晴らしい世界が待っています。

私の体験では、勇気を持って殻を破った後は、全て自分の幸せにつながっていくすばらしい道となっていました。自分が正しいと信じた時は突き進み、必ず殻を破るのがいい、という事が今までの体験からよくわかるので、生徒達の自由も尊重してあげたい、といつも思っています。

だから学生さん達に声を大にして言いたいです。

成長したかったら殻を破る事を恐れないで、と。破ると必ず良い事が待っています。
2年生の生徒達が少しずつ少しずつ殻を破ろうとしているのが本当に嬉しかったです。
1年生の試験も近づいていますし、受験生達も恐がらず自分の殻をぬいで立ち向かってください。


平成22年2月4日(木)エキスパート

昨日は明和で、高校1年生たちの弾きあいをしました。1年生にとって初めての後期の実技試験が来週に迫っていて皆、緊張気味。しかし、皆それぞれ、全身全霊をこめて熱のこもった演奏をきかせてくれてとても嬉しかったです。

彼女達の演奏を聴きながら自分の高校1年生だった頃を思い出していました。課題はバッハのフランス組曲で、私は5番を準備していました。その時の私の実技を担当して下さっていた先生は今の私と丁度同じ年齢で、やはりその時一緒に入学した同級生と弾きあいをした思い出はいつまでも、私の心に残っています。
高校生を卒業し大学生も終わりに近づくとそんな機会も少なくなり皆それぞれの道を歩み始めるようになります。自由で気が楽になっていく反面、周りが見えなくなっていくことも事実です。同級生という存在は本当にありがたいですね。皆同じ目標に向かって励んでいると思うことで、自分も勇気がわきます。

昨日、私の生徒達も音楽高校に入れて本当に良かったなあ、皆顔つきが変わってきて本当にしっかりしてきているなあ、とつくづくそう感じました。
音楽高校は実技のレッスンだけでなく、副科やソルフェージュや演奏法、その他さまざまな音楽知識を沢山学べるから、自分は音楽をやりたい、そう思ったら、迷わず、音楽高校へいくのがいいですね。

私個人の体験でいえば、自分が音楽高校に入った時は、まるで、自分のためにあつらえてくれたような学校もあるのだなあ、と感激してしまいました。
とにかく、自由、そして、毎日毎日好きで得意な事ばかりしていけるから、嫌いな授業でストレスがかかるような事もない、まるで毎日遊びの延長だなー、と本当に楽しくてたまりませんでした。それがずーっとつながって今は仕事になっています。3歳から同じ仕事をずーっと続けていますから、仕事がストレスになど、感じたこともありません。

私は、たまたま、得意分野が音楽でしたけれど、他の分野で活躍している人達も、きっと学生の頃そんな感じだったんだろうなあ、と思います。

お菓子をつくるのがとても上手な人、お花や植物を育てるのが上手な人、子供の相手をするのが得意な人、手芸をするのが得意な人・・・・・・・・・などなど数え切れないほど世の中にはいろんな分野があります。どんな分野でもその道のエキスパートは、尊敬できるし、素晴らしいと思いますね。

まず、その方面での適正があり一番上手に出来る、という事が第一条件だと思いますが、その先遊びになっていくというのは、何も考えないでぶらぶら遊ぶという事とは違い、好きな事を毎日、目から血が出るほど真剣に取り組んだ結果、自然に意識しないで努力できるようになっていくということです。そうすれば、遊びにつながっていきますね。

どんな分野でも、人並み以上のそれこそ、目から血が出るほど努力しなくては、その道のエキスパートにはなれないと思います。
どんなに憧れの分野だからといって、憧れだけもって、努力していなければ、全くだめですね。その肝心な並外れた血のにじむような陰での努力をほとんどの人は実行していないのではないかな?と思います。

もし、血のにじむほどの努力が出来る、(それも毎日、これが肝心なところ)気分が乗らないときでも、もういや、と思える日でも、飽きずに毎日毎日同じことの努力が出来る人は必ずその道のエキスパートになれる、と保証しますよ。それぐらいになってくると、遊びの延長になっていて、仕事も遊びも区別がつかないようになってくるのです。


平成22年2月1日(月) 全身全霊をこめて(その2)

1月31日の続き

私達はその時思いもしませんでした。
彼女が小学6年生の卒業式を間近に控えた2月1日、天国へ旅たつことになろうとは・・・。素晴らしいお母様でしたので、私を始め門下生全員が、悲しみにくれました。

それから3年が経ちましたが、周囲の心配をよそに、本当に立派に成長され、私はとても嬉しく思っています。当時から頭もよく音楽的な能力も豊かな子ではありましたが、それでもどんなにしっかりしていても
最大の理解者であるお母様を失うという事はどれほど辛かったか、はかりしれません。

いつも彼女が淋しいときには、先生を思い出してといってはきたものの、私には何の力にもなってあげられない、
いつもそう思ってきましたが、何の心配もいりませんでした。

彼女のたくましい事といったら、もう何だって1人で出来るし、お父様の頼もしい支えは勿論ありますが、立派に高校生活も
こなしていける子だと思います。

私はこの3年間、何があっても冷静沈着に、坦々とレッスンも休む事もなく私のレッスンに通ってくるのを感心して見守るだけでした。

今日は彼女のお母様の御命日です。「受験頑張って!」と、私の生徒達からも、合格祈願にと、手紙や、プレゼントが、届いていますが、
きっと天国のお母様にも伝わっているでしょう。

彼女にはその年齢では味わわない辛い壁を乗り越えたからこそ伝わる力強さが、音楽に現れています。
そんな人の演奏は、上っ面ではなく地に足が着いた1人前の人間という底力があるのです。

本番も「○○ちゃん、がんばって!」と、天国のお母様が彼女の背中を力強く押す事でしょう。そして彼女は全身全霊こめて弾くでしょう。ピアノの前で待っていらっしゃる暖かくて優しい、懐かしいお母様にきっと再会するに違いありません。彼女が本当に困った時や辛い時はいつでも彼女の身体にお母様がぴったりと寄り添っているはずだからです。


あと2週間ほどですが、彼女が受験のために弾くのではない、それから先ずっと続く音楽の道のために、
全身全霊をこめて弾くという事をいっているのが本当に嬉しかったです。

長い長い音楽の道に比べればコンクールや受験、試験などで点数がつくのは一つの通過点にしか過ぎず、いつも目先の事ばかりに振り回されとらわれてはいけない、という事をすでにもう、この年齢で悟ったのは本当に大したものです。

お母様の念願だった音楽家の道を彼女は今後も迷わず突き進む事でしょう。
今現在私のクラスにいる高校生達もとっても楽しみに後輩達が来るのを待ちこがれているようです。

皆が暖かく見守ってくれるので、受験生達もとても幸せだと思っています。音楽高校は本当にいいところですよ!楽しみにしていて下さいね。