こんなフレーズで始まる主題歌で、シリーズの中でも、小さな子供にも分かりや
すいような内容で、親しみやすい。格好も、他のウルトラマンに比べると、簡単に
識別しやすく、あまり興味のない者でもたいがいは、分かった。
 −が、それは、宏が生まれる三十数年前の出来事。とうに、放映は打ち切られ、
次々と新しいウルトラマンシリーズが誕生している。宏と同年代の友人たちは、例
え『ウルトラマンタロウ』の名前を耳にしたことがあったとしても、『タロウ』が、血統
書つきのウルトラマン(ウルトラの父と母の実子)であることまでは、まず知らない。
 そして宏は、それでも『ウルトラマンタロウ』が好きなことに変わりはないし、友人
に理解してもらえなくても、一向に構わないのだった。

 ウルトラの父がいる  ウルトラの母がいる   
 そしてタロウがそこにいる

 

 両親を説得することができた宏は、満足げな表情で、彼女を眺めた。    
 灰色だと思っていた仔犬は、さきほど風呂で洗ってやった結果、淡いベージ
ュ色であることが、判明した。血統は、捨て犬だけに、雑種に違いない。宏は
そう思っていた。
 「お前の名前を、つけてやんなくっちゃなあ!」
 思い出したようにポン、手をたたく。
 首を、右や左に倒して、さんざんウンウンうなったすえ、
 「『たろう』!−うん。それ、すっごい、いいかも!!」
 満面の笑みを浮かべて叫んだ。
 風呂に入れた際、メスだと判明しているはずなのだが、そんなことは取るに
足らないことだった。宏にとって憧れであり、ヒーローでもあるこの名前を命名
するのは、広い主である僕の義務だし、役割だとさえ思えていたので、オスだ
ろうが、メスだろうが、どうでも良かったのである。
 宏のヒーロー、たろう、とは、正式名称は『ウルトラマンタロウ』。
 もうかれこれ、三十数年前のテレビ番組として放映された当時のウルトラマン
シリーズの1つだった。 

vol.1